待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
領域を展開した。除外対象は、儂と覆面白髪以外の人物全て。今回は、領域を閉じた。何せ天候が悪いからの。あれだけの大雨では、領域を開いてしまっては不利になってしまう。相手は、せっかくの猛者じゃ。いや……これから猛者となり得る呪詛師じゃ。じゃからこそ、手を抜くような真似はしたくない。
相手が拙いと分かっていても、どうにも期待してしまっている。今度こそ呪い合えるのではないかと。思う存分、楽しめるのではないかと……!
「これは―――」
「何じゃ、聞いとらんのか? とっくに
領域内に招いた覆面白髪が、何やら驚いている。領域展開が何であるのか、それを悪党連合から聞いていないようじゃの。あやつ等と関わりが有るなら、とっくに知ってるものかと思ったが……。
……まぁ、良い。今更、悪党連合との繋がりを聞こうなどとは思わん。そんな事は、もはやどうでも良い。そんな事より、今は―――!!
両手を叩き合わせる。その瞬間、目の前の覆面白髪は勢い良く手をかざす。見えぬ壁を、張ったんじゃろう。じゃけどもはや、それは意味をなさぬぞ。防ぎたいのであれば、呪力で防げ!!
「穿血」
「が……っ!?」
必中となった穿血が、覆面白髪の右肩を貫く。これで、見えぬ壁での防御は無意味と悟ったことじゃろう。本来なら脳を貫いたり、全身の血液を体外に放出させて即死させる。が、人殺しは駄目じゃからの。手を抜くような真似はしたくないが、こればっかりは守らねばならん。そうしなければ、儂はともかくとして被身子がな……。くらすめえと達との約束も有る。この悪党は殺してしまいたいが、我慢するしかない。
……くそっ、こんな輩は死んで当然じゃと言うのに……!
「ぐ、く……っ! 貴、様……!」
「けひっ。そうじゃ、掛かって来い……!」
爪が、衝撃波が、蛇が。それぞれが一斉に儂へと向かう。その全てを苅祓で、赤縛で、穿血で相殺していく。こんなものか? 貴様、こんなものか? そんな筈は、無かろう……! 理由は知らんが、それだけ大きな呪力を持っているんじゃっ。もっとじゃ、もっと……もっと来い!
儂と! 呪い合え!!
血の海の上を、駆ける。遠距離ばかりでは面白みが無い……! 呪い合うんじゃから、全部やろう! 近くでも遠くでも、貴様の全てをぶつけて来いっ。儂も、全部出すぞっ!!
「貴様は、なんっ、なんだ……!?」
間合いを詰め、覆面白髪の面を殴る。同時に赤縛を放ち両足を縛り上げ、転ばせる。倒れたところを踏み潰そうと足を振り上げたが、転がって避けられた。血飛沫が上がったから、それを礫とし逃げ惑う悪党に降り注がせる。
何なんだ、じゃと……? そんなもの、決まっているじゃろうが……!!
儂は―――!!
「呪術師、じゃっ!!」
じゃから子供を守り助ける。じゃから呪霊を祓う。じゃから呪い合いたい。じゃから、呪詛師を、……倒す。それが儂じゃ。それも、儂じゃっ。
助けて、呪って。守って、呪って。愛して、呪って。それだけで良い、それだけが良い。ただひたすらに、それを繰り返したい……!
好きなんじゃっ。呪い合うことがどうしようもなくっ。
そうしたいんじゃっ。子供を守って、助けたいっ!
そして必ず、生きて帰る……!
転がり逃げる悪党に追い付き、蹴り飛ばす! 寸での所で、左腕で防がれた。が、片足が使えぬ上に縛られてる状況ではな。体勢は更に崩れ、二転三転と血の海を転がっていく。再び距離を詰めて頭を踏み付けてやっても良いが、それでは決着してしまう。何よりこやつは死んでしまうじゃろう。それは、駄目じゃ……っ!
起き上がろうと藻掻く悪党を、更に赤縛で縛り上げる。今度は全身を、死なぬ程度に締め付けていく。骨の一本や二本は折れたって構わんじゃろう? そうじゃよなぁ!?
そもそも! 子供に危害を加えようとしている貴様が、儂の前から無事に帰れると思うなよ!
「よっ、こいせぇえ!!」
「―――っっ!!!」
再び、悪党を蹴り上げる。今度は腹を蹴り抜いた。苦悶に満ちた面で、悪党は再び転がっていく。やがて勢いが弱まり、転がっていた体が停止した。おいっ、いい加減立ったらどうじゃ!? それ以上伏したままで居るなら、今度こそ踏み潰すぞっ。
「げほっ、がは……っ! ぐっ、うぅ……!
何故、そちら側に……居る……っ?」
「……は?」
そちら側、じゃと? 何の話じゃ、何の。くだらん事を口走る暇が有るのなら、さっさと立て。このたわけっ。そうじゃ、呪力で赤縛を振り払え! 自由になったなら、直ぐに逆らえっ。
左手から、爪が飛ぶ。足元から血を飛ばし、軌道を逸らす。良いぞ、良い……! まだ、儂に抗う力も立ち向かう気力も有るようじゃな!
ならば、もっと続けよう……! 儂はまだ楽しみ切れてないっ。貴様とて、そうじゃろう!?
「その笑み、その強さ……っ。さぞ生き辛い筈なのに、何故そちら側に立てる……!? 今の秩序に、何故に味方する……!?」
は? 訳の分からん事を聞きおって。貴様、ついさっき儂が何を言ったのかを聞いていなかったな?
言ったじゃろうが。儂は、呪術師じゃ。それ以上でも、以下でもない。であれば、元より秩序を保つ側じゃ。但し手段は問わぬし、非術師から見れば悪党に近しい存在じゃろうな。
呪術師は決して
儂は、儂が助け守りたいものだけに手を伸ばす。それ以外など、どうなろうが知ったことじゃない。
「呪術師じゃと、言ったじゃろ。儂はひいろおではない。守り助ける命も、奪う命も、全て儂が決める」
……それで? まさかここまで、なんて事は無いじゃろうな? まだ始まったばかりじゃぞ。楽しい時間はこれからじゃ! じゃから、立て。待ってやる。儂と最後まで呪い合え、呪詛師……!!
「……貴様は、
は? 誰が悪党じゃって……? ふざけた事を口にしおって。儂のどこが悪党じゃ。ただの呪術師にしか過ぎんが??
まぁ、呪術師を知らん奴からすればそう思われても仕方ない部分は有るのかもな。
……そんな事よりっ! 今は楽しまねば損じゃっ。語ってないで、さっさと貴様の実力を見せろっ。でないと、儂がつまらんじゃろうが……!!
もう、お喋りは良い。言葉なんて、とうに要らない。呪って、呪われる。それだけに、貴様も集中せんかっ!
真正面から、真っ直ぐ駆ける。再び覆面白髪の懐に跳び込むと、また見えぬ壁を張られた。芸の無い奴めっ、いつまでその守りに縋るつもりじゃ!!
「どっ、こいせぇえ!!」
全力で、壁を殴り付ける。同時に足元の血を操作し、悪党の足を掬う。姿勢が崩れたところに追撃しようとすると、壁を迂回するように真上と左から蛇が迫る。それを苅祓で切り刻むと、片足ながらも覆面白髪が踏み込んで来た。突き出されたのは、拳ではなく掌底。いや……。
真正面から来る掌底に拳を合わせたいところじゃったが、頭を下げ、避ける。と、同時。儂の頭の上を何かが通り過ぎた。危ないやつじゃの。呪力を纏っただけの打撃かと思えば、爪を飛ばしてくるとはな。狙いは、まぁ分かる。儂への攻撃と、同時に領域内からの脱出を考えているんじゃろう。が、それを許してやるつもりはない。
目の前にある膝に、蹴りを叩き込む。
「が……っ!!」
ちっ、惜しいな。もっと呪力の扱いが洗練されていれば、膝をへし折ることなど出来なかったんじゃが。
……違うのか? 貴様では、無いのか? おい、ふざけるな……っ。ふざけるなよ……! 儂を満足させろっ。この衝動を、この欲求を、貴様が満たしてくれるのではないのかっ!?
「……終いじゃ」
解せぬ。不満じゃ。納得出来ぬ。こんな筈では無かった。こんなつもりじゃ、なかったんじゃ。なんでこうなるんじゃ? どうして、心行くまで呪い合うことが出来ぬのか。儂の前に立つ者には、儂以上に強く在って欲しい。全力を、死力を尽くして尚……倒れぬような相手が欲しい……!!
どうして、どいつもこいつも……!! 脆い土くれなど、欲しくはない。踏み潰せば咲かぬ花など、愛でたくも無いっ。あやつは応えてくれたっ。あの男は、悉く儂の上を行ったんじゃ! そんな奴と再び相見えることを、こんなにも望んでると言うのにっっ!!
「まだ、だ―――! 諦めることなど―――!!」
もう、足掻くな。足掻いたって無駄じゃと、貴様が一番分かってるじゃろう? 穿血に貫かれた片足と、膝を壊された足では立つことは出来ぬ。
くそっ。くそ、くそっ。何でじゃ? 何で、どうしてこうなるんじゃ!? 誰でも良い。誰でも良いから、儂を楽しませてくれ……!
「がっ、ぁあああ―――っっ!!」
悪党が吠える。領域内に、覆面白髪の呪力が流れ出す。血の海が波立ち、領域そのものが揺れている……ような気がする。
これが最後の足掻きであることは、見てれば分かる。これだけの呪力放出は、長く続かん。領域を壊すより先に、呪力が尽きるじゃろう。こやつが何をどうやってこれだけの呪力を得たのかは、分からんところじゃが。目に見えた物を言うなら、何やら背中にある水差しのようなものから何かを体内に注入して……。あれは薬……、か? まぁ良い。そんなのは後で気にすれば良いことじゃ。
「―――終いじゃと、儂は言ったぞ」
先程待機させておいた穿血を、一斉に放つ。貫くのは四肢と肩。頭と胴体は、貫かずにおいてやる。流石に即死する危険があるからの。とは言え、手足の怪我でも放っておけば人は死ぬが。
幾重の穿血が、覆面白髪を貫いた。と、同時。溢れ出す呪力が消失した。どうやら意識を失くしたようじゃの。そうであって欲しくは、無かったが……。
―――虚しいのぅ。心行くまで呪い合えないのは。死力を尽くすことなく、戦いを終えてしまうのは。
覆面白髪は、指ひとつ動かさない。動いてくれ、立ち上がってくれと願っても……動かない。
……終わり、か。もう終わりなのか。こうして終えてみると、この男は大した強さを持ち合わせては居なかった。楽しめそうな相手じゃったんじゃけどなぁ。どうにも……残念極まる。
領域を解く。血の海も結界の外殻も消失し、残ったのは目の前に倒れたままの悪党一人。納得はいかんが、まぁ少しは楽しめた。殺してしまいたいところじゃけど、人殺しは御法度じゃからの。
この後のことは……、安全を確認してから帳を上げるとしよう。それから、被身子の下に帰らねばの。帰って、叱って……抱き締めよう。でないと収まりが付かんと言うか、こういう時は被身子と触れ合いたいと言うか……。うぅむ……。
ひとつ、気になることが出来た。誰に聞いたとて、儂は恐らく納得はしないんじゃろうけども。
それに、先をどうするべきかも考えておきたい。子供達が儂に何を言うのか、目に見えてるからの。ひとまずは褒めてやっても良い。
「……はぁ……。何で、上手くいかないんじゃろうなぁ……」
どうしてか。気が重くなって来た。
「……ぐっ、……か……っ……」
……ほう? 意識が有るのか? いや、意識を取り戻したのか? どちらにしても、もう動けんじゃろう。指先ひとつ、動かせそうにないの。そもそも、両腕も両肩も使い物にならんところまで痛め付けたつもりじゃ。
「かはっ、ご……っ。ぁ……! 貴、様……。必、ず……」
何かを言おうとしている。何じゃ貴様。言いたい事が有るなら、しっかりと口にしろ。聞いてやらんでもない。
「……後悔、す、る……―――」
後悔? 誰が? 儂が、か……?
……何を言っておるのやら。この悪党、訳の分からん事を口走ることが多いのぅ。誰が後悔するって? 後悔なんて、今更じゃろ。そんなもの、幾らでもして来た。何度だって、味わって来たとも。
「―――」
……喋らなくなったの。再び意識を失ったようじゃ。何なんじゃこやつ。力だけの世界がどうだの、儂が悪党じゃの、後悔するじゃの。そういうのはな、もっと実力を付けてから言うべきじゃ。まぁ大抵の相手はどうとでも出来たんじゃろうけどな、この覆面白髪は。儂が相手じゃったが故に、こうして敗北したわけで。
さて、と……。取り敢えず、動くとしよう。面倒この上無いが、まずは止血してやらんとな。ないん、の両腕は大惨事じゃ。当面どころか、一生使い物にならぬかもしれんが……まぁ当然の報いじゃろ。儂の前で子供を標的にしたんじゃ。命が有るだけ、ありがたいと思って欲しいところじゃのぅ。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ