待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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産土神信仰。調査難航

 

 

 

 

 

 

 さて。那歩島に着いたし宿に荷物を置いた。財布と携帯電話(すまほ)だけを懐に入れて、儂と被身子はながんを連れて外に出た。

 これから、この島の産土神信仰について調べつつ逢瀬(でえと)じゃ。まぁながんが居るから、逢瀬と言うよりはただの外出になってしまうんじゃけども。この任務が終わったら、総監部にながんの拘束を外すよう言っておくか。今後、こういった形で逢瀬(でえと)する時にながんを連れ出すのは好ましくない。ながんとしても、落ち着かんじゃろうしな。

 

 外に出ると、まず目に付くのは大勢の観光客じゃ。冬でも海水浴が出来る島ということもあって、旅館付近は人が多い。特に若者が多い感じにするの。まぁ、儂等も表向きは観光に来た若者なんじゃけども。

 被身子の腕を抱きつつ周囲を見渡してみるものの、やはり呪霊の姿は見えない。それがどうしても奇妙に思える。何なら、気味が悪いぐらいじゃ。他所では街に出れば必ずと言って良い程に呪霊が見えるのに、この島に来てからは姿がまるで見えん。やはり、この島には呪術師が居るんじゃろうか? それとも、この光景は産土神信仰によって出来たもの……か?

 ……ううむ。分からん。分からんから、これから調査するんじゃけどな。

 

 それにしても。この島は暑いのぅ。常夏の島と呼ばれるだけのことは有る。何で十二月なのに、薄着で外を出掛けとるんじゃろうな儂。雄英に帰る時は、冬服に着替えなければならないのが面倒じゃ。向こうは雪が降っとるそうじゃし。父が転んでなければ良いが、転んでるんじゃろうなぁ。ぽんこつじゃし。

 

「それじゃあ調査開始なんですけど、円花ちゃん的にはどう調べたいですか?」

「……まず、最近失踪した輩の情報が欲しい。それと、産土神信仰について地元民に聞いて回るのが良いかもしれん。海辺の祠とやらも、見ておきたいのぅ」

 

 ひとまず、この三つは把握しておきたい。特に、海辺の祠。もしこの島の失踪事件が呪霊の仕業なら、信仰が原因で産まれた呪霊じゃろうからな。にしても、……何じゃ? どうもさっきから……、そう。港を出た辺りから纏わり付くような視線を感じる。周囲を見渡して見ると、近くの住宅の窓から老人やら大人達に覗かれていることが分かった。何じゃこやつ等。儂に用でも有るのか?

 ……いや、違うな。これはどちらかと言うと……害意に近い。老人の一人と目が合うと、慌てて窓掛け(かあてん)を閉じられた。何なんじゃ、まったく。

 

「……被身子。儂から離れるなよ」

「円花ちゃんこそ、迷子になっちゃ駄目ですよぉ」

「ならんならん。と言うか、そういう意味で言ったんじゃない」

「……?」

 

 少し、懐かしく思う。この時代、街中で探るような目で見られることは殆ど無かったからの。たまに、子供達やら大人達に群がられることは有るが。何故どいつもこいつも、儂を英雄(ひいろお)として見るのか。いやまぁ、変に注目される事自体は分かっては居たんじゃけども。何せ、表向きはあの筋肉阿保の後継者じゃからの、儂。緑谷を守る為とは言え、安請け合いしてしまった気がする。しかしのぅ、あやつの存在は隠しておいた方が良い。もう悪党(ゔぃらん)連合には、緑谷がおおるまいとよ光景であることは知れ渡ってる事かもしれんが。

 とにかく。さっきから儂を見る目が鬱陶しいの。儂だけが目当てなら構わんが、被身子に危害が及ぶのは避けたい。さっさと任務を済ませてしまおう。ああいう目で人を見る輩は、何をしでかすか分からんからの。

 

「海辺の祠とやらは、何処にあるか分かるか?」

「んー。それが分からないんですよねぇ。那歩島の観光ガイドには載ってませんし、そもそも無いんじゃないかって噂もあったり」

「なのに、有名な話なんじゃな?」

「実際にこの島に赴いて、見当たらなかった。ってのも有名な話だそうだ。どう思う?」

 

 どう思う? と聞かれてもな。そんなの、隠されているとしか言いようがないのでは?

 ただその場合、産土神信仰そのものが隠されていないとおかしな話でもある。何故この島の産土神信仰自体は、島の外にまでその存在が認知されているのか。どうにも謎じゃの。

 

 ……何はどうあれ、動いてみるしかない。面倒な事にならなければ良いんじゃけども。

 

「聞き込み調査をするべきじゃな。この島で長く生きてる老人でも居れば、手っ取り早いんじゃけど」

「……地道に聞いて回るしかないかもな」

「じゃあ、調査開始です!」

 

 いや、もう始まってるが? 両手を振り上げて声を張らんでも良いじゃろ。遊びではないんじゃぞ? その辺り、分かっているのかこやつは。

 

 まったく、仕方のない奴めっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、すみませーん。ちょっとお聞きしたい事があるんですけど!」

「あらあら、めんこい子達が来たわねぇ。此処には観光に?」

「はいっ。冬休みの課題で、フィールドワークを!」

「なるほど。聞き込み調査ってやつね」

「そうなんですよぉ。それで是非、現地の人に聞きたい事がありましてっ」

 

 ……嘘八百を並べ立てるのは、如何なものか。別に呪術の事を秘匿してれば、嘘までは吐かんでも良いと思うが。まぁ、好きにさせてやろう。どうせ止めても聞かんし、何か有れば儂が割って入れば良いだけじゃ。すっかりその気になってる被身子の邪魔をするつもりも無いからの。

 被身子が話し掛けたのは、杖をついた腰曲がりの老婆じゃった。急に声を掛けられたものじゃから、最初こそ目を丸くしておったがのぅ。

 

「私達、地方の伝承とか風習とかを調べて回ってるんですけど……この島の産土神信仰について是非お話を」

「話すことは無いよ」

「えっ」

「話すことは無いよ。こっちは忙しいんだから、話し掛けないでおくれ」

「えっ、ちょっ……!?」

「被身子、良い」

 

 老婆の態度は豹変し、一方的に話を打ち切って立ち去ってしまった。途中、曲がり角の前で振り返り儂等を睨んでから曲がり角に姿を消した。

 最後に儂等を一瞥した際、強く拒絶しているように見えた。どうやら、余程触れられたくないらしいの。

 

 まぁ、こういう事はよく有る。それはそれとして儂の被身子を睨んだことは許さんが。何なんじゃあやつ。まったく、ろくでもない。

 

「この島で産土神信仰について聞くのは、タブーってとこか。どうする?」

「人に聞くのは止した方が良いかもしれん。面倒な事になって来たのぅ……」

 

 被身子に抱き付きつつ、これからどうするかを考えてみる。人に聞いて回るのは、もう駄目そうじゃ。となると、自分の足で探し回るしかない。この島を探して回るのは骨が折れるじゃろうけど、情報を何一つ得られそうにないなら現地民を当てにすることは出来ん。で、あれば。自分の足で探し回るしかないか。取り敢えず、海辺の祠とやらを見付け出したいところじゃの。信仰によって産まれた呪霊……まぁ精霊みたいなものじゃとは思うが、人的被害が出ているのなら祓うより他無い。場合によっては見逃してやらんでもないが……。

 

 早速、今回の任務は面倒な事になってしまった。別に被身子が悪いわけではない。少し考え無しのように見えたが、被身子なりに頑張った結果じゃし。さっきのは、仕方ない仕方ない。

 

「私、間違えちゃいました……?」

「いや、よく有る事じゃよ。儂がしている事はな、人の悪意に触れるのと大差無いことなんじゃ。

 じゃから、お主は気にするな」

「……はい……」

 

 ううむ、被身子がへこたれてしまった。そんな顔はして欲しくないんじゃけどなぁ。しかし、ある意味丁度良いのかもしれん。たまには、物事が思い通りにならんということを分かって貰える良い機会ではある。被身子には、呪術界になんぞ関わって欲しくない。これを機に諦めて欲しいんじゃけど、諦めてはくれないんじゃろうなぁ。今でこそへこたれては居るが、少しすればまたぶつかって行くんじゃろう。

 

「次は、もっと上手にやるのです。ごめんなさい」

 

 抱き締め返された。ついでに頭も撫でられた。今の被身子に撫で回されても、あまり嬉しくないのぅ。もっとこう、儂を愛でる気持ちで撫でて欲しいものじゃ。

 っと、いかん。気が逸れた。任務である以上、儂がしっかりしなければならない。気を抜いてる場合ではない。何か有った時、被身子を守るのは儂なんじゃから。それはそれとして、慰めてやらなければ。いつまでも失敗を引き摺る被身子ではないが、じゃからって放っておく真似はしない。

 

「良いんじゃよ。謝ることじゃない。それより、海辺の祠とやらを探すのを手伝ってくれんか?」

「はいっ。頑張って見付けるのです……!」

「祠を探すなら、ボートでも借りて島の周りを一周してみるか? 聞き込みが出来ない以上、その方が早いと思うが」

「……やじゃ。船には乗らん」

「円花ちゃん、盛大に酔っちゃいますもんねぇ……。ってなると……徒歩、ですか……?」

 

 ……。……それはそれで、大変じゃの。この島は広い。歩いて海辺沿いを一周しようとしたら、何時間掛かるのか分からん。下手をすれば、何日も歩き回る羽目になってしまう。となると、ながんの提案通りに船に乗るしかないのか? いやしかし、儂はもう二度と船になどのりとうない。絶対にやじゃ。やじゃったらやじゃっ。

 駄々を捏ねてる場合ではないと分かっては居るが、それでも嫌なものは嫌なんじゃ。

 

「……クラスメート達は、アンタの事情を知ってるんだろ? だったら、協力を要請するのは?」

「あ、そうですよぉ。足が速い飯田くんとか、泳ぎが得意な梅雨ちゃんにお願いすれば、きっと直ぐに見付けてくれるのです!」

 

 まぁ、そういう手もある。そういう手も有るんじゃけども、素直に首を縦に振ることは出来ない。そんな真似をすれば、くらすめえと達を任務に巻き込むことになってしまう。下手をすると、あやつ等の活動の邪魔になる。そう考えると、やはり被身子とながんの提案は受け入れられんな。

 こうなったら、歩き回るしかないか。って、こら被身子。誰に電話しようとしてるんじゃっ。儂はまだ何も言っとらんじゃろ! 勝手に話を進めようとするな……!

 

「あ、もしもし梅雨ちゃん? そう、トガですトガ。円花ちゃんとラブラブデート中のトガなのです。

 ちょっと困った事になってまして、手伝って欲しいんです。あと、飯田くんと緑谷くんの手も借りたいところですねぇ……」

「いや待て被身子っ。何を勝手に……!」

「あ、円花ちゃんの声は無視してください。いつもの強がりなのでっ」

「強がっとらんが!?」

 

 おい! 勝手に話を進めるなっ。駄目じゃぞ、くらすめえと達を任務に巻き込むのは無しじゃ。くらすめえと達はもちろん、出来れば緑谷の手も借りたくない。あやつ等は英雄(ひいろお)活動の為にこの島に来たんじゃから、儂の任務を手伝う必要なんて何処にも無いんじゃ……!

 

「はい、はい……。ええっと、じゃあ……一時間後ぐらいに浜辺で会いましょうか。梅雨ちゃん水着持ってきてます? あ、コスチュームは着ずに来てください。事情は後で話しますね。

 それと、円花ちゃんを手伝いたい人は随時募集中ですので! それじゃ!」

 

 電話が終わったようじゃ。勝手な真似をしてくれた被身子を睨むと、親指を立てて笑みを浮かべおった。何で一仕事終えたみたいな顔になっとるんじゃ貴様っ。緑谷はともかくとして、それ以下の連中まで任務に巻き込むのは流石に駄目じゃ……! なんでお主はこう、勝手な事を……!!

 

「というわけで、みんなに手伝って貰いましょう。私達だけじゃ、何日掛かるか分からないですから!」

 

 それはそうかもしれんがっ、じゃからってくらすめえと達を巻き込むのは違うじゃろ……! せめて筋肉阿保に連絡するとか、他の補助監督を呼ぶとか、手はあるじゃろうに!

 何でそこで、子供達を呼ぶんじゃ貴様ぁっ!!

 

「まぁ、人海戦術も時には必要だからな。クラスメート達に頼るのは悪くないんじゃないか?」

 

 おい、ながん。何でそこで、被身子の味方をしてるんじゃ? 貴様普段は、こやつに振り回されて困っとるくせにっ。何でこんな時だけ頷いてるんじゃっ。げ、解せぬ……!!

 

 

 

 

 

 







てな訳で、A組合流になります。少しばかり手伝って貰う形になりますね。まぁ最終的に円花は単身で産土神信仰に挑むことになるので、みんなのお手伝いは序盤だけです。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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