待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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産土神信仰。説明相談

 

 

 

 

 

 

 今回の任務は、中々に手間取っている。島民からの情報提供は望めそうになく、海辺の祠を見付けるまで時間が掛かってしまうじゃろう。じゃから、島中を自分の足で歩き回るしか無い。梅雨の提案が一理あったので、英雄(ひいろお)活動を通じて祠を捜索しようと思ったわけでの。そこまでは、まぁ良いとする。問題は、その後じゃ。

 このいおぎ荘……を間借りして構えられた雄英英雄(ひいろお)事務所に、儂と被身子とながんの三人が入ると悪戯電話が掛かってくるようになった。どうやら島民は、儂等三人及びくらすめえと達を島から追い出したいらしい。余程赤鬼、つまり産土神信仰について嗅ぎ回られたくないようじゃ。

 このままでは儂等三人だけではなく、くらすめえと達にまで危害が及ぶかもしれん。そう考えると、くらすめえと達の協力を得るのは無しじゃ。これからは、なるべく接触もしない方が良い。少なくともこの那歩島に居る間はの。

 ……と、思ったんじゃけどな。くらすめえと達は、儂が英雄(ひいろお)活動することに大賛成のようで……しかもそこに被身子が便乗して、儂の意向はひとまず無視された。今は被身子やながんに、事務仕事について教え始めておる。このお人好し共め。お人好しである事に文句は言わんが、せめて話ぐらいは聞いてくれ。

 

「まぁ待て貴様等。まずは黙って、儂の話を聞け」

 

 くらすめえと達の全員が事務所に帰って来たところで、儂は両手を叩いて全員の視線を集中させた。このまま行くと、全員儂が今回の英雄(ひいろお)活動に合流するものと思ってしまうからの。儂と共に活動することで、これから何が待ち受けているのか。それを把握して貰わなければ。その上で尚、儂と共に活動したいと言うのなら……。まぁ、その時は仕方ないの。こやつ等の自由にさせてやるしかあるまい。英雄(ひいろお)ってのはどいつもこいつも、我が強くて困る。もう少しこう、協調的にして欲しいというか、何というか……。

 広々とした事務所の中。全員が畳に座る儂を見た。口を閉ざしてくれているのは、ありがたい。

 

「まず儂は、やはりお主等とひいろお活動する気になれん。というのも、儂と行動を共にすれば間違いなく面倒な事になるからじゃ」

「……廻道くん。その面倒な事、と言うのは?」

 

 飯田が右手を上げた。そうじゃな、しっかり説明しなければなるまいて。

 

「儂を快く思わない島民達が、何をしてくるか分からん。此処に来る前は監視、来てからは悪戯電話。今はまだこの程度じゃけど、そのうち酷くなるぞ」

 

 何せ、儂が暴こうとしているのは平安時代からこの島に根付いた信仰じゃからな。正確に言うと、信仰の対象である赤鬼を儂は祓う。人間じゃったなら放っておいても良かった気がするが、呪霊じゃからの。人に被害が出ている以上は、呪術師としては放っておけぬ。個人的な感情になるが、気色悪いからの。かつての自分の姿をした呪霊が居るなんて、想像するだけでも嫌なものじゃ。

 ……とにかく。儂自身に人の悪意が向けられるのは構わん。呪術師とは、人の悪意と向き合う生業じゃからの。しかし、その悪意がくらすめえと達に……ましてや被身子にまで降り掛かるのは儂の望むところではない。

 

「儂と居ることで、島民からの信頼が得られなくなるかもしれん。場合によっては、島から追い出そうとするかもな。何をしでかすかも、わからん。

 ……それは、お主等の活動に支障が出るじゃろ?」

「……あー……。別に、良いんじゃね?」

「は?」

 

 いや、何が良いんじゃ上鳴。個性も使い過ぎてもないのに、阿呆になったか? いや、元からある程度は阿呆な奴と思っていたが……今のは流石にどうかと思うんじゃけど?

 

「つまり、廻道はウチ等が心配だから一人で島民の標的になろうとしてるって事っしょ? あのさ、それ聞いてウチ等が黙って引き下がると思う?」

「流石にそれは水臭くせーよ廻道。確かに大変かもしれねぇけど、そこは全員で乗り越えれば良いと思うぜ」

「そもそも相澤先生が言ってたしねー。僻地に赴任されたばっかのヒーローは、まず現地の住民から信頼を勝ち取る事が大事だって。中には排他的な場所もあって、ヒーローを村八分にしちゃうこともよく有るとか」

 

 耳郎に続き、切島や芦戸まで上鳴に同意を示した。他の者も、三人の言葉に頷いている。……おい、この件を軽く見てないか貴様等。排他的になった人間は、ろくな事をしないんじゃぞ? 監視や悪戯電話なんて、ほんの序の口じゃ。もっと直接的な嫌がらせであったり、何なら暴力に走ることじゃって有るんじゃぞ。今後、島民が何をしでかして来るかまるで分からん。それを考えたら、儂等と行動を共にするのは悪手じゃろ。

 

「……待ってくれ。これは簡単に決めて良い事じゃないと、俺は思う。廻道の言う事も……、一理あるからだ」

 

 今度は、障子が待ったをかけた。席から立ち上がって、儂の方へと向かってくる。

 

「障子くん?」

「……排他的になった人は、平然と人を傷付けることがある。酷く攻撃的になるんだ。下手をすればこの場の全員、島民に暴力を振るわれるかもしれない」

「暴力って、幾らなんでも……そこまでするかな……?」

「言いたくないが、する……だろうな。廻道はそれが分かってるから、俺達と行動を共に出来ないと言っているんだろう」

「ぼ、暴力……!? オイラ、それは勘弁だぜ……!?」

「では、障子くんは反対……と? しかしそれは、廻道くんを見離すって事でもあるぞ。委員長として、友人として、それは見過ごせない!」

「……俺だって廻道を追い出すような真似はしたくない。ただ……廻道と共にあるなら、こういう目に遭うって可能性も全員考慮してくれ」

 

 そう言って、障子は口元を覆う覆面(ますく)を外した。思えば、こやつの素顔は初めて見る。これは……酷いな。あぁ、酷い。誰じゃ、こやつをこんな目に遭わせた連中は。一人残らず殺してやりたい。

 障子の口元は、大きく……そして古い傷痕がある。何か鋭利なもので殴られでもしたのか、或いは刃物で切り刻まれたのか。どちらにしたって、これは許せることじゃない。

 

「……都会の方はまだしも、田舎の方じゃこういう事はまだ有る。俺はみんなにも廻道にも、こういう目には遭って欲しくない。だから、これは簡単に決めて良いことじゃないんだ」

「……」

「……」

「……」

 

 ……全員が黙った。実際にこういう目に遭ってしまっている障子の言葉は、重たいものじゃ。儂とて、気楽には受け止められん。別の意味で、黙っていたくない。が、それはひとまず置いておく。

 

「もしみんなが廻道の言う事に賛同するなら、俺だけでも廻道と行動を共にする。よく考えて、決めて欲しい」

「……ちっ。んなもん、考えるまでもねえだろ。何黙ってんだモブ共」

 

 儂の後ろで、舎弟が口を開いた。振り返ってみれば、さぞ不満げな顔をしている。何を言い出すつもりじゃこやつ。何かとんでもない事を口走りそうな気がして来た。誰か、こやつの口を塞いだ方が良いのでは……?

 

「島の連中が何して来ようが、気にする事はねー。誰が何して来ようが、結果で捻じ伏せれば良いんだわ! 認めさせてやりゃ良いんだよ!!

 ……つぅーーかよぉ! てめえ等、またクソチビに守られたいんか? こいつに勝ちてえんなら、こいつに守られたままで良い訳ねえだろ!!」

 

 ……口を塞ぐべきじゃったかもしれん。塞いだ方が良かった。絶対にそうじゃ。じゃって今の言葉は、発破以外の何物でもない。こんな事を大声で言われてしまったら、他の連中がどうなるかなんて火を見るより明らかじゃ。じゃって、被身子に煽られたら乗ってしまうような奴等じゃぞ? まず間違いなく……。

 

「爆豪……!」

「かっちゃん……!」

「ここで引き下がったら……夏合宿の時と同じだよね……!」

 

 ほら、こうなる。いや、儂としてはこうなって欲しくなかったんじゃけど? 舎弟め……。余計な事を口走りおって……!

 ……じゃけど、まぁ。良い発破になったのは事実のようじゃ。舎弟の言葉で、全員がいきなり意を決したように思える。特に青山が、強く意気込んでいるように見えるの……? あと、常闇もそうじゃ。いや、何じゃその目は。決意を瞳に宿すんじゃない。発破を掛けられたからって、簡単に決めようとするな。障子がどんな想いで傷痕を見せたと思ってるんじゃっ。

 

「……爆豪くんのくせに、たまには良いこと言うのです」

「あ゛? 良いことぐらい、いつでも言えるわ!! ナメてんのか!?」

「自分が何したか、忘れてるなら教えてあげますけど?」

「……」

「えっ、渡我先輩……爆豪黙らせることが……!?」

「誰が誰を黙らせるって!? んな訳ねえだろアホ面ァ!!」

「爆豪くん。トガはまだ、これっぽっちも許してないのです。いい加減に誠意を見せてください、誠意を」

「……」

「黙らせられてんじゃん!!」

 

 ……ううむ……。それは過ぎた事、なんじゃけどなぁ……。被身子、そろそろ許してやっても良いんじゃないか? 儂は気にしとらんし。と言うか、舎弟の暴走を止めなかった儂にも責任の一端が有るんじゃけども……。ほら、儂じゃって売られた喧嘩を買ってしまったと言うか、何と言うか……。

 まぁ、その。すまん舎弟。これは庇ってやれそうにない。何せお主は、被身子に目茶苦茶根に持たれとるからの。多分、一生許して貰えんぞ。

 

「ではみんな! 廻道くんに協力したい者、廻道くんとヒーロー活動したい者は手を上げてくれ! この件は、多少危険が伴うかもしれない! もし、一人でも嫌という者が居るなら……俺は廻道くんの意思を尊重しようと思う! その場合でも、俺は廻道くんに協力する!!」

 

 いや、飯田。それはわざわざ聞く意味が有るんじゃろうか。お人好しのお主等の事じゃ。儂等三人の協力をしない、なんて選択肢を取らぬ筈が無かろう? 現に、ほら。全員が勢い良く手を上げて……。舎弟すらが小さく手を上げておるわ。被身子まで手を上げてるし……。あぁ、駄目じゃなこれは。結局、儂の言う事や意思はあまり尊重されないようじゃ。まぁ儂が逆の立場じゃったとして、見離すような真似はしないんじゃが。

 ……む? そう考えるとこやつ等は、ある意味で似た者同士……か? いや、いやいや。それは何と言うか、嫌じゃのぅ。こんな奴等と同類視されるのは避けたい。流石に、皆に対して失礼じゃと思うから。

 

 とにかく。こやつ等は儂に付き合ってくれるようじゃ。こうなっては、仕方ない。何か有れば、儂が何とかするしかあるまい。分かりきっていた事じゃけども、こうして見せ付けられると……何と言うか……。

 

「手伝うよ、マドモアゼル。ここで引き下がっちゃったら、キラキラじゃないからね☆」

「廻道。もうあんな真似は絶対させない。何が有ろうと、俺達が……お前を独りになんてさせない。そうだろ、みんな」

「応!」

「はい!」

「ケロッ」

「もちろん!」

「では! 全員一丸となって、廻道くんに協力しよう!」

「おーーっ!!」

 

 ……、……。はぁ、まったく。儂の気も知らんで、決め付けてくれる。後で後悔しても知らんからな? もっとも、どうなろうが儂が守るより他は無いが。

 ところで、被身子。皆を見て嬉しそうに笑うのか、常闇を睨むのかどっちかにしてくれんか? お主、何じゃってそんな変な顔をして……。これは、後で大変な事になるような気がしないでもない。常闇、何でか知らぬが……お主刺されるかもしれんぞ? 背後と夜道には気を付けた方が良い。

 

 そんなこんなで。結局くらすめえと達は儂に協力することとなった。手離しには喜ばんが、こやつ等の意思は尊重しよう。どうにもこうにも、これから忙しくなりそうじゃ。

 

 

 

 

 

 

 







産土神信仰調査、本格的にA組参戦です。予定では円花単身だったんですが、まぁヒーローズ:ライジングなので。みんなにはライジングして貰いましょう。

三人称による補完は要りますか?

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