待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
悪戯電話が来た後。無性に苛立ちながらも、儂はくらすめえと達が帰って来るのを待った。くそ、どうにも不機嫌じゃ。選択を間違えてしまった気がする。情報収集になるかもしれんからと、梅雨に誘われて
「どうどう。ほら、そろそろ落ち着かないと駄目ですよぉ」
「そんなに怒っても疲れるだけだ。切り替えろ」
さっきから、被身子やながんが儂を落ち着かせようとしている。が、これが落ち着いて居られるか……! 何処の馬の骨とも分からん奴が、儂の被身子に手を出したんじゃぞっ。許してなるものか……!!
くそっ、今直ぐ飛び出したい。島中を駆け回ってでも、悪戯電話をして来た奴を見付け出して……殴り飛ばさなければ。でなければ気が済まんのじゃっ。じゃから、もう離せ被身子! いつまで儂を膝の上に抱き上げてるんじゃ貴様ぁっ。
「……渡我。これはどうにかなるのか?」
「円花ちゃんは単純ですから、美味しい物で釣れば一発ですけど……。でも、私ここから動けませんし」
「ぐぬぬぬぬ……」
被身子に抱き締められていなければ、外に飛び出せると言うのに。何じゃって儂を止めたがるんじゃ。それと、美味いもので儂が機嫌を直すと思うなよ? そんな簡単に釣られる程、子供では無いんじゃ。儂をなんじゃと思っとるんじゃ、こやつ等は。
あぁ、苛々する。これは、とても我慢出来ぬ。こうなることは予測出来たのに、なのに避けることも出来ず。儂自身の不甲斐なさに目眩さえしてくる。ぐぬぬぬ。
「私に何かあると、沸点が低過ぎるのです。直ぐ怒っちゃって……。んふふ……♡」
「喜んでないで止めてくれ。この子が暴れたら洒落にならない」
「こうしてれば大丈夫ですよぉ。そのうち落ち着くので! えへへぇ」
ううむ……。どうあっても被身子が離してくれなさそうじゃ。さらっと首筋に唇で触れるのは止めて欲しい。あと、耳元で話すのも止さぬか。せくはらしたって、儂は落ち着かんぞ。別の意味でも落ち着かんけど。この際抱き締めるのは構わんから、それ以上の事はしないでくれ。くそっ、まだ苛々する。
「あれ、廻道ちゃんだ。何で此処に?」
「ヒーロー活動したいなら、大歓迎☆」
「くそぅ、ここにもカップルがっっ……!!」
……葉隠と青山、そして何故か血涙を流している峰田が帰って来おった。全員装束姿じゃから、
……はぁ……。ひとまず、落ち着こう。怒りが消えるまでまだ時間が掛かるじゃろうけど、せめて隠すよう努力するか。
「元々、任務が終われば合流する予定じゃったからの」
「でも、任務は難航してまして。だから情報収集も兼ねて、ヒーロー活動もしちゃおうって魂胆なのです」
「えっ。つまりそれって……!」
「廻道さんもヒーロー活動するってことだよね。賛成!」
「は? オイラ、またバカップルに見せ付けられんの??」
まぁ、峰田のことは放っておくとしよう。訳分からん反応をするのは、割りといつものことじゃ。……そんな事より、これからどうすべきかを考えなければな。
……どうにも気乗りしないが、仕方あるまい。
「それで、他の連中は何時になったら帰って来るんじゃ? 幾つか話しておきたい事が有るんじゃけど」
「えーーっと……。そろそろ帰って来るんじゃないかな? ほら、そろそろ夕方になるし!」
葉隠が指差した先には、壁に掛けられた丸時計がある。確かにそろそろ夕方になりそうじゃが、夕方になったからってくらすめえと達が
……何て思っていると、また電話が鳴り響いた。
「はい、こちらキラキラに輝いてる雄英ヒーロー事務所☆ ……あれ? 切れてる」
青山がくるくる回りながら受話器を取ったが、どうやらまた悪戯電話だったようじゃ。しつこい奴じゃの。そうまでして、儂等をこの島から追い出したいのか。
「……すまんの。さっきから、悪戯電話が多いんじゃ。お主等の活動の妨げにならなければ良いんじゃけど……」
やはり、
「んー、そこで廻道ちゃんが謝るのは違くない? ほら、悪戯電話する人が悪いんだよ。あんまり酷かったら、とっちめちゃおう!」
「僕が眩し過ぎて、熱狂的なファンを作ってしまったのかも☆」
「でもよぉ、悪戯電話されるって……何したんだよ廻道ぉ」
「……まぁ、この島の禁忌に触れてしまったと言うか……」
「何でそんなもんに触れた!?」
何でって、呪霊調査の為じゃけど。初手で島民に話を聞こうとしたのは、今考えると間違いじゃったの。この島の成り立ちからして、部外者が赤鬼について調べ回ることは島民にとって快くない事じゃから。
とは言え、あの時の被身子の選択を間違いじゃったと言うのは違うしなぁ。被身子なりに、儂の役に経とうとしてくれたわけじゃし。
「すまん。今回の任務、大分面倒での。もう迷惑は掛けんようにするから、お主等は気にせず……」
「だーかーらー、そこで謝るのは違うんだって! 全然頼ってくれて良いんだから、任せてよ! みんな迷惑になんて思わないからっ」
いや、迷惑じゃと思うが……。しかし葉隠は儂の言う事を聞いてくれそうにないの。多分、他のくらすめえと達も葉隠と同じ事を口走るのじゃろう。
「あれー? 廻道が居る……!」
「ケロケロ。本当に来てくれたのね、円花ちゃん。嬉しいわ」
「廻道さん……! もしかしてヒーロー活動を……!?」
む……。続々と、くらすめえと達が帰って来たの。今帰ってきたのは芦戸と梅雨と緑谷じゃけど、そのうち全員帰って来そうじゃ。葉隠は迷惑ではないと言ってくれたが、迷惑を掛けてしまう気がしてならん。事情を説明した上で、任務が終わるまで儂等は此処には近寄らんようにした方が良いかもしれん。子ども達の手を煩わせるような真似は……。
「ねぇ聞いてみんな! 廻道ちゃんが困ってるみたいだから、手伝ってあげようよ!」
「そうなんですよぉ。円花ちゃん一人だと大変なので、今回は手伝ってくれると嬉しいのです……!」
は? いや、おい。おい、被身子。何でそこで葉隠に同調しとるんじゃ? 思わず後ろを振り返ろうとしてみると、余計に抱き締められて体を動かせなかった。が、それでも分かる。今、被身子は絶対に悪どい笑みを浮かべている……!
「円花ちゃんが……」
「……困ってる? それなら、アタシ達手伝うよ!?」
「協力するよ廻道さん!」
いや待て。待て待て。そう簡単に安請け合いしようと思うな。まずは儂の話を聞いてから、その上で協力するか否かをじゃな……!
「飯田天哉、ただいまパトロールより戻りました! ……って、廻道くん! どうかしたのか!?」
「おっ、廻道じゃん。何? もしかして手伝ってくれんの? 爆豪がサボってて人手足んないから、助かるなぁ!」
「サボりじゃねえ!! 待機だっつってんだろ醤油顔!!」
ううむ……。何やら、騒々しくなってきた……。これは、いかん気がする。もしや儂の言葉など、聞いて貰えないのでは? いやしかし、しかしじゃな。島民が嫌がらせで動いて来た以上、下手にこやつ等を巻き込みたくない。くらすめえと達の活動に支障が出てしまう。そんな事態になるのは、儂の望むところでは……!
「だはーーっ、しんど……! 労働基準法もクソもねぇ……!」
「でも乗り越えようぜ! 弱音なんて、漢らしくねえーからな!」
「もう少し人手があれば、全体の負担が軽減出来ると思うのですが……」
「百ちゃん、円花ちゃんが参加してくれますよぉ。私も事務とかだったら手伝えると思うので、人手が増えるのです」
「本当ですの!? 渡我先輩に廻道さんが参加してくれるなら、大助かりですわ……!」
「お、おい……!」
いや、待て被身子。待つんじゃ被身子っ。待てっ! 何を勝手に話を進めようとしとるんじゃ貴様ぁ! 誰が止めろ、こやつ等を止めろっ。このままでは望まぬ方向に……!
「円花ちゃんも参加しますし、私も出来ることは手伝いますよぉ。あと火伊那ちゃんも……」
「……まぁ、少しなら。この子と渡我の補佐って事でなら、問題無いだろ」
「というわけで! 三人増員なのです!」
「マジでか!?」
「それはとても助かるよ……! ありがとう廻道さん、渡我先輩! レ……、筒美さんも!」
じゃから、勝手に話を進めるな! お主等も素直に喜んでるんじゃないっ。被身子の言う事を真に受けると、ろくな事にならんと分からぬのかっ!? 主に儂が大変なんじゃけど!?
それに、島民の動きもある。今より苦労することになるかもしれんのじゃぞっ。その辺り、分かってて喜んでるんじゃろうな貴様等ぁっ!
「というわけでっ。今日からお世話になるのです!」
「役に立てることは少ないが、よろしく頼む」
「いや、待て……! 儂の話を聞け貴様等っ! そう簡単に……!!」
「みんなで、もっと頑張ろーー!」
「おーーっ!!」
……。……、……! だ、駄目じゃ……! 誰一人儂の話を聞こうとしない……! どうなっとるんじゃこやつ等はっ。葉隠の音頭で拳を突き上げる前に、事情を聞け事情を! 後で大変な事になるかもしれんのじゃぞっ!!
まったく……! 何なんじゃこやつ等っ。無条件で人を助けようとするなっ。儂の話を聞け、儂の話をぉ!!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ