待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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回想:許嫁の願い

 

 

 

 

 

 

 どうも。今は、ちょっぴり反省中のトガです。何で反省しているかと言うと、A組のみんなを煽ったら良くない方向に話が流れ始めてしまったから……ですねぇ。いやぁ、まさかこうなるとは思いませんでした。

 私としては、A組のみんながヨリくんに成長を見せてくれるだけで良かったんですが……こう……。こう、ヨリくんの主義とみんなの主張が正面衝突を起こしてしまって……。何と言うか、大事故です大事故。スピード違反しまくってる車と道交法を無視しまくった車が正面衝突したぐらいの大事故なのです。完全に、トガはヤッてしまったのかもしれません。

 

 でも、諦めないので。と言うか、諦められないですから。だってこれは、私の大好きなヨリくんの事なのです。諦める理由なんて、特に無いの。

 

 ……とは言っても、どうしましょうかねぇ。ヨリくんの主義は、誰が何と言うと絶対に変わらないと思ってます。……だけどぉ、私としてはどうにかしてあげたい……とも思っちゃうんです。

 

 これは、何となく……なんですけど。平安時代に、ヨリくんの心を癒してくれる人は居なかったのかもしれません。もしそんな人が居たら、あんな風にはなってないのかなって。別に、今のヨリくんを否定したいわけじゃないですけど。ただ……もう少し、誰かを頼っても良いんじゃないかなって思う時がたまに……。

 

 ……余計なお世話、かもしれません。見た目はともかく、ヨリくんの中身は立派なお爺ちゃんなので。まぁ本当に六十年以上も生きてるのか疑わしいぐらいの、お子様っぷりですけど。ポンコツで方向音痴で、少なくとも私生活では一人じゃ何も出来ないのが私のヨリくんなのです。それはそれでカァイイですし、そんなヨリくんの面倒を見るのは許嫁の役目ですから。何たって、トガは良妻なので。しかも、輪廻ちゃんのお墨付き!

 

 なので! どうにかしようと思います。どうやってかは、分からないんですけど! まぁ何とかなるかなぁって……!

 

 取り敢えず、目が覚めたら居なくなっていたヨリくんを探しましょう。ほっぽり出されるのは心外なのです。絶許です絶許。今のヨリくんは、私を見てるようで見てないので。そこは許嫁として恋人として、絶っっ対に許しません。ヨリくんは私だけ見てれば良いの! なんて、なるべく口には出したくないんですけど。だって、ヨリくんは私のわがままなら何でも聞いてくれちゃうの。呆れながら、怒りながら、笑いながら。

 私がしたいって思った事をとか、私がして欲しいって思った事とか、そういうの全部……させてくれるし、してくれるんです。

 

 仮眠室を出て、暗い廊下を歩いていると……物置の明かりが点きっぱなしなのが見えました。中から話し声がしたから覗いてみると……あれまぁ。A組のみんなが全員集合なのです。狭くないんですか? 狭いですよね? でも、何やら集まって話し込んでいるのです。何の話をしてるんですかねぇ……?

 

「廻道ってさ。何であんな――」

「――っと譲れな―――」

「それは、何となく分――」

 

 

 あー……。これはまた、間の悪い……。聞かなかったことにして立ち去……るのは無理ですね。流石に見過ごせないのです。場合によっては、ヨリくんへの悪口に発展するかもしれませんし。そんな真似をA組のみんながするとは思えないんですけど、今のヨリくんは……かなり良くない感じなので。悪口を言われちゃう可能性は全然高いと思います。頑なに言う事を聞いてくれませんからね。正面衝突してる相手の話を素直に聞ける性格ではないのです。

 

「……こんな時間にこんな所で、何の話ですかぁ?」

「ひぃいっ!?」

「ウェイ、ウェ〜〜〜イ」

「上鳴、あんたもうっさい」

「と、渡我先輩……っ!?」

 

 ありゃ。驚かせるつもりは無かったんですけど、驚かれてしまいましたねぇ。ってことは、私や円花ちゃん対して悪い事をしてる……なんて自覚があるんでしょうか? さっきのは、陰口ですし。峰田くんはビビりなのです。上鳴くんは……アホ面してますね。個性の使い過ぎでしょう。モモちゃんは、特に疲弊してるように見えます。常闇くんと尾白くんは、ボロボロですっごく魅力的です。包帯やガーゼに血が滲んでるのを見ると、つい気分が昂ぶってしまうのです。

 

「あ、そうだ……。渡我先輩に聞いてみない? ほら、廻道ちゃんの扱いなら一番だし」

「あ、確かに。渡我先輩、今の廻道について……何だけど。良かったら教えて欲しいなー……なんて」

 

 透ちゃんと三奈ちゃんが、困った顔で聞いてきました。いやまぁ、透ちゃんの顔は見えないんですけど。でも声音とかで、何となく分かるのです。A組の女の子とは、よく話すので。

 でも、この質問に答えるのは……ヤです。これはヨリくんの、円花ちゃんが隠してる事ですから。本人は聞かれないから答えない、なんて気持ちかもしれませんけど。

 

「んーー……」

 

 どう、しましょうかねぇ。ヨリくんの事を話してあげれば、きっとA組のみんなは理解を示してくれる……とは思います。ヒーロー目指してるだけあって、基本的にお人好しですし。同じぐらい我が強いとも思いますけど。

 あと、トガと円花ちゃんだけの秘密を露呈するのは……気が乗らないのです。二人だけの隠し事って、こう……特別な感じがするじゃないですか。それを手放すのは、惜しい感じがして。でも、説明してあげないと納得出来ませんよねぇ。

 

 んーー……。んん、んんんんん……っ。

 

 話したら、ヨリくんは……多分呆れながら許してくれます。怒るってことは無いでしょうけど。でも、話したらヨリくんからの信頼を裏切っちゃう。気がするの。それは、嫌です。絶対、ヤ。私をあんなに愛して、好いてくれてる大好きな人を裏切りたくないの。だから、ええっと……。

 

 ……円花ちゃんの、ヨリくんの主義についてだけ、改めて教える感じにしましょう。みんな、気付いてる部分だと思いますし。答え合わせです、答え合わせ。

 

「……円花ちゃんの主義は、知ってますよね?」

「……ぅ、うん。何が何でも、子供を絶対に守ったり……助けたり。ですよね……?」

 

 そうですね。ヨリくんと盛大に喧嘩中の緑谷くん、よく分かってるじゃないですか。私のヨリくんの事なのに。思い返してみれば、緑谷くんとはしょっちゅう一緒に何かしてます。ヒーロー活動とか、訓練とか、色々。円花ちゃん自身が、緑谷くんを気に掛けてるってのも有るんですけど。爆豪くんと言い緑谷くんと言い、轟くんとか常闇くんも。気になった子には直ぐそうやって構いに行っちゃうんですから。一番最初に構って貰ったのはトガですけど! そこは絶対譲らないのですっ。

 

「……そうするだけの理由が、有るんですよ。円花ちゃん、トガに会う以前に……それはもう大変だったみたいで。詳細は長くなっちゃうから省くんですけど。

 とにかく。その時の事が……有り体に言えばトラウマで」

「……前の両親の事、か?」

「前の両親の事?」

「轟ちゃん。何か知ってるの?」

 

 え……っ? 円花ちゃん、轟くんには話してたんですか?? いつ??

 ……あ、そう言えば体育祭の時に勝負を中断して何か話してましたっけ。距離が遠くて、何を話してるのか聞こえませんでしたけど。じゃあその時に……? 私より先に、轟くんには話してたって事ですか……??

 

 ……これは、後で確認するのです。もしそうだったら、浮気です浮気。何で大事な事を、トガ以外の誰かに話しちゃうんですか。そこは私に真っ先に話してくれないと……!!

 

「両親と色々有ったみてぇだ。俺んち……みてぇなことが有ったのかもな」

「ってことは、初期ロキみてーな時期が有ったってことか?」

「それは知らねぇけど。だけど、何か有ったってのは事実……だと思う。親が代わるぐらいの事は、あったんですよね?」

 

 ぁーー……、んん……。ええっと……。これは多分……前世の事は話してない、と思います。ただ少しだけ、前のご両親について話したんでしょう。全部は話してないみたいですけど。

 ……なら。円花ちゃんが轟くんに話したみたいに、前世の記憶が有ることはぼかしつつ……話してみましょう。もぅ、不器用なのに隠し事なんかしちゃって。そういう、バレバレなとこも大好きですけどっ。

 

「……昔、円花ちゃんには弟と妹が居たんです。それでその、前のご両親は呪術師の家系で。呪術師の家系って、聞いた感じ血統と才能至上主義みたいです。それも、とんでもなく凝り固まった感じで……ドロドロの。結構ヤバい感じです」

「えっ、弟妹が?」

「呪術師の家系……。なるほど、だから廻道さんは呪術について詳しかったんだ……」

 

 うーん。泥棒さんになった気分なのです。全部を話すのは無理なので、適当に嘘を織り交ぜつつ話し始めて見たんですけど……緑谷くんはなんか勝手に納得し始めちゃってるのです。

 

「……円花ちゃんは、二人の事が大好きで。結構溺愛してたみたいです。でも、望まれた才能は無かったみたいで」

 

 この辺の才能の事については、よく分からないですけど。呪術師の家系とか血筋とかそういう感じの細かな話は、あまり理解出来てないのです。聞けば詳しく教えてくれるんでしょうけど、思い出させたくないって気持ちもトガにはあるので。

 

「だから。……お父さんに、殺されちゃった。……って。円花ちゃんの知らない所で、呪霊の餌にされた……とか」

「―――、は??」

「……それ以来、みたいです。円花ちゃんが、子供を守ったり助けようとすることに……固執するようになったのは。

 緑谷くんとかお茶子ちゃん、梅雨ちゃんに切島くんは知ってると思いますけど、エリちゃんの時にあんな風になってたのはそういう訳です」

 

 あの時の円花ちゃんは、本当に辛そうで……怖かったです。私の事すら、全然見てくれなかったですし。そして今も、あの時と同じような顔をしてる。

 ヨリくんは……子供の命に何かされることを、心底嫌がって。その度に、きっと……胸を痛めてるのです。

 

 だって。ヨリくんが本当に守りたかったものは、とっくに失われてて。それでも、子供を守り助ける人生を最期まで貫いたのは……立派だと思うのです。ヨリくんは、やり通しました。そして今もまた、それをやり通そうとしてるの。あんな、辛そうな顔をして。他の生き方だって選べた筈なのに、呪術師として生きる事に固執して。それ以外の生き方を、模索することもなく……。

 

 だから、輪廻ちゃんは円花ちゃんにヒーローになれって言ったのかもしれません。呪術師として生きようとしてる円花ちゃんを、もしかしたら変えたかったのかなって。

 

「……だから。円花ちゃんは、みんなを頼りません。頼れないんです。だって円花ちゃんにとって、子供って言うのは守り助けるもの。もっと言うなら、戦いとは無縁の場所で愛でるもの……かもしれません」

「―――」

 

 爆豪くん以外の全員は、受け止め切れてないみたいです。何でか爆豪くんだけは、ショックも受けてないみたいですけど。

 

 ……トガとしても。もう少し、誰かを頼って欲しいのです。それはもちろん、呪術師として。

 呪術師やってる時の円花ちゃんって、全部一人でやろうとしちゃうから。私生活では、何も出来ないから私に甘えっぱなしですし、そもそも何もさせないでここまで来たのは私や輪廻ちゃんなんですけど。

 

 だってもぅ、すっごいポンコツで。家事をやったら必ず大惨事なのです。それ以外でもドが付くぐらいのポンコツですし。外で目を離せば迷子になっちゃうし、自信満々に色々な事を間違えますし。

 

 でも。私の事を一番大事に想ってくれてます。呪術師としての人生も、同じぐらい大事にしてるみたいですけど。トガの為に他の全部を投げ捨てて欲しい気もするんですけど、そしたら円花ちゃんは一番したい事を我慢するようになっちゃうので。それは我慢出来ません。私に何でもさせてくれる円花ちゃんに、何かを我慢して貰うのは絶対にヤ。

 

 だから。せめて楽しんで呪術師をして欲しいのです。子供を守って助けるなら……笑顔で居て欲しい。胸を痛めながら、人助けなんてして欲しくないのです。

 私を助けてくれた時みたいに「がははは!」って笑いながら、誰かの希望になってくれればなって。まぁ、それはそれで気に食わない部分はあるんですけど!

 

 私の円花ちゃんです! 私のヨリくんです!!

 

 ……それはそれとして、です。すっかり固まっちゃってるみんなを、どうにかしないといけません。だってこれ、下手したら引いちゃいますし。でも、そこで引いちゃったらヨリくんはずぅーっとあのままなのです。

 

 変わって欲しいわけじゃないの。諦めて欲しいわけでもないの。ただ、ヨリくんに……少しだけでも誰かを頼って欲しいなって。私が居ることの出来ない場所で、私以外の誰かを頼れるようになって欲しいのです。でないと、心配で心配で堪らないから。

 

「だからぁ、みんなには……円花ちゃんが守らなくても大丈夫ってところを見せて欲しいのです。でないと、もう本当に円花ちゃんは……誰も頼れないままになっちゃうので」

 

 お願い、しておきます。円花ちゃんの事をみんなに任せるのは、とっても嫌ですけど。出来ればトガが何とかしたいんですけど。でも……私はヒーロー候補生ではないので。将来を誓い合った大好きな人が居る、普通の女の子なので! こういう時は、ヒーローに任せるしかないのです!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








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