待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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産土神信仰。遺骨遺物

 

 

 

 

 

 

 真幌と活真の案内して貰った事で、儂等三人と尾行して来てる阿呆二人は海辺の祠まで辿り着くことが出来た。具体的な場所は、悪党共と戦った場所の近くじゃのぅ。と言っても、離れ小島の隅の隅なんじゃけども。確かに海辺の祠ではあるが、どちらかと言うと断崖の祠な気がしなくもない。これ、足を滑らせたら海に転落することになるんじゃけど? それも、高所からの落下になる。場合によっては死ぬのでは……?

 ……まぁ、良いか。場所については、この際どうでも良い。赤鬼が待ち構えているのなら、何じゃって良いんじゃ。ここから先は、儂一人で良い。儂一人で、赤鬼と対峙する。ただ、その前に……。

 

「真幌、活真。この先に赤鬼が居るんじゃな?」

「うん、赤鬼さまはこの先だよ」

「相分かった。……で、緑谷に麗日。人を尾行するのは、楽しいか? 今直ぐ出て来るなら、まだ許してやらんでもないが??」

 

 数(めぇとる)後ろの物陰で、物音がした。耳を澄ませば、波の音と混じった囁き声が聞こえてくるのぅ。何やら慌ててるようじゃが、さっさと出て来ないと儂は余計に不機嫌になるだけじゃぞ? 付いて来るなと言ったのに、尾行してまで付いて来おって。まぁ良い。ここで大人しく引き返すなら、許してやろう。要するに、任務の邪魔だけはしてくれるなよ? そんな真似をされたら、今度こそ儂は激怒するが??

 

 っと、いかん。

 

「わっ、とと……!」

 

 被身子が足を踏み外しそうじゃったから、とっさに抱き寄せつつ壁に寄り掛かる。祠までもう少しってところなんじゃけども、祠に近付く程に道が狭くなっていくのは勘弁して欲しいの。うっかり足を踏み外したら大惨事じゃ。儂も足元には気を付けなければ。なるべく急いで、かつ慎重に足を動かすとしよう。

 

「気を付けろよ。落ちたら大変じゃからの」

「……はい、気を付けるのです。円花ちゃんも、気を付けてくださいね? ここ、ちょっと滑るので……」

「うむ、気を付けよう。お主も気を付けろよ、ながん」

「ああ。けど、アンタこそ特に気を付けな。アンタが一番落ちそうだ」

「は? 落ちんが??」

 

 おい。さては今、ぽんこつ扱いしたじゃろ? 儂をぽんこつ扱いしたな貴様っ。許さんぞ、絶許じゃ絶許! まったく、人が心配してるのにぽんこつ扱いするなど……!

 っと、いかんいかん。ここからは些細な事に目くじらを立ててる場合では無いんじゃ。儂等だけならば、如何に儂がぽんこつでないのか語ってやるところなんじゃけども、今は任務中じゃからの。それも、目的地はもう目前。今は赤鬼を祓うことに集中したい。じゃからなるべく不穏な要素は排除しておきたいんじゃ。なので。

 

「出て来い、たわけ共。それとも、貴様等でぇとでもしとるのか? 尾行でぇとなのか?」

「で、デート……!? いや、そんなつもりじゃ……!!」

「そ、そうそうっ。廻道さんが心配やから、つい放っておけなくて……!」

 

 お、出て来た。さっきの声掛けでは何やら囁やき合って相談していたくせに、逢瀬(でぇと)していると話し掛けると飛び出てくるのか。別に逢瀬(でぇと)自体は悪い事じゃないんじゃから、そんな気にする必要はないと思うんじゃが。しかしこの二人、さして仲が進展しとらんの。緑谷はともかく、麗日は恋しとるくせになぁ。これはあれじゃ、被身子に後で振り回されてしまえば良い。助けてやらんからな。盛大に振り回されて、苦労したら良いんじゃ。

 ……いや、逢瀬(でぇと)って言葉に過剰に反応してたってことは……さては図星か? もしや自覚が有ったのか? 分っっかり難い奴等め。そんな有り様じゃと被身子に何をされるか分からんぞ?

 

「……うーん、いい加減焦れったいのです。ちょっとくっ付けるしかないですねぇ、これは」

 

 あ。被身子が悪どい笑みを浮かべた。緑谷と麗日に向かって、合掌しておう。すまん、助けてやれんから諦めてくれ。南無南無。

 

「……何なの? ヒーローって、デートするのが当たり前なの?」

「そうですよぉ。ヒーローだって人間ですから、好きな人が居たらデートするものです!」

「そ、そうなの……? 僕もヨリミナ姉ちゃんとか……デク兄ちゃんみたいにデートするべきなのかな……」

「はい。好きな人が出来たら我慢せず告白して、恋人同士になれば良いのです。活真くんは分かってますねぇ」

「待て待て。まだ早いまだ早い」

「そ、そうよっ! 活真はお子様なんだからまだ早いの!」

 

 緑谷や麗日相手ならばともかく、活真相手にろくでもない事を仕込もうとするな。いや、恋したり誰かを愛することは良い事じゃけども。それでもまだ活真には早いじゃろ。そういうのはもう少しこう……中学生や高校生ぐらいになってからじゃな。いや、そうすると緑谷みたいになるかもしれん。少し似てるところがあるからの、この二人。こう……雰囲気と言うか趣味趣向と言うか……。

 

 ……え? もしや活真は緑谷みたいな、おおるまいと信者になるのか?

 いや、活真は確か……えっじしょっと? じゃっけ? が、好きな筈じゃ。なら大丈夫じゃの。うむ、緑谷みたいにはならん。ならんよな……?

 

 まぁ、それはひとまず置いとくとして。

 

「……お主等は全員引き返せ。真幌、活真。ここまでで良い」

「え、でも……」

「駄目よ! ヨリミナが赤鬼さまをイジメないか見張らないといけないんだから!」

「まぁまぁ、ヨリミナお姉ちゃんは赤鬼さんと大事なお話があるのです。それを邪魔しちゃ駄目ですよぉ」

「こっちに来な。一旦戻ろう」

 

 被身子が真幌を、ながんが活真を抱え上げた。狭い崖道を二人は引き返し始め、もっとも後方に居た緑谷と麗日は道を譲る為に引き返……すと思ったら。二人共、浮いて道を譲ったわ。おい、まさかとは思うがまだ付いて来るつもりか? 流石にいい加減にしろよ。

 

「じゃあ緑谷くん、お茶子ちゃん。そこで待っててあげてくださいね。一人にさせると、帰りに迷子になっちゃうので」

 

 ぐぬ。また 方向音痴扱いしおって……! いや、まぁ……事実じゃけども。事実じゃけども、解せぬ……!

 まぁ、良い。放っておこう。中まで付いて来ないのであれば、文句は無い。

 

 ……さて。それでは、赤鬼を祓うとしよう。やっと辿り着いた祠に、儂は足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海辺の祠の中は、案の定薄暗い。そして、あまり広くはない。儂は体が小さいから通れるが、緑谷や麗日では引っ掛かるのではないか? あと、ながんも。被身子は……多分引っ掛かるの。儂ですら余裕が無いんじゃから。

 取り敢えず、岩壁を伝う形で奥へ奥へと進んでみる。進んで行くにつれて、暗さが増していくの。灯りを持って来るべきじゃったか。あ、そうじゃ。携帯電話(すまほ)を使えば……、って被身子が持ってるんじゃった。しまった、持って来るべきじゃった。預けっぱなしは良くないのぅ。何の為の携帯電話なのか、と思わんでもない。

 

 うぅむ、暗い。が、まぁ何とか見えるか。赤鬼め、こんな狭いところに引き籠もっているのか? これだから引き籠もりの呪霊は……。

 

「うわ、暗……! しかも狭……!」

「は?」

 

 声がしたから後ろを振り返ってみれば、そこには緑谷がおった。既に呪力を纏っている。おい、じゃから貴様は呪力を使うなとあれほど……。

 ……まぁ、良い。今回は呪霊が相手じゃからの。まして相手は、赤血操術を持った呪霊じゃ。不測の事態に備えるという点では、今の内から呪力を纏っていた方が良いじゃろう。緑谷の場合は、じゃけど。こやつの呪力操作は、まだ拙い部分が有るからの。黒閃を経験しとるくせに、いまいち呪力の流れが遅いと言うか。まぁ、呪力が遅れることはもう無いんじゃけども。

 

「貴様、付いて来るなと言ったじゃろ」

「ご、ごめん……。でも、渡我先輩がどうしても付いてって欲しいって。廻道さんを、独りにさせたくないみたい」

「……言っておくが、貴様は通れんぞ」

「え? あっ、ちょ……っ!」

 

 ほら、挟まった。だって狭いんじゃもん、この祠。外で被身子は勝手な真似をしていたようじゃが、残念じゃったの。今回は儂一人じゃ。心配させてしまうけれども、こればっかりは勘弁して欲しい。戻ったら、たっぷり甘やかそう。それで許してくれたら良いんじゃけども。

 挟まった緑谷を置いて、儂は奥へと進む。おいおい、進む度に狭くなってるんじゃけど? これでは、小さな子供しか通れないではないか。

 

 ううむ、暗い。祠の入口から射し込んでいた光が、もう届かなくなってしまった。

 

「か、廻道さんっ。せめてこれ……!」

「む?」

 

 暗闇が光に照らされた。後ろからじゃ。再び振り返ってみれば、緑谷の方から何か飛んで来た。ので掴んでおく。これは、懐中電灯か。随分と細く、小さいようじゃけど。それでも灯りは灯りじゃ。ありがたく使わせて貰うとしよう。

 

「さっさと戻れよ。必要無い」

 

 緑谷は放っておいて、先に進むとしよう。暗闇を照らしてみると……うむ。この先も狭いままじゃの。特に一番奥の方は、儂でも通れるかどうか怪しい。それでも、どうにかして進むしかあるまい。この先に、赤鬼が居るんじゃから。

 ……しかしあやつ。どうやってこんな狭い祠の奥に入り込んでるんじゃ? あの図体では、どう考えても無理じゃろ。他に出入り口が有るのかもしれん。これを緑谷に伝える必要は無いな。来られては困る。

 

 っと。流石に屈まねば無理か。頭を下げて、どうにかこうにか進んでいく。袴が酷く汚れそうじゃ。この際、仕方ないが。

 

 うぅむ……。狭い。狭いのぅ。子供がやっと通れる程度の狭さじゃ。まっこと、体が小さくて助かった。もう少し上背と体重が欲しいんじゃけど、背は伸びぬままじゃし体重はまるで増えんし、困ったものじゃな。

 

「……うえっ。やっとか……」

 

 這いずるように動くこと、数分ばかり。狭過ぎる道が、やっと広くなった。暗闇は相変わらずじゃ。取り敢えず空気は流れているから、出入り口は他にも有りそうな感じがするの。

 体を起こし、服に付いてしまった汚れを叩き落とす。おっ、明るいの。上から日差しが射し込んでるようじゃ。それに、広い。結構だだっ広い。

 

【来たか】

 

 そんな洞の奥地に、赤鬼は居た。が、それよりも先に儂の目に飛び込んで来たものが有る。それについ驚いてしまい、目が離せん。何でこんな物が、こんな場所にあるんじゃ。いや、これがあるべき事を想定することは出来たと、今になって思う。じゃって、神社にはかつて儂が着ていた羽織りが吊るし置いてあったんじゃ。真っ二つに分かたれた、血染めの羽織りが。

 あれは、儂が宿儺と対峙していた際に着ていたものじゃからの。真っ二つになっていたのは、儂が真っ二つになって死んだからじゃ。それがこの島に有ったと言うことは……つまり。

 

 そりゃあ、有って当然じゃよなぁ。こんな形で祀られているとは思わなかった。そして、これを見たからには嫌でも合点が行く。赤鬼が、かつての儂と同じ姿をしている理由を思い付き……納得してしまう。

 

 隆之め。これを、どうやって回収したんじゃ。宿儺の前から持ち去ったのか? よくもまぁ、生きて帰れたものじゃ。

 

 

 祠の奥。そこにあったのは赤鬼の姿だけではない。

 

 

 今はもう骨となった、かつての儂の遺体が……確かにそこに有った。

 

 

 

 

 

 









三人称による補完は要りますか?

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