待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
被身子は、もう休むべきじゃと儂は思うんじゃ。いや……何から何まで面倒を見て貰ってるのは、儂なんじゃけど。
とにかく、もっと休んでも良いと思う。炊事に洗濯、掃除に勉強。家の事をやってくれるのは、ありがたい。儂には出来ぬし、父も母も共働きじゃからな。時折勉強を見てくれるのもありがたく思っとる。日々精力的に、笑顔で元気に動き回って……そんなこやつに頼りっぱなしの現状は良くないのじゃと、儂は今日突き付けられた。
被身子が熱を出した。医者曰く、疲れていて抵抗力が落ちたそうじゃ。少し、過労気味らしい。
何をやっとるんじゃろうな儂は。ずっとこやつの側に居ながら、疲れていることに気付けなかった。
何でもかんでも被身子に頼るのは良くないの。こんな風に苦しませる為に、側に置いてるわけじゃない。単純に、儂が笑っていて欲しいと思ってるからじゃ。
なのに、今日。被身子は熱を出して寝込んでいる。
情けない。まったく情けない。今日ほど己を恨んだのは、今生では初めてかもしれん。
「うぅ……。ごめん、なさい……。すぐ治しますから……」
「謝るな。こうなるまで気付かなかった儂が悪い」
「でもぉ……」
「良い。治るまで大人しく寝ておれ。それと、急がなくて良い」
こんなにも弱り切っている被身子を見るのは……小学生の頃以来か。あの時は大泣きしておったの。それが腹立たしくて、馬鹿もやった。反省はしておるが後悔はしておらん。
「……でも……」
「病人は何も心配せずに寝ておれば良い。治すことだけに集中しておれ」
「うぅ……、嫌です……」
「おい、ちゃんと寝ておれ」
熱で朦朧としているくせに、何で起きようとするんじゃこやつ。何もせんで寝ておれ。
起きようとする被身子を押さえ込むと、思ったより強い力で抵抗しよる。何がそんなに気に食わないんじゃ。
「でも……だって……。私、わたし……頑張らないと……。勉強も……家事も……」
「頑張りすぎじゃ。休め」
「だって、だって……そうしないと……ここに居られない……」
……。何を言っとるんじゃ、こやつは。別に頑張らなくたって、ここに居て良いじゃろうが。
「円花ちゃんも、輪廻ちゃんも……おじさんも、良くしてくれて……だからわたし……頑張らない、と……」
「……何を言っておる」
「だって、だって……また……見放されちゃう……。ヤだ……ヤだ……っ」
……そうか。あんなでも、親は親。嫌っていようとも、親から見放されるのは良い気分では無いようじゃ。あの時こやつが親に言われた言葉は、まだこやつの胸の内に残っておるのだな。
だから、頑張っていたんじゃろう。ここに居たいから。
だから、倒れてしまったのじゃろう。頑張り過ぎたから。
「……たわけ。何を言っとるんじゃ貴様は」
情けない。何でこやつの奥底に有るものを気付かなかった。気付いてやれなかった。その結果がこれじゃ。真に情けない。
儂はそれを、知っていた筈なのに。親から見放された子がどうなるか、誰よりも知っていたのに。
何で被身子は、儂とは違うと思った?
……ひとまず、安心させてやるのが先じゃな。こんな状態じゃ、熱を引かせるどころじゃない。
今日は、ずっと側に居よう。幾らでも甘えさせて、安心して貰わないとな。ここに居て良いんだって、思わせてやらねば。
もう被身子は押さえ込まん。代わりに、同じ布団の中に潜り込むことにした。それから、少し苦しいかもしれんが頭を抱き寄せてやる。
……熱い。いつもは温かいのに、今は熱い。こんなに熱を出して。こんなになるまで、張り詰めて……。
ああ、もう。何でこんな時に、愛おしいなんて気持ちが出てくるのか。
「見放さんよ。ずっと側に居る。ずっと、大切にする。いつかお主が、何も不安に思わなくなるまで。何も怖くなくなるまで……側に居る」
「……っ」
「離さんからな。嫌がっても離さんからな。前にも言うたじゃろ? 儂の側で笑ってれば良いんじゃよお主は。
儂の為に笑え。笑う為に邪魔なものがあるなら、全部儂がどかすから」
抱き締めて、頭を撫でて……儂の中に有るこやつへの気持ちを、最大限注ぎ込むように。
こんな事しかしてやれない。こんな事しか、出来る事が無い。何が呪術師じゃ。何が許嫁じゃ。反吐が出る。
「……愛してる。だから、怖がらなくて良い。泣かなくて良い。お主は……、被身子はここに居て良いんじゃよ」
だから。早く元気になってくれ。弱ってるお主なんて、見たくない。笑っていて欲しい。その為なら、儂は……。
◆
「ん……」
いかん。寝ておった。被身子を抱き締めたまま寝ておった。何をしておるんじゃ儂は。
枕元に置かれた時計を見ると、もう昼過ぎじゃ。こやつに何か食べさせて……薬を飲まさねば。
「……」
「ああ、すまんな。寝ておった。調子は?」
「……んぅ」
良くは、無さそうじゃ。まだ顔が赤いし、熱い。大分寝汗をかいたようで、寝間着が濡れておる。このままにしておくのは良くないか。一度着替えさせて……いやそれよりも、お湯を用意して体を拭かせよう。着替えはその後じゃ。
体を起こし、動こうとすると手を掴まれた。指を絡めて、離そうとせん。これでは動けん。
「食事や着替えを持ってくるから、少し離してくれんか?」
「……ヤ」
「直ぐ戻るから。居なくなったりせんよ」
「……でもぉ……」
「そんなに不安そうにするな。ちょいと離れるだけじゃから」
「……ヤっ」
離してくれぬ。困ったのぅ。飲むものを飲まなければ、良くならないじゃろうに。このまま側に居ても良いが、夜まで誰も帰って来ない。母も父も仕事中じゃ。直ぐには頼れぬ。
「被身子。少しだけじゃから」
「……ヤぁっ。一緒が良い……っ」
仕方ないの。こうなったら、再び寝静まるまで添い寝しよう。で、被身子が寝たら起こさないように抜け出して何か食べれそうな物と薬を取ってこよう。あと着替えとお湯と、手拭い。
もう一度頭を抱き寄せてやって、また撫でる。やはり熱いの。早く熱が引いてくれると良いんじゃが……。
結局、被身子の熱が引いたのは翌朝じゃ。元気になったようで安心……したのも束の間。こやつ、体を起こすなりまた顔を赤くしよった。何じゃ何じゃ、まだ治っとらんようじゃの。
額に額を当てて体温を確かめると……ううむ。まだ少し熱いの。お主、今日も安静にしておれ。家事? 儂の飯? そんなのはもっと調子が良くなってからで構わん。寝ておれ寝ておれ。
もう、こやつが倒れんようにしてやらんとな。その為には何から始めるか。
そうじゃなあ……。取り敢えず、掃除から始めよう。あと病人食ぐらいは作れるようにならんとな。何より、労ってやらねばな。
こやつの頑張りが報われるように。
……幾らでも、甘やかしてやるとしようかのぅ。
次回はUSJ襲撃です。文字数多くなる……かも。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ