待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
さて。晩飯も済んだので、本格的に祭りを見て回ろうと言うことになった。結局緑谷は、麗日の浴衣姿については何も言及していない。麗日自身が今の自身の格好について、猛烈に言い訳を並べ立ててしまうからの。あれでは、緑谷は何か思ってたとしても何も言えないじゃろう。結果、色恋沙汰からは遠ざかってしまっている気がしないでもない。それで良いのか? と思わんでもない。まぁ……儂はもう暫くは見守ることにする。そもそも人様の恋愛に首を突っ込む事自体が間違ってる気がしなくもないからの。ただ、被身子が黙って見ていられるかと……。うむ……。
こやつは、ほら。我慢出来ぬ質じゃから。したいと思ったら、後先考えずに一直線で突き進んでしまう。その時、人の意見なんてまるで無意味じゃ。余程強く言えば多少は止まってくれるが、それも結局は振り払われてしまうようなものじゃ。詰まる所、麗日と緑谷は早いところ進展しておいた方が良い。でないと、永遠に振り回されるぞ? すまんが、儂は大した力にはなれんから精々頑張って被身子に抵抗してくれ。南無。
まぁそれはいったん置いといて、じゃ。祭りを楽しもう。屋台はずらりと並んでいるが、何も食べ物しか販売してないわけでは無いんじゃ。例えば、ほら。
「円花ちゃん、次はあれ取ってくださいあれ!」
「お主、祭りに来ると必ず射的じゃよな」
「えへへぇ。だって、いっつもカッコいいところ見せてくれるじゃないですかぁ」
射的、とか。子供の頃から、夏祭りに行く機会はそこそこあった。ここ数年は被身子の受験期間や儂の受験期間が有ったし、今年に至っては夏合宿に行ったり悪党連合の根城に連れ込まれたり、あとは仮免取得の為に勉強したりでまるで祭りには行っとらんかった。最後に行ったのは……中学一年の時か。あの時はあの時で、中々大変じゃったと記憶しとる。じゃって、被身子が常闇に嫉妬するんじゃもん。後で浴衣姿のまま布団に押し倒されたのは、今となっては良い思い出……ではないか。今思い返しても、あれは気恥ずかしい思い出のひとつじゃ。
にしても、射的は久し振りじゃの。小さい頃に指輪を取って以来、被身子は祭りに行くと儂に射的をさせたがる。で、その度に何かしらの景品をねだられる訳じゃ。お陰で、まぁまぁ射的は得意じゃ。被身子のわがまま次第では、呪力強化で無理矢理取る羽目になるが。
「何か、意外やね。廻道さん、射的得意なん?」
「そうでもないが」
構える。引き金を引く。景品に当てる。景品を貰う。本日何度目かの作業を終えると、屋台の店主が苦い顔をし始めた。っと、いかんいかん。流石に取り過ぎたか? まぁ最終的に景品の殆どは、例年通り突き返すんじゃけどな。全部持って帰るとなると、荷物が増えて大変じゃし。
「で、緑谷はどうじゃ?」
「……全然駄目。でも、もう少しやれば何か掴めそうな気がする……けど……」
隣の様子を見てみれば、緑谷が何とも言えん顔で的を見ていた。さっきから儂の隣で射的に挑戦しておったが、戦果はよろしくない。無駄に小遣いを使ってしまってるように見える。これ以上の再挑戦は、あまりよろしくなさそうじゃ。
「……まぁ、もう良いじゃろ。射的は」
「えーー? そこはほら、全部取っちゃいましょうよぉ!」
「店主が物凄い顔してるんじゃけど?」
「取られる方が悪いので!」
いやまぁ……。それはそれで間違ってはない……、んじゃけど。でもなぁ、じゃからって儂が全部取ってしまうのは、流石に可哀想な気がする。それに、全ての景品を持ち帰るのは大変じゃし。そこまでしたら商売にならんじゃろ。大人相手に遠慮する必要は無いと思っては居るが、流石に可哀想じゃって。
しかし全部取ったら、被身子は大層喜ぶじゃろうし。……と、なると。仕方ない。これはもう、仕方ないと思うことにする。
十数分後。儂はどうにかこうにか、目に付く景品は全て撃ち落とした。なので、お菓子を四つだけ貰って他は返却することにした。ちなみに、緑谷は一度景品を撃ち落とすことが出来た。手に入れたのは茶筒じゃ。何故か蓋の造形が、どこぞの筋肉阿呆を思い出させる形をしているが。緑谷曰く「そういうゲームって分かってても、手先が震えて……!」とか何とか。
……こやつ、少し師匠を敬愛し過ぎではないか? まぁ確かに、その茶筒はおおるまいとを連想させる物ではあるが。
そんなこんなで。射的は終わりじゃ。去り際に、店主が「なんで今日は全部取られるんだ……!! これで三回目だぞ……!?」と頭を抱えていた。……三回? どうやら、儂の前に二回も景品を全取りされたようじゃの。射的好きな奴が、被身子以外にも居たんじゃなぁ……。
なんて思いつつ、人混みの中を歩いていると。
「じゃあ次は、輪投げとかどうです? お茶子ちゃんも遊びましょうよぉ」
「輪投げ? うん、良いよ。やってみよっか!」
今度は輪投げ屋の前で、足を止めることになった。
「あ、円花ちゃんもやります?」
「いや、さっき遊んだからの。見てるだけにする」
「えーー? そこは一緒に遊びましょうよぉ。ねっ、緑谷くん!」
「えっ? あ、はい……! そ、そうですね……!」
「……まぁ、一回だけじゃぞ?」
仕方ないので、一度は話に乗るとする。それはそれとして、緑谷。何で被身子に詰め寄られて、顔を赤くしとるんじゃ貴様。被身子も被身子じゃ。いくら楽しいからって、儂以外の奴に容易く近付くのはどうかと思うんじゃけど?
「あ、はは……。廻道さん、ほんま渡我先輩には甘いよね……」
「みんなにも甘々ですよ? トガが一番甘やかされてますけど!」
まぁ、事実じゃ。それは否定しない。と言うか、否定出来ん。儂は子供にも被身子にも甘いからのぅ。
「廻道さん。もう少しこう……渡我先輩に厳しくした方が良いんじゃ……?」
「いや、儂は被身子の笑顔が一番じゃし。その為なら、何じゃってするつもりじゃが?」
緑谷の提案は、受け入れる理由が無い。被身子が笑っていられるなら、ぶっちゃけ儂は何でも良い。まぁ、譲れない部分は有るんじゃけども……そこも最近は譲ってしまったと言うか。譲らざるを得なかったと言うか。我ながら、被身子の事になると冷静で居られん。まさかここまで離れ難いと思うようになるとはなぁ。
「はい、円花ちゃんに緑谷くんっ!」
輪投げの輪が目の前に突き出された。今更輪投げで喜ぶような歳でも無いじゃろ、お主。そんな嬉しそうに笑いおって。祭りが始まってから、被身子は随分と子供っぽい反応ばかりじゃ。童心に返ってる、とでも言うべきか? 駄目とは言わんけど。こうして騒いでる被身子は、可愛らしいものじゃからの。
取り敢えず輪を受け取って、的となる棒を見てみる。割りと距離が遠い気がするが、まぁ良いじゃろう。最初に狙うのは……どうせなら一番難しそうなところにじゃな? お。奥にある棒が一番太そうじゃ。ではあれを狙って―――。
「ビリの人は、意中の人に愛の言葉でも囁くってのはどうです?」
「は?」
「へ?」
「えっ」
あっ。外れたわ。おい、被身子。投げる瞬間に訳の分からん事を言うのは止さぬかっ。お陰で手元が狂ったじゃろ……! まったく!
「ちょっ、ちょ……っ! 急になに言うて!?」
「まぁまぁ、勝てば良いんですよ勝てば。まぁ円花ちゃんに勝つのは無理かもしれませんけど!」
「お主なぁ。流石にそれはどうかと思うんじゃけど?」
「あ、もしかして自信無い感じですか? まぁ円花ちゃんってポンコツですからねぇ。きっと輪投げでもポンコツするのです♡」
「は? 良いじゃろう……! 貴様、儂が勝ったら折檻じゃからなっ!?」
誰がぽんこつじゃって? 輪投げぐらい、全然出来るが!? そもそも、どうやったら輪投げでぽんこつになるんじゃっ!
「えっ、ちょ……っ!? ま、待って渡我先輩……! 廻道さんも、そんな簡単に挑発に乗ったらあかんよ!?」
「んん……。麗日さん、こうなったら廻道さんは駄目かも……。ほら、渡我先輩には無力っていうか……」
「は???」
おい。おい、緑谷。誰が誰に、無力じゃって……? そんなことは無い。断じて無い。儂が被身子に負けるなんてことが、ある筈無かろう? まったく、いったい儂の何を見ているのやらっ。こんな調子じゃ、まだまだ扱くしかなさそうじゃの。今度、とことん鍛えてやろう。死ぬ直前まで手は抜かんからな? 覚悟しておけよ??
そんな事より、じゃ。売られた喧嘩は買うぞ? 被身子、儂に勝負を挑んで勝てると思うなよ?? 今までは負け通しじゃったかもしれんが、もう儂はお主に勝てるんじゃからな???
つまり! 輪投げじゃろうと! 負けんと言うことじゃ!!
で。この後。麗日と緑谷を巻き込む形で、輪投げによる勝負が始まった。細かい
まぁ、とにかくじゃ。勝負となったら、負けるわけにはいかんのぅ……! 見てろよ被身子っ。貴様が負けで、儂が勝ちなんじゃからな!? 儂に勝てると思うなよっっ!!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ