待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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産土神信仰。同行拒否

 

 

 

 

 

 

 何だかんだで。儂等は真幌と活真に案内される形で、海辺の祠に向かっている。本音を言えば気乗りしない。自分で祠を見付け出すことは出来なかった上に、結局は子供に頼ることになってしまったからの。決して良い気分とは言えぬけど、それでも任務は遂行しなくてはならん。

 ……じゃから。目的地に辿り着いたら、直ぐにでも赤鬼を祓うつもりじゃ。そうすれば、今回の任務は終わりじゃからの。任務さえ終わってしまえば、後は何をしていようが問題無い。いやまぁ、島の復興作業を手伝うことになるかもしれんけど。まぁ、その時はその時じゃ。隙を見て抜け出すか、或いは最初から参加せずに被身子と逢瀬(でぇと)をじゃな……。

 

「あれ? 廻道さんに渡我先輩?」

「あ、活真くんに真幌ちゃん。どうしたの?」

 

 ぬ……。真幌と活真の後ろを、被身子やながんと共に歩いていると、たまたま麗日と緑谷に出会した。二人共、汗が浮かんでいる上に装束(こすちゅうむ)が汚れている。復興作業を頑張っているようじゃの。麗日も緑谷も、力仕事には持って来いの個性じゃ。あれやこれやと頼まれて、休む暇も無いんじゃろう。

 

「デク兄ちゃん……! あ、あのね? 今はヨリミナ姉ちゃんを道案内してあげてるとこで……!」

「えっ。もしかして……迷子になってた……?」

「渡我先輩と筒美さんが居るなら迷子にはならへんと思うけど……。もしかして、迷子しちゃったり……?」

「違うわよっ。そんな事よりデク! ヨリミナ、海で遊んでたんだけど!? 復興作業もせずに、そこの人とイチャイチャしてて……!! どうなってんのよ、雄英ヒーロー科は!!」

 

 うぅむ。どいつもこいつも言いたい放題じゃ。もっとも真幌の言い分は妥当なものでは有るか。活真は……何やら楽しそうじゃ。まるで、おおるまいとを前にした緑谷じゃ。

 ……そうか。なるほど。どうやら活真は、緑谷の事を気に入って信頼しているようじゃな。それは悪い事ではない。可愛らしいものじゃ。

 

 それはそれとして、緑谷と麗日が儂を迷子扱いしたことについては許さんが。まだ道に迷ってないんじゃけど? と言うか、被身子やながんも居るから迷ったりしないんじゃけど??

 

 まったく、隙あらば儂を方向音痴扱いしおって……! 貴様等がそういう扱いをするから、逆らいたくなるんじゃぞっ。

 

「え、えっと……。ごめんなさい……? その、ヨリミナは渡我先輩の事が大好きで。ちょっと僕達じゃどうしようもないかなーー……って感じだったり……」

「そうやって甘やかすから、ヨリミナはポンコツなのよ! 改めて!!」

「ごめんなさい……。気を付けます……」

「は? ぽんこつではないが??」

「ヨリミナはポンコツでしょ! ほんっと、信じらんないくらいのポンコツなんだから!」

「いや、じゃからぽんこつでは……」

 

 何故か儂に飛び火した。何故、白昼堂々とぽんこつ扱いされねばならぬのか。解せぬ。方向音痴扱いは、この際仕方ないと言えなくもない。が、ぽんこつ扱いは駄目じゃ。誰がぽんこつ、じゃって? 儂はぽんこつではないんじゃっ。何じゃって、誰も彼も儂をぽんこつと言ってしまうのか……! ぽんこつって言うのはなぁっ、儂の父親みたいな奴の事を言うんじゃ!

 

 断じて儂は、ぽんこつではないっ。ないったらないっ。いずれ、周囲の認識を何とかして変えなければ……!

 

「まぁ、円花ちゃんは世界一のポンコツですからねぇ……」

「そうだな。この子以上のポンコツはそう居ない」

「うんうん。ポンコツだもんねぇ……」

 

 は? 被身子?? ながんに、麗日まで……! おい緑谷、儂を見て苦笑いするんじゃないっ。そこは、儂が如何にぽんこつでは無いかを語ってくれても良いんじゃぞ? と言うか、語れ。儂がぽんこつではないと言え。おい、目を逸らすな。冷や汗を浮かべてないで、儂の味方をしろ儂の味方をっ。

 

 まったく、使えん奴め……!

 

「と、ところで! 道案内ってもしかして、赤鬼の……?」

「……まぁ、そうじゃな。取り敢えず案内してもらうことになった」

「じゃあ、これから任務なんだ……。なら僕も……」

「付いて来るな、たわけ」

「った!?」

 

 案の定とでも言うべきか。緑谷が付いて来ようとしたので、額に向かって血の礫を飛ばしておく。至近距離とは言え、これを避けられんのはどうかと儂は思うぞ。呪力の起こりを見んか、呪力の起こりを。成長してるんじゃか、してないんじゃか。

 そんな事より……。……うむ……。

 

「な、何……?」

「いや? 体は問題無いようじゃな。お主なぁ、個性使用には気を付けろと言われてたじゃろ」

「それは、ごめん。気を付けます……。でも、ナインに勝つには仕方なかったっていうか……」

 

 まぁ、仕方ない事では有った。相手は呪詛師じゃったからの。呪力が無ければ、追い詰めることは出来なかったじゃろう。じゃからって、儂の隣や前に経とうとするのは止して欲しいが。結果、二度目の戦闘では全員無傷で終えれたから良いものの……万が一が起きていたらと考えると肝が冷える。終わり良ければ全て良し、なんて言葉で片付けるつもりは無いぞ儂は。こやつの個性そのものに、異変が起きなければ良いんじゃが……。

 

「……ん? 何の話……?」

「えっ、あっ、いや……! 怪我なく個性を使えて良かったって話……! ね、廻道さんっ」

「あぁ、なるほど……。デクくん、最近怪我しなくなったよね。良いことだ!」

「んん゛っ」

 

 ……何度か見た光景では有るんじゃけども、何で緑谷は麗日を前にすると変に硬直するんじゃろうなぁ。まだ女子(おなご)相手にすると緊張するのか? いや、儂に対して固くなるなんてことはないしむしろ図々しいぐらいなんじゃが。いや別に、緑谷なんぞに女子(おなご)扱いされたいわけではないぞ? ただ単に、反応の差が気になるだけじゃ。そんなじゃから麗日が苦労するのではないか? もう少しこう、男らしくじゃな……。

 

 無理か。緑谷じゃもんな。それにまぁ、麗日も麗日じゃし。

 

「まぁとにかく。儂等は赤鬼と会ってくるから、お主等は復興作業に集中しとれ。今回ばかりは駄目じゃからな?」

「……う、ん。あの、廻道さん……!」

「何じゃ?」

 

 話を切り上げようとすると、緑谷が何か言いたげじゃ。まぁ、言いたい事が有るなら聞いてやらんでもない。さっさと任務を済ませたいのは事実じゃけども、じゃからって急ぐつもりも無いからの。

 

「この間は、ごめん。廻道さんの気持ちが分からなくて、あんな事……」

「気にしとらん」

「でも」

「気にしとらんと言ったぞ。三度目は言わせるな、たわけ」

「あだっ!?」

 

 もう一度、血を飛ばしておく。指先から少量だけ。こやつは、まっこと頑固者じゃ。儂の言う事は一度で素直に受け取って貰えんかのぅ。罪悪感に染まった面をしおって。儂の過去など知ったところで、お主が気に病む必要は無いんじゃ。とっくの昔に、済んだことじゃ。今更蒸し返すのは、止さぬか。面倒じゃから、被身子以外は触れて欲しくない。

 っていう儂の気持ちは、分からんのじゃろうなぁ。言ったところで、緑谷も他のくらすめえと達も気にするんじゃろうから。

 

 ……いやしかし。伝えるべきことは伝えておくとするか。ほら、伝えないでいると一生恨まれるかもしれんからの。被身子みたいに後で何を要求されるかも分からん。

 

「……まぁ一応伝えておくが、とっくの昔に済んだことじゃ。過去は過去と儂は割り切っとるから、お主等が気にしたって何にもならんよ。

 じゃからもう気にしてくれるな。これ以上は不快なんじゃ」

「……」

 

 おい。何じゃその顔は。何で余計に罪悪感を感じたんじゃこやつ。麗日まで固まってるし。何でじゃ、意味分からん。

 

「……もぅ。そんな顔で言っても、気にしてますって言ってるようなものなのです」

「は?」

 

 いや、気にしとらん気にしとらん。済んだことをいちいち気にしてたって、何にもならんじゃろ。流石にそれは、いい加減なことを口走り過ぎじゃ。……って、何なんじゃ全員して。儂の顔を黙って見詰めおって。変わらないのは、話に付いて来れてない真幌や活真だけじゃの。

 

 立ち止まって話してないで、もう動こう。でないと、夜になってしまう。出来れば日が沈む前に、赤鬼を祓ってしまいたいのぅ。どうせならほら、夜に逢瀬(でぇと)するっていうのも悪くない。この島の夜は暗いから、夜空が結構綺麗での。悪くないじゃろ、星見をするのも。

 

「……ヨリミナ姉ちゃん。怪我してるの……? 痛い……?」

「は?」

「だって、痛そうな顔してるから……」

 

 ……そんな顔はしとらん。しとらんよな? 手で顔を触ってみる。うむ、しとらんしとらん。痛そうな顔なんて、儂はしとらん。何なんじゃもぅ、活真まで変な事を言い出しおって。

 

「何とも無いぞ? 心配不要じゃ! がははは!」

 

 子供に心配されるのは、嫌じゃのぅ。被身子にじゃって心配して欲しくないんじゃぞ、儂は。儂は大丈夫じゃ。何が有ったって、大丈夫なんじゃ。まったく、どいつもこいつも勝手な事を口走りおって。そろそろいい加減にしておけよ? 身に覚えの無い事を指摘し続けるつもりなら、幾ら儂でも怒るぞ??

 

「……渡我先輩。私とデクくん、付いてって良いかな……? 私は、何の役にも立てないと思うけど……」

「そうですねぇ……。じゃあ、念の為付いて来てください。あ、でも円花ちゃんの邪魔になるような事はしちゃ駄目なのです」

「は??」

 

 いや、おい。おい被身子。勝手な事を言い過ぎじゃ。麗日も緑谷も、付いて来る必要は全く無いじゃろっ。赤鬼を祓うのに、人手など要らん! むしろ邪魔じゃ! 仮に付いて来たとしても、真幌と活真を連れ帰る以外の事はするんじゃないっ!

 

 そもそも! 駄目じゃからなっ!? 付いて来るなよ!? 絶対に付いて来るんじゃないっっ!!

 

 

 

 

 

 この後。緑谷と麗日を何とか復興作業に戻させてから、儂等は真幌と活真の案内してもらって海辺の祠に辿り着いた。……んじゃけど、付いて来てるんじゃよなぁ。緑谷と麗日が。貴様等……それで隠れてるつもりなら尾行の才能は全く無いから、二度とやるなよ? 次にやったら、本気で怒るからな?? 

 

 ……いや。怒る。今、怒る。直ぐ怒る。

 

 

 付いて来るなと! 儂は言ったじゃろうがっっ!!

 

 

 

 

 

 








三人称による補完は要りますか?

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