待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
情報収集の為に
そんなこんなで午前中を被身子の膝上で過ごし、昼休みへ。被身子が手抜きと称して作ってくれた
「はーーっ、午前は終わり。ひとまず休憩しないとね……」
「うん、お疲れ様。耳郎さんに麗日さん。色々手伝ってくれて助かったよ……!」
「ええよええよ。私達もデクくんに手伝って貰ったし、そこはお互い様って事で」
「んん゛っ゛っ゛」
和気藹々と話してる中、緑谷は麗日の笑顔を前に変な面になった。こやつ、麗日と話してるとたまにこうなるんじゃよな。それはそれとして、緑谷。何故お主は泥塗れになっとるんじゃ? 確かこやつは農作業を手伝ってた筈じゃけど……さては田んぼにでも落ちたか?
「渡我先輩も筒美さんも、お疲れ様です。二人が手伝ってくれて、凄い助かってる」
「事務所に統制がずっと居てくれると、グッと変わるもんやね。昨日より上手く立ち回れた気がする……!」
「将来事務所を開くんだったら、ヒーローだけじゃなくって事務職員も必要。あ、でもレディ・ナ……筒美さんみたいに現場を知ってる人にやってもらった方が良いのかな? 事務職も出来て現場でも働ける、そんな両刀っぽい人材の確保は流石に難しいか? なら、自分で両方出来るようになるのが良いのかも……?」
「デクくん、将来は事務所立ち上げるん? 良いね!」
「へっ!? あ、いやそれはどうか分んないけどそういう可能性も考慮に入れて置きたいと言うか、行く行くはオールマイトみたいに事務所を構えられたらなって思わなくもないって言うか……!」
「緑谷の事務所かぁ……。行く宛無かったら、雇って貰おうかな?」
「えっ!? い、いやほんと漠然と思い浮かべただけだからまだ事務所を構えるとかそういうのはもっと先にならないと……!?」
ううむ、騒々しい奴等め。くらすめえと達は、数人も居ればいつもこうな気がするのぅ。まぁそれはそれとして、緑谷が立ち上げる事務所か。将来、
……まぁ。緑谷がおおるまいとのように活動するのは、遠い未来の話な気がするが。
それはさておき。緑谷が帰ってきたんじゃ。午後は待機を代わって貰って、儂も外に出るとしよう。人助けに興味は持てぬが、情報収集の為には島民と関わらなければならん。上手く友好関係を築けるかは分からぬところじゃが、やるしかない。島中を動き回って居れば、海辺の祠が見付かるかもしれないしの。
「緑谷、午後は代わってくれ。儂も動きたい」
「うん、交代するね。……でも廻道さん、大丈夫……じゃないよね……?」
「は? 何が?」
「そうですねぇ。円花ちゃんを一人で出歩かせるのは、絶対駄目なのです。迷子になっちゃうので!」
「深淵を彷徨う悪鬼羅刹」
「止めさせた方が良い。行方不明になるからな」
「き、貴様等……!」
酷い言われようじゃ。儂が方向音痴であることは、認める。確かに一人で外に出ようものなら、島中を何時間彷徨うことになるか分かったものじゃない。しかし、それを理由に何もさせて貰えないのは困るんじゃ。このまま待機を続けていても、任務が何一つ進まない。かと言って、ながんを連れ出して動き回るのは……それはそれで問題かもしれん。
現状、くらすめえと達はながんの指揮下で
「廻道を外に出すなら、案内役が要るよね。ウチと麗日でやる?」
「そうやね。それしか無いかもしれへん……」
「私も付いて行きます!」
「いや、渡我がここから離れたら事務所が機能しなくなる。私が付いて行こう」
「筒美さんが離れても同じ事かと。廻道にはA組で案内役を付けよう。でないと、A組総出の大捜索になるのは確実……」
ぐぬぬ……! 好き勝手に言いおって……!! 儂じゃって、迷いたくて迷ってるわけじゃないんじゃけど!? 気が付けば迷子になってるだけで、自ら迷おうとしてるわけじゃないんじゃ!
くそっ、こうなったら一人で出歩いても大丈夫じゃと思わせるしかないのぅ……! 今に見てろよ貴様等ぁ……っ。
◆
儂を盛大に方向音痴扱いした後で、緑谷と麗日と耳郎の三人は昼休みに入った。舎弟は喧しくなるのが嫌じゃったのか、気が付いたら一階から姿を消しておったわ。常闇もそろそろ飯田が戻って来るとのことで、一足早く飛んで行ったわ。なので今、事務所の一階には儂等三人しかおらん。現状真っ先に何とかしなければならん事が有るので、その為に七山に連絡を入れておく。
「七山、ながんの拘束を外してくれ」
『……はいそうですか。と言って外すわけには行きません。それには正当な理由と状況が必要です』
「今回の任務、ややこしくての。情報収集の為にひいろお活動を始めたんじゃけど、ながんと別行動したい」
『貴女がヒーロー活動、ですか……。そうですか、では距離制限の方はこちらで一旦無効化させて貰います』
「……」
『どうかしましたか?』
「いや、やけにすんなりと行くなと……」
儂としては、何かと理由を付けて却下されると思ってたんじゃけど。なのにあっさりと話が通って、つい困惑してしまう。何か裏でも有るんじゃないかと勘繰ってしまいそうになるが、まぁ外してくれるのであれば何でも良いか……。
『特級である貴女がややこしく思うということは、それなりに良くない状況だと判断しただけですよ。それに、今日まで彼女は模範的に過ごしてきましたからこのくらいの融通は利きます。但し、那歩島に居る間だけですよ』
「そうか、助かる。……ありがとう」
『礼には及びません。個性使用の方は引き続き禁止させて貰います。そちらについては、余程の緊急事態でなければ外せない決まりです。……あぁそれと、壊したりしたら即座に信号が送信されて警察やヒーローがそちらに向かうことになりますので決して壊さないように。衛星通信ですから、電波を絶った程度ではバレバレですから』
「相分かった。また何か有れば連絡する。通話終わり!」
忠告された事は覚えておくとして、ひとまず要件は済んだ。電話を切ると、儂の腕輪から何か音が鳴った。ながんの腕輪からもじゃ。多分じゃけど、距離制限の機能が止まったんじゃろう。これでながんと離れても、ながんに電流が流れることは無さそうじゃ。個性の方は引き続き使えないままのようじゃが、まぁ必要になる事は無いじゃろ。
「これで離れても大丈夫じゃな」
「……そうだな。アンタこそ、良いのか?」
「何が?」
「これで私は自由の身だ。その気になれば逃げ出せるし、渡我を人質に取ってアンタを従わせようとするかもしれない」
「そんな真似する阿呆なら、そもそも秘匿釈放なんてされとらんじゃろ。安心しろ、貴様が被身子に手を出したら儂が殺してやる」
ながんが何やら言っているが、こやつにその気が無いことは見てれば分かる。そもそもこやつもお人好しで、生真面目の部類じゃからの。擦れてる所はあっても、根が悪人となった訳ではない。もし悪人じゃったなら、真面目に
「……アンタも、大概お人好しだね」
「そうか? 被身子を見てると我慢するのが馬鹿らしいから、我慢はしてないだけじゃよ。がははは!」
「笑うところか……? まったく……」
何はともあれ、ながんは儂から離れて行動出来るようになった。これで何も気にせず情報収集と、
「えいっ」
「んむっ」
午後の事を考えていると、被身子に下から頬を摘まれた。ので、被身子の頬を摘み返してみる。何じゃもぅ、無視するなとでも言いたいのか? 別にそうしたつもりは無いが……。まったく、甘えたがりめ。昼休みは十数分しかないが、その間は甘やかしてやるとしよう。ほれほれ、ここが良いのか? それともこっちか?? まっこと、愛い奴め……!
ナガン、少し自由の身へ。次回から本格的にヒーロー活動回ですね……。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ