待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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心配される。

 

 

 

 

 

 悪党(う゛ぃらん)連合とやらに襲撃された後。儂は呪力やら呪霊について教師達に語り、担任に家まで送って貰った。……んじゃが、家に帰るなり一悶着が起こった。

 相澤先生がな、今日学校で何があったか、それがどうなったか、そして儂が悪党に狙われていると言う情報を両親と被身子の耳に入れてしまったんじゃよ。

 じゃから当面、ひいろおによる警護が儂に付くことになった。これは当然の処置と言って良い。誰とも分からぬ悪党に、子供が狙われているんじゃ。警察に協力して貰うことにもなっているそうじゃ。

 そこまでは良かったんじゃが、相澤め……。儂が呪力持ちであることや呪霊についてまで話しおった。

 

 別に隠していた事でもないが、話さずにいた事でもある。術式の説明をする時に、少しだけ触れたんじゃがのぅ。理解は殆ど得られなかった。以来、誰にも話しとらん。じゃが今回は、流石に納得してくれたようじゃの。母は魂が読めるから反応が薄かったが、父と被身子は大層目を丸くしておった。

 

 で。現状呪霊に対抗出来る力を持っているのは儂だけと言うこと。儂以外は呪霊が見えず、呪力も持っていないと言うこと。いやまぁ、認識出来ず扱えないだけで、僅かに持ってはおるんじゃけどな。

 

 とにかく、じゃ。

 

 有事の際はひいろおや警察では対処出来ないことが告げられた。もしまた呪霊を差し向けられたりしたら、それこそお手上げじゃと。そうなった場合、儂が自衛するしかないと告げおったわ。

 

 儂としては最初からそのつもりじゃったし、正直に言ってしまえば警護など要らん。特級未満なら難なく祓えるし、特級なら楽しめるからな。とは言え、警護を付けないのは大人として気が済まんじゃろうから仕方なく受け入れて居たんじゃよ。儂はな。

 

 

 真っ先に担任に噛み付いたのは父じゃった。

 

 

 有事の際に役立たずの警護を付けて、何の意味が有るのか。娘を見殺しにするつもりか。と、苛立っておったわ。

 気持ちは分かるがな、父よ。まったくの役立たずでないことは、分かるじゃろう? 呪霊を対処することは出来ぬが、悪党は対処出来る。ただその悪党が呪霊を引き連れていた場合は、儂が自衛するしかないが。

 ……もっともこの自衛も、どこまで許されるのか分からぬ。術式を使えば、個性の不正使用と見なされるからな。やはり術式を個性に登録したのは間違いじゃった。そして呪力がどう扱われるのかも分からぬ。個性の一部として認識されてしまえば、呪力を使っても問題になるじゃろう。

 

 何にせよ。警護に付くひいろおは、まったくの役立たずでは無い。役立たずになる事もある、と言う話じゃ。

 

 母は、最後まで喋らなかった。こうなる事は全部分かっていたとでも言いそうな顔をしておったわ。そして被身子はと言うと……。

 

 

 現在。儂に抱き付いて離れぬ。

 

 

 相澤がひとまず帰った後。夕飯や入浴を済ませた儂を部屋で待っていたのは、不安そうな顔をして落ち着きを失った被身子じゃった。こやつは儂が部屋に戻るなり抱き付いてきて、片時も離れようとせぬ。

 

「……心配です。円花ちゃんなら大丈夫って思いますけど……。やっぱり、それでも……」

「大丈夫じゃよ。心配はしなくて良い」

「……」

 

 参った。さっきからずっとこんな調子じゃ。儂を心配するのは良い。こうまで大事に思われてると分かって、嫌な気分にはならん。とは言え、こうも暗くなられると、どうしたら良いのか分からぬ。取り敢えず頭を撫でてやるが、少しも笑わん。普段なら嬉しそうにするんじゃけどなぁ。

 あと、幾ら心配だからって抱き付いたまま布団に横たわるのは止めろ。足を絡めるな。今日の儂は色々と欲求不満なんじゃ。襲ってやっても良いんじゃぞ貴様。

 

「呪力って、何ですか……? 呪霊って? 他の人には見えてないものが、円花ちゃんには見えてるんですよね……?」

「……知らなくて良い。儂、お主にはこちら側に来て欲しくないんじゃよ」

 

 負の感情が渦巻き、人に害する世界があることを被身子に教える気にはなれん。世の中には知らないままで居た方が良いこともあるんじゃよ。

 じゃから、巻き込みたくない。巻き込んではならぬ。呪術の世界に身を置くのは、儂だけで良い。

 呪術師として死ぬつもりは無い。悔いも残すつもりも無い。やれることは全てやる。じゃけど、被身子には……絶対に教えたくない。

 

「嫌です。教えて。教えてくれなきゃ、離してあげない」

「教えても離さんじゃろ貴様は」

「……教えてくれなきゃ、もうお菓子作りません」

「それは狡いじゃろっ!」

 

 こやつ……! とんでもない事を口走りおって……っ!

 儂はお主が用意してくれるおやつが楽しみなんじゃぞ! それを儂から奪おうなど、貴様……! 貴様ぁ……!!

 

「もしこの先、円花ちゃんに何かあったら嫌なんです。その時何も知らないのも、ヤ。だから教えて欲しいの」

「……」

「おやつ抜きです。本気なのです」

「……それでも、話さぬよ。知ってはならん。知らないでくれ、頼むから」

 

 おやつが無くなるのは悲しいが、その程度では話せぬ。これから被身子のおやつ抜きに生きていかねばならぬのは、正直辛い。まっこと辛いことじゃ。じゃけど、この世界を被身子に知られる方が苦しい。何も知らないままで居て欲しい。

 

「……じゃあ、相澤先生に聞きます。話したんですよね、先生には」

「おい」

「教えてくれなきゃ、聞きに行きます。あとおやつも無しです」

 

 どの道、儂が話そうが話すまいが被身子は知ってしまうか……。ぬぅ……。

 ……隠しておきたいんじゃけどなぁ。どうにも上手く行かぬ。

 

「知ったら、必ず後悔するぞ。それでも良いか?」

「知らないでいる方が、後悔します。だから、全部教えて。円花ちゃんの事、何でも……全部。

 だって私、一緒が良いから……」

 

 ……結局、こうなるのか。嫌じゃなぁ。

 分かっておるのか? 知らない方が、幸せなんじゃぞ?

 

 なのに、知ろうとして。後で後悔しても、儂は知らんからな?

 

 

 

 

 

 

 

 この後。被身子に呪力や呪霊、そして呪術師の事を話した儂は、こやつに滅茶苦茶にして貰った。

 

 いや、その……じゃな。今日は(まこと)に欲求不満で、寝る前に噛み付かれたら我慢出来なくての……。つい、熱のまま……求めてしもうた……。

 

 ……。とても良かった。何か散々恥ずかしい事を言わされたような気がするが、まぁそれも……存外悪くは……。悪くは……。

 

 ……。……もう儂、こやつには勝てんかも知れん……。 







満足するまでバトれなかった欲求不満を、えっちで解消するバトルジャンキーの図。
戦闘パート書いた反動が来てるので次回はイチャイチャパートを予定しています。まぁ今回の時点で滲み出てますが。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ

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