待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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産土神信仰。進路決定

 

 

 

 

 

 

 赤鬼は祓った。消え去る所を、この目で見届けた。領域を解くと、直ぐ目に入ったのは儂の遺骨じゃ。よく見ると……うむ。若干呪物になってるような、なっていないような。ともかく、これは壊しておこう。呪霊発生の原因じゃからの。こんな物を祀る程、隆之は……儂が助けた子供達は、儂を信じていたらしい。何とも言えん気分じゃ。どうして儂を忘れて生きることが出来なかったのか。お陰で、何かと面倒な任務じゃった。

 まぁ良い。何であれ、赤鬼は祓った。後は儂の遺骨を壊せば、それで完全に終いじゃろう。もう、儂の姿をした呪霊が産まれることもあるまいて。

 

 術式が回復したら、苅祓を幾つも骨に向けて放……つのは止めておくか。この遺骨は、雑にではなく丁寧に処理すべきじゃ。下手に残って、何か妙な事が起きては面倒じゃからの。出来れば一纏めに粉々にして、それを回収出来ぬように棄て去りたい。とくれば、切り刻むのは違う。そうじゃな。少し面倒じゃけど、呪力で粉々に砕くとしよう。百斂でひたすら圧縮してしまえば、砂ぐらいにはなるかの? そしたらそれを、……そうじゃなぁ。海にでも棄ててしまおう。そしたらほれ、魚の餌じゃ。餌にならずとも、波に流されて散り散りになるじゃろう。

 

 よし、そうしよう。そうしてしまおう。

 

 って、ぬおっ。地震か? 地面が少し揺れて……。何やら物凄い音が何処かから響いてくるの。ここは音が反響するから、音の出所が分からん。まさか……崩れたりせんよな? 幾ら儂でも、生き埋めは流石に死ぬと思うが??

 

 いかんな。取り敢えずこの場から逃げ出すとしよう。遺骨については、面倒じゃけど持って行こう。まさか自分の骨に触れる羽目になるとはの。隆之め、なんて物を祀ってるんじゃ。許さんからな……!

 

「おいおい……」

 

 揺れが強くなっているような、いないような。少なくとも、音は大きくなっている。何じゃか駄目な予感しかせぬ。さっさとここから出るとしよう。いや、待て。儂の骨を抱えて、どうやって外に? ここに来るまでの道は狭い。大の大人の骨を全て抱えたまま戻れる気がしない。

 

「―――シュ!」

 

 ん? 今のは……?

 

「―――ッシュ!!」

 

 あぁこれ、緑谷の声じゃな? 何処かから聞こえてくるわ。ええっとこれは……多分上の方……?

 

「スマーーッシュ!!」

 

 ぬおっ!? 一際揺れたわっ。……って、いかん。何やら頭上の方に亀裂が入っておる。あやつ、叩き壊すつもりか……!? 咄嗟に呪力を纏い、崩壊に備える。その次の瞬間。

 

「緑谷くん、もう一回行きましょう……!」

「も、もう一回……!?」

 

 何かとんでもないやり取りが聞こえた。おいおい、被身子っ。お主なんて事を口走っとるんじゃ!? 緑谷も、従うんじゃないっ。そこは反対しておけ、たわけ! 幾ら被身子が一度言い出したら止まらないとしてもじゃな、流石にこれは……!

 

 と言うかじゃなっ。天井の方は日が射し込む程度には穴が空いてるんじゃが?? 中に入ってくるつもりなら、そっちから入って来て欲しいんじゃけど!?

 

「ちょっ、ちょっと待って! こっちから中に入れそうだから……! やっぱり壊すのはあかんって……!!」

 

 麗日の悲鳴が聞こえて来た。被身子や緑谷の声と比べたら、声が近い気がする。真上を見上げてみれば、逆光でよく見えんが麗日の顔が儂を覗いているようじゃ。

 

「か、廻道さん! 平気……!?」

「無事じゃが??」

「よ、良かったぁ。他に入れそうな場所が見当たらなくて……! 廻道さんなら、ここから上がってこれへんっ?」

 

 と、言われても。天井の穴まで、中々距離が遠い。跳躍だけじゃ届かないじゃろうし、じゃからって岩壁をよじ登るのは無理そうじゃ。この遺骨も運び出さねばならんしの。となると、……どうするべきか。術式は、まだまだ回復しないしのぅ。うぅむ……。

 

 特に何かあるとは思えんが、周囲を見渡して見るとするか。もしかすると、別の出入り口が有るかもしれんし。ひとまずじゃ、この遺骨は運び易いようにしてしまおう。わざわざ鎮座させてあるからの。このままじゃと、どうにも運べん。どれ、一度解体してしまおう。

 取り敢えず、遺骨に触れてみる。思ったよりしっかりしとるの。触れたら崩れるんじゃないかと思ったが、しっかり固定されているようじゃ。なので、力尽くで引っ張ってみる。お、鎖骨が外れた。いや折れた。と、思ったら次々と音を立てて崩れ始めた。どうやって固定してたんじゃこれ?

 

 ……まぁ、良いか。後はどうにかして束ねて、運べるようにしよう。そうじゃなぁ、この際仕方ないから半着で包んでしまおう。よっと。

 

 骨を一本一本、取り忘れが無いように確認しながら風呂敷代わりに広げた半着の上に置いていく。着ていた服に骨を包むのは、何とも言えん気分じゃの。これ、後で被身子に怒られるかもしれん。その時は素直に謝るしかないんじゃろうけど、見逃して欲しいところじゃ。

 

「……良し、と」

 

 取り忘れは、無い。念の為に緑谷に投げ渡された懐中電灯で周囲を照らすが、細かい骨も大きな骨も、全て半着の上じゃ。取り忘れは無いのぅ。なら、後は包んでっと……。

 

「か、廻道さん? 何をして……??」

 

 穴の向こうから儂を覗いてる麗日が、困惑している。まぁ、人骨を包んでるところを見たんじゃから、そんな反応をしてしまうのも仕方ない。

 

「お主、中に入ってこれんのか? その方が手っ取り早いじゃろ?」

「そうしたいんやけど、私が通れる程大きな穴じゃなくて。廻道さんならギリ通れるかもってぐらい。どこか、迂回路とか……」

「無いのぅ。ここで待っとるから、縄か何か持って来てくれぬか? あぁ、被身子と緑谷には怪我ひとつ無いと伝えておいてくれ」

 

 流石に、上に登れそうにはない。ここから出る手段を用意して貰うまで、待っているとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外に出れた。緑谷が縄梯子を取って来てくれての。半着に包んだ骨を抱えて登るのは一苦労じゃったけれども、まぁ何とか外に出ることは出来た。で、早速被身子に怒られたわ。仕方なかったとは言え、儂は半裸じゃったからの。それと、半着の中身について聞かれたが答えとらん。これは後で、しっかり砕いて海に棄てる。それと、真幌と活真には赤鬼がもう居ないことは話しとらん。呪霊とは言え、あやつは二人が頼っていた存在じゃ。それを奪った事を伝えるのは、気が引ける。それでも、島を出るまでには伝えなければならんとも思うが。

 後始末は残っているものの、ひとまず任務は終いと言って良い。なのに、どうにも後味が悪い。赤鬼の言葉が、この島で起きた出来事が、儂の心にこびり付いているような気がしないでもない。気にする必要は無い筈なのに、何か……こう。なんじゃろうな、気になる……と言うか。

 

 何が気になるのかは、分かっている。この島で起きた出来事が、被身子やくらすめえと達、ないんに……赤鬼が言っていた事が、気になる。

 儂は変われないと、自分でも思っとる。周りに何を言われようとも、変えることなど出来やしない。変えれる状況でも無いからの。呪術師は、儂一人。であれば、呪霊を祓うのは儂の役目じゃ。独りで呪いと対峙するのは、呪術師ならば当然の事でもある。なのに。

 

 誰も彼もが、周りを頼れと儂に言う。頼りたいとは思えん。頼ってしまえば、死んでしまう。それが分かっているから、頼らずに居ると言うのに。

 

 ……今後とも、言われ続けるんじゃろうか? もう放っておいて欲しいぐらいじゃ。でも、被身子は言い続けるじゃろう。くらすめえと達じゃって、儂が頼るようになるまで同じ事を言い続けるに違いない。逆の立場になって考えてみれば、気持ちは分からんでもないんじゃけども。儂とて、儂のような子供が居たら放ってはおけんからの。しかしなぁ、うぅむ……。

 

「また、何か悩んでます?」

 

 帰り道。ないんを引っ捕らえた砂浜の道を歩き進みながら物思いに耽っていると、被身子が顔を覗き込んで来た。考え過ぎるのも、良くないのぅ。下手すると心配されてしまうし、あれこれと考えるのは止しておくか。

 

「いや、何でもない」

「ほんとですか?」

「……」

「ほんとですか?」

 

 駄目じゃな。誤魔化すことは出来なさそうじゃ。被身子は儂が口を割るまで聞いてくるじゃろう。素直に話してしまった方が早い気がする。こやつに隠し事をしたいとも思えんし。

 被身子の目を、じっと見詰め返してみる。そしたら真っ直ぐ見詰め返された。儂が口を開くのを待っている……ように見える。無理矢理聞き出すつもりは無いんじゃろうけども、直ぐにでも話して欲しそうじゃなぁ……。

 

「……儂は、生き方を変えるべきか?」

「えっ」

 

 えっ。って、何じゃ。えっ、って。何でそこで目を丸くするんじゃ。試しに聞いてみたら、これじゃ。聞くべきではなかったのかもしれん。やはり話すのは止めておこうかのぅ。

 

「急にらしくない事を言うから、びっくりしたのです」

「……はぁ。忘れろ。もう聞かんから」

「ヤです。そこで引っ込まないでください。変な反応しちゃったのは、ごめんなさいですけど!」

 

 ぐえっ。じゃからお主なぁっ、急に抱き付くのは……。まぁ、良いけど。駄目とは言わん。しかしたまには、事前に言って欲しいものじゃ。それと、抱き付いたからって有耶無耶に出来ると思うなよ? まったく、こやつと来たら。抱擁(はぐ)すれば儂の機嫌が良くなったり悩みが吹き飛ぶとでも思ってるんじゃなかろうな?

 

 ……まぁ。大抵は、そうかもしれんけども。

 

「あれ、二人共どうかしたん? ……って、またベタベタしてる……」

「いつもの事だ。二人して自制が無い」

「な、仲良しなのは良いことだよ。多分……」

「またイチャイチャしてるの? ほんっとヨリミナって、被身子の事が好き過ぎるのね!」

「そうですよぉ真幌ちゃん。円花ちゃんは、トガの事が大好きなので!」

 

 先を歩く皆が振り返ったと思ったら、何やら好き勝手に言っておる。被身子は被身子で、真幌に向かって言わんでも良い事を口走っとるし。静かなのは、活真ぐらいのものか。その活真は……振り返ろうとしたところを真幌に目を塞がれてしまっているが。何じゃおい、儂と被身子が触れ合ってるところが目に悪いとでも言いたいのか? ……まぁ、子供の教育に悪いのは事実かもしれんが。

 

「それで、どうしたんです? 私には、話してくださいよぉ」

「うむぅ……」

 

 頬を摘まれた。おい、押したり引っ張ったりするな。これでは喋れぬじゃろうが。さては、儂の話を聞く気が無いな? やられっぱなしは癪じゃから、仕返しに被身子の頬を両手で挟んでみる。そしたらじゃ、被身子は余計に儂の頬を弄り回し始めた。何なんじゃもぅ。こうなったら、とことん仕返しするしかないかもしれん。

 

「あー、もうっ! 離れなさい、このバカップル!!」

 

 ぬおっ。真幌が間に割り込んで来たわ。仕方ないから被身子の頬から手を離すと、被身子も儂の頬を弄るのを止めた。口は自由になったが、話す気が無くなった。良いか、別にもう。気にするだけ時間の―――。

 

「それで、どうしたんですか? 話してくれないと、色々しちゃいますよぉ?」

 

 被身子は一度引っ込めた手を顔の前に持って来て、細かく指先を動かしている。意地悪い笑みまで浮かべておる。いや、この状況で話せと? 今?? 仮に話すとして、儂としては仕切り直したいような気がするんじゃけど?

 少なくとも、今は良い。後で、んんむぐ……。こら、頬を弄くるな。分かった分かった、話すから止さぬか。何なんじゃもぅ、被身子のたわけ……!

 

「ぷはっ。じゃから……っ、その。生き方を変えるべきかと、儂は聞いたんじゃけど?」

「生き方って?」

「急にどうしたん?」

 

 ……何か、嫌じゃなこれ。被身子に話すのは良いんじゃけども、他の連中に聞かれるのは変に気になる。こう、気恥ずかしい気がしないでもない。緑谷も麗日も、何やら儂を見詰め始めたし。そんな変な事を口走ったつもりは無いんじゃけどなぁ。どいつもこいつも、何なんじゃいったい。

 

「んーー……。どうして、そう思うんです?」

「……この島に来てから、色々あったじゃろ。お主や……くらすめえと達と。どいつもこいつも、儂に周りを頼れ頼れと言いおって。

 呪霊なんか、儂に変われなどと言いおったわ」

 

 思い返したら、段々と苛ついて来た。別に良いじゃろうが、今まで通りの生き方で。変わる必要なんて、何処にも無いと思うが? 周りを頼ることじゃって、出来ることでは無いんじゃし。まぁ出来ることじゃったとしても、頼りたいとは思えぬが。

 

「人に言われて変わる必要なんて、私は無いと思います。それって生き辛いですから。

 だから、円花ちゃんが少しでも変わりたいって思った時に、変われば良いんですよぉ」

「……変わりたいなどと、思っとらんよ。きっとこの先も、そうは思わん」

「ですよねぇ。円花ちゃんは、とーーっても、頑固ですから」

 

 悪かったな、頑固者で。じゃけど、そんな頑固者でも、お主が居たからひとつ変えた事があるんじゃぞ? それ以外については、とても変えられそうにないんじゃけども。

 

「だからこれから先、トガはずーーっと心配して待つことになるんですけど。それは、とっても我慢出来ません」

「ぐぬ……」

「なので、決めました。私は円花ちゃんの補助監督になるので!

 ずっと一緒に、任務に行きましょうねぇ。これからはいつでもどこでも、一緒なのです!」

 

 ……は? 何じゃって?? 待て待て、何を言ってるんじゃ被身子。儂の補助監督になるじゃって? それは、あまり好ましくない。幾ら補助監督と言っても、危険が無いとは言い切れないんじゃ。嫌じゃぞ儂は。それは嫌じゃ。被身子には、呪術と関わりのない場所で生きていて欲しい。幾ら何でも、こればっかりは……。

 

「ずっと付いて行きますから、何処にでも連れてってください!」

 

 いや、いやいや。待て被身子、待てっ。何でそんな訳の分らんことを口走るんじゃ貴様! 補助監督じゃと……? 進路に悩んで居るのは知っているが、何で補助監督を選ぶんじゃ!?

 い、いかん。これは止めねば。何としても止めねば! 補助監督だけは、絶対に駄目じゃ……!

 

 

 

 

 

 








トガちゃん、補助監督√に突入します。誰が悪いって、そりゃあ円花が悪い。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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