待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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産土神信仰。戦う前に

 

 

 

 

 

 解せぬ。まっこと、解せぬ。何故、儂は被身子にへたれ扱いされなければならんのか。儂はへたれではないが? 断じて違う。懇切丁寧に儂がどうへたれなのかを解説されもしたが、やはり違うと思うんじゃ。

 まぁ、確かに好意を伝えるのが遅かったのは……儂の不徳の致すところじゃ。じゃって、気恥ずかしかったんじゃもん。でもでも、少し前から伝えるようになったんじゃ。なのでそれについては、そろそろ許して欲しい。んじゃけども、生涯根に持つと冷笑されてしまった。ぐぬぬ……。

 

 悪かったな、愛してるもろくに言えないへたれで。いや、へたれではないが。

 

 そもそもじゃ! 愛してるなんて、そうそう言うものではなかろう……!? そういうのは、もっとこう大事に……ここぞって時に伝えるから良いものであって……! 被身子のように何度も何度も口にするのは……。まぁ、それはそれで良いんじゃけども。何度言ったって良いものじゃと、最近は思っとるけども。と、とにかく!

 

 

 儂は! へたれ! ではないっ!!

 

 

 ……虚しくなってきた。こんな時に、何と戦ってるんじゃろうな儂は。

 

 ……はぁ……。もう良い。今は、へたれを否定してる場合ではないんじゃ。

 

 悪党共が襲撃して来てから、一晩が経過した。あの覆面白髪やその同胞が、いつ襲い掛かってくるか分からん。相手は呪詛師で、生半可な奴ではない。もっとも、殺すだけならそう難しくない相手じゃ。それこそ奉迎赭不浄で、即殺出来る。……が、人殺しはしないと約束しているからの。殺さずに引っ捕らえるしかない。仕方ないから、今回は半殺しで済ませてやるつもりじゃ。殺したくて殺したくて、仕方ないんじゃけどな。そこは……、我慢……す、する……。

 

 ……。……くそっ。殺してしまうのが、一番手っ取り早いというのに。

 

 そうそう。くらすめえと達は、昨晩遅くに集まって何やら話し込んでいた。今後の作戦について、ああでもないこうでもないと語り合っていたわ。あやつ等、被身子の言葉を真に受けてる節が有るようでの。無傷で悪党共を捕らえるにはどうするべきか、などと無茶な事を議論しておった。それが滑稽に見えてしまって、つい横から口を挟んでしまった。

 これについては、まぁ不可能ではない。儂に全て任せて、一般人と隠れていれば良いんじゃ。もっとも、それを口にしたら物凄い形相で睨まれたり、そういう考えは良くないだの何だのと詰寄られたが。気になったのは、舎弟が黙り込んでたことぐらいか。あやつにしては、何故か大人しかったの。

 

 ……別にな。儂じゃって子供達から成長の機会を奪いたいわけじゃない。基本的には、成長の邪魔はしない。したくもない。が……、今回は相手が呪詛師じゃ。本来は呪術師である儂の管轄で、くらすめえと達は誰一人として関わるべきではない。一応緑谷だけは、関わる権利を持っている。関わらせるつもりは微塵も無いが。

 

 そんなこんなで。儂は今、島の隅にある離れ小島までやって来た。そこに至る道は、砂浜の一本道しか無くての。悪党共は海でも泳がぬ限り、この道を通って活真へと向かうじゃろう。ならば迎撃は容易い。この砂の道で立ち塞がれば良いだけの話じゃ。

 くらすめえと達は、ひとまず大勢の一般人を断崖絶壁にあるらしい洞窟まで護送していた。それが数十分前の話じゃ。そろそろ、外に出て来る頃合いじゃろう。なので、帳を降ろすとする。術師を通さぬ帳と、非術師を通さぬ帳。このふたつを、ひとつずつ降ろしていく。

 

「闇より出でて闇より黒く

 その穢れを禊ぎ祓え」

 

 まずは、非術師を通さぬ帳を一般人が入って行った洞窟に向かって降ろしておく。中で一般人の警護に付いている何人かは外に出てこれなくなってしまうが、まぁ問題は……有るには有るか。帳は電波を絶ってしまうからの、無線でのやり取りは出来ぬ。っと、ひとつめの帳は降り切ったの。では次に、術師が通れぬ帳を降ろしておく。

 

「……闇より出でて闇より黒く

 その穢れを禊ぎ祓え」

 

 まさか、帳を二重に降ろす羽目になるとは。しかもわざわざ、結界としての効果を変えてまで。

 ……近い内に、儂は悪党共と接触する。いつ攻め込んでくるかは分からんが、帳が役に立つじゃろうから焦る必要は無い。儂が此処で待ち構えている以上、悪党共は帳の内に入ることは出来ぬからの。問題が有るとすれば……。

 

「頼皆、今のは?」

「何か、ツクヨミっぽかったねーー?」

「呪術のひとつじゃねぇのか? 今のが帳か?」

「昨晩話していた結界の事か!」

「その結界があれば、中に(ヴィラン)が入れへんってこと……? 呪術って、何でも出来るんやね……??」

「そんなことより、何でオイラここに居んの!? 今からでも中に入らせてくれよぉ……!」

「腹括れよグレープジュース。俺とお前の個性は拘束向きだろ?」

 

 くらすめえと達の内の、何人かがこの場に居ると言うこと。常闇じゃったり芦戸じゃったり、轟じゃったり飯田じゃったり。他にも瀬呂やら峰田やら、何人か。当然、緑谷も舎弟もここに居る。どちらも無口を貫いているがの。特に舎弟、貴様は昨晩から特に大人しいの。たまに黙って儂を睨んでくるが、してくることと言えばその程度。いったいどういう腹積もりなんじゃか。

 あぁ、それと。ながんは術師を通さぬ帳と非術師を通さぬ帳の狭間におる。あやつの個性は、狙撃が出来るようでの。いざとなれば、遠方から子供達を守るつもりのようじゃ。これについては、いざという時の保険じゃの。あやつが動かねばならんような事態には、ならんのじゃけども。

 そして被身子は……一般人達と一緒に洞窟の中じゃ。昨晩はろくに寝取らんかったようで、眠そうにしておった。それはまぁ良いんじゃけども、別れ際にひっ付いて離れようとしないのが大変じゃった。ながんが引き剥がしてくれなければ、今も此処におったじゃろう。抵抗が弱々しかったのは、眠気が強かったから……じゃろうか? 何にせよ、後で謝らなければの。儂と添い寝したいが為に、被身子はずっと起きていてくれたんじゃ。お陰で、休憩時間は休憩時間にはならなかったが……それでも気は安らいだ。と、思う。

 

「廻道くん。今の内に、俺達の作戦を伝えておこうと思う」

 

 作戦? 命を投げ捨てる行為が?

 

 ……まぁ、聞くだけ聞いておくとするか。梅雨の言う通り、子供達の動向を知っていればいざも言う時に何をするのか分かり易い。何人かが此処に集まっている以上、最初に立てた分断作戦は大きく形を変えている筈じゃ。全くの別物となってるかもしれん。それに、無謀でしかない分断作戦も一晩経って少しは変わったかもしれんし。

 

 で? 聞いてやるから、さっさと話せ飯田。儂の気はそこまで長くはない。

 

「まず……俺達は(ヴィラン)と会敵し次第、最大戦力で確保に望むつもりだ。バクゴー・ショート・ピンキーを軸に、今回は範囲も被害も考えずに」

「らしくない真似を」

「そうだとも。ヒーローとして、周囲を気にせず戦うのは愚行だ。……けれど、ナインと言う敵《ヴィラン》は俺達より強いのだろう? 救援の到着まで時間稼ぎも出来るかどうかも分からないが、それでもやれる事を精一杯やって見せる!」

「最大戦力で挑むという割りには、青山や切島がおらんが?」

「トゥインクルはブッパすると動けなくなっちゃうから、バックアップ! レッドは一般人の護衛! 適材適所ってこと!」

 

 ……なるほど。儂としては切島こそが、もっとも心配しなくて良い子供なんじゃけどな。あやつの硬さは中々のものじゃ。安無嶺過武瑠(あんぶれいかぶる)……じゃっけ? あれならば、多少は無傷で戦えるからの。多少は。それにあやつは確か、倒れぬ事を信条に鍛えておった筈じゃ。くらすめえと達の中で、もっとも打たれ強い。その切島が前線に出て来ないのは、采配が間違って……もおらんか。誰かを守るという点においては、あやつ程頼りになる奴はおらんじゃろう。少なくとも、くらすめえと達の中ではな。

 青山については、まぁ仕方ないところではあるか。あやつの必殺技は大した威力じゃけども、一度放てば血が出る程の腹痛で行動不能になってしまう。であれば……後方支援に回るのも納得は出来るか。

 

「バクゴー・ショート・ピンキーの三人が必殺技を放った後、間髪入れずに俺・デク・ツクヨミで追撃する。それで駄目ならば、セロファンとグレープジュースで足止め。ウラビティが俺達を浮かせて、一度全速力で離脱する!」

 

 ……うぅむ……。まぁ……、案外そこまで悪くはないか。覆面白髪の呪力操作が拙い内ならば、成立するかもしれん。呪力による防御や見えない壁を抜けるのかも。が……引っ掛かることも有るのぅ。

 全力で挑んで、駄目じゃったら全力で撤退する。その潔さは嫌いじゃない。嫌いではないんじゃけども、何と言うか……。

 

 ……そう。こやつ等らしくない、と思うんじゃ。この作戦は、結局は悪党を前に背を向ける行為となるじゃろう。そんな真似を、こやつ等が出来るのか? 出来ると思いたいところではある。でなければ、英雄(ひいろお)科で何を学んで来たのかと聞きたくなってしまうからの。そんな事を聞いたら、舎弟が大爆発しそうじゃ。

 

「……ここまでは、ヨリミナが協力してくれなかったら……の話なんやけどね」

「ウラビティ。ぶっ込んだわね……」

 

 物怖じしない麗日の一言で、梅雨が指を唇に当てた。そして、くらすめえと達は顔を見合わせ……腹を括った顔をし始めた。

 

 ……ここまでの作戦は儂が協力しなかったら、じゃと? 今度は何を言い出すつもりじゃ貴様等。儂が協力する? まぁ、それを心から望むのであれば吝かでない。とは、今回は言えぬの。子供の自殺を幇助する程、儂は呆けとらんが? いやそもそも、儂は呆けとらん呆けとらん。と言うか貴様等、いったい何を―――。

 

 

「……ヨリミナ。無理強いはしねぇ。けど、協力してくれねぇか?」

 

 

 は?

 

 協力、じゃと? おい、ふざけるな。何を言ってるんじゃ轟。何で儂が協力しなければならないんじゃ。くらすめえと達の自殺行為を手助けしろと?

 話にならん。絶対に手伝わん。そんな真似をするぐらいなら、儂だけで悪党共を引っ捕らえてみせるが? 儂ならばそれが可能じゃ。最初からそのつもりで居る。

 

 如何に覆面白髪が強かろうが、領域展開すればそれで終わりじゃ。あやつの防御も複数の個性も、儂の前では話にならん。

 今回の事態は、儂独りで解決出来るんじゃ。なら、儂に任せて下がっていろ。いい加減、黙って儂の言う事を聞かんかっ。たわけ共めが……!

 

「虫の良い事言ってるのは、分かってるけど。でも、みんなで考えても考えても……ヨリミナを納得させられる作戦は考えられなかった。だって、聞いちゃったんだもん。渡我先輩から、……ヨリミナのこと」

 

 聞い、た? 被身子から……何を? いつ、何を聞いたんじゃ貴様等。あやつめ、いつの間にそんな事を。……おい、まずはそこから話せ。素直に白状しろ。

 被身子は、いったい何を話した? 場合によっては拳骨じゃぞ、拳骨っ。

 

 

 

 

 

 

 

 









三人称による補完は要りますか?

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