待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
祓う。赤鬼は、此処で祓う。子供の前だろうが、知ったことか。こやつは今、舎弟に手を出した。それは許せん。許して良い事では無い……!
懐に跳び込み、足を踏み抜き固定する。それから拳を振り被ると、呪霊特有の紫色の血が儂に向かって放たれた。それを咄嗟に躱し、お返しに血を飛ばす。赤縛で赤鬼の体を縛り上げ、更なる抵抗は無視して拳を振るう。腹を、胸を、顎をそれぞれ殴り抜く!
手応えは、有る。が、それでも祓うには至らん。最後に全力で蹴り飛ばし、両手を叩き合わせる。と、同時。赤縛は破られた。だけではなく。今度は儂の周りに赤鬼の血が浮遊した。ので、両手はそのままにその場から跳び退く。
【貴様……! 何を!!】
「喧しい! 大人しく祓われとけ!!」
【断る!!】
着地すると、赤鬼が両手を叩き合わせた。だから何じゃっ。儂の方が速い!
「穿血」
【穿血】
同時。いや僅かに儂の方が早く、穿血を放つ。が、寸でのところで圧縮が間に合っていたらしい。赤鬼は儂の穿血に、穿血をぶつけて来た。赤い血と紫の血が激突し、お互いと混ざり合いながら弾け飛ぶ。ちっ、防がれたか。器用な真似をする……! じゃけど!
再び、距離を詰めに前へ跳ぶ。弾け合う血の中を突っ切って、もう一度赤鬼の懐に潜り込むっ。が、その時。
「ちっ!」
膝に迎え撃たれた。腕で防ぐことは出来たが、容易く押し返されてしまう。体格や体重では、向こうの方が上じゃ。姿勢が、少し崩れた。それを見逃さないと言わんばかりに、今度は苅祓が飛んで来た。それを同じく苅祓で迎撃すると、今度は赤鬼が距離を詰めてきた。拳が迫る。姿勢を低くして避けると、今度は蹴り。下からの蹴り上げに肘を振り下ろし、迎え撃つ。鈍い音が鳴り響く。儂の肘は弾かれたが、赤鬼の足も弾き返した。互いに姿勢が崩れたが、関係無い。
儂は再び苅祓を。赤鬼も、同じ考えのようじゃ。今度は、互いの血液が肩を切り裂く。肉が焼けたかのような感覚がある。これは、毒か……!
即座に
「よっ、こいせぇ!!」
もう一度! ぶん殴る!!
【ぐっ!】
腹を殴ると、赤鬼は更に姿勢を崩した。それは明確な隙じゃ。逃さん……!
両手を叩き合わせつつ、体外に血液を放出する。赤縛で更に体の自由を奪いつつ、穿血の準備を進めて行く。
「―――詰みじゃ」
【……!!】
今度こそ、その面を撃ち貫く……! くたばれ!!
「待って! 赤鬼さまをイジメないで……!!」
「っっ!?」
穿血を放とうとした、その時。儂と赤鬼の間に、真幌が割り込んで来た。咄嗟に狙いを外し、どうにか真幌に当てないよう軌道を逸らす。穿血は、真幌が被る帽子を吹き飛ばした。
肝が冷えた。危うく、子供を殺すところじゃった……!!
「おいっ、危ないじゃろっ! 何しとるんじゃ貴様は!!」
「ヨリミナこそ、赤鬼さまに何してるのよ!! 止めてよ!!」
「退いてろ! そやつは此処で……!」
「どかない!! 赤鬼さまをイジメないで!!」
おい、おいっ……! 何でここで真幌が割り込んで来るんじゃっ。幾らなんでも、邪魔をするでない! そもそも、虐めてなどおらんっ。この呪霊が舎弟に手を出したからには、もう祓うしか無いんじゃ。儂の目の前で、子供に傷を負わせたこやつが悪いんじゃこやつがっ。
【……退いてくれ。俺はそこの小僧を、殺す。お前に手を出した以上、見過ごせん】
「貴、様ぁ―――!」
誰を殺す、じゃって? そんな真似が出来ると思うな。儂の目の前で、子供を殺せると思うなよ……!
「ま、待って……! 赤鬼さまも、ヨリミナ姉ちゃんも……! 駄目だよ、ケンカしちゃ駄目っ」
今度は、活真まで割り込んで来た。おい、何なんじゃっ。止めようとするんじゃない。儂の手を掴むな。子供の手を、雑に振り払うような真似はしたくないんじゃけどっ?
「ご、ごめんなさい……! お姉ちゃん、止めれなくって……。そ、それで……ヒーローを、怖がらせて島から追い出すんだって……!」
「ちょっ、活真! それを言ったら……!」
【は?】
……。詳しい事情は、知らん。知らんが、どうやらこの場に真幌と活真が居て、舎弟と緑谷が居るのはこの姉弟の悪戯が原因……らしい。じゃけども、それは関係無い。事情がどうあれ、原因が何であれ。赤鬼は、舎弟に手を出した。掠り傷とは言え、怪我をさせたのは事実じゃ。それは見逃せん。大人に手を出す分には目を瞑ってやっても良いが、子供だけは駄目じゃ。絶対、許してなるものか……!
【……そうか。悪戯か。悪戯したんだな? 真幌】
「えっ、えっとぉ……そのぅ……」
【真幌。素直に謝るなら許してやるが?】
「……ご、ごめんなさい……っ! ちょっと怖がらせてやりたかっただけなのっ」
【俺に謝るな、ヒーローに謝れ。……すまない、手を出したのはこちらの早とちりだった】
……は? おい、そんな程度で儂が許すと思うのか? 早とちりの一言で済むんじゃったら、儂は早とちりで貴様を祓うが!?
それに、舎弟に向かって頭を下げたところで何の意味も無いじゃろっ。舎弟には、貴様の姿は見えてないんじゃ。
「……おい、クソチビ。こりゃどういう状況だ? 俺に闇討ちかました奴は……そこの呪霊か? あ゛?」
「うむ……。それはその通りじゃが……」
見えている……のか? いや、見えては居ないようじゃ。なのに、呪霊が何処に居るのかを何故か把握しているように見える。まぁ、それはどうでも良い。今、気にすることでは無い。そんなことより、今は……!
「ぶっっ殺す……! まさかガキが呪霊と結託してるなんてなぁ? てめえら、俺に手を出した事を後悔しやがれ!!」
「わぁああっ、ストップかっちゃん! 駄目だって!!」
「そのまま抑えてろ、でく。儂は赤鬼を祓う」
「だ、だめーーっ! 赤鬼さまに何もしないでったら!!」
「ヨリミナ姉ちゃん……! 謝るから許して……!」
再び赤鬼に近付こうとすると、合間に入った真幌と活真に縋り付かれた。小さな体で、何とかして儂を押し返そうと踏ん張っている。おい、頼むから退いてくれ。何で儂を止めようとするんじゃっ。
「だぁあっ、しがみつくんじゃねえ! そういう態度が昨今のガキの増長を……!!」
「だ、駄目だって! 呪霊はともかく、真幌ちゃんと活真くんに手を出しちゃ……!!」
「ヨリミナ姉ちゃん、赤鬼さまに何もしないで……! ぼ、僕達が謝るから……!」
「赤鬼さま、逃げて! イジメられちゃうから逃げてぇ!」
いや、もう……。何なんじゃこの状況は。何で儂は、子供二人に押し止められなければならないのか。悪いのは、そこに居る赤鬼じゃ。真幌と活真の悪戯が事の発端かもしれないが、それでもそこの呪霊が舎弟に手を出したのは事実じゃ。ならば、祓うしかない。儂の目の前で、子供に手を出したんじゃっ。絶対に、絶っっ対に許さん……!!
【……すまない。と、そこのヒーローに伝えてくれるか?】
「謝ったって許さんが? 貴様は、此処で祓う……!」
両手を叩き合わせる。今度こそ、外さない。その頭を撃ち抜いてくれる……!
【……せめて、子供の前では勘弁してくれ。怖がらせたくない。頼む】
「じゃから、此処で祓うと……!」
【なら、……仕方ない。……海辺の祠で待つ。俺を祓いたいなら、見付けることだ】
「は? おい、待て!!」
言うだけ言って、跳びおったわ。咄嗟に狙いを定め穿血を放つが、貫いたのは肩じゃ。その後で両手を振り払っても見たが、背中を切り裂いただけに過ぎん。それでも尚、赤鬼は体勢を崩すことなく着地し、再び跳んだ。今ならまだ追い付ける。まだ、祓うことが出来る! じゃけど……!
「ヨリミナ姉ちゃん、止めて!」
「止しなさいってばぁ!」
まだ、真幌と活真が儂の腰に抱き付いて離れようとしない。この状態では、追うにしても時間が掛かる。それでは見失ってしまう。
【二人を、子供達を頼む。お前なら任せられる】
喧しい……っ。誰が、貴様の頼みなんぞ聞くかっ。おいっ、逃げるな! この場で祓わせろっ。戻って来んか、貴様ぁ!!
……くそっ。姿を消しおった。また逃げられた……! 何が海辺の祠を探せ、じゃっ。近寄るなと言ったり探せと言ったり、面倒臭い奴め!
「てめっ、離せクソナード! 呪霊が逃げてんだろうが!」
「ひ、一人で追い掛けたら危ないよ! もう居なくなったんだから、それよりも真幌ちゃんと活真くんを家に送らないと……!」
「送るより先にやる事があんだろうが!! おいクソガキ共! てめえ等呪霊と結託してんなら、居所を教えろや!!
クソチビィ! てめえも呪霊逃してんじゃねえ! ちゃんとぶっ殺せ!!」
「ひっ!」
「に、逃げよ活真……! 走って!」
ぐ、ぬ……。それは、儂の不覚とするところじゃが……! しかし、じゃからって掌で爆破を起こしながら子供に近づこうとするなっ。貴様がそんな真似をするから、真幌と活真が逃げ出してしまったじゃろ! じゃけど、丁度良いっ。今からでも、赤鬼を追い掛けて……!!
「か、かっちゃん落ち着いてっ! 廻道さんも、迷子になっちゃうから!!」
ぐえっ。走り出そうとすると、緑谷に襟首を掴まれた。おいっ、舎弟を抑えるついでに儂を引っ掴むなっ! 追い掛けさせろっ、儂は今直ぐにでも赤鬼を祓いたいんじゃ! それを邪魔してくれるなっ! 離せっ、離さんか貴様ぁっ!!
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
-
要らん
-
良いから一人称で突っ走れ