待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
風邪は二度と引きたくない。体調管理には気を付けなければ。幾ら忙しかったり、疲れたりしてるからって倒れてしまうのは駄目じゃ。被身子に心配されてしまうし、動くこともままならんし。これからは、体調管理もしっかりとしなければな。
どうやら、幾ら
……とにかく。風邪は勘弁じゃ。まさかこの三日間、裸で床に伏すことになるとはの。被身子も素っ裸で過ごしておったし。流石に部屋を出る時は服を着ていたから良しとするが。なぁにが「寒そうだから暖めようと思って!」じゃ。裸で添い寝する必要がいったいどこに有ったのか、まるで分からん。
結局、儂は三日も寝込んでしまった。この三日間のことは、出来ればあまり思い出したくない。じゃって、ずっと被身子の胸を借りて甘えていただけじゃからの。何とも情けない姿を見せてしまった気がする。まぁ……被身子は終始、どこか楽しんでいるような気がしたが。
そんなこんなで。体調はどうにか回復した。今日から、任務に戻る。島は悪党共の襲撃で大部分が滅茶苦茶になってしまったが、復興作業自体は順調らしい。さっき朝食を食べてる時にながんがそう言っていた。儂も、復興作業には後で合流するつもりじゃ。任務が終わり次第、出来ることが有れば手伝おうと思う。
……ただ、その前に。任務に向かうよりも先に、ひとつやっておきたい事がある。こればっかりは避けては通れん。
「……よし。全員集まったな?」
くらすめえと達が復興作業に出てしまう前に、儂は全員に集まるよう声を掛けた。部屋から出た際、
いおぎ荘の一階、その広間にて。何故か相澤やながんまでこの場に居るが、それは気にしないで早速本題に入るとしよう。儂を後ろから抱き締めてる被身子がまったく離れようとしないことも、気にしないでおくとする。これはほら、いつもの事みたいな感じじゃし。
「……まず、倒れてすまなかった。今後、体調管理には気を付けるから許して欲しい」
「まったくだ! 俺は心配したんだぞっ、ほんっとに心配したんだぞまったくもぅっ!!」
「す、すまんて……」
「三日も出てこねーからヤバいんじゃないかって、みんな心配しててよ……! 元気になって安心したぜ!!」
「ぉ、おう……。すまなかったの……」
ひとまず体調不良で倒れたことを謝ると、飯田や切島がかなり勢い良く詰め寄って来た。特に飯田、腕を振り回して腹から声を出すな。大分喧しいんじゃけど? まったく、なんでこやつはこうなのか。緑谷や舎弟も大概じゃけど、飯田は飯田で中々の癖者……。切島はまぁ、口を開けば比較的喧しい方か。こう、勢いある感じでの。嫌いではないが。
「息災で何より。病み上がりだが、動いて平気か……?」
「まだ辛ぇようなら、休んでくれ」
「……平気じゃ。体は動くようになったしの」
うぅむ……。今度は常闇と、轟か。どちらも心配そうな面をしおって。こんな表情をさせてしまったのは、儂の不徳じゃの。やはり今後は、体調管理に気を配らなければ。今回の場合は心労が祟ったと医者が言っていた。原因はまぁ……分かっては居るが。しかしそれを口にするつもりはない。これについては黙っておくつもりじゃ。でないと、くらすめえと達全員が気を落としかねないからのぅ。
「今日の復興作業は、見てるだけで良いんじゃね? て言うか、廻道が参加したら余計な手間が掛かりそうだし。……なぁ?」
「世界一のポンコツだもんな。廻道に復興作業は無理だって」
……は? 何じゃって? 今、何と言ったんじゃ上鳴。それと瀬呂、誰がぽんこつじゃって……? 儂が病み上がりじゃからって、ぽんこつ扱いしても気付かないとでも思ったか?
ゆ、許さん。この二人は許さん……! 別に儂にじゃって、復興作業の手伝いぐらい出来るんじゃけどっ!? まったく……!!
「でもほんと、元気になって良かったよー。風邪には気を付けようね……!」
「そーそー。ヒーローは体が資本なんだから、体調管理はしっかりしないと! あ、廻道の場合は呪術師……なんだろうけどっ」
げ、解せぬ……。これは解せぬ。さも当然の事をくらすめえと達に言われるのは、納得出来ん。と言うか、今度は葉隠と芦戸か。お主等、……と言うか
っと、いかんいかん。被身子を気にして、本題を忘れるところじゃった。くらすめえと達を集めたのは、謝ったり被身子との仲を見せ付ける為だけではない。
どうしても、言わねばならん事がもうひとつだけ有るんじゃ。
「それで、貴様等に言わねばならんことが有るんじゃ。黙って聞いてくれ」
「……もしかして、僕が眩しい……とか☆」
いや、違う違う。青山め。貴様も大概、自分勝手な物言いをしおるよな。話の出鼻を挫かないで欲しいんじゃけど? まぁ取り敢えず。今は一旦、無視するとしよう。でなければ話が進まん。
一度くらすめえと達の顔を見渡すと、ほぼ全員が身構えた。儂が何を言い出そうとしているのかに、身構えているような気がする。これはこれで解せぬ。別に、変な事を言うつもりは一切無いんじゃけども。……とにかく、話したいことを話すとしよう。
「……まず。全員生きて帰って、何よりじゃ。怪我人は多少出てしまったけれど、この事については……褒めてやろう。よく、誰も欠けずに帰ってこれたの」
こればっかりは、褒めてやるべきじゃと思う。戦いの場に赴きながら、誰も死ななかった。一度目の襲撃では怪我人が出てしまったが、それでも死者は居ない。二度目の襲撃では、戦闘に参加した子供は全員無傷じゃ。儂が補助に回ったことや、ないんに止めを刺したのが儂じゃった事を加味しても、やはり誰一人死ぬことなく事態を解決出来たのは……嬉しく思う。
今後とも今回のように無傷……最低でも生還してくれれば、文句は無い。まぁ本音を言えば、
「……」
「……」
「……」
「……」
は? おい、何じゃお主等。儂が褒めてるんじゃから、少しぐらい嬉しそうにしたらどうなんじゃ? 特に芦戸、何故目を擦る? 耳郎は自分の頬をつねっとるし……。葉隠はまぁ……見えぬけど何やら喜んでる感じがするの。何じゃおい、夢かなんかじゃと思っとるのか? 儂が貴様等を褒めるのが、そんなに珍しいか……? 儂じゃって褒める時は褒めるんじゃけど……??
げ、解せぬ……。解せぬが……、まぁ良い。話を続けよう。
「で、じゃ。それとは別に、貴様等全員を叱っときたいんじゃけど」
「えーーっ!? 何でっ!?」
いや、何でって。そりゃあ傍目から見て、貴様等の行動が良くなかったからじゃ。
「……まぁ、色々棚上げさせて言わせて貰うんじゃけどな? 貴様等、手段を選べ手段を。今回の戦闘、悪党のやり方と大差無かったぞ」
これは事実じゃ。戦闘に参加したくらすめえと達のやり方は、悪党同然じゃった。戦闘において弱味を見せる方が悪いのは確かじゃけども、じゃからって
無論、常にそれが上手く行くとは限らん。場合によっては、
―――生温い考えじゃって、分かってる。殺してしまった方が手っ取り早いし、そうするべきじゃと思ってしまう。じゃけどそれは、儂が呪術師じゃからじゃ。こんな考え方を、夢を追い掛ける子供にして欲しくは無いのぅ。そういう事もあると、気に留める分には構わんのじゃけども……。
「
飯田が衝撃を受けた。他にも、儂の言葉で固まってる者も居る。緑谷とかな。
「……戦闘において、相手の弱点を攻めるのは定石だろ」
轟は、当たり前の事を口にした。舎弟は何故か轟を睨んだ。何でじゃ? 先に言われたのが気に食わんかったのか……?
「そうじゃな。それは間違いではない。しかしそれでも、程度を弁えろって話じゃ。でないと、恨みが残るからのぅ」
恨みを残すようなやり方をするなら、恨みなど残らんように殺しておけと思わんでもないが。別に、くらすめえと達の戦い方が大きく間違ってるわけでもないんじゃ。悪いのは弱味を見せた方、弱点に付け込まれた方なんじゃから。しかし、それでも……何と言うか。要するにこれは、儂のわがまま……での。そう、わがままでしかないんじゃ。儂のようになって欲しくないから、止さぬかと言っているだけで。
「……割り込むが、良いか?」
相澤が、軽く手を上げた。何じゃ貴様。貴様は黙っとれ。儂が話してるんじゃぞ、儂が。しかし何やら言いたい事があるようじゃ。うぅむ……。儂の話が終わってからにしてくれんかのぅ。
「割り込むぞ。轟や廻道も言ったが、戦闘において相手の弱味に付け込むのは間違いじゃない。ただ、何事にも限度がある。やり過ぎれば、ヒーローとて罪に問われる場合も有る。
だからこそ鍛錬を行い、人を迅速に制圧する術を俺達ヒーローは編み出し続けている。お前達がこいつを目指すなら、それが前提って話だからな。怠らないように。……良いな?」
……ちっ。儂が言いたい事を全部口にしおって。間違いではないわ、たわけ。嫌いじゃ相澤なんて。儂よりも小僧のくせに、一丁前の面をしおって……!
「廻道が言いたいのは、常に正しくあれってことだ。これが実践出来るヒーローは、プロでもそう多くない。だがお前達には、正しいヒーローってのを目指して貰う。その為に、お前達は学んでいるんだ。
廻道を追い掛けるあまり、道を見失うな。常に原点を心に据えておけ。以上」
言うだけ言って、相澤は腕を組んで壁により掛かり……閉口した。貴様。儂が言おうとしてた事を全部語りおって。話すことが無くなったんじゃけど? ゆ、許さん……!
「はぁい、トガからも良いですか?」
は? いや、おい。何を言い出すつもりじゃ被身子。なんかろくでもない事を口走りそうな予感しかしないんじゃけど? 顔は見えんが、声で分かるんじゃぞ声でっ。頼むから変な事を言うなよ……? 絶対じゃぞ……!?
「結局無傷、とは行かなかったですけど……みんなが頑張ったのは分かります。でも、それでもまだ円花ちゃんがみんなを信頼するにはまだまだですので頑張ってくださいねぇ」
おい。おい被身子。この期に及んで煽るんじゃないっ。それで余計に子供達が躍起になったら、どうするつもりじゃ貴様ぁ!
「まぁ多分、無理なのかなーって思いますけど。円花ちゃんの信頼を得られるのはトガだけなので! あとは百歩譲って、火伊那ちゃんぐらいのものなのです!」
……。……それは、まぁ。そう……かもしれん。被身子のことは信じておるし、ながんじゃってある程度の信用は置いている。補助監督として、存分に働いてくれているからの。基本的に儂に合わせて行動してくれるし、お陰でやり易い部分が有るのも事実じゃ。常日頃から補助監督をしているのがあの翼男じゃと思うと、肝が冷える。あやつ、儂を抱えて空を飛ぶからの。あれは色々な意味で心臓に悪いから止めて欲しいところじゃ。
まぁ、それはともかくじゃな? 被身子、お主なぁ……! 何でそう、直ぐに煽るんじゃ貴様っ。良くないんじゃぞ、そういうのっ。
ほら、見てみろ……! 何か子供達が意気消沈しとるんじゃけど!? どうするんじゃこれっ!?
「でも、円花ちゃんはみんなには甘いので。頑張り続ければ、もしかしたら頼って貰えるようになるかもしれませんよ?」
いや、それは無い。ないない。子供達を頼ることは……まぁ私生活では頼ることも有るじゃろうけど、呪術師として頼ることは決して無いんじゃ。頼ってなるものか。そんな真似をしたら、みんな死んでしまう。それは、駄目じゃ。絶対に駄目なんじゃ。
「と言うわけで! トガはこれから円花ちゃんとデートしてくるので、今日は放っておいてください!」
……は?
……。……まぁ……良いか。
し、仕方ないのぅ。仕方ない仕方ない。被身子がそう望むんじゃったら、儂は反対はせん。
「おい待て。この状況でデートする奴が居るか」
至極真っ当な一声が飛んできた。相澤が儂等を睨んでいる。これについては、うむ……。当然の反応なんじゃけども。反論の余地が無い。しかしなぁ、相澤。一度でもその気になった被身子を止めるのは無理じゃぞ? 儂が言うんじゃから、これは間違いない。がははは! ……はぁ……。
……さて、どうしたものかのぅ……。どうしようか。睨んでくる相澤を宥める方法は……。
「デートって言っても、任務ですよぉ。まだこの島の呪霊を祓ってないので、その調査に行くってことです!」
「……紛らわしい言い方をするな。まったく……」
あ、駄目じゃこれ。全然駄目じゃぞ、相澤。今、被身子は平然と嘘八百を並べたが? そんな言い訳を聞いて納得するんじゃない。止めようとするなら、騙されるな。被身子の言葉を鵜呑みにするな……! 別に止めて欲しいわけではないが、貴様もそろそろ被身子の扱いに慣れんかっ。後で大変なんじゃぞ! 儂が!!
で、この後。復興作業に向かって行ったくらすめえと達やら相澤を見た被身子は―――。
「チョロいのです。じゃあ、楽しみましょう!」
と、悪どい笑みを浮かべていた。それ見たことか。被身子の言葉を鵜呑みにすると、こうなるんじゃぞっ。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ