待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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産土神信仰。復興作業

 

 

 

 

 

 

 島の復興作業が始まって、一週間程が経過したわけじゃ。まぁ、儂等は殆ど参加しとらん。寝ても覚めても、被身子と求め合っていたらの。島民やくらすめえと達が忙しそうにしていても、お構い無しじゃ。それが数日続いたところで、人としてどうかと思うのでそろそろ儂等も協力することにした。愛し合うことに飽きた訳では無いぞ? ただ、愛し合う以外の事もしなければならん気になっただけじゃ。

 そんな気持ちで宿を出ようとした際、ながんが大層呆れた面をしていたので謝った。溜め息ひとつで許してくれたので良かった、と思うことにする。

 まぁ謝ってる最中、被身子が抱擁(はぐ)してきたり、頬や耳に接吻(きす)してきたんじゃけども。やられっぱなしは癪じゃから、当然仕返しはしておいた。そしたら更に仕返しされて、仕方ないからもう一度仕返しをして。そんなやり取りを二度も三度も繰り返すと、再びながんが盛大な溜め息を吐いたので程々にしておくことにした。被身子は、舌を出して悪びれもしなかったが。何が「今は愛情増量期間なので!」じゃ。お主の愛情に増えるも減るも無いじゃろうに。既にほら、果ても底も無いと言うか、何と言うか。

 

 ……何か阿呆な事を考えてしまった気がする。あれだけ愛し合った後じゃからの。思考が変になってる自覚がある。もう十分、ばかっぷる……? をやってると思うんじゃが、もっと酷くなるかもしれん。まぁ良いか。愛し合うのは良い事じゃ。幾らでもして良い。そこは誰にも否定させん。

 

 とまぁ、とにかく。そんなこんなで? 今日から遅れながら復興作業に参加する。で、夜になったら逢瀬(でぇと)じゃ逢瀬(でぇと)。そのつもりで居るから、そのようにしたい。

 

「おっそーーい! 二日も三日も何してたの!? 渡我先輩とナニしてたの廻道ちゃんっ!」

「いや、インビジブルガール……。それは聞かなくても良いことじゃないかな……」

「ハァ!? 馬鹿野郎テイルマン!! そこは聞いとくべきだろうが!!」

 

 半ば瓦礫の山と化している住宅街に辿り着くと、葉隠と尾白と峰田が詰め寄って来た。元気じゃのこやつ等。儂は少し怠いと言うのに。何日も求め合うのは、体力的に良くないのぅ。しっかり自制せねばと思いつつ、求められるとつい。それにほら、ここ数日は……。

 いかんいかん。煩悩に塗れてしまっている。人として堕落してしまう気がするから、普段は今は考えないようにしよう。考えるのは、被身子と布団に入った時で良い。

 

 で、じゃ。葉隠はお冠じゃ。尾白は呆れている。頭の包帯は取れとるから、怪我の方は問題無さそうじゃ。峰田は……まぁ。いつも通りな感じか。取り敢えず、血走った眼をした峰田は放って置くとする。

 

「いや、すまんすまん。被身子が寝かせてくれなくてのぅ」

「んふふ。円花ちゃんだって、トガを寝かせてくれなかったじゃないですか……♡」

「仕方ないじゃろ。お主が欲しかったんじゃから」

「えへへぇ。円花ちゃんのえっち♡」

 

 ぬおっ。じゃから急に抱き付くのは……。良いけど。駄目とは言わん。しかしじゃな、頬に口付けしたり耳に触れたりとせくはらするのは止さぬか。時間と場所を考えてくれ。誘惑しないで欲しいものじゃ。

 って、おい峰田。儂等を見て悍ましい気配を醸し出すな。そんな穴が開きそうな程に儂等を……と言うか被身子を見るな。駄目じゃぞ。儂の被身子じゃ、儂の。

 

「あーーもう! 直ぐそうやってイチャイチャするんだからっ」

「すまんすまん。被身子、続きは後でな」

「はぁい。後で二人っきりになったら、ですね」

「反省してないね……。むしろ悪化してないこれ?」

「良いじゃねぇかよテイルマン……。オイラは幾らでも見せ付けてくれて良いんだぜ……? なぁ、デクもそう思うよなぁ!?」

「えっ、いや、流石にそんな事は無い……かな。でもほら、仲良しなのは良いことだよね……?」

「うーん。程度ってものを弁えて欲しい気がしないでも……。デクくんはああいうのが好きやったりするん……?」

「えっ!? い、いやいや……っ!?」

 

 葉隠が儂等の間に割って入って来たり、尾白が更に呆れたり、峰田が鼻息を荒くしたり。緑谷は峰田に絡まれて反応に困っとるようじゃ。あと、麗日の問い掛けに首を猛烈に振って否定しとるの。振り回されてるなぁ、あやつ。

 被身子なんて、相変わらず調子に乗って反省の素振りも見せとらん。

 ……何と言うかまぁ、いつも通りの光景な気がするの。周囲は瓦礫の山じゃし、見渡してみれば他のくらすめえと達が汗を流しながら復興作業に尽力しているが。

 

 ……。……何でじゃろうな。少し、気が抜ける。それも悪くないと思っているのは事実で。どれ、儂も復興作業に合流しないとな。何日も居なかったんじゃから、その分は働くとしよう。でないと、くらすめえと達に何を言われるかも分からん。

 

 

『忘れるな』

 

 

 ―――。

 

 

「円花ちゃん?」

「ん……。いや、何でもない。儂等も手伝おう」

 

 ……とにかく、復興作業を手伝おう。こういう事をするのは、随分と久しぶりじゃの。勝手が分からんわけでも無いが、取り敢えず何をすれば良いのか、くらすめえと達に聞くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「円花ちゃんって、意外と力持ちなのです」

「いや、そうでもないが」

 

 少なくとも、この体では。じゃけども。

 

「とか言って、おっきな瓦礫を平然と運んでたじゃないですか」

 

 島民が用意してくれた弁当を渋々口に運んでいると、被身子がわざわざ聞くような事でもない質問を飛ばして来た。島の復興作業は、まぁ順調じゃ。緑谷や砂藤に障子、それと麗日が重量物の持ち運びに酷使されていることは気になるところじゃけど。

 どうも、被身子の目から見ると儂は力持ちのようじゃ。そんな事は断じて無い。この体が持つ膂力は、前世の肉体と比べたら遥かに弱い。呪力や術式で誤魔化してるだけじゃ。儂……と言うか儂等が担当しているのは、主に瓦礫の撤去じゃ。特に、大きな物を運ばされることが多い。これは喧しく動き回る重機の数が足りないことと、儂等四人が身体能力を強化出来るから割り振られた役割でもある。一定以上の大きさを持ち合わせる瓦礫やら何やらを、作業車(だんぷかぁ)の荷台に運び込むのが主じゃ。

 血をばら撒いて動かしてしまえばそれが一番手っ取り早いんじゃけども、被身子の前でそんな真似をしたら復興作業どころでは無くなるじゃろうから血液は体外に出さんようにしている。

 

 ちなみに、被身子は儂から少し離れたところで儂を見ているだけじゃ。腰掛けるのに丁度良い瓦礫の上に座って、ただただ儂を見詰めるだけ。最初は被身子なりに手伝おうとしてたんじゃけど、被身子の体力や筋力ではやれる事が少なくてのぅ。途中から手伝いは諦めて、熱心に儂を眺めるだけになってしまった。

 これについては、仕方ないじゃろう。たまに儂を手招くから近付いて見れば、数分程は抱擁(はぐ)してくるんじゃけど。儂から離れたがらない甘えんぼめ。今も体を押し付けるように寄り掛かってくるから、食事しにくい。まぁ許してやるんじゃけども。

 

「実際、クラスで一番パワーあるのって誰なのかな?」

「流石にデクくんやない?」

「シュガーマンも良い感じだと思うけど……」

「いや、流石に緑谷には勝てねーよ。ヨリミナとだって勝負になるかどうか……」

「んん……。まだヨリミナには勝てないよ、もっと体を鍛えないと……!」

 

 

 少し離れたところにある、瓦礫の山に腰掛けた葉隠達が何やらくだらん話をしている。被身子の質問が耳に入ったんじゃろうか。まったく、何の話をしてるのやら。そんな事よりじゃな、休憩が終わってからの事を話し合ってた方がよっぽど良いと思うが。

 

「総合バランスなら、言うまでもなくヨリミナだよね!」

「それは、うん。でも、意外と赤血操術って弱点が多いみたいで。なのにヨリミナはあそこまで自在に使い熟してて、……やっぱり凄いよね」

 

 うぅむ。事実を言うのは構わんのじゃけど、儂の話は儂の居ないところでしてくれんかのぅ。悪い気はしないが、良い気もしない。こそばゆい感じがして、どうにも好ましくない。まぁ、くらすめえと達の話は聞き流して食事に集中するとしよう。お主等、黙って飯を食え飯を。行儀が悪いのではないか? 黙食って言葉を知らんのか。

 

「円花ちゃんが褒められると、トガは鼻高々なのです♡」

「むぐっ」

 

 おい。食事中なんじゃから思いっきり抱き締めるのは止さぬか。まったく、甘えんぼじゃのお主は。仕方ないから頭を撫でてやろう。ついでに抱き締め返してもやろう。ほれほれ。

 

「んふふ。そうやって沢山甘やかしてくれるところも、大好きですよぉ」

「甘えんぼめ。まっこと、仕方ない奴なんじゃから」

「そうしたのは円花ちゃんですっ!」

「ぐえっ」

 

 押し倒されたわ。弁当はひっくり返った。まぁ、それは惜しいとは思わん。じゃって美味しくないんじゃもん。やはり被身子の手料理が一番じゃ。

 

 ……ところで、被身子。何で儂に、覆い被さっとるんじゃ? 何でそんな、悪どい笑みを浮かべてるんじゃ??

 

 まったくもぅ、仕方ない奴なんじゃから。どうしていつもいつも、したいと思ったら一直線になってしまうのか。自制や我慢を知らん奴め。何でこんな風に育ってしまったんじゃか……。

 

「うわ、またイチャイチャしてる」

「もうほっとく? いちいちツッコんでたら、切りがないと思うんだけど……」

「それは、そうやけど。でも、ほっといたらマズいんじゃ……」

「ほっとこうぜ……! オイラは見るけどな……!!」

 

 ……くらすめえと達が、何やら言っておる。そういう話は、せめて被身子の耳に入らないところでして欲しいものじゃ。じゃって、もう止められることが無いと被身子が知ったらどうなると思う? 答えは、火を見るより明らかじゃろう。流石に止めねばと思うんじゃけど、今は駄目そうじゃ。じゃって、気が付いたら被身子が儂の両腕を押さえ込んでるんじゃもん。これでは抵抗も何も無い。しかもその上、熱っぽい目で儂を見て……。

 

 あぁ、もぅ。そういう目で見るのは止さぬか。被身子のえっち。つい応えたくなってしまうじゃろうが。

 

「そこまでにしとけ。公序良俗に反すると、捕まるぞ」

「えへへ……、冗談ですよぉ。円花ちゃんはしたそうですけど!」

 

 ……。接吻(きす)でもしようかと思っていると、ながんが被身子の後頭部を軽く叩いて止めた。どうやらお預けのようじゃ。それが少し気に食わんと思ってしまう辺り、儂はどうにかしてしまってるらしい。別に良いじゃろ、接吻(きす)ぐらい。それ以上を外でするのは、流石に良くない……とは思うが。

 取り敢えず、体を起こそう。弁当はひっくり返ってしまったから、昼食はもう終いじゃ。儂一人でも、先に復興作業に戻るとしようかのぅ。

 

 あ、そうじゃ。葉隠達が戻る前に独りで出来るところまで進めてしまおう。まだまだ瓦礫の撤去には時間が掛りそうじゃから、取り敢えず大量の血をばら撒いてじゃな……。

 

 

「―――」

 

 

 あ、いかん。被身子に血を見せるべきでは無かった。これは、今夜も寝れそうにないのぅ。

 

 

 

 

 

 

 







加茂頼皆:昇華をサブタイトルとして使うのここじゃないなって思ったので前話のサブタイトルを変更しました。と言っても、近い内に使う予定です。産土神信仰編は、その為の章ですので。
投稿前に変える予定だったんですけどね。すっかり忘れてました。

三人称による補完は要りますか?

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  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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