待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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産土神信仰。調査開始

 

 

 

 

 

「移動がてら、今回のお仕事について話しちゃいましょう!」

 

 荷物を背負って歩きながら、何故か眼鏡を掛け始めた被身子がそう提案した。いや、任務内容の共有については賛成ではある。賛成なんじゃけども、白昼堂々と歩きながらする事でもない。何せ呪術に関することは、その全てが秘匿事項じゃ。で、あるならば何処で誰が聞いてるかも分からん外でする話でもない。その辺りの事、総監部は被身子に伝えてないのか? そこまで人手不足じゃとは思いたくないんじゃけども……。

 まぁ、仕方ない。一応教えておくとするか……。

 

「被身子。その話題は外ですることじゃない」

「秘匿の事は分かってますよぉ。だから、カモフラージュしながら話すのですっ」

 

 かもふらぁじゅ? ……ええっと、確か……迷彩柄のことじゃっけ? 秘匿を迷彩……? いや、会話を迷彩。……何じゃそれ??

 どうしてこの時代の日本人は、英語を混じえて話すのか。お陰で、たまに会話し辛い。自然と英語を混ぜて話すのは止めて欲しい。訳分からん。しかも、和製英語とかもあって滅茶苦茶なんじゃ。

 

 まぁ、とにかく。ええっと……会話を、かもふらぁじゅ……すれば良いんじゃな?

 

「この那步島は、意外とオカルトマニアに人気だったりするんですよね。何でかって言うと、産土神信仰が盛んだから」

「資料によると、変な風習があるそうだな。十三歳になった時、子供は海辺の祠に一人で参らなければならないそうだ。それ以降は、信仰しなくて良いらしい」

「何じゃそれ」

 

 それはまた……、変な信仰が有ったものじゃの。何故、十三歳の子供を海辺の祠に一人で行かせるのか。単純に危ないじゃろ、それ。それに、十三歳になったら信仰しなくても良い……じゃと? 信仰とは、死ぬまでするものではないのか?

 ……どうも、奇妙な信仰じゃと思う。十三歳までは土地の守護神を信じ、十三歳になったら信じるのを止める。それは果たして信仰なのか? まだ、子供に何か教訓を与えようとする習わしと言われた方が納得出来そうなものじゃけど……。

 

「産土神って、土地の守護神ですよね? 生まれ育った土地から離れても、一生守護してくれるってお人好しな神様のことで……。なのに、十三歳になったら信仰しなくて良いっていうのは……」

「此処で仕事がある以上、人的被害は出てるんじゃよな?」

「はい。何でも昔、この島で大勢の大人が何も残さず失踪したそうなのです。それは何百年も昔の話なんですけど、最近になってまた何人か痕跡も残さず失踪しちゃった……とかで」

 

 何百年も昔に、大勢の大人が失踪した? で、最近また失踪者が出た? 痕跡が残ってないから呪霊の仕業とでも総監部は言いたいのか? それは流石に安易な発想な気がするのぅ。

 例えば、何かこう……痕跡を消せるような個性が有れば人間でも起こせる事態ではないのか? ほら、個性って何でも有りなんじゃし。痕跡を消すぐらい、難しくは無いと思うんじゃ。……まぁ、儂が思い付いてる時点で総監部が気付かない筈も無いか。色々と調べた結果、呪霊や呪詛師の仕業としか考えられないと思ったから任務になっているわけで。

 それに。呪霊の手に掛かった奴が痕跡ひとつ残さない、なんて話は何も珍しくはない。よく有る事じゃ。

 

 痕跡を残さず人を襲う、或いは喰らう呪霊か。しかも、産土神信仰から産まれた可能性は否定出来ない。普段の任務と比べたら、多少面倒な事になりそうじゃの。

 

「つまり。その失踪に、産土神信仰とやらが関わってるってことか」

「多分。ですけどねぇ。……円花ちゃんは、どう思います?」

「さぁの。取り敢えず、この土地の産土神信仰とやらを調べるのが良いかもしれんな」

 

 少なくとも総監部は、産土神信仰が失踪に関わっていると思っている訳じゃし。その辺りを、儂の方で調べてみるのが正解かもしれん。それにこの島の様相は、踏み入った時からおかしなものじゃからな。それは港に着いた時から感じていた。何の冗談かと思ったんじゃが、宿に向かう為に街中を歩いてみて……冗談ではないと確信した事がある。

 この島、どういう訳か呪霊が一切居ないんじゃ。そこらを歩けば何かしらの呪霊が目に付くのがこの時代の筈じゃ。なのに、呪霊の姿が何処にも無い。単に隠れているだけ、と言う線も有り得なくはないが……。それにしたって、奇妙な気がしてならん。

 

 こうも呪霊の姿が見えないのは、儂が街中の呪霊を祓い尽くしてしまった時以来か。

 

 ……もしや、この島には呪術師が居るのか? 島全ての呪霊を祓い尽くしてしまうような呪術師が? そうじゃとしたら、そやつはかなりの……。

 

 っと、いかん。落ち着け。此処には呪霊を祓う為に来たんじゃ。呪い合う為に来たわけではない。まずは、儂がこなすべき任務をこなしてじゃな……。

 

「もぅ。楽しそうにしちゃって……。そんなカァイイ笑顔をして歩いちゃ駄目ですよぉ」

「は?」

 

 かぁいい、笑顔……? 被身子の言っとることは相変わらずよく分からんけども、どうやら儂は笑っていたらしい。心が躍っていたのは事実じゃけども、笑った覚えは無いんじゃけどなぁ。まぁ、もしかしたら腕の立つ呪術師がこの島に居るかもしれん。そう考えたら、こう……わくわくして……!

 って、こら被身子。歩きながら抱き寄せるな。歩き難くなってしまうじゃろ。まったく、仕方のない奴じゃのぅ。仕方ないから、またいつものように腕を抱いて歩くとするか。荷物が少しばかり邪魔じゃけども、まぁ良しとしよう。

 

「あ、旅館が見えて来たのです。取り敢えず、チェックインしちゃいましょうか!」

 

 どうやら、宿が近いようじゃ。そう言えば、温泉が有るらしいの。それはそれで大いに楽しみじゃけども、楽しむのは後回しになりそうじゃ。じゃって、一度でも温泉に入ってしまえば何も出来なくなるじゃろうし。それにほら、任務とは別に昼間の内にしておきたい事があるからの。

 まぁ、何はともあれ。まずは荷物を宿に置くことにしよう。あれこれと動き始めるのは、その後じゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宿に着いた。職場体験中の被身子が選んだ宿は、それなりに良さそうな所じゃ。部屋は畳じゃし、二人で過ごすには十分な広さをしておる。部屋に温泉が付いてない事が残念じゃが、個室に温泉が引かれてる宿はこの島には無かったらしい。であればまぁ、仕方ないか。温泉を楽しむ時は、部屋から出るとしよう。

 今直ぐにひとっ風呂と行きたいところじゃけど、それはもう少し我慢する。夜までに、ある程度この島の事を調べておきたい。可能なら、今夜で任務を終わらせてしまいたいのぅ。そしたら、後はのんびり温泉旅行を楽しめる。

 

 ……いや、まぁ。呪術師としての活動を終わらせた後は、英雄(ひいろお)活動をしなければならんのじゃけども。そう考えると、被身子と逢瀬(でえと)してる余裕は無いのでは? いやいや、それは困る。やじゃやじゃ。せっかく予定を立てて来たんじゃから、逢瀬(でえと)は絶対にする。出来れば二日か三日ぐらいは、被身子と二人きりで過ごしたいのぅ。思い通りになるかは、分からんけども。

 

「それじゃあ、少し調査します? それとも、デートですかっ?」

「……両方じゃな。調査しつつ、でえとしよう」

「はぁい。イチャイチャしながら調査しましょう!」

「うむ。まぁ、ながんが付いて来るんじゃけどな」

 

 何せ雄英の外じゃと、ながんは儂から一定以上離れることが出来ない。離れてしまうと、電流が流れるからの。もう良いんじゃないのか? あの腕輪は外してしまっても。秘匿釈放されてから、ずっと大人しくしているし。そもそも個性を封じ行動を制限しなくとも、ながんは人に危害を加えんと思うが。当人にその気が有るなら、とっくに何度も電流を受けているじゃろうし。

 あ、そうじゃ。この腕輪は外して、ながんに預けてしまおう。そしたらあやつ、自由に動き回れるじゃろ。……で、どうやって外すんじゃっけ? この腕輪。確か前回外した時は……相澤が鍵を使っていたような……?

 

「その腕輪、専用の鍵がないと外れないのです」

「……壊すか?」

「壊したら火伊那ちゃんがビリビリなのです。取りたいなら、……そうですね。腕を切り落とす……とか?」

 

 ……なるほど。鍵を無しに外したければ、腕を切り落とせと。まぁ実のところ、問題は無いんじゃよな。腕一本切り落としても、直ぐに生やせるし。とは言え、そんな真似をしたら色々と問題になりそうじゃ。腕の切断は、緊急時の時だけにやるとしよう。例えば、ながんと別行動を取らなければならなくなった時……とかな。

 仕方ない。ながんも連れて、逢瀬(でえと)するか。嫌な顔をされそうじゃけど、儂から一定以上離れられないんじゃからこればっかりはどうしようもない。

 

 では。荷物も置いたし、外に出るとしようかの。この島の産土神信仰について調べつつ、逢瀬(でえと)じゃ逢瀬(でえと)。ながんも居るがな。海水浴に洒落込むのは、流石に明日からじゃのぅ。

 

「ん!」

「ふふ。はぁい」

 

 被身子と手を繋いで、部屋を出る。ながんの準備は出来てるかの?

 

 

 

 

 

 

 









三人称による補完は要りますか?

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