待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「つまり円花は、渡我先輩と許嫁ってこと!?」
「廻道ちゃん! そこのとこ詳しく!!」
「皆、あまり深掘りするところじゃないと思うわ。それって隠しておきたいものじゃないかしら?」
「でも梅雨だって興味はあるっしょ?」
「で、実際どうなの!? 幼なじみで婚約なんて……まるでドラマみたいっ!」
……。
があるずとおくは面倒じゃ。せずに済むのならそれに越したことはない。毎度思うのじゃが、何故
儂にはよく分からん。男の好みがどうとか、理想の男はこうとか、こんな事がしてみたいとか。馴れ初めがどうとか、どこが好きとか……。ううむ、いちいち口にすることかそれは?
分からぬ。があるずとおくは、何も分からぬ。
体力試験があった翌日。登校して席に着くと、女子共がわらわらと群がって来よる。こんな話をするぐらいだったら、昨晩如何に儂が大変な思いをしたかを常闇に喋りたいんじゃがのぅ。
それと、一度校舎の中を一人で歩き回りたい。建物は広く、人が多い。呪霊は大量に居る筈じゃし、そうでないなら等級の高い呪霊が発生している筈じゃ。帳を降ろせば炙り出せるが……人が居る時には止した方が良い。いっそ夜中に来ておきたいがのぅ。じゃけど、ここは電車を使わねば来れぬし……。ううむ。今は廊下で目についた呪霊を祓う程度に留めておくべきか?
まぁ、今すぐ誰かに何かの害が加わることは無さそうだしの。本格的な呪霊掃討は、機会があればにしておこう。
ところで。答えねばならぬのか? 儂が被身子とどのように過ごして来たかを、また一から全てを答えねばならないのか? それは……面倒じゃって。どうせ信じて貰えなさそうじゃからなぁ。常闇なんかは、何度言っても人を修羅だの悪鬼だの羅刹だの言いおる。
ちなみに。誰の口から広まったのかは知らぬが、儂が小学生時代にやった過ちが既に学校中に広まっておる。被身子のくらすめえとを全員殴ったあれじゃな。多分じゃが、あやつうっかり人に話したじゃろ。二年生や三年生とすれ違うと、いちいち生暖かい視線を向けられるんじゃ。
すれ違い様に「お幸せに〜〜」と笑って言われることも多い。被身子よ、いったいどこまで話したんじゃ……。まぁ、被身子や儂に言い寄る変な男が発生しないと言う利点もあるがの。
何が楽しくて男に口説かれねばならんのじゃ。儂、見てくれは小さな女子でも中身は男なんじゃが?
「被身子との事は……内緒じゃ。深く語るつもりはない」
取り敢えず、これ以上聞いてくれるなと笑顔で断りを入れておく。これで納得してくれるとは思えんがな。何だかんだで、何度も聞かれる事になるんじゃろうなぁ。
それにしても。個性が誰にでもあると言って良いこの時代、見てくれが面白い者は多い。このくらすでも、奇っ怪な見た目の者は少なくない。
例えば、葉隠。こやつ透明人間じゃそうで、顔が見えぬ。顔どころか、全身見えぬ。初めて見た時は、首の無い呪霊かと思ったぞ。
例えば、芦戸。肌の色が奇っ怪じゃ。瞳の色も人とは違う。頭に生えてるそれを動かすのは止めてくれないか? なんじゃかこう、掴んでみたくなる。
例えば、蛙吹。ああ、梅雨と呼んで欲しいんじゃったか? こやつは蛙と人が混ざったような印象を受ける。あと、手が大きいのぅ。口もじゃ。人の頭ぐらい、咀嚼出来るのではないか? 舌も長いらしい。どの程度長いのか、気になるの。今度引っ張らせて貰おうかのぅ? なんて話を昨日電話で常闇にしたら、必死になって止められたが。
こやつ等のように人間とは思えぬ見た目をした者もおれば、普通な姿形な人間もおる。頭紅白な奴が普通と言えるかは、少し微妙に思うがの。
改めて、この時代は奇っ怪で不思議じゃ。
「ほら、そろそろ席に着かんと怒られるぞ? があるずとおくは、また今度じゃ」
もうしたくないがな。男子と話していた方が、まだ有意義な時間じゃと思う。女子の考え方は、どうしても理解出来ん節がある。
さて。そろそろ朝礼が始まる。相澤先生が教室に入って来た。儂も見てくれはあまり気にならぬ方じゃが、大人がその格好はどうなんじゃ?
せめて髭を剃らんか髭を。まったくこの時代の若い者と来たら……。
◆
「わーたーしーがー!! 普通にドアから来た!!!」
今は五時間目。ひいろお基礎学とか言う科目の時間じゃ。流石の儂でも知っておる。こやつは確か『おおるまいと』とか言うひいろおじゃな。たまにてれびに映っておる。何でも平和の象徴だとか、ひいろおの中で最も強いとか。こやつが現れてから大幅に犯罪率が低下したとか。なちゅらるぼおんひいろおだとか。
しかしのぅ。なんじゃその筋肉は。体を鍛え抜いたにしては、やり過ぎでは無いのか? そこまで体が膨れる程に筋肉を付けるような輩は、前世にも居なかったぞ。いや、居たような居なかったような……。
ううむ、圧力が凄い。近付かんで欲しいの。今生の体は小さいから、何と言うか大きな筋肉に迫られるのは得体の知れない圧力がじゃな……。
「早速だが今日はコレ!! 戦闘訓練!!!」
座学では無いのか? それは助かるのぅ。儂の学力だと、正直五科目に付いていくのがやっとなんじゃよ。これ以上頭を使わずに済むのなら、楽で良い。いい加減体も動かしたくなってきたところじゃしな。
「コスチュームに着替えて、順次グラウンド・βに集まるんだ!!」
こすちゅうむ? 何じゃそれは。儂、そんなん知らんぞ。
何? 入学前に送った個性届と要望? 被服控除?
ああそれ、分からんから母と被身子に書いて貰った気がするの。
……待て。何か嫌な予感がしたぞ。まさかこすちゅうむとやら、こすぷれではあるまいな?
それを、儂は母と被身子に任せた……?
いかん。不安になってきた。嫌な予感が際限無く膨れてきたぞ。頼むからめいど服とか、ちゃいな服とかっ、巫女装束はやめてくれっっ!
頼む!! 母! 被身子!! 信じておるからな!? 儂、信じておるからな!!?
………。うわ……っ。
※円花のコスチュームはご自由にご想像ください。
円花のコスチュームについて。
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古き良き陰陽師スタイル
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巫女装束
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スーパートガ的セーラー服
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呪術高専的制服
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描写無し継続