待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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産土神信仰。救難信号

 

 

 

 

 

 ひとまず。儂等は事務所に戻った。くらすめえと達は、全員生きている。疲労していたり、怪我をしている者も居るが死者が出てない事はひとまずの救いじゃの。それだけは素直に喜んでおくとする。いや、怪我をしてる時点で喜ばしいことでは無いんじゃけども。

 とにかく、じゃ。これからの行動指針を決めた方が良い。ここに戻ってくるまでの間、島は目茶苦茶になっていることが分かった。通信基地や漁港だけでは無く、商店街やら一部の住宅が破壊されていた。火事になった家も有る。雨が降ったことと、儂と轟の個性を合わせて火が広がる事は防げたしの。それでも、何件かは全焼してしまった訳じゃけども。

 途中、飯田が何人かを連れて島民やら観光客を避難所まで誘導していた。儂と轟、麗日や緑谷は火災を収めつつ救護活動も行った。建物の倒壊に巻き込まれた島民が居なかったのも、幸運じゃったと言える。

 島民の中に死傷者は居なかった。観光客も無事らしい。儂からすれば、大人が何人死んだところで気にはならんが。

 

「インゲニウム、只今戻りました! 島民の方々に、観光客の方々の避難は完了! 工業地帯が避難所とし、怪我人の中に重傷者は居ません! 今はレッドライオットとシュガーマン、アニマが避難所の警護を! それから、クリエイティとチャージズマが避難所の設備を改修してるところです!」

 

 雨で濡れた髪を被身子に拭かれていると、飯田が一人で帰って来た。悪党が何処に潜んでいるかも分からぬのに、何で一人で帰って来るんじゃこやつ。幾ら無線で連絡し合えると言ってもじゃな、危ないじゃろ。

 ……いや、まぁ。こやつの個性なら最悪逃げ切れはするか。脚の速さだけで言えば、こやつは儂より速いからの。脇目も振らず逃げ出せば、大抵の悪党からは無事に逃れることが出来るじゃろう。と言うか、無線で連絡するだけでは駄目じゃったのか? 要らん心配をさせないでくれ。

 

「それで、これからどうするんですか? (ヴィラン)を捜索する、とか……?」

「幸い人手は有る。一般人の警護、(ヴィラン)捜索の二手に分かれるのも悪くないが……消耗している者も居る中では得策とは言えない。他に懸念点も有るしな」

「捜索には反対じゃ。警護が優先じゃろ」

 

 今の状況で悪党を探し回るのは……別に不可能ではない。と思う。消耗の少ない者達を二分し、捜索班と警護班に分ければある程度は上手く行くかもしれん。が、それは子供達を悪党に差し出すようなものでもある。捜索班は戦闘になるじゃろうから、どうしても危険が伴う。それに、ながんが言う通り懸念点が有るのも事実じゃ。悪党の目的が分からん。あやつ等、何の為にこの島に来たんじゃ? その目的が分かりさえすれば、探しやすくもあるし守り易くもある。

 

(ヴィラン)の狙いは、何なんやろうね……? そこが分かれば、対策出来ると思うんやけど……」

「そうね。狙いが分かれば、守り易いもの」

「識られざる秘匿、か。廻道、緑谷、爆豪。何か、思い当たる節は?」

「んん……。何で、かな……?」

(ヴィラン)の考える事なんざ知るかよ」

 

 依然として、悪党側の目的は不明瞭なままじゃ。何せ情報らしい情報が無い。儂を勧誘して、世界を変えるなどと訳の分からん事を言っていたことしか分からん。……もしかすると、世界を変える為に必要な何かがこの島にある……? いや、そんな馬鹿な。そんな物が有るならば、戦闘やら島の破壊なんて真似はしないじゃろ。

 ひとまず、島民やら観光客の警護はくらすめえと達に任せよう。悪党の捜索をすることになるなら、それは儂がやる。不向きではあるが、この際仕方ないしの。

 

「それと、どうにかして島の外に連絡を取るべきだ。クリエイティに頼めれば良いんだが……」

「そうだよテンタコル! まずは外に向かって、ドローンでも飛ばして貰おう!」

 

 いや、葉隠。それはどうなんじゃ? 八百万がはだいたい何でも創れるが、今あやつは忙しいじゃろ。どろおん? とか言うのを創って貰って、変に負担を掛けるのは良くないと思うんじゃ。……が、島の外に連絡を入れたいのも事実じゃの。通信基地とやらが破壊されて、携帯電話(すまほ)は使えん。固定電話も使えなくなったみたいじゃ。となると、外に連絡する手段は一切無い。この島の内での出来事は、儂等でどうにか解決するしかないのじゃろう。

 ううむ……。こういう時の為に、式神を作っておくべきじゃったか? いやしかし、その手の才は儂には無い。いっそ本島まで泳いで……。無理じゃの。途中で力尽きて溺れるだけじゃ。仮に無事に泳ぎ切れたとして、何日掛かるかも分からん。それでは遅過ぎる。救援や増援は、速く来て貰わねば意味が無い。

 こういう時の為の連絡手段を、公安から聞いておくべきじゃったの。……ん? 公安?

 

 ……詳しくは知らんのじゃけど、そう言えばながんは衛生通信……とか言うので居場所を総監部に把握されているの。で、確か監視用の腕輪を壊すと即座に英雄(ひいろお)と警察がこの島に駆け付けるんじゃったな。確か……電波を断ってから壊しても無駄じゃとか。

 

 ふむ。ならば……。

 

「……ながん、ちょっとこっちに来い」

「何でだ?」

「良いから良いから。はよ来い」

「……?」

 

 椅子に腰掛けて居るながんを呼んで、手招きを繰り返す。何でそこで怪訝そうな顔をするんじゃ。って、んぶっ。こら、被身子っ。何で今、雑に髪を拭いたんじゃ! 思わず振り返ってみると、何やら不満そうな顔をしておる。……まったく、こやつと来たら。後で盛大に甘やかしてやるから、今は我慢してくれ。

 

「それで? 何の用だ?」

「あぁ、うむ……。少し屈め」

「……」

 

 いや、じゃから。疑うような目をするな。何じゃ貴様。儂が何かしでかすとでも思っているのか? 失敬な奴め。そんなつもりは微塵もない。あと、何でくらすめえと達まで儂の動向を見守ってるんじゃ。何もやらかさんが?? まったく!

 

 ながんの首輪に、手を伸ばす。当然じゃが、硬い。当たり前じゃが、頑丈に作られておる。首の痣を覆い隠すかのように、肌としっかり密着しておるの。多少危険じゃとは思うが、まぁ大丈夫じゃろう。

 

「おい待てっ。何を―――」

「か、廻道さん!?」

「黙っとれ」

 

 頑丈な首輪に、呪力を多量に流し込む。直後、音を立てて首輪が割れた。って、ぬおっ。けたたましく鳴り始めおった……!

 あ、ついでに腕輪の方も壊しておこう。よし、壊れた壊れた。って、こっちも喧しい!

 

「ちょっ、廻道さん! それを壊したら大変だよ!?」

「良いじゃろ別に。これを壊せば向こうが察知するんじゃから、電話の代わりじゃ代わり。

 これで島の外に連絡出来たようなものじゃろ?」

「それは……、そうだけど……!」

「……やるなら一言言ってくれ。何でこう、アンタは急に目茶苦茶するんだ……」

 

 うぅむ。解せぬ。手っ取り早い方法で本島に連絡を入れてみせたのに、何故血相を変えた緑谷やながんに詰め寄られなければならないのか。ってこら、被身子。儂を抱き締めて後ろに下がろうとするな。そんな不満そうに抱き締められても、あまり嬉しくないんじゃけど?

 あと、壊れた腕輪と首輪が喧しくて構わん。更に呪力を流し込んで、余計に壊してしまおう。

 

「うおっ!?」

 

 爆ぜたわ。儂の手元で首輪や腕輪が小さく弾けた。まぁ、怪我はしとらんが。音は鳴らなくなったが、これ……ちゃんと信号を送ってるのか? 断面を見てみると……中は機械的じゃの。何じゃこれ、どうなっとるんじゃ……?

 

 ……まぁ、良いか。取り敢えずやりたい事はやれたからの。

 

「ちょっ、廻道ちゃんっ。今の何!?」

「何か、警報のように感じたが……。筒美さん、その腕輪と首輪は何の為に日頃から身に付けて……?」

「えっ、えっと……! みんなは気にしないで! た、多分大丈夫だから……!?」

「もぅ。直ぐそうやって無茶苦茶するんですから。相談しないのは悪いとこですよぉ、めっ!」

 

 ぷえっ。後ろから頬を摘むな被身子。ほっぺたを引っ張るな。仕方ないじゃろ、どうにかして島の外に連絡しなければならなかったんじゃから。他の手段も思い浮かばなかったし、仕方ない仕方ない……。

 

「廻道、緑谷。それと筒美さんも、説明を求む」

「ぇ、えーっと……。と、とにかく今ので島の外に救難信号を出せたとか、そんな感じに思ってくれると……」

「緑谷ちゃん。それは説明になってないわ」

「う……っ。いや、えっと……っ。こ、これに関しては話せないと言うか……! ひ、秘密です……っ!」

 

 ……まぁ、ながんの事情について秘匿なんじゃよな。常闇や梅雨に詰め寄られてしまったが、話せん事は話せぬ。これについては嘘八百を並び立てるしか無い。しかしまぁ、今は緊急事態じゃからの。ある程度、話してしまっても良いような気がしないでもない。その場合、くらすめえと達もながんの秘匿釈放の件に巻き込んでしまうわけじゃが……。

 

 ……しまった。せめて誰も居ないところで外すべきじゃったか。手っ取り早く済ませようとしたのは間違いじゃったの。うぅむ……。

 

「秘密……。秘密ならば仕方ないか! しかし確認はしておきたい! 廻道くんに緑谷くん! 今ので、本島に救難信号が送れたのだな!?」

 

 今度は飯田が詰め寄って来た。勢い良く儂に近付くんじゃない。被身子が驚いてしまうじゃろ。って、こら被身子。そんな思いっきり抱き締めるんじゃない。少し息苦しいじゃろっ。

 

「ぅ、うん。多分……そうだよね?」

「衛生通信……? とか何とか言うので、首輪や腕輪が壊れるとひいろおや警察が駆け付けるそうじゃ。ここまで何日掛かるかは知らんけどな」

 

 何はともあれ。総監部に信号が届いてる筈じゃ。今頃向こうは大慌てかもしれんが、こちらも緊急事態じゃからの。七山には、連絡出来るようになってから謝るとしよう。最悪、腕輪やら首輪やらを弁償する羽目になるかもしれんが……それについては仕方ないか。壊したのは儂じゃもん。

 

「とにかく、この島で何か有ったことは向こうに伝わってる筈じゃ。連絡についてはこれで良いじゃろ。

 それで、これからどうするんじゃ?」

「そうだな……。まずは」

「決まってんだろ、(ヴィラン)を探してぶっ殺―――」

「島民の皆さんを安心させる所から! だよね……っ!!」

「あ゛ぁ゛っ!? 安心させる為にぶっ殺すんだろうが!!」

「敵の目的も潜伏先も分からないのにそれは無理だよかっちゃん……!」

「島中人海戦術で探せば良いだろうが!」

 

 待て待て。そこで緑谷に噛み付くな。舎弟の意見も分かるところではあるが、悪党捜索なんて真似は絶対に儂がさせぬから諦めろ。しかし……島民を安心させる、か。それは……舎弟には出来ぬよなぁ。儂も多分無理じゃ。子供相手ならば出来ると思うが、大人を安心させるなんて真似はしたいとは思わんし。

 

「ぁ、あの……! ぼく、知ってるよ……!」

「ちょっ、活真……!」

 

 む? 真幌と活真が、事務所の奥の方から姿を見せた。何じゃ、二人は事務所に居たのか。てっきり、避難所に逃げているものかと思ったが……。まぁ、それはともかくじゃ。今、なんと? 何を知っとるんじゃ? もしや、悪党の目的についてか……?

 じゃったら、それは聞いておきたい。聞いおきたいんじゃけど……。

 

 取り敢えず、活真を一斉に見詰め始めた全員に拳骨でもしておこうかの。同じ子供とは言え、大きく年の差が離れた相手から注目されたら小さな子供は怖がってしまうものじゃろ。もう少し子供の扱い方を知れ、子供の扱い方を!

 

 

 

 

 

 

 

 









三人称による補完は要りますか?

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