待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
やってられん。話してられん。くらすめえと達は、どうして儂を独りで戦わせようとしないのか。相手は呪詛師で、それに対応出来るのは儂だけじゃ。緑谷もある程度は呪い合えるじゃろうけど、あやつは
今回は、被身子まで儂に協力しろと言う。心配されているのは、分かる。心配は……させたくない。じゃけども、子供を呪詛師の前に立たせるような真似は絶対に出来ん。そればっかりは譲れない。何より……覆面白髪は活真の個性を奪おうとしている。子供に危害を加えようとしてるんじゃ。ならば、殺すしかないじゃろ。人殺しはしないと約束しているものの、流石に今回ばかりは手を下すべきじゃと思う。呪詛師を生かして捕らえるなんて真似は、手間が掛かる上に危険じゃからのぅ。
儂の方には、まぁ色々と事情がある。主義じゃったり、呪術師としての立ち回りじゃったり。そう言った訳が有るからこそ、独りでやるんじゃ。それをいちいち説明してやらねば、くらすめえと達は納得しないんじゃろうか? じゃとすると……いちいち説明するのが面倒でならん。
良いじゃろ、別に。儂に任せておくのが一番手っ取り早く、危険も少ないんじゃから。なのに、どうしてどいつもこいつも……儂を独りにさせまいと行動してしまうのか。今も昔も、何で?
……分からん。まっこと、分からん。考えても考えても、儂独りで良いとしか思えん。
「……はぁ……」
何なんじゃろうな。どうして、ああなってしまうのか。儂は、何か間違えてるんじゃろうか? 子供に頼ることの何が正しいのか、さっぱり分からん。考えても考えても、答えが出ない。堂々巡りになってしまっているの。
雨に打たれれば何か思い浮かぶのではないかと、話の途中で
「……あぁ、もう……」
溜め息ばかりが出てしまう。くらすめえと達だけならともかく、今回は被身子まで儂がやろうとしている事に反対してくる。ここ最近は、何か起こる度に上手く行かないことばかりな気がしてならん。呪術師として、思い通りに活動出来ん時が有る。それを、癪じゃと感じている。
そんなにも、周りに頼らず動くことが間違いなのか? 生粋の呪術師は、儂だけなのに? それなのに、頼らねばならんのか? 子供や、何も知らない大人に………?
ふと、儂は皆とは違う生き物なのではないかと思ってしまう。呪術が無かったこの時代に、呪術師として生きるのは生物として異物なんじゃろうか? まぁ……生まれ直しなんてしてる時点で、十二分に異物ではあるか。
それでも、儂は儂じゃ。平安時代で生まれ育ち、呪術師として生きて死んだのが儂なんじゃ。生まれ直したからと言って、他の選択肢を選びたいとは思わん。呪力と術式を持って生まれたのなら、呪術師になる以外の選択肢が何処に有るのか。何処にも無いじゃろうが。蛆のように呪霊が湧き出るこの時代、儂が呪術師をしなかったら呪霊被害は増え続ける一方なんじゃし。
……独りでやることに、限界が有るのは知っている。じゃから、救う人間を選んで来た。選ぶしかなった。助けられなかった命は、残念ながら多い。それでも、助けられる命は助けて来た。その果てに、訳の分からん産土神信仰が出来てしまったのはどうかとも思うが。何故儂を信仰したんじゃ、隆之。何故に、それを良しとしたのか。お陰で、この島に来てから色々と面倒なんじゃぞ。
「……廻道さん」
遠くでも見詰めながら独り雨に打たれていると、緑谷が出て来た。濡れるぞたわけ。何の用じゃ? ……いや、何の用かは分かっているが。わざわざ考えるまでもないし、聞く必要も無い。
「……その、ごめんね。廻道さんが色々考えた上で、独りで戦うって言ってるのは……みんな分かってるけど……」
「……分かってないじゃろ。何も分かっとらんよ、お主等は」
「……そんな事は無、……ごめん。やっぱり、有るかも。その、言い訳じゃないんだけど……廻道さんは何も話してくれないから」
……そうか? まぁ、……そうかもしれんな。くらすめえと達には語ってない事が有るぐらいじゃしの。生まれ直しの事とか。儂の主義についても、儂の口から詳しく語ったことは無いかもな。わざわざ語るものでも無いんじゃし。儂の主義なんじゃから、儂だけが把握してれば良い事じゃ。
「独りで何でも決めて、動いちゃうのは……良くないと思う」
「貴様にそれを言われたくない」
保須の時も、あい・あいらんどの時も。夏合宿の時や、治崎の時じゃって。こやつは独りでも動こうとしていた。と言うか、独りで動いた時の方が多い。そんな緑谷にだけは、どうこう言われたくないんじゃけど。
「う……っ。それは……面目無い……です」
「……良いじゃろ、別に。独りでやるのが、最も手っ取り早いんじゃから。まして相手は呪詛師で、呪いを持った人間じゃぞ? そこらの悪党とは訳が違う」
「みんな、心配なんだよ。廻道さんが」
「要らん。余分な気遣いは止せ」
心配など、必要無い。儂を心配して良いのは、被身子と両親だけじゃ。この三人以外の大人や子供に心配されてもじゃな、心の無駄遣いとしか思えん。人を慮る気持ちは立派なものじゃけど、相手を選べ相手を。儂の事を心配するよりも、まず自分達を心配して欲しいものじゃ。今じゃって、これから色々と大変になるんじゃろうから。
「……心配ぐらい、させてよ。するなって言われても、しちゃうよ」
「お人好しばかりじゃものな。お主等は」
「それは、廻道さんもそうじゃないかな」
「……お主の目は節穴か?」
別に儂はお人好しでは無いぞ? 自分がしたい事を、勝手にやっとるだけじゃ。それをお人好しと言うのは、きっと違う。どちらかと言うと、自分勝手じゃ。被身子みたいなものじゃな。そう考えると、うむ。自分勝手も悪くない。
「節穴じゃない……よ、多分。きっとみんな、同じ事を言うから」
「なら、全員節穴ってことじゃ。まったく、人を見る目が無いのぅ……」
「そんなことは無いって。廻道さんが優しいのは、みんな知ってるんだ」
優しい? 儂が?
まぁ、子供には甘く接してしまうのは事実じゃけども。ただ、優しいと言われて頷くつもりは無いのぅ。それは何と言うか、違う気がする。……これについては、好きに言わせておくか。優しいだの、お人好しだの言われても何が変わる訳でも無いんじゃから。変な認識をされているとは思うんじゃけども、周りが儂をどう思おうが周りの勝手じゃものな。
「でも、見てるだけじゃ分からない事も有るんだ。廻道さん、どうしていつも……独りで戦おうとするの?」
「儂の主義は知っとるじゃろ」
「……子供を救けて、子供が幸せになれる世界を作る……だよね?」
いや、違う違う。それは被身子が勝手に宣言したことであってじゃな、実際はまったくの別じゃ。そんな事は断じて考えておらん。そんなのは、実現出来ん。出来るものなら、誰かやってくれとは思うが。それで全ての子供達が幸せになれるなら、儂はそれで良いと思えるからの。
「……子供が死んだり傷付けられることが、堪え難いだけじゃ。お主等じゃって、子供じゃろ? なら、儂が守る範疇にお主等全員が居るんじゃ」
「だから、独りで……?」
「呪術師として動けるのも、儂一人しかおらんじゃろ。今回の件は、ひいろおではなく呪術師の管轄になる。相手は呪力持ちじゃしな。
……分かったら、関わってくれるな。お主等には関係無い世界じゃろ」
「……関係なく、無いよ。関係なら有る! 僕だって、呪術師として……!」
「言っておくが、貴様は呪術師ではない。勘違いするな」
これに関しては、いや……これに関しても。こやつやくらすめえと達を甘やかすつもりはない。他の事であるならば、幾らでも甘やかしたって良い。じゃけど、これだけは駄目なんじゃ。甘やかしてしまえば、誰かが死ぬことになるじゃろう。そんなのは論外じゃ。それだけは、絶対に許されない。例えくらすめえと達を、突き離すことになろうとも……じゃ。
「貴様に呪力が有ろうと、総監部から呪術師扱いされていようと、儂は認めん。他の連中にしたってそうじゃ。悪党の前に立つことは許さん」
それを許してしまえば、子供の命が失われるかもしれんからの。そんな事態を起こすわけにはいかん。そうなるぐらいじゃったら、独りで動いた方がずっと良い。
被身子に心配されてしまうが……これはもう仕方ないことじゃ。その代わりに、絶対に生きて帰る。被身子の居る所に、被身子の隣に。違えたりするものか。呪術師として生きても、呪術師として死なん。それが、一歩も退かずに儂を愛し続けてくれている被身子への、……愛……でもある。儂が死ねば、後追い自殺する可能性が高いからの。あやつはほら、儂が全てみたいなところがあるし。まぁそれは、儂も似たようなものなんじゃけども。
「なぁ、緑谷。もう良いから黙ってくれ。儂は
誰が相手じゃとしても、死にはせんよ。
……廻道円花は渡我被身子と添い遂げる。それは何年も昔に決めた事じゃ」
いっそ、縛りにしてしまっても良いんじゃけどな。そんな真似をしたら、被身子が良い顔をしなさそうじゃから縛りにするつもりは無いが。……つまるところ、この誓いはひとつの決意でしかない。儂の気分一つで変わるようなものじゃ。
じゃからって。被身子から離れるような気分にはなったりしないんじゃけど。儂の生涯は、もう被身子に渡したようなものじゃ。奪われた、と言っても間違いではない気がするけども。
「だったら……。せめて、誰にも心配させちゃ駄目だよ……! みんなにも、渡我先輩にも!」
黙れ。と言ったのが、聞こえなかったようじゃな。まったく、人の話を聞かん奴め。もう少し儂の話を聞いてくれても良いんじゃないのか? どうしてこう……
「廻道さんがみんなに何かあったら堪えられないのと同じで、みんなだって廻道さんに何かあったら堪えられないんだ……っ。
だから、一緒に居ようとしてるんじゃないか……!」
……あぁ、もぅ。そんな面をするな、たわけ。悪事を働いてる気分になって来るじゃろ。悔しさを滲ませて、吠えるんじゃない。子供がそのような顔をするのは、見るに堪えん。が、ここで妥協してやるつもりは無いんじゃ。
何かが起きてからでは、遅過ぎるんじゃから。
「儂は、独りでやって来た。勝手に付き纏う者や、追い掛けてくる者は何人も居たがな。それは儂が望んだことじゃない。
……
どうして今も昔も、子供達は儂に何を言われても付いて来るんじゃ。儂の背を追い掛けたところで、そこに有るのは呪いと死だけじゃろうに。勝手に儂の隣に立とうとして、勝手に目の前で死んで。迷惑じゃよ、迷惑じゃとも。そんな事をして欲しくて、儂は子供達を助けて回った訳じゃない……! 守ろうとしてる訳じゃないんじゃ……!!
おい、何じゃその面は。言いたい事が有るなら、口に出せ口にっ!!
「みんな、君になりたくて追い掛けてるんじゃないか! 誰かを救けるヒーローになりたいから、身近に居る凄い君が目標なんだ!! とっくにヒーローな君に、追い付きたいんだよ!!」
―――。―――、―――っっ。
「―――誰がひいろおじゃ、たわけっ!! 儂は呪術師じゃ!! ひいろおなんぞ、やっとらんわ!!」
「ヒーローだよ!! みんなを守って、誰かを守って……!! 独りで戦い続けて!! 僕達まで守ろうとして!!
君がヒーローじゃなかったら、オールマイトだってヒーローじゃないんだ!!」
こ、の……っ! このっ! 分からず屋の聞かん坊め……!! 訳の分からん事を叫ぶんじゃないっ! 誰が
ああ゛っ、もう!! 頭に来たっ! 今回ばかりは許さんぞ……! 幾ら子供じゃからってなぁ!! 儂にじゃって、我慢の限界は有るんじゃぞっっ!!
もう良い、もう決めた……!! 貴様の言葉など、二度と聞いてやるものかっ! この先、呪術師としての活動など二度とさせんからな!! 当然、悪党の前にも立たせん!! 貴様もくらすめえと達も、黙って儂に守られてれば良いんじゃ!!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ