待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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産土神信仰。英雄活動、そのいち

 

 

 

 

 

 くらすめえと達と、英雄(ひいろお)活動することになった。これは、産土神信仰の情報収集の為でもある。が、さっそく選択肢を間違えてしまったと後悔しとるところじゃ。ながんの言う通り、事務所に待機要員が居ないのはどうかと思いその辺りの事を提言してみた。そして、その改善としてくらすめえと達は事務所に人を残すようになった。……んじゃけども、儂は待機要員として立候補してしまってのぅ。こうなると、外に出れん。外に出れんと情報収集も何も無い。完全に間違えてしまった。いや、まぁ……緑谷と飯田が交代要員になってくれたから、二人に交代してもらった時に情報収集すれば良いのかもしれん。と言ってもそれは、明日の事じゃけどな。

 

 そんなこんなで、現在儂は……。

 

「はい。こちら雄英ヒーロー事務所なのです。何かありました? ……はい、農機のバッテリーが上がったから見て欲しい……ですか? でしたら適任のヒーローを派遣しますので」

 

 電話番をする被身子の膝上で、置物になっている。ぬいぐるみか何かと勘違いされたかのような扱いをされているのぅ。時折、思い出したかのようにせくはらしてくるんじゃけども。酷い時は、電話中にも関わらず接吻(きす)してくるし。それでも電話番の仕事じゃったり、ぱそこんを使った事務処理はしっかりとこなしているんじゃけどな。

 

「チャージズマ。バッテリーが上がったそうだ。今やってる事が終わったら、西地区の松田さんの所に向かってくれ」

『またかよ!? そろそろ新しいのに買い替えろって……!』

「まぁそう言うな。これはアンタにしか出来ない」

『そ、そういう事ならしゃーねーなぁ!』

 

 ながんは、島民の依頼内容から人員の割り振りをしておる。おぺれぇたぁ、とか言う役割らしい。元・英雄(ひいろお)じゃからか、その辺の勝手は分かっているようじゃ。各員が何処に居るのかを把握した上で、しっかりと現場に人を派遣しているの。もしかすると昨日までと比べたら、円滑に英雄(ひいろお)活動を進められているのかもしれん。この辺りの手腕を、くらすめえと達は見習った方が良いじゃろう。

 ……にしても、暇じゃ。待機していると、やる事が無い。舎弟は和室で寝転んでいるし、常闇は……ぱそこんで昨日までの事務処理を行っておる。時折呻き声が聞こえてくるから、苦戦しとるようじゃ。儂も何かしたいんじゃが、被身子が離してくれないから身動き出来ん。このままじゃと、今日一日が待機しているだけで終わってしまいそうじゃ。それは避けたいところじゃけど、ぱそこんを触ろうとすると被身子や常闇に止められるからのぅ。触らねば覚えられんと思うんじゃけど、必死になって止められるから触ることが出来ん。生涯、ぱそこんを触らせては貰えなさそうじゃ。練習すら、させて貰えない。お陰で、儂はろぉま字入力すら出来んままじゃ……。

 

 また、電話が鳴り響いた。直後、被身子が受話器を取った。って、こら。首筋を撫でるな、肩を擽るなっ。

 

「はい。こちら雄英ヒーロー事務所です。……えぇ、はい。北区の新藤さんですね? それでしたら適任のヒーローを派遣しますので、はい。……はい、では失礼します。

 ……火伊那ちゃん、飼い犬が行方不明だそうです。口田くんって空いてます?」

「今ちょうど、インコの引き渡しが完了したそうだ。アニマ、次は迷子の飼い犬だ。ひとまず、北区の新藤さんの家に向かってくれ」

『は、はい……! 直ぐ行きます……!』

 

 うぅむ……。円滑、じゃの……。被身子とながんは、自分の仕事を円滑にこなしておる。すっかり被身子の膝上で置物になってしまった儂は、何をすれば良いのやら。このまま置物になっているのは、流石に良くないと思う。思っては居る。しかしのぅ、立ち上がろうとすると腰に回った被身子の腕が儂を抱き寄せるんじゃよなぁ。そうじゃ、被身子の代わりに受話器を取るのはどうじゃろう? ほら、そのくらいなら儂にも出来るし。

 なんて思っていたら、また電話が鳴り始めた。ので、受話器に手を伸ばしてみる。……が。

 

「はい。こちら雄英ヒーロー事務所なのです」

 

 横から、と言うか後ろから掠め取られてしまった。どうやら、儂は受話器を取ることも許されないらしい。待機も活動の内じゃと分かっていても、この暇はどうにも堪え難い。何か、何か出来ることは無いのか? そう、被身子の膝上に押え付けられたまま出来る事は……!

 

 ……無いか、流石に。仕方ない、このまま交代の時間まで被身子の膝上で大人しくしていよう。

 

「はい、分かりましたぁ。直ぐにヒーローを派遣するのです。では、失礼します。

 火伊那ちゃん火伊那ちゃん、今度は東区の皆基さんがギックリ腰で動けないから人手が欲しいって」

「どの皆基さんだ?」

「幸行って言ってましたよぉ」

「分かった。インゲニウム、東区の皆基幸行さんのお宅まで至急向かってくれ。ギックリ腰で動けないそうだ」

『了解した!! 直ぐ急行する!!』

「安全走行で、迅速にな」

 

 ながんはそつなく、おぺれぇたぁ……をこなしている。無線機を片手にぱそこんと向かい合って、儂のくらすめえと達に指示を飛ばしつつ軽快にきぃぼぉどを叩いておるの。何処か様になっているような気がする。かつてのこやつは、こういう形でも活動してたんじゃろうなぁ。

 

「んーーっ、よし。休憩しましょう! トガは休憩するのです!」

「分かった。じゃあ渡我、先に三十分休憩してきてくれ。ツクヨミ、手が空いてるなら渡我の代わりに電話対応を頼む」

「承知した。渡我先輩、代わります」

「はい、じゃあお任せするのです」

「儂は?」

「円花ちゃんは私と休憩ですよぉ。ほら、一緒にあっち行きましょう!」

 

 えぇ……? 儂、今日は何もしてないんじゃけど? ただ被身子の膝上に座らされていただけじゃ。なのに休憩とは……??

 

 ……まぁ、良いか。別にながんも駄目とは言ってないしの。

 

 取り敢えず、被身子の膝上から退いてみる。今度は抱き寄せられることがなかった。今は……午前十時になるところか。なら、半頃まで休憩じゃの。その間、被身子を労るとしよう。嘆かわしい事に、儂が出来るのはそれぐらいじゃからの。

 被身子が椅子から立ち上がり、少しふらつきながら儂の手を取った。とっさに支えてやると、苦笑いを浮かべておる。こやつさては……足が痺れたな……?

 

「っと、とと。足が痺れちゃいました」

「儂を膝上に乗せたままにしとくからじゃ、まったく……」

 

 仕方ないから、支えになるとしよう。取り敢えず休憩じゃ、休憩。まさか英雄(ひいろお)活動の初日が、ここまで退屈になるとは思わなかった。これは……どうにかした方が良いかもしれんの。今日の夕方頃にでも、飯田や八百万に提案してみるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んん〜〜っ。……はぁ、良い眺めなのです……!」

 

 被身子が休憩場所として選んだのは、いおぎ荘の屋上じゃった。座り仕事で凝り固まった体を解しつつ、大きく息を吸い込んだ被身子は目の前の風景にご満悦のようじゃ。まぁ、確かに景色は良い。この建物は、島の中でも高い位置にあるのじゃろう。眼下には住宅や畑が並び、遠くには陽の光で輝く海が見える。上を見上げれば、澄んだ青空が何処までも続いておるのぅ。海の方から流れてくる風が、頬を叩く。もう少し弱まってくれんかの、この風。暑さを紛らわせてくれるのは良いんじゃけど、前髪が暴れてしまうのがな……。

 

「……お疲れ。電話番は大変じゃったろ?」

「くたくたなのでたっぷり愛でてくださいっ!」

「おぐっ」

 

 思いっきり抱き付かれた。正面から、勢い良く。危うく倒れるところじゃったが、何とか支えられた。慌てて呪力強化する羽目になってしまった、まぁ良しとしよう。

 

「すまん。要らん負担を掛けてしまってるの……」

「良いんですよぉ。したくてしてる事ですし。んんぅ〜〜〜っっ」

「ぷえっ」

 

 今度は力強く、そして遠慮なく頬擦りされた。数時間とはいえ慣れない事をして、疲れているようじゃ。頭や背中を撫でてやると、ますます体重を預けて来おる。ので、押し倒されないように少し気を付ける。何とか姿勢を保たねば。でないと、次の瞬間には床に背中や後頭部を打ち付けることになってしまう。

 いや別に、押し倒されることが嫌なわけでは無いぞ? ただほら、固い床に押し倒されてしまうと被身子じゃって危ないからの。下手に手をぶつけて怪我をしたら、それこそ大変じゃし。

 

「……っはあ……。円花ちゃんの匂いがします……♡ ちょっと汗の匂い……♡」

「……へんたい。何で興奮しとるんじゃ、たわけ」

「好きな人の匂いって、結構中毒性ありますよねぇ。落ち着くっていうか……すんすん……」

「あまり嗅ぐな。気恥ずかしいじゃろ」

 

 ずっと冷房の利いた室内に居たとはいえ、今朝は宿からここまで歩いてきたんじゃ。この島の気温は冬のくせに夏と変わりないから、当然汗はかいている。じゃから、わざわざ匂いを嗅がれるのは……その。気になるじゃろ? 汗の臭いとか、そういうのが。別に特別臭ってたりはしないと思うんじゃけど、気になるものは気になる。

 仕返しに、儂も被身子の匂いを嗅いでみる。……変な匂いはしないの。いつも通りじゃ、いつも通り。

 

「んーーっ!」

「ぐぬ……。おい、被身子……っ!」

 

 ぐえぇっ。背中打った。無理矢理押し倒すんじゃない。儂が変に踏ん張ったりしてたら危ないじゃろ、まったく。

 

「んふふ。直ぐ押し倒されちゃうんですから。トガ以外にこんな事されたら、ちゃんと嫌がらなきゃ駄目ですよ?」

「お主以外にこんな真似は許さんが?」

「許したら大問題なのです。浮気です浮気」

「誰がするか。お主こそ、儂以外に押し倒されたら浮気じゃからな??」

 

 ……何か、頭の悪い会話をしている気がするの……。嫌とは言わんが、どうかとは思う。

 と言うかじゃな? もしやこやつ、休憩中はずっとこうしているつもりか? それで休憩になるのなら儂は構わんけど、何と言うかこのままじゃと……。

 

「あむっ」

「ん……っ」

 

 ほら、首を噛んで来た。甘噛みじゃけども。何じゃもぅ、今日は随分と甘えて来おって。そんなに疲れてるのか? もしかすると……電話対応は被身子とながんの二人では手が足りないのかもしれん。実際、ひっきりなしに電話が鳴っていたからの。

 ……そうじゃ、休憩が終わったら常闇と儂も電話対応するとしよう。そうしよう。被身子とながんはあくまで手伝いじゃからな。頼りっぱなしにするのは良くない。

 

「んっ、ちゅ……っ♡」

「んん……っ。こ、こら被身子……!」

「んーーっ。ちゅっ、ちゅっ」

「んぁ……」

 

 んん……っ。何なんじゃ、もぅ。さっきから首を噛んだり吸ったり。もしや、血が吸いたいのか?

 

 ……。……仕方ないのぅ。少しだけじゃぞ? 少しだけ、なんじゃからな……??

 

 

 

 

 

 








三人称による補完は要りますか?

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