待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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産土神信仰。観光大使

 

 

 

 

 

 

 この島に根付いた、産土神信仰。それによって産まれた呪霊は儂が祓った。二度と産まれて来たりしないよう、呪霊が産まれた原因のひとつであろう儂の遺骨は、粉々にしてから海に棄てた。そうしたら、御神体が無くなっただの何だので儂は被身子やながんと共に島民に監禁されたり、試されたりもした。

 最終的にどうなったかと言えば、儂はこの島の観光大使になることで手打ちとなった。いや、何でじゃ? 何でそうなった??

 

 ……まぁ、良いか別に。観光大使とやらがどんな役割なのかはまるで知らん。字面から何となく想像が付くが、興味も無い。けども、ひとつ確かな事がある。それは、今後島民達がくらすめえと達に何もしなくなったということ。元々、大した被害は出てないんじゃけどな。監視されたりちょっとした悪戯をされたり、その程度でしか無かった。が、御神体とやらを喪失した後ではそれが激化する可能性は有った訳じゃ。それを考慮せずに海に棄てたのは儂じゃけども。じゃって、一刻も早くあの遺骨は棄て去りたかったんじゃもん。

 

 とにかく。とにかく、じゃ。もう被身子にも子供達にも、島民達が何かする事は無い。その代わり、儂はこの島の観光大使になってしまったと言うか、なるしか無かったと言うか。

 

「というわけで、第一回・那歩島観光PR計画会議を始めるのです。司会進行はトガと神主の皆基さん、観光大使は円花ちゃんが務めさせて頂きます」

 

 いおぎ荘一階の、雄英英雄(ひいろお)事務所にて。伊達眼鏡で、出来る女主張(あぴぃる)した浴衣姿の被身子が、くらすめえと達や何人かの島民達を前に高々と宣った。

 

「は? どゆこと?」

「儂に聞くな」

「廻道さんが、観光大使……? えっ、何で??」

「じゃから、儂に聞くな」

 

 くらすめえと達が、何故か一斉に儂を見た。何で儂を見るんじゃ貴様等。疑問に思うなら、儂じゃなくて被身子を見ろ被身子を。儂に説明を求められてもじゃな、生憎と何も答えられん。むしろ、儂自身がどういう事なのか教えて欲しいぐらいじゃ。

 

「渡我先輩! これはいったいどういう事でしょうか!?」

 

 お。飯田が挙手しながら被身子に質問した。よくやった。是非、どういう腹積もりなのか聞いてくれ。返って来る返答は、およそ意味不明かもしれんけど。何なら、聞くんじゃなかったと頭を抱える羽目になるかもしれんけど。

 なぁ、そろそろお主等も被身子の扱いに慣れたらどうじゃ? そして、出来ることなら儂を助けてくれ。

 

「よく聞いてくれました飯田くん。実は円花ちゃん、島民さん達の総意で那歩島の観光大使に選ばれたのです! なので」

「この島をよりPRする為に、是非皆さんにも協力して頂きたいなと。何せ皆さんは、頼皆のご友人ですから。我々よりも、彼女の魅力的な点を知っているかと思いまして」

「えーー……っと……?」

「つまり、どういう事だ……??」

「この島の魅力を伝えると同時に、私としては是非頼皆の魅力を世間に広めたいんですよ。こんな可愛らしい幼……女性が、世間に埋もれたままなのは勿体無いでしょう?」

「もちろん、ちょっとだけですよちょっとだけ! 全部は駄目です、そもそも円花ちゃんは私のものなので!」

「……??? 頼む、誰か通訳」

「廻道ー、ちょっと通訳して通訳。役目でしょ?」

 

 いや、知らん。じゃから儂に聞くな。それと、幾ら被身子や神主の言ってることが分からんからと言って儂に通訳など求めるんじゃない。儂じゃって理解不能なんじゃから、むしろ儂にどういう事なのか教えて欲しいものじゃ。

 まぁ、被身子の……ついでに神主の思考を正確に読み取って言葉に出来る奴がこの世に居るとは思えんが。何なら、あの世にじゃって居ないじゃろう。(まこと)に居られても、それはそれで困る気がするが。

 

「……まぁ、何じゃ? すまんが、好きにさせてやってくれ」

「そこで円花ちゃんが諦めたら、きっと誰も理解出来ないわ」

 

 いやぁ……。そう言われてもじゃな、梅雨。儂を振り回してる時の被身子の考えは、まぁ全然読めないものじゃ。突拍子も無い事を次々に言い出して、満足するまで止まらないってことぐらいは分かるけれども。そして儂自身、そう言う被身子を眺めてるのが楽しかったりしてな?

 じゃから、ほら。理解は全員諦めて、振り回されてくれ。大丈夫じゃ、最後は良かったと思えるから。な? それで良いじゃろ??

 

 ……良くないか。ほぼ全員が儂を見てるし、何なら畳の上で寝袋に包まってる相澤も僅かに瞼を開いて儂を見ておる。

 

「つまり。島の観光事業をより盛り上げる為に、宣材が必要ってことだ。島が復興するまでまだまだ時間は掛かるし、復興が終わっても直ぐいつも通りに戻るわけじゃない。

 そこで、観光PRをしてより観光客に来て貰う。そしたら、まぁ島の懐は潤うだろ? 早い話、復興費用が馬鹿にならないから観光客を呼び込んで金を落として貰おうってことだ」

 

 事を静観していたながんが、溜め息混じりに長々と説明しおったわ。その説明を聞いたくらすめえと達は、まぁ納得したりしていなかったり。ただ、殆どの視線が儂から逸れたことはありがたく思う。ながん、よくやった。その調子で引き続き説明を続けて欲しいものじゃ。儂はその間、外の空気でも吸ってくるから。何ならしばらく戻らぬから、思う存分説明してやってくれ。

 さて、と。このまま此処に居ると、何やら面倒な事になりそうな気がする。なので、先手を打って逃げておこう。そうしよう。がははは!

 

 って、こら。被身子っ。儂を抱き留めるな! 膝の上に乗せるな! 肩に顎を乗せるなっ! 何なんじゃもぅ……!

 

「なるほど、島の風景が戻ったとしても復興は完了しない……。島が真の意味であるべき形に戻る為には、世知辛いがやはりどうしてもお金が必要……か。

 諸君! 募金だ! 募金を募ろう!!」

「いや、それって効果あんの? 募金で集まる金なんてたかが知れてね?」

「何を言うんだ上鳴くん! こういうのは気持ちが大事なんだ気持ちが!!」

 

 いや、気持ちで懐が潤うなら誰じゃってそうするとは思うが。実際、復興というものには今も昔も金や人手が掛かるものじゃ。今回の復興じゃって、どれだけの人手や金額が必要になるのか考えたくもない。まぁ極論、今の時代は金さえあれば何事も何とでもなる。そして逆を言えば、金が無けれどうにもならん事もある。

 

 要するに、儂を金儲けの手段の一つとして島民は使いたいってことじゃ。そうならそうと、最初からそう言え。別にそれを聞いたからと言って、断るつもりは無い。じゃってほら、被身子がその気じゃからの。こうなったら、儂は受けるしかないんじゃし。

 

「でもそれってよ。廻道使って金儲けってことだろ? そういうの、俺は好きじゃねー。なんていうか、漢らしくねえって」

「反対だ。廻道は見世物じゃない」

「それはトガもそう思います。でもまぁ、ぶっちゃけヒーローってそういう仕事じゃないですか?」

 

 ……そうじゃの。まぁそれは、被身子の言う通りじゃとも思う。切島や常闇の気持ちも分かるんじゃけどな。ただ、今後英雄(ひいろお)として名が広まれば、今回のような活動もする羽目になるかもしれん。いや儂は、英雄(ひいろお)になんてならんけど。

 くらすめえと達は、被身子の一言で黙り込んだ。誰もが思う節が有るからじゃろう。八百万に限っては、何か思い出したくない事を思い出したのか顔を顰めているが。

 

「ヒーローは、良くも悪くも世間にプロデュースされる存在でもある。今回の件は、その為の予行演習だと思えば良い。

 その子を通じて、将来自分が同じ立場に立った時にどうするのか? それを考え、良い方向に実行出来る力を得られると思えば良いんじゃないか?」

 

 ……にしても、ながん。お主、さては意外と教師に向いているのでは? 雄英の中で暇な日々を過ごすぐらいなら、どうせなら雇って貰ったらどうなんじゃ? そしたらほら、少なくとも退屈はしないじゃろうし。まぁ、大変かもしれんけど。そこは自分で何とかしてくれとしか思わんが。

 

「と言うわけで、是非皆さんのお力を貸して頂けるとありがたいのですが。この島のPRは島民でも出来ますが、それを彼女の魅力を引き出しつ行うとなると……ノウハウがありませんので」

「んんーー……。そういうのって、ぶっちゃけ経営科なんじゃ……?」

「でも、将来の自己PRに繋がるんじゃないこれ? やってみる?」

 

 被身子に振り回され、ながんの説明を受け、何やら少しずつその気になっているのぅ……。あのな、貴様等。実際にあれこれとされるのは儂なんじゃけど? 大変なのは儂なんじゃけど?? その辺り、分かっとるのか???

 

「でもさー、廻道を観光大使にして宣伝になるの?」

「三奈ちゃん三奈ちゃん、その点だったら何と大丈夫なんですよねぇ。円花ちゃんって世間的に、かなーーり有名なので」

「あ、そっか。いやでも、我らがポンコツが観光大使で全国デビューかぁ」

「は?」

 

 誰が、我らがぽんこつ……じゃって? おい、芦戸。今、何と言った? もう一回、儂の目を見て言ってみろ。なぁに、怒りはせんぞ怒りは。ただ、儂がぽんこつではないと分かるまで付き合って貰うだけじゃ。そこに直れ貴様ぁ……! 正座じゃ正座っ!

 

「どぅどぅ。直ぐそうなっちゃうからポンコツなんですよぉ。トガ的にはカァイイからオッケーですけど!」

「ぐえっ」

 

 く、苦しい。何で思いっきり抱き締めたんじゃ貴様っ。腕で胸を締め付けるな、このたわけっ。まっこと、こやと来たら……!

 

「ってな感じで。この島を魅力的に、かつ円花ちゃんも魅力的に写った宣材が必要なのです。動画にするか写真にするかは要検討ですけどね。

 それと。バイト代はしっかり出るそうなので、ちょちょいっと協力してくれると私は眼福で那歩島は潤ってWin−Winなんですけど」

 

 ……はぁ……。もう良い。芦戸を分からせるのは、またの機会にしよう。取り敢えず、話が進み始めている。抗ってもどうにもならんし、今更抗う気にもなれん。この先に待っているのは、間違いなく苦労じゃ。苦労じゃけども、まぁ最終的に悪い事にはならんじゃろう。被身子に振り回されるのも、周囲に振り回されるのも、いつもの事じゃ。

 

 そんなこんなで。何やかんやで。儂はこの後、くらすめえと達があれやこれやと話し合う所を眺めることになった。被身子も喜々として話し合いに参加して、この会議は割りと遅い時間まで続いたわけじゃ。

 

 儂を出しに子供達が盛り上がる様を端から見るのは……、まぁ。……思いの外、悪くない。と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 








あと三話で産土神信仰編は終わりです。まさかここまで長引くとは、うごごご。


三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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