待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
常闇に今回の合同戦闘訓練の決め事を教えて貰った後。儂は指示された地点に、おおるまいとに運ばれた。向かったと言うか、向かわされた先は訓練場の何処ぞにある建物の屋上。そこには『ゲキカワ目標地点』などと書かれた掘っ立て小屋があり、どうやら儂はその場に留まらなければならんらしい。小屋の中は……
まぁ良いか。取り敢えず独りで大人しくしてれば良いんじゃから、
ちなみに。おおるまいとは儂を此処に担ぎ運んだ後、直ぐ観戦場まで戻ってしまった。
「ふわぁ……。んん、ねむ……」
取り敢えず、
仰向けに寝転んだまま瞼を閉じる。……あぁ、直ぐにでも寝れそうじゃ。寝よう寝よう。まったく、被身子め。もう少し手加減してくれ……。
『おい廻道。寝るな』
げっ。何で相澤の声が聞こえるんじゃ。片目を半分開いて周囲を見渡してみると、
ちっ、教師に見られてるのか。見られてなければ熟睡出来たんじゃけどなぁ。仕方ない、仮眠で済ませるとしよう。
……。……まぁ、一応。常闇に教えて貰った事を振り返るとするか。
ええっと? 今回の合同戦闘訓練は、双方が四人組を作って対決するわけじゃ。想定は、
で。儂を自陣に連れ帰ると二人分確保した扱いとなるようじゃ。その代わり、まぁ他の連中もそうなんじゃけども、確保した奴を自陣にある檻に放り込む必要が有るそうじゃ。自軍に連れ帰られるまでは抵抗は自由とのことで、逃げ出せるのなら途中で逃げ出して良いらしい。
あぁそれと。制限時間は二十分らしいの。
……この
「……寝るか」
『おい。だから寝るな』
喧しい。誰かがここに来るまでの間、儂は暇なんじゃから寝てたって良いじゃろ。それに、誰かが近くまで来れば流石に起きる。熟睡したいところじゃが、仮眠程度に抑えるとするか。
……すぴぃ。
◆
んぬお? んん……。ふわぁ……っ、あ。
……誰かが近くまで来たの。しかも戦闘音がする。掘っ立て小屋の外にでて周囲を見渡して見ると、近くで争ってる輩が居るわ。なんか凄い事になっとる気がするの。やけに体が大きな獣……? じゃったり、茨の蔦が荒れ狂っていたり。くらすめえと達にあんな個性を持ったものは居ないから、びぃ組の誰かの個性なんじゃろう。個性は何でも有りじゃからな。しかしまぁ、やはりと言うか何と言うか、儂の奪い合いになっとる気がする。
何で梅雨が居ながら苦戦しとるんじゃ? くらすめえと達の中で、優等生を一人選べと言われたら儂は梅雨を選ぶ。知識で言えば八百万に軍配が上がるが、総合的に見たら梅雨の方が優れていると思うからの。まぁ強さで言えば、轟か舎弟のどちらかを選ぶことになるが。
「くあ……っ。もう一眠りするか……」
まだここまで来るのに時間が掛かるじゃろう。であれば、もう少し寝ておきたい。まだまだ寝足りないんじゃ。要救助者兼人質役をこなさねばならんのじゃけども、この眠気にはどうにも……。まっこと、いかんな。いかんとは思っているんじゃけど、寝たくて寝たくて仕方ない。踵を返し掘っ立て小屋に戻ろうとすると、誰かが儂の後ろに着地した。振り返ってみると、そこに居たのは。
「救けに来ました。安全な場所まで連れて行きますから、俺と一緒に来てください」
心操じゃった。なるほど、捕縛布を使ってしたから上がってきたのか。儂を要救助者として扱っているからの、その通りに演じてやるとするか。……演技、演技か……。思い返してみれば、あまりした事が無いのぅ。良いか別に。普段通り接してしまっても。気を付けるべきことは、個性を一切使わないこと。そこには術式も含まれるじゃろうし、恐らく呪力も使わん方が良いじゃろう。
って、こら。儂が返答する前に抱き寄せるな。せくはらじゃぞ、せくはら。被身子以外にせくはらされたって、嬉しくも何とも無いんじゃ。そもそもお主、儂を抱えて動けるのか? お、結構力が強いの。
「行かせませんぞお!!」
ぬおっ。大きな音が響くと共に、足元が揺れた。音がした方を見てみれば、びぃ組の獣が柵に着地しておった。それを見た心操は捕縛布を使おうと動き始めたが、……動作が遅いのぅ。それでは駄目じゃろ。予備動作が丸見えな時点で、話にならん。何せ相手は、
「っ、逃げて! 俺の仲間が直ぐ側まで来てます! 小屋の後ろから、跳んで!!」
「くぁあ……っ。……怖いからやじゃ。こんな所から跳ぶなんて、危ないじゃろ」
儂、要救助者。個性も呪術も使えぬ一般人。跳べと指示されてものぅ。一般人が急にそんな事を出来るかと言うと、まず出来ぬ。
「させませんぞぉ!!」
「ひっ! た、助けて……!」
「ご安心をお嬢さん! 私こそが安ぜ、……っ……」
お? 何じゃ今の。心操が、儂の声真似をしたようじゃ。で、それに返答してしまった獣男が動きを止めた。棒立ちになっておる。あぁ、個性を使ったのか。確か、こやつの言葉に返答してしまうと洗脳されてしまうんじゃっけか? 体育祭で、緑谷がそんな感じじゃった。
で、儂の声真似をされたからまんまと引っ掛かったと。要救助者の声を
「……ふーーっ、良かった。ヒーローは、救けたい相手を無視出来ないもんな……」
「中々悪どいことするんじゃな、お主」
「今は、手段を選ぶ余裕なんて無い」
「そうじゃろうな。で? 儂はどう救けられたら良い?」
「……俺が連れて行きます。その、先に謝っときます」
「まぁ仕方ないじゃろ。訓練じゃし」
あと、被身子には内緒にしておこう。一応、念の為な? じゃって、話を聞いた途端に刺しに行こうとするからの。儂の許嫁は、結構嫉妬深い。それをかぁいいとは思うんじゃけど、同時に危険でもあるからの……。
心操は儂を抱えて、掘っ立て小屋の裏まで走った。と思ったら、跳んだわ。儂を抱えたまま、屋上の柵に捕縛布を巻き付けてそれを頼りに下へと降下していく。
「ナイスよ心操ちゃん。後は任せて」
「あぁ、任せた」
ぬおっ。梅雨の舌が体に巻き付いた。なるほど。下で梅雨が待っていたから、跳べなんて指示を出したわけじゃな? ならその旨を、しっかり伝えんか。そしたら跳んでやったのに。
「これから安全な場所に連れてくから、安心してね」
「……うむ。では頼んだ」
舌で簀巻きにされるのは、何とも言えない気分じゃの。生温い舌に包まれるこの感じは、好ましいとは言えん。しかし儂を走らせるより運んだ方が早いのは事実じゃ。要救助者の確保に、迅速な避難誘導。梅雨は自陣に向かって戻り、その後ろを心操が周囲を警戒しながら付いて来る。心操の動きは少しぎこちないが、悪くないの。
「ケロケロ。こんな時に言うことじゃ無いんだけど、訓練だとしても円花ちゃんを救ける事が出来て嬉しいわ」
「集中しろ、たわけ」
「大丈夫よ。だってもう、訓練はお終いだもの」
……お終い? ってあぁ、気が付けば檻が眼の前じゃ。檻の中には、既に二人放り込まれている。ということはじゃ、儂をここに連れて来た時点で……。
『第一セット! ぐぬぬぬっ!! A組+心操チームの勝ーーーー利!!!』
取り敢えず、この訓練は終わりじゃの。まぁ、びぃ組には勝って貰わなければ困る。儂を目指すなら、圧勝ぐらいして欲しいものじゃ。何より儂を倒すために個性を鍛えるに鍛えてるんじゃから、びぃ組の連中より優れてて当然。勝って当然、負ければ恥じゃろ。
「遅れてるどころか、とっても強力よ心操ちゃん」
「いや、まだまだだ。俺自身の力で、プロにならなきゃ」
心操については……。少ししか活躍を見ておらんが、悪くないと思った。勝利という結果を得て梅雨に褒められて、なのにまだまだ足りないと言い切った点は褒めてやりたい。向上心の塊じゃの、こやつ。なのに舎弟より大人しく、勝利を得ても緩むことなく自分を律している。いいな、こやつはまだまだ伸びる。相澤の弟子にしては、見所があるのぅ。もう少し強くなったら、手合わせしてみても良いかもしれん。こやつの個性を呪力で防げるか気になるところでもあるしの。
しかしなぁ、獲物が捕縛布か……。強力な個性持ちならば、引き千切るぐらいの事は出来る。そうでなくとも燃やしたり引き千切ったり、個性によっては切り裂いたりするのかもしれん。相澤ならば相手の個性を消せるからその辺りの心配は要らんのじゃろうけど、こやつの個性の場合は……。
……ちっ。じゃから儂に、もう一つ捕縛布を作れと頼んだのか。子供の為なら最初からそう言え。言葉が足りんぞ言葉が。何で儂があんな奴の意を汲まなければならんのじゃ。まったく、七面倒臭い奴め。
「……はぁ……。心操。もっと頑丈な捕縛布を作っておいてやるから、完成したら取りに来い」
「……マジ?」
「
まぁ、
もしも同じ組じゃったら、少し気に掛けてやるとしよう。こやつの事は、割りと好印象じゃからな。今のところは、じゃけども。相澤なんかを師に選んだのは、意味不明じゃけどな。
……さて。次の訓練が始まる前に、掘っ立て小屋に戻るとするか。ついでじゃ、少し心操と話してみるとしよう。
「心操。さっきの掘っ立て小屋まで案内してくれ」
「え?」
「心操ちゃん、一つ覚えておいて。円花ちゃんはね、とっても方向音痴だから一人で歩かせちゃ駄目なの。前にここで迷子になった時は、A組総出で数時間は見付からなかったのよ」
「嘘だろ……。そんな事ある……?」
残念ながら、事実なんじゃよなぁ。じゃからって方向音痴扱いは、しないで欲しいんじゃけども。逆らいたくなる。
ほら。愕然としとらんで、さっさと案内せんか。次の訓練が始まってしまうじゃろっ。
割りと気に入られる心操くん。バトルジャンキーに目を付けられた模様。あーあ。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ