待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「実っっ際さ! 常闇って絶対、廻道の事好きだよね……!」
「そうそう。さっきの、男の子って感じした……!」
「こう……少し応援したくなっちゃうよね。どう見ても勝ち目は無いんだけどさ、それはそれとして……」
「そうそう。頑張って欲しい〜〜」
夕飯時。和室で飯田と八百万に明日からの
「……はぁ。常闇くんって、ほんと要注意人物なのです」
あ、いかん。聞こえておったらしい。常闇、逃げとけ。呑気に夕食の準備を手伝うんじゃない。背後には気を付けろ。もしくは、なるべく儂の近くに居てくれ。でないと、被身子に刺されるかもしれん。
……そもそも。常闇が儂の事を好いているだの何じゃの、勝手な事を言わないでくれ。これだから、がぁるずとぉくは苦手なんじゃ。じゃって昔から、被身子がこう……恐ろしい雰囲気になるというか。儂の事が好き過ぎて直ぐに嫉妬するんじゃよな。まったく、仕方ないんじゃから。
「廻道くん、聞いてるのか? 君の為に説明してるんだぞ!」
「……すまん、聞いとらんかった。もう一度頼む」
「ではもう一度。次こそ、ちゃんと聞いてくださいませ」
「うむ。すまんすまん……」
叱られてしまった。明日からのことは、しっかり聞いておかねば。でないと、もっも叱られるかもしれんし。ひとまず二人の話に集中する為に、座を正す。そしたら、飯田も八百万も座を正した。顔がちゃんと聞けと言っておる。気を付けねば……。
「現在、俺達A組はこうして事務所を構え、プロ同様のヒーロー活動をしている。主にやることは、治安維持の為のパトロール。これは各地区に分かれ、ローテションで行っている!」
「それから島民の方々の通報……というよりは依頼に応じて現地に赴き、困ってる方々のお手伝いと言ったところですわね。現状、こちらに半数以上の人員を割いている状況が続いておりますわ」
「依頼……というのは具体的にどのようなものが多いんじゃ?」
「そうだな……。簡単に言えば、俺達が行ってるのは何でも屋だ。観光客の道案内に、ペット探し。壊れた農機や農具の修復、畑仕事に海岸での監視員や海難救助隊。もちろん、山岳救助もしていくつもりだ」
……それは、忙しそうじゃの。要は島中のあちらこちらで、文字通り何でもやるということか。海難の方に関しては、梅雨が居るからそこを軸に。山岳の方は……口田や障子辺りが軸になるのか? それ以外じゃと……巡回は飯田や常闇を軸に動いているのかも。その上で、道案内やら島民達の依頼で様々な雑務をこなす……と。じゃから十九人も出払っていた上に、人手が足りなそうにしていたのか。島中をほぼ全員で駆け回ってるなら、事務所が留守になるのも仕方ないところではある。まぁ、舎弟だけは何処にも行かずに留守番してたわけじゃけど。
とは言え、やはり無理があるやり方をしとるな。全員が出払ってしまった際、新たな依頼じゃったり……それこそ緊急の通報が入ったらどうするつもりなんじゃ? 全員各々が各地から現場に急行するのも良いんじゃが、それでは時間が掛かってしまう場合もあるじゃろう。
そう考えると、ながんが言っていたように何人かは常に事務書に居るべきじゃ。そこのところは、提言しておくとするか……。
「気になったんじゃけど、全員が出払ってる際の緊急時はどうするんじゃ? 例えば、悪党が出て来た……とか」
「そちらについては、一応爆豪さんが事務所に待機していますわ。ですがこの那歩島……、人口の少なさや地理関係から
「……なるほど?」
であれば、まぁ。悪党対策はしなくとも……良い、……とは言えんなぁ。全然言えぬ。それは、まっこと良くないと儂も思う。過去の発生件数がどうであれ、今この瞬間に悪党が何もしないとか、やって来ないとかでは無い訳で。次の瞬間には悪党が行動を起こしていても何らおかしくない。おおるまいとが弱体化してからと言うもの、日本の犯罪率は増えているからの。
そう考えると、悪党対策はしっかりと考えておいた方が良い。ながん曰く
「舎弟以外にも、待機要員を決めた方が良いのではないか? ほら、いつどんな悪党が襲って来るか分からないんじゃから」
「うむ……。それは、確かに一理あるな。しかしその場合、ヒーロー間の連絡・連携をどうするかが肝になる」
「全員が迅速に、そして確実に連絡を取る手段が必要になりそうですわ。となると、クロスバンド方式の無線が必要かと」
「……くろすばんど……?」
「携帯電話のように扱える無線機ということだ。機能は通話のみのスマートフォンと思ってくれれば良い。まぁ昨今の無線は、常々双方向で通話出来るものだがPTTタイプの無線も廃れては無いぞ!」
……なる……ほど……? 何じゃかよく分からないが、とにかく何とか言う方式の無線が有れば連絡には困らんようじゃ。そんな物は持ち合わせてはいないが、まぁ八百万が居るからの。そこは創って貰えば問題無さそうじゃ。
そうなってくると、後は緊急時の連携を決めた方が良いな。と言うか、いつ緊急事態が起きても良いように常日頃からどう連携するかを決めておいた方が良いじゃろう。
「八百万くん。頼ってすまないが、創れるか?」
「お任せください。無線でしたら、直ぐにでも全員分が創れますわ!」
「ありがたい。では、無線は後で全員に配布するとして……。次は連携か。廻道くん、何か案は?」
ううむ……。そこで儂に案を求められるのは、困るのぅ。儂はほら、基本的に一人でやってしまう類いの人間じゃ。いざ、連携について考えてみると……困ったことに何も思い浮かばん。じゃって、一人で動いてしまった方が早いんじゃもん。迷子にならなければ、の前提が付くが。
この方向音痴、直らんかのぅ? 母は直せると言っておったが、まるで直る気がしない。まぁ母は、時折いい加減な事を口走るしの。直らんのかもしれん。一生方向音痴扱いされるのは、とても嫌じゃけども。
「……そういうのは、儂には向かん。強いて言うなら、悪党が出て来てしまったら戦闘は全て儂一人でやる。そのつもりで考えてくれると、助かる」
幾らくらすめえと達が
それに、戦闘になるような事があれば儂が一人で戦った方が何かと手っ取り早い。もちろん約束通り殺人はしないから、どんな悪党が相手じゃとしても半殺し程度で留めるつもりじゃ。半殺しで済ませてやる。約束は守るものじゃからの。既に
「それは、……反対します。廻道さんだけが
「別に、儂は一人で良いんじゃけどなぁ……」
並大抵の悪党が相手なら、まず死ぬような事にはならん。そもそも手傷を負うこともないじゃろ。一つ目じゃったり、英雄の呪霊が相手ならば無傷では済まぬが。最悪、死に掛けることになる。が、それでも儂は死んだりせん。生きて帰ると決めているからの。それも、しっかり守り通す。
「今のA組に、廻道くんだけを戦わせようとする者は居ないさ。どうしたら連携が取れるか、或いは取り易いのか。それを、しっかり考えよう」
「……ううむ。そう言われてもじゃなぁ……」
連携。連携……か。ううむ。それを考えるのは、儂には難しい。ずっと一人でやって来たし、それは今生になっても変わらん。そもそも儂ひとりだけが根っからの呪術師で、となるとやはり一人で動くしかなかったわけで。
何より。子供達に悪党と戦わせるような真似は……。あぁ、もう。それはそれで良くないんじゃよな。子供の夢を邪魔したい程、儂は野暮ではない。間違ったものに成ろうとしてるなら、それは流石に止めるが。
……どうしたものかのぅ。儂としては、やはり戦闘は一人で行いたいものじゃ。子供達をわざわざ危険と向かい合わせたくないし、あれこれと考えず儂自身が楽しみたいからの。これを押し付けるのは……まぁそれはそれで良くないか。
信じてやる、べきなんじゃろうか? いやでも。でもでもじゃって。うぅむ……。
「あんまり考えさせちゃうと、頭から湯気が出ちゃうのです。円花ちゃんは結構な単細胞ですから」
「ぐえっ」
ああでもないこうでもないと悩んでいると、後ろから被身子に抱き付かれた。じゃから急に抱き付くのはじゃな、危ないから止せと……。
「で、何を話し込んでるんですか? もうご飯が出来ましたよぉ」
「ん……っ。まぁ、その。緊急時の為の連絡とか連携についての」
こそばゆい。首筋に頬擦りをするのは……駄目とは言わんけど。然りげ無く腹や膝を撫で回すのは、せくはらじゃぞせくはら。まったくもぅ、すっかり遠慮しない奴に育ってしまった。いや、そう育ってもおかしくないぐらい甘やかして来たのは、儂なんじゃけども。
「緊急時、ですか? それなら簡単ですよぉ。飯田くんが走り回って常闇くんや爆豪くんが飛び回れば良いのです」
「それは……まぁそうかもしれんが」
「円花ちゃんは心配性なのです。一緒にヒーローするんですから、そこはある程度信頼してあげないとみんなの為になりませんよ?」
「……うぅむ……」
それは、その通りかもしれんが。心配性云々は置いといて、被身子がさらっと出して来た案は悪いものではない。常闇と舎弟なら空から現場に急行出来るし、飯田は足が速いから何処に居ようと他の連中と比べたら直ぐにでも駆け付けられる。
……って。何じゃ。八百万も飯田も、微笑みながら儂を見て。何か言いたいなら、口に出せ口に。
「まさかこうして、廻道さんとヒーロー活動についてお話出来る時が来るなんて。私は嬉しく思いますわ」
「……そうだな。廻道くんは、一人で決めてしまうところがある。もっと頼ってくれたまえ! 友達だろう!?」
え、えぇ……? そんな事で喜んどるのか、この二人は。別に喜ぶような事ではないじゃろ。
……あまり無かったかもしれん。うむ、思い返してみれば大して無かった気がする。緊急時は儂が勝手に決めていたし、その場では従って貰うことが多かった。授業では……あれか。殺人の是非以来はろくに関わってないしのぅ。だって弱いんじゃもん、こやつ等。まぁでも、これについては……素直に言うのは止めておくか。幾ら事実でも、流石に言ってはならん。と、思う。
まぁとにかく。こやつ等にはどうにも頼り難い。実力が云々以前に、儂の主義に反するからじゃ。子供は守るべきものじゃ。信頼すると言ってものぅ……。せめてもう少し……、いや後五十年ぐらい鍛錬してくれれば頼っても良いんじゃけど。もちろん、儂と同じだけ強いというのが前提になるが。
「どうします? 頼っちゃいます?」
どうしたものかと考えていると、被身子が囁いて来た。なお、せくはらは継続中じゃ。くすぐったいから、そろそろ止さぬか。たわけ。
「……頼れる筈が無かろう? 子供じゃぞ」
「ですよねぇ。そう言うと思ったのです。……でも、ヨリくん。そうやって過保護してると、みんなは成長しなくなっちゃいますよ?」
「儂が成長の機会を奪っている、と?」
「はい。何でもかんでも一人でやっちゃうなら、そうなりますねぇ。なので、こうしましょう」
……一理あるか。で、何を言い出すつもりじゃ貴様。せくはらを止めたと思ったら、隣に座りおって。おい、悪どい笑みを浮かべるな。
「特別に、円花ちゃんを貸してあげます。好きに振り回したら良いのです。そしたら、何だかんだ言う事を聞いてくれるので!」
こ、こやつ……。何を言ってるんじゃっ。まったく、急にいい加減な事を宣うのは良くないんじゃぞ? そういう所は流石に直した方が良いじゃろ。八百万も飯田も、目を丸くしてないで何とか言え。このまま被身子に流されるような真似はするな。でないと、こやつが際限無く調子に乗って……!
儂が! 大変! じゃっ!!
「……なるほど。振り回すのが肝……か。廻道くんの扱いに手慣れた渡我先輩がそう言うなら、そうなのだろう!」
「本人の意向を無視するのはどうかと思うのですが、廻道さんは頑固ですし……。そうなると、こちらも頑固になるしかない……のでしょうか」
いや、おい。乗るな、被身子の案に飛び乗ろうとするんじゃない。儂が大変になるじゃろ、儂がっ!
あぁ、もぅ! いつもこうじゃっ。被身子が何か宣って、結局はその通りになってしまう。別にこやつに振り回されること自体は嫌では無いんじゃけど、それはそれとして逆らわねばならん……! じゃってほら、被身子に任せっきりにしてしまうとそれこそ取り返しがつかないからの……!
「というわけで、廻道くん! 何か案があるのなら話したまえ!」
「未熟者な私達ですが、時には頼って欲しいと思いますのよ……?」
うぅむ……。ぐぬぬ……。解せぬ。これは、解せぬ……! 何故、子供を頼らなければならぬのか。そんな真似はしたくないんじゃけど? 流石に、勘弁してくれ。嫌なものは嫌じゃ。
そもそもじゃ。儂は被身子に振り回されるのが好きなのであって、誰に振り回されても良いなんてことはないんじゃけど?? まったく、その辺りを履き違えて貰っては困る。
……とは言え、じゃ。子供の頼みを聞かぬのは、それはそれで違うんじゃよなぁ。子供に懇願されたら、どうにも弱い。断ることも出来るんじゃけども、まぁ……。
はぁ。仕方ないのぅ。子供のわがままは聞いてやるものじゃ。儂に取っては被身子と呪術師としての活動の二つが最優先ではある。じゃからって子供を無下にするような真似は、しなくて良いならしたくない。なので。
「……緊急時の対策として、常闇と舎弟と儂を常に事務所に残しておけ。交代要員としては、飯田と緑谷が望ましい。ただ現状、人手不足なんじゃろ? そちらも解消すべきじゃろうけど、儂一人が加わったところでのぅ……」
「あ、それなら大丈夫ですよぉ。トガと火伊那ちゃんの二人で、事務処理や統制を担当しますので! 明日からオペレーターのトガなのです!」
「えぇ……?」
いや、それは……。ううむ……。確かに被身子とながんが事務所ですべき仕事を手伝ってくれるのであれば、くらすめえと達全員が出払ったとしても問題ない。何なら今日までより、円滑に活動出来るかもしれん。しかし、しかしじゃなぁ。被身子は現在、呪術総監部で職場体験中の身じゃ。
「……お主、今は儂の補助監督じゃろ。良いのか?」
ひとまず被身子の手を引き、座らせてから耳打ちしてみる。すると、また悪どい笑みを浮かべおった。何ならさっきよりも悪どい。よし、分かった。何も言わなくても良い。どうせろくな事を宣うんじゃから、その笑顔のまま黙って―――。
「円花ちゃんの補助が私の職場体験ですよぉ。円花ちゃんがヒーロー活動するなら、それを補助するのがお仕事なのです。だから、セーフですセーフ」
言いおったわ。と言うか囁きおった。……まぁ確かに、それならば問題は無い……のか? 無いと思ってしまうことにする。被身子がその気になってる以上、儂が何を言ったって止まりはしないんじゃ。まったく、お陰で儂は大変じゃ。まぁでも、被身子が補助してくれるのであれば
「渡我先輩と筒美さんが手伝ってくれるのは歓迎だが……良いのだろうか? 問題になるのでは……!?」
「人手が三人も増えるのは、とてもありがたい限りなのですが……プロジェクトの要項からして許されるのかどうか……」
「まぁまぁ。そこは私が何とかしますよぉ。今のトガは公安で働いてるので、担当の人と掛け合ってみます。ね、円花ちゃん!」
「……まぁ、そういう事じゃ。恐らく問題無いじゃろう」
多分な。多分。
「公安!? 渡我先輩は公安で職場体験を……!?」
まぁ、驚くのも仕方ないのぅ。普段の被身子を見ていたら、とても公安を職場体験先として選ぶようには見えぬし。
とにかく、じゃ。くらすめえと達からの頼みを断る理由は、残念ながら特に無い。子供達を頼るつもりは無いが、少しは信用を置くべきなんじゃろうな。被身子が言っていたように、成長の機会を奪うわけにはいかんからの。
「被身子の事はともかくじゃ。儂はお主等に協力しよう。ひいろお活動はするし、その中ではまぁ……少しぐらい頼っても良い。
……それで良いじゃろ?」
「もちろんだとも!」
「はい! 共に切磋琢磨いたしましょう、廻道さん……!」
そんなこんなで。儂は今回、くらすめえと達と
あ。ヒーローズ:ライジング編となる産土神信仰ですが、これは長くなると思います。というのも、今回のお話は円花の今後に関わってくることなので。ヒーローズ:ライジングですからね!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ