待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
南区の高台……というよりは丘の上にある公園にやって来た。そこに、迷子となった子供が居るかもしれんからの。もしも迷子の子供じゃなかったとしても、話を聞くことは出来る。少なくとも、どこぞの杖持ち老婆よりは話が通じるじゃろう。大人達が子供に変な教えをしていなければ、の話じゃけども。
丘の上の公園には、遊具が幾つか置いてある。大きな滑り台とか、砂場とか。ざっと全体を見渡しても、子供の姿は……有るな。滑り台の脇に一人、それと上の方に一人居る。上の方に居る子供は、儂等の様子を窺っているようじゃの。もっとも、儂と目が合うなり奥の方へと隠れてしまったが。そう言えば、常闇の姿が見えぬの? あやつは確か、儂や緑谷より早くこの公園に向かっていた筈じゃが……。それに、耳郎の姿も無い。此処に来るまで儂と緑谷は走ったわけじゃけど、もしかして置き去りにしてしまったか?
まぁ……良いか。まずは迷子かもしれん子供が先じゃ。
「島乃活真くん……だよね?」
「え……? お兄ちゃん、何でぼくのこと知ってるの……? それに、もしかしてヒーロー……!?」
「うん。ヒーローだよ! 活真くんのお姉さんに頼まれて、みんなで探してたんだよ? 見付けられて良かったぁ……!」
「ぼくを、探しに……?」
どうやら、迷子は見つかったようじゃ。この幼子は……えりと同じぐらいの年頃に見える。見たところ、怪我はしとらん。元気そうじゃから、心配する必要は無いじゃろう。迷子の相手は緑谷に任せるとして、儂はくらすめえと達に迷子を見付けたと通達しておくか。無線は便利じゃの、
「迷子は見付けた。後は儂等でやっておくから、他の者は元の仕事に戻って良い」
『おー、見付かったのか! お疲れブラッディ!』
『いや待てレッド、迷子が迷子を見付けたみたいになってたりして……』
「たわけ。儂は迷子になっとらんぞ」
『何だって!? 廻道くん、いつの間に方向音痴を克服して……!?』
ぅ、うるさい……! 喧しいっ。勝手に驚いて、大声を上げるなっ。無線機は耳に付けてるんじゃから、大声を出されたら耳が痛いじゃろ……! それから、方向音痴を克服などしてないが!? 出来るものなら儂だってしたいところではあるが、出来るかどうかは怪しい。何となく直らん気がするんじゃ。前世でも直らなかったわけじゃし。
「おっそーーい!! 遅すぎる! 迷子探しに三十分以上もかかるって、どういうこと!?」
ぬおっ。滑り台の上から女児が滑って来たと思ったら、物凄い剣幕で詰め寄って来おった。元気なのは良いことじゃが、何故緑谷に詰め寄るのか。どうやら腹が立っているようじゃの。腹でも空いてるのか? どれ、被身子におやつとして渡されていた焼き菓子でも分けてやるか。今朝、事務所に着くなり焼いてたやつじゃの。ええっと、確か懐に……。お、あったあった。
「どうどう、腹でも空いてるのか? ほら、くっきぃならあるぞ?」
「空いてないけど!? 知らない人からお菓子を貰っちゃ駄目って常識も知らないの!? あの雄英ヒーロー科のくせに!?」
……まぁ、確かに知らん奴からお菓子を貰うのは良くないが。何が混入されてるかも分からんしの。しかしじゃな、これは被身子が作ったおやつで別に変なものは入っとらんのじゃが。
で。この女児は何故、儂等を値踏みするように見ているのか。歳の割には気が強い……というより、年相応に小生意気なだけか。可愛らしいものじゃの。がははは!
「あなた達、名前は!?」
「で、デクです……」
いや、緑谷出久じゃろ。そこで
なら、儂も同じように名乗っておくか。
「頼皆じゃ。それで、お主は?」
「活真のお姉ちゃんの、真幌!」
「じゃあ、弟さんを見付けてたんだね……。良かったぁ……」
「ちっとも良くない! 迷子を見付けるのに時間かけ過ぎ! これなら前に居たおじいちゃんヒーローとか、赤鬼さまの方がよっぽど良いわ! それに赤鬼さまはいつも家に―――」
「お、お姉ちゃん……、赤鬼さまのことは秘密だって……」
「あっ、そうだった! 忘れなさい! 今のは忘れなさい!!」
真幌が物凄い勢いで忘れろと詰め寄ってくるが、それは無理じゃの。その赤鬼を祓いに来たのが儂じゃし、見過ごすつもりは無い。が、この調子じゃと二人から話を聞くことは無理じゃろう。下手に聞き出そうとすれば、島民の反感を買うことになる。儂個人への反感ならば気にならんが、くらすめえと達や被身子を巻き込むのは良くない。とは言え、活真と真幌が貴重な情報源なのは確かで……。
……駄目じゃな。子供を利用するような真似は出来ぬ。そんな真似を、してたまるか。良い機会を逃すことになってしまうが、まぁ仕方ないの。
「頼皆、もしかして……」
「すまんが、子供に聞くような真似はせんよ。自分の足で探す」
「……うん。分かった」
ところで、何で緑谷は正座しとるんじゃ? 変な奴め。取り敢えず、迷子は見付けたんじゃ。この後は……保護者の居るところまで連れて行くのが良いじゃろう。この二人を引き渡すまでの間、中々騒々しくなりそうじゃ。と、思っていたら。
「今後はちゃんとヒーロー活動してよね! デク、ヨリミナ!」
「は、はい……以後、気を付けます……」
ううむ。低姿勢じゃのぅ。別に迷子自体は見付けたんじゃから、そこは堂々としてても良いとは思うが。あれか? 急に詰め寄られると駄目な類いの人間か貴様。思い返してみれば、そんな気がしないでもない。
ともかく。子供達を保護者の元にまで連れて行ってやろう。それが済んだら、取り敢えず島中の巡回でもしようかの。陸地の方を、昼間も一通り見て回りたい。夜には気付かぬことも有るかもしれぬし。
「じゃあ緑、……でく。二人を家か保護者の元まで送り届けるとしよう」
「あ、うん。そうだね……!」
「ヒーローの送られなくたってちゃんと帰れる! それに、お父さんは島に居ないから! 出稼ぎしてるの!」
「そ、そうなの……? じゃあ、せめてお家まで送らせて?」
「いらない!!」
「ん、んん……っ」
完全に拒絶されていると言うか、下に見られている気がしてならん。強気なのは良いんじゃけども、もう少しこう……。まぁ、このくらいの子供は生意気なぐらいが丁度良いと思わなくもないが。
それよりも、子供二人を残して出稼ぎとは。父親は何をやってるんじゃまったく。このくらいの子には、側に居てやるべきじゃろうに。そんなじゃから、真幌はこうなったのではないのか? どういう教育をしとるんじゃ、まったく。
「まぁそう言うな。見ての通り、でくは情けない奴じゃからの。色々教えてやってくれ」
「何でわたしが……! でも、お願いされたらしょーがないわね! わたしがヒーローが何たるかを教えてあげてもいいわよ!」
「うむ、頼んだ。真幌は良い子じゃの」
「当然でしょっ。ちゃんとお留守番出来るんだから!」
「うむ、偉い偉い。良い子じゃ良い子」
えりと比べたらかなり活発な子じゃけども、まぁ年相応に素直で背伸びがちじゃ。そう言う子供の扱いは、まぁ……隆之で慣れとる。あやつもこんな時期が有ったからのぅ。懐かしいものじゃ。何であんな生意気に育ってしまったのかは、謎じゃけど。別に甘やかしたつもりは無いんじゃけどなぁ……。
まぁ、とにかくじゃ。どうにか真幌の同意を得られたので、家まで送らなければな。
「じゃあ行くわよ、デクにヨリミナ! ほら、行くよ活真!」
「う、うん……。でもお姉ちゃん、ヒーローに教えられることなんて無いんじゃ……」
「何言ってるのっ。こーんなに情けないんだから、わたし達で教育してあげなきゃ!」
「え、えぇ……?」
活真は活真で、大変そうじゃの。姉がこうだと、気が休まらんかもしれん。真幌が事に対して真っ直ぐ突き進む姿勢は、何と言うか……うむ……。被身子を連想させるの。いや別に、あやつが子供のように見えてるとかそういうのではない。そういうのでは無いからな? 違うぞ?? ……って、誰に言い訳してるんじゃろうな、儂。
そもそも。儂からすれば被身子じゃって、まだまだ子供じゃ。子供扱いしたって間違いではない。そんなことより、先を歩き始めてしまった二人を見失わないようにしなければ。ここで見失ってしまったら、何の為に家まで送ると言ったのか分からなくなってしまう。
「……ヨリミナ。どう考えても、大丈夫じゃないよね……?」
「当たり前の事を聞くな。もしもの時は儂がやるから、お主は二人を連れて逃げろよ」
「分かった。二人を安全な所に避難させたら、僕も手伝うから」
「その時までに終わらせておくから、お主の出番は無いぞ」
しかし、まぁ。とんでもない事を知ってしまったの。あの呪霊、どうやら真幌や活真と暮らしているらしい。であれば、真幌がこうなのも納得出来る。じゃって、儂じゃったら際限無く甘やかすからの。赤鬼が儂と同じ考えを持っているかは分からぬが、その可能性は高い……気がする。
赤鬼がしている事を、儂はどうにも悪い事とは思えぬ。呪術師として祓いはするが、儂個人としては―――。
……いいや、何であれ呪霊は祓う。いちいち祓う理由など考えたりする必要は無い。何をしていようが呪霊は呪霊で、儂は呪術師じゃ。そこに意義も訳も、理由も要らん。呪霊を祓う。呪術師はその為だけに存在してるんじゃからな。その理から、儂が外れることは無い。
さぁ、気を引き締めなければな。これから、真幌と活真が住まう家に向かうんじゃ。つまりそれは、赤鬼の根城に踏み込むようなものじゃからな。海辺の祠とやらを見つけたかったが、見付けなくとも祓うことは出来るじゃろう。かつての自分の姿をした呪霊を祓うのは、何とも言えん気分じゃけどな。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ