待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

349 / 553
産土神信仰。悪党襲撃

 

 

 

 

 

 

 今現在、儂はだあくしゃどうに抱えられて空に居る。少し離れたところで、舎弟が速度を抑えて飛んでいる。だあくしゃどうに影響が出ないようにじゃ。

 先程有った真幌からの通報によると、漁港に悪党が出たらしい。なので、漁港に向かいつつ真幌を探す。真っ先に連絡して来たんじゃから、恐らくは漁港の近くに居るじゃろう。もしくは、何処か漁港を見れる場所じゃ。……高台、か? 確か公園が高台にあったの。そこに居るかもしれん。真っ先に漁港に向かいたくもあるが、真幌と活真の安否は確認しておきたい。最悪、途中で儂だけ置いて行って貰うか。子供の保護が最優先なのは確かじゃが、その場合漁港の悪党を放って置くことになってしまう。そしたら常闇と舎弟が向かってしまうの。それはそれで、良くない。

 って、おいおい。何処から煙が上がっておる。それも複数。火事か? いや、悪党の仕業で間違いなさそうじゃ。漁港の方からも煙は上がってるようじゃ。となると、複数犯か? 或いは何かの手段を用いて同時に煙が起きるような真似をしたのか。……爆弾、か?

 

 ……細かい事を考えるのは、後で良い。ひとまず、真幌の保護と悪党退治じゃ。事の真相は、引っ捕らえた悪党に聞き出せば済むからの。

 

『ツクヨミ、バグゴー。空から見た島全体の状況は?』

「漁港と、通信基地で爆発有り! 恐らく同時!」

「ついでに商店街の方でもボヤ騒ぎだ! 鳥頭! ボヤの方に行けや!」

『いや、ボヤじゃない。今、商店街で(ヴィラン)が出たと連絡が有った』

 

 ……何? それはまた、面倒この上ない。複数地点で悪党が暴れている……じゃと? ううむ、それは困る。儂の体は一つしか無いんじゃ。対応出来るのは、流石に一箇所のみ。そうなると問題なのは、くらすめえと達に二箇所は任せることになってしまう。それが嫌じゃ。子供達を悪党と戦わせるのは、儂の主義に反する。飛び出したのは間違いじゃったか……? いや、迅速に動かねばなるまい状況じゃったのは確かで。くそっ、面倒な事態になってきた……!

 

「だったら優先すべきは……!!」

「二手に分かれんぞ! てめえ等ガキ共探しとけや!」

「おい、待て舎弟! 何を勝手に……!」

「うるせえクソチビ! この期に及んで俺を守ろうとしてんじゃねえぞ!! (ヴィラン)なんざ、無傷でぶっ殺す!!」

 

 お、おい……っ。勝手に決めて、勝手に動くな……! 危ないじゃろ、たわけっ。あぁもう、勝手に別方向に飛びおって……!

 

「……頼皆、バクゴーを信じろ。俺達は守られなきゃいけない程、弱くない。大丈夫だ、必ずこの事態を乗り越えて見せる!」

 

 ……良くない。まっこと、良くない。何やら舎弟も常闇もその気になっているようじゃが、これは実戦じゃぞ。訓練とは違う。儂が相手でもない。悪党は手加減も容赦もしないんじゃ。負けたら死ぬんじゃぞ。なのに、子供だけで挑むじゃと……? そんなのは、論外じゃ論外っ。儂の主義に反する! ……じゃけど、この事態を儂一人で無事に解決する手段は無い。悪党が複数の場所に出ている以上、儂が対応出来るのは一つ。他の場所は、野放しにするか誰かに任せるしかないっ。でも、じゃからって……!

 

 あぁもうっ。くそっ!! 苦渋の選択じゃぞ、これは……!!

 

「全員聞け! 漁港は儂が行く! 他の部分は任せるが、危なくなったら直ぐに逃げろ! 間違っても誰一人死ぬなよ!!」

 

 無線を使って、全員に最低限の指示を出しておく。この際、多少の怪我は構わん。死にさえしなければ、それで良い。頼むから、全員生きて帰って来てくれ。それさえ果たしてくれれば、まだ気が楽じゃ。くらすめえと達が一人でも命を失えば、儂は堪えられん。

 

『ヨリミナこそ、無茶はしないでくれ! 独りで解決する、なんて真似はせず俺達を頼ってくれ!』

『頼りないかもしれませんが、それでも私達はヨリミナを目指して訓練して来たんですのよ。大丈夫、必ずやり遂げて見せますわ……!』

『少しは信用しろって。俺等、ヨリミナ程は強くは無いけど弱くもねーからさ!』

『私達に出来ることを、精一杯やるよ! 命は大事にね!』

 

 続々と、無線から声が聞こえてくる。これから起こり得る事に、意を決したかのような。儂にはそれが、堪らなく不安じゃ。やはり、無理じゃ。儂には出来そうにない。くらすめえと達を信じて送り出すことなど、とても……。

 

 じゃって、皆そう言って死んだんじゃ。儂の役に立とうとして、儂のように在ろうとして。誰も彼もが、死んでしまった。また同じ事が繰り返されるような気がしてならん。あぁ、戻りたい。今直ぐ事務所に引き返したい。じゃけどもう、動き出してしまった。真幌を探す為に、守る為に飛び出してしまった。今更、他の物を選ぶなんて真似は出来ない。この手が届くのは、目の前にある命だけじゃ。この目に映る子供だけなんじゃ。

 

 ……くそっ。くそ、くそ……っ! 何で儂は、全ての命を守れないのか……!! 何で、救う命を選ばなければならないんじゃ!!

 

『……えーーっと、トガからも全員に言っておくんですけど』

 

 ……被身子?

 

『みんなに、もしもの事があったら……円花ちゃんは(ヴィラン)を殺しちゃうと思うので。怪我ひとつ無く、この事態を乗り越えてくださいねぇ』

 

 いや、おい……。それを今、全員に伝えてしまうのは良くないじゃろ。何で今なんじゃ。余計な重荷を背負わせるような真似をするんじゃない……っ。何を考えてるんじゃお主はっ。流石に今のは、取り消しておけ……!

 

『雄英の校訓、そろそろ守ってくださいね。ここでプルスウルトラ出来ないなら、みんなは円花ちゃんを人殺しにしちゃいますから』

 

 あぁ、もう。酷い啖呵じゃ。とんでもなく、酷い。こんな啖呵が有ってたまるか。儂のくらすめえと達に、一斉に嫌われても文句は言えんぞ貴様。じゃけど、それはそれとして……。

 

 どうにも、見透かされている気がする。儂の内心をと言うか、魂をと言うか……。母のような個性を持ってるわけでもないのに、何で分かるんじゃ。嫌ではないが。むしろ被身子に分かって貰えるのは、喜ばしいぐらいで。

 

 ……そう思うと、さっきまで有った動揺が消えた。気がする。まったく、仕方のない奴め。もう少し言葉を選ばんか言葉を。

 

『それとぉ、……円花ちゃんもプルスウルトラなのです!』

 

 ……は? な、何故……!? 何で儂までっ!?

 

『どっちかしか選べない、なんて考えは捨てちゃえば良いのです。どっちも掴み取っちゃいましょう!

 出来ますよね、円花ちゃんならっ!』

 

 い、いや。それは物理的に無理……。無理じゃぞ、絶対無理じゃ。儂の体は一つしかないんじゃけど!? 全ての子供達を守るなんて真似は、それこそ無茶で無理で無謀でしかない……! 全てを守ることは出来ぬと、儂は身を以て知ってるんじゃからっ。

 

 ……いかん、落ち着け。被身子の言動に動じている場合ではない。やるべき事にだけ、集中しなければ。漏れなく全てを守る方法なんて無いんじゃ。ひとつひとつ、出来ることをやって行こう。まずは―――。

 

 

 真幌を見付けて、保護じゃっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……居た! あそこだ頼皆っ!」

「うむ、頼むっ」

 

 だあくしゃどうに抱えられながら、地上を見渡しつつ空を移動すること数分程。大きな畑の側で、真幌を見付けた。活真も一緒じゃ。取り敢えず一安心、とはいかんな。二人の側では、家が燃えている。だけではない。妙な格好をした男が、立っている。並の様相ではない。遠目から見ても分かる。あれは、今この島で騒ぎを起こしている悪党じゃろう。さも当然かのように、呪力を纏いおって……! つまり今回のこの緊急事態は、悪党連合の仕業ってことじゃなっ。あい・あいらんどの時と言い、ふざけおって……!

 

 と、つい苛立っていると。高度が急速に下がり始めた。独りで真っ直ぐ落ちてるわけではないのが救いじゃが、これは肝が冷える……。やはり、空は苦手じゃ。緊急事態故に考え無しで空を出たのは、間違いじゃった気がして来た。けれども、そのお陰で真幌と活真を直ぐに見付けることが出来た。

 

「活真くん! 真幌ちゃん!」

「デク!」

「デク兄ちゃん……!」

 

 む? 緑谷が子供達に向かって駆け付けているの。これには、少し驚いた。儂と常闇は空を飛んで探していたのに、それと同じぐらい……いやそれ以上に速く真幌と活真を見付けるとはの。

 っておい、緑谷。貴様、呪力を使っているな? 使うなと、おおるまいとに言い付けられてるじゃろっ。じゃからこんなにも速くこの場に到着したのか。……いや、まぁ……緊急事態故に、見逃すとするか。説教は後でじゃ、後で!

 

「常闇、降ろせ! お主は空から漁港を見て来てくれ!」

「……了解した。だが、無茶はしないでくれ!」

「それはあの悪党次第、じゃ!」

 

 だあくしゃどうの腕が緩む。儂の体は、真っ直ぐ地面に向かって落ち始めた。が、丁度良い高さで降ろして貰えた。この分なら、着地に問題は無いじゃろう。わざわざ考えなくて良い。……じゃったら!

 両手を、叩き合わせる。まだ体は空中にあるが、百斂を始め血液を圧縮していく。狙いは、今の内に定めておく。少しばかり遠いのが癪じゃけど、届きはするから問題は無いっ。

 

「ヒーロー……。……いや、子供か」

 

 悪党が、子供達に向かって右手をかざした。

 

 

「おいっ! こっちじゃ悪党!!」

 

 

 悪党が三人に何かをするよりも速く、穿血を放―――。い、いかん……!!

 

「!」

「おっ」

 

 穿血が何かに阻まれた。呪力……いや、空気の壁……か? それが穿血を一瞬止め、その間に悪党は前へ跳んだ。穿血が見えぬ何かを貫く頃には、あやつは軌道上から逃げたわ。まぁ、この際良しとしよう。今の穿血は悪党の右足を狙ったものじゃったが、狙いが逸れての。危うく右肩に直撃するところじゃった。そうなっていたら、左の脇腹まで貫通して死んでたかもしれん。

 

 ……何で悪党の命を心配せねばならんのか。いやでも、人殺しはしないと約束してるからの……。ううむ……。っと、着地着地。

 緑谷は……、真幌と活真を抱えて森の中に逃げおったの。なら、後は儂がこの悪党を引っ捕えるとしよう。

 

「そうか。君が、ブラッディか」

「あ゛? 人の名前はちゃんと覚えろ、悪党……!」

 

 誰が、ぶらっでぃ……じゃって? 悪党までその呼び名を使うんじゃない。まったく、どいつもこいつも……!

 

 

「まさか、この島に居るとは。君だけは、排除させてもらう」

「こっちの台詞じゃっ、たわけ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








VSナインが始まります。さも当然のように呪力持ちです。
そのうち三人称で敵連合に振り回される漏瑚が書きたいんですけど、正直円花視点を毎日更新するので手一杯でして。毎日更新継続しながら並行して三人称を書くという無理難題の縛りを課すことが出来れば多分大丈夫ですけど、ちょっとどうなるかは分かんないです。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。