待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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産土神信仰。逢瀬逢引

 

 

 

 

 

 

 

 と、言うわけで。被身子と揃いの袴姿で、海に来た。いや、何が「と、言うわけで」なのかは分からんが。結局、相澤は被身子に騙された。そしてながんは、今回の逢瀬(でぇと)に巻き込まれた。これについては、まぁ仕方ない事ではあるんじゃ。じゃってほら、ながんは儂から離れられんし。腕輪やら首輪やらは一度は壊したんじゃが、慌てて駆け付けた公安に新しいものを取り付けられてしまっての。もう、ながんの動向を監視する理由は無いような気がする。儂としては、じゃけど。

 秘匿釈放の条件に動向の監視と個性の抑制が含まれている以上はながんは不自由の身で過ごさねばならない。これは仕方ないことじゃし、ながんは成人しとるから儂がとやかく言う事でもない。が、気になるのは気になる。

 

 それにしても。こやつの個性は、中々に強力なものじゃった。聞いたところによると、腕が狙撃銃に変化するらしい。で、髪は弾丸になるとか。あの時、獣面を帳の内から撃ち抜いたのはながんじゃ。久しぶりの個性使用にも関わらず、見事に撃ち抜いて見せた。それを目の当たりにしてしまったのが儂なんじゃけども、……こう。いつか、ながんとも手合わせしたいところじゃの。呪い合いにはならぬじゃろうけど、それでも楽しむことは出来そうな気がしないでもない。

 

 なにせ。あの弾丸の速度は穿血と同等かそれ以上な気がするんじゃ。いつか競い合いたいものじゃの。何なら、いつかとは言わず今……。

 

「……アンタ、それは失礼じゃないか?」

「何が?」

「デートなんだろ。だったら、渡我だけ見るべきだ」

「そーーなのですっ! もう! もぅっ!」

「おぐぅっ」

 

 じゃからっ、急に全身で抱き付いて来るのは止さぬかっ! 儂じゃなかったら転んでおるぞ! まったく、被身子と来たら……!

 

「私とデートしてるのに火伊那ちゃんを見るなんてっ、浮気です浮気っ」

「し、しとらんしとらんっ。する筈なかろうっ!?」

 

 急に何を言い出すんじゃこやつはっ。まったく、いつもいつも突拍子も無いことを口走りおって! たまには儂の立場になって見れば良いんじゃっ。仕方のない奴めっ。

 

「ほんっとぉーーですか?」

(まこと)じゃ(まこと)。儂が好きなのはお主だけで……!」

「そこは愛してるって言って欲しいんですけどぉ……」

「……ぁ、愛しとるから。儂はお主だけじゃって」

 

 ……何を言わされているんじゃろうか、儂は。いきなり機嫌を悪くするんじゃもんなぁ。お陰で宥めるのが大変じゃ。何故、ながんの前で愛を囁かなければならぬのか。解せぬし、何じゃか気恥ずかしい。人前で愛し合うこと自体は、今更な行為では有るんじゃけども。っておい、ながん。呆れた面をして二歩も三歩も遠ざかるな。露骨な態度を取られると、それはそれで反応に困るじゃろ……!

 

「……むーー……」

 

 あ、いかん。ながんを見るのは止しておこう。でないと、被身子の機嫌が悪くなる一方じゃ。拗ねた顔も好ましいと思いはするが、やはり一番は笑顔じゃからの。せっかくの逢瀬(でぇと)……、いや逢引なんじゃから拗ねられるのは困る。ここからは被身子だけに集中しなければならん。取り敢えず、機嫌を直して貰わなければの。

 

「すまんて。儂の心に居るのは、後にも先にもお主だけじゃぞ?」

「そこは疑ってないので。それに、私だってそうですっ」

「ぐえぇっ」

 

 これでもかと、抱き締められる。周囲に人が居ないことが幸いじゃった。何せ観光客は軒並み帰り、島に居るのは主に島民じゃ。そこに何人かの英雄(ひいろお)に、くらすめえと達。その殆どが、と言うか儂等三人以外が復興作業に勤しんでおる。儂も任務を済ませなけれびならんのじゃけど、被身子が我慢の限界のようでの。これ以上待たせるのも忍びないし、儂も逢引したい気分になってしまった。ので、こうして誰も居ない砂浜にやって来たわけじゃ。くらすめえと達には悪い気がするが……まぁ……そこは許して欲しいところじゃ。

 

 あ、そうじゃ。麗日と緑谷にこっそり逢引を勧めておこう。秘密の逢瀬(でぇと)をすれば少しは進展するじゃろ。知らんけど。

 

「じゃあ、泳ぎましょう!」

「じ、自分で脱ぐから脱がすな……!」

「えぇーー? 良いじゃないですか、いつも脱がされてるんですし」

「寝室と外じゃ違うじゃろ……っ」

「違いませんよぉ。ほらほら、脱いで脱いで!」

 

 辱められている。気がしてならん。いやまぁ、周りにはながん以外居ないんじゃけども。そのながんにしたって、鞄から取り出した敷物を砂浜の上に広げて何処かを眺めてるようじゃけど。海でも眺めてるのか? あやつ、いつの間に……。

 って、こら被身子っ。脱がすなっ。全部脱がそうとするな! お、おい……っ。

 

「あはっ。カァイイのです……♡」

「……へんたい」

 

 まぁ別に、裸になったわけではない。かと言って、下着姿にさせられたわけでもない。今朝は袴の下に、水着を着せられたからの。お陰で、何と言うか違和感が酷かった。何でこんな真似をしなければならなかったのか、さっぱり分からん。意味不明じゃ。しかしまぁ、何やら被身子が喜んでいるから良しとしておくが。それと、やはりこの水着は色合いが派手な気がしないでもない。赤いし、ひらひらじゃし。こんな格好で海に入るのか? こう……すくぅる水着で良かったのでは? と思わんでもない。どうせ泳ぐなら動きやすそうな水着の方がじゃな……。

 

 それはそれとして。儂だけ脱がされたのは納得いかんので、仕返しに被身子を脱がそうと思う。帯を指で引っ掴むと、一瞬目を丸くされた。が、次の瞬間には、にたりと笑いおった。お主、まっこと悪人面で笑うのぅ。それが好きな儂も、大概どうにかしていると思わんでもないが。

 

「ヨリくんのえっち。朝からこんな所で、トガに何をするつもりですか……♡」

「喧しい。お主もさっさと脱げっ」

「きゃーー♡」

 

 何なんじゃもぅ。誰がえっち、じゃって? それは被身子の方じゃろまったく。まだ午前中なのに、物欲しそうな目で儂を見おって。そういう目をするのは、二人きりで人目の付かないところでして欲しいものじゃ。それなら別に、好き勝手にしたって良いんじゃから。……まったく! 被身子のへんたいっ。

 

「んふふっ、脱がされちゃいました。それで、どうですか? 円花ちゃん好みの水着を来たトガは!」

 

 どう……って。いやまぁ、うむ……。

 

 ……今の被身子は、儂が選んだ水着を着ている。儂が着てるのとは形が違うが、色は同じじゃ。水着の意匠(でざいん)についてはよく分からんけども、多分おかしな形はしとらん筈じゃ。あんまりにもおかしなものじゃったり、被身子の趣味に合わんものは選んどらん。と言うか、選べん。好みじゃ無いものは、そもそも拒否されたからの。

 

 にしても、赤い。赤い水着じゃ。確か……三角びきに……? とか言うやつじゃの。儂が着てるのは、わんぴぃす……じゃったっけ? お揃いなのは色だけなんじゃけども、今回の場合はお互い選び合った水着が良いとのことでこうなった訳じゃ。何でもお揃いにしたがる被身子にしては、珍しいとは思う。

 

「どうですか!?」

 

 いや、迫るな。見せ付けるように迫られても、困る。何が困るって、目のやり場に。被身子の肌は、それこそ何度じゃって見て来た。見て来たんじゃけども、こう……普段とは見え方が違うんじゃ。いつもは風呂か、或いは部屋の中、もしくは布団の上でしか肌を見ることは無い。凝視する機会があるとすればそれは暗い部屋の中でが多くてのぅ。じゃからその、昼間に明るい所で被身子の肌を見るのは目のやり所に困る。水着で着飾っているせいか、何と言うか普段より……。

 

 ……むぅ。何か、してやられた気分じゃ。それはそれとして、周りに居るのがながんだけで良かったとも思う。被身子のこんな姿を、誰とも知らん輩共に見せたいとは思わん。もっと言うなら、くらすめえと達も駄目じゃ。

 

「……良い、と思う。じゃけどその姿は、人に見せないでくれるかのぅ。それと、目のやり場に困る」

 

 素直に白状するのは何じゃか負けた気分じゃけども、抱いた感想は包み隠さずに伝えておく。黙り込んでいると、無理矢理言わされそうな気がしないでもないし。……って、いかん。被身子が、それはもう嬉しそうにしている。これ次の瞬間には飛び付いて来てもおかしくな―――っっ!!

 

「円花ちゃんっ!」

「ぬぉおっ!?」

 

 押し倒されたわ。思いっきり、押し倒されたわ。背中が痛い。あと、砂が熱い。今日も今日とて、この島の天気は晴れ渡っているからの。空は青い上に、雲一つない。見事なまでの快晴じゃ。

 

「えへへぇ。独占欲丸出しで、カァイイのです……♡」

「仕方ないじゃろ。そう思ったんじゃから」

「んふふ。カァイイねぇ、カァイイねぇ♡」

 

 うぅむ。こそばゆい……。被身子が首や頬に、これでもかと頬擦りしてくるんじゃ。ところで被身子、何で儂の両手首を掴んでるんじゃ貴様っ。動けんのじゃけど? って、おい。首に接吻(きす)をするな、舌を這わせるな……! こらっ、被身子っ!

 

「食べちゃいたい気分……♡ ヨリくんはぁ、直ぐそうやってトガを誘惑するんですから♡」

「しとらんしとらんっ。お主、何で直ぐに迫ってくるんじゃっ!」

「それは円花ちゃんが誘惑するからですよぉ。んっ、ちぅう……♡」

「ん……っ。へ、へんたい……! 何じゃもぅ……!」

 

 い、いかん。何とかして被身子を止めねば。何がとは言わんけど、ここで始まってしまいそうじゃ。室内ならまだしも、外であれやこれやとしてしまうのは駄目じゃ。公序良俗に反してしまうし、二人して警察の厄介になってしまうじゃろう。流石にそれは駄目じゃから、どうにかして避けなければ。しかし……どうやって……? 被身子じゃぞ? 一度でもその気になってしまったら、満足するまで突っ走ってしまう被身子なんじゃぞ……?

 

 そ、そうじゃ。こうなったら帳を降ろそう! そうしたら、少なくとも非術師の目に付くことはない! 緑谷も、わざわざ帳の中に飛び込んで来たりはしないじゃろう。いや、あやつは飛び込んでくるか。しかし、帳に気付いてここにやって来るまで時間が掛かる……と思う。じゃったら、その間にじゃな……?

 

 ……いや。いやいや。何を考えてるんじゃ儂はっ。見られなければ良いなんて話ではない! そもそも、外でしてしまう事が問題なんじゃ……!

 

「……なんて、流石に冗談ですよぉ。今日は健全にイチャイチャしましょう! この続きは夜に布団の中で、ね?」

 

 どうしたものかと慌てていると、悪い顔をした被身子が儂の唇に指を当てながら体を起こした。好き勝手した上に、意地悪く笑いおって。そういうところも愛しいと思うけど、たまには手加減してくれんかのぅ。まっこと、仕方ない奴なんじゃからっ!

 

 

「という訳で円花ちゃんっ。サンオイル、塗ってあげますね♡」

 

 

 ……は?

 

 

 

 

 

 

 

 







このあと、滅茶苦茶セクハラされた。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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