待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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呪詛師尋問。そのに

 

 

 

 

 

 

 黒霧への尋問が始まった。ので、儂は直ぐ緊急事態に介入出来るよう隣の部屋で待機中じゃ。今は相澤と、ぷれぜんと・まいくの奴が黒霧と何やら話しておる。儂は硝子越しにそれを見ているし聞いてるわけじゃが、何か進展するとは思えなかったりする。尋問が簡単に行くなら、そもそも儂等を呼んでないからの。手間取る事にはなるじゃろう。

 

『……俺が拾えないと見過ごした仔猫を、迷わず拾ってくるような奴だった』

 

 硝子の向こう側。悪党の対面に硝子を挟んで座る相澤は髪を逆立て、黒霧に向かって静かに語り掛ける。が、何か効果が有るようには思えぬの。現に今、首を傾げておるし。

 もしも黒霧が相澤に反応するなら、それは最初の襲撃の時に露になっていた筈じゃ。

 

『中途半端で二の足を踏んでばっかりだった。そんな俺を、いつも引っ張ってくれた』

 

 それでも。諦められないのか。或いは、信じているのか。相澤は黒霧を見詰めたまま、語り掛け続けていく。

 

『ここを教会か何かと勘違いなされてる』

『お前はいつも明るくて、前だけ見てた。後先なんて考えず……! 死んじまったら、全部お終いだってのに……!!』

 

 黒霧の元になった人間。白雲朧、じゃったか? そやつと、相澤達に何が有ったかは知らん。想像は、まぁ出来るが。監獄(たるたろす)に来た時から、いや来る前から。相澤が見せていた姿は、死者を冒涜され激怒した奴のそれじゃった。同時に、混乱も有ったけれども。

 それだけこやつにとって、白雲朧……は大切な存在じゃったんじゃろう。被身子のように、過去に拘るなとは儂は言わん。結局儂は、過去に拘って生きて来たしの。過去は過去と割り切りながらも、それでも胸の奥に突き刺さったものは生涯儂の行動原理と相成った。そして生まれ直した今も、それは変わらない。まぁ、新しく増えたものもあるけどな。被身子とか被身子とか、被身子とか。

 

 ……被身子ばかりな気がしてならん。儂の行動原理の半分ぐらいは、被身子によって占められてる気がしないでもない。悪い気はしないが。しかしじゃからってなぁ、いつでも何処でも被身子を思い浮かべてしまうのは如何なものか。愛してるにも程が有るのでは……?

 

 って、あっ。しまった。被身子を雄英に置いて来てしまった。あやつはもう儂の補助監督なのに。いやでも、授業中じゃったし。謝れば許してくれるじゃろうか? どうか許して欲しいところじゃが、うぅむ……。

 

『白雲! でもまだ、お前がそこに居るのなら……!

 なろうぜ……ヒーローに! 三人で……!!』

 

 ……今のが相澤の、本心からの叫びであることは分かる。それが黒霧に届くかどうかは知らん。じゃが、隣の大人達が計器を見て何やら言っているようじゃ。どうやら、黒霧に何か有ったようじゃな。意外なことに、相澤の言葉は届いている。

 これを機と見たのか、相澤は叫び続ける。それが、何かに縋るような子供の姿に見えなくもない。まったく、大の大人が何をしてるんじゃか。なんて思った、その時。

 

 黒霧の面が、明らかに形を変えた。何かあの悪党の中で問題でも起きたのか、それとも儂の目の錯覚……って訳でも無さそうじゃの。黒い靄の中に、確かに人の顔が見える。知らん顔じゃ。あれが白雲朧……なのか? それとも、普段は隠されている黒霧の素顔なのか。

 

 ―――どちらにせよ。相澤の言葉は無駄にはならなかった。様子のおかしくなった黒霧は、たった一言を残して糸が切れたように気絶する。

 

 病院。と、黒霧は確かにそう言った。……病院? ……あぁ、そうか。遺体を脳無にしてるんじゃったな。なら、病院に行けば遺体のひとつやふたつは調達出来る。つまり何者かが、と言うよりあの背広男が、病院から遺体を盗み出した? じゃが今後、あの背広男が再び遺体をを手にすることは無い。じゃって、死んでるんじゃから。

 

 ……ただ、そうじゃなぁ。よくよく考えてみると、九州で呪い合った脳無は明らかに儂への対策を考えられていた。つまりあの脳無は、恐らくはここ最近に作られたもの。と、考えることが出来る。前々から、赤血操術の弱点となる個性を持ち合わせたような脳無を作っていた可能性も十分に有り得るところじゃけども。

 とにかく。まだ脳無は、何処かで誰かに作られているのかも。遺体調達は病院からじゃとして、ならばそれが行える者は? 悪党が盗みに入ってる線も考えられるが、そんな事を痕跡ひとつ無くやり続けるのは無理が有るじゃろ。

 

 と、なると……。病院……関係者が遺体を持ち出している……? 悪党が盗み出しているよりかは、まだ可能性が有りそうな気がしないでもない。もしかすると、脳無を作り出してるのは医者……か……?

 

 ……うむ、分からんな。あれこれ細かく考えることは苦手じゃ。頭が疲れる。儂は単純明快の方が好ましく思う。調査だの推理だの推測は、英雄(ひいろお)や警察、総監部に任せるとしよう。

 

 黒霧が気絶してしまった今、これ以上は何の進展も得られぬじゃろう。黒霧への尋問は、これにて終わりじゃの。

 

「終わりか? それなら、儂は帰るぞ?」

「いえ、今度は貴女に尋問をお願いしたい。ただし相手は黒霧ではなくて、ナインになりますが」

「……は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相澤達が黒霧に尋問した後。今度は、儂がないんを尋問することになった。尋問……、尋問か……。最後にしたのは、いつじゃったっけ? 別に経験が無いとは言わんけども。

 七山の先導で立ち入った部屋は、相澤達や黒霧が居た部屋と似た作りをしておるの。という事は、硝子越しに中の様子を見られて……。ん? 部屋に硝子が無い。いや、有るには有るの。じゃけどそれは、椅子に縛り付けられた悪党と儂を隔てる為に設置されたものじゃ。中の様子を見る為に置かれた硝子は見当たらぬ。

 

 ……まぁ良いか。別に気にすることでもない。それよりも、尋問を頼まれたのならそれを果たすとしよう。上手く行くかどうかは、知らん。最低限、相澤のように何か一つでも引き出せれば良しとしよう。

 

 総監部が聞き出したい情報は、どのように呪力を得たのか。また、呪力を得れる術が有ったとしてそれを行った者は誰なのか。この男が悪党(ゔぃらん)連合の中枢の一人かもしれないと公安は考えてるらしいの。まぁ儂としても、連合とどのような繋がりが有るのかは聞いておきたい。他にも気になる事は有るが、それは個人的な事じゃからな。後回しでも良いじゃろう。

 

『そろそろ起きます』

 

 椅子に腰掛けると、看守の声が聞こえた。ないんが椅子に拘束されたまま眠っているのは、個性や呪力を使おうとする……からじゃろう。黒霧と同じ理由じゃの。一応眠らせておけば呪力も個性も役には立たん。ただし、反転術式を扱えるなら話は変わるかもしれん。この辺りの対策は出来て居るのか? 個性を使おうとしたら電流が流れる腕輪が作れる時代なんじゃし、似たような理屈で呪力を練ろうとしたら電流が流れる拘束具ぐらい作れるんじゃろう。そうでなければ、困る。

 

「……、……っ? 君は……!」

「あぁ、起きたか。よく寝てたの」

「っっ!!」

 

 儂を見るなり、ないんは立ち上がろうとして……結局動くことは出来なかった。椅子に拘束されてる訳じゃから、当然では有る。儂を睨んで来るのは、まぁ儂を恨んでいるからじゃろ。捕らえられた悪党なんて、大抵は捕えた者を快く思わん。もう会うことは無いと思ってたんじゃけどな。まさかこんな事態になるとはのぅ。

 人生、何が有るかなんて分かったものじゃない。

 

「まぁ、落ち着け。暴れたって何にもならん」

「……そのようだ。それで、何の用だ?」

「ただの尋問じゃよ。長引かせたくないし、さっさと答えてくれんか?」

「話すことなど無い。時間の無駄だと思うなら、立ち去れば良い」

 

 それはそうじゃ。と、思う。じゃけど、任務の一つじゃしな。呪術師として、捨て置けん。儂個人としても、悪党連合に関する情報が欲しい。じゃって、ほら。一つ目の奴と呪い合えるかもしれんじゃろ? 次に出会った時こそ、あやつは絶対に祓う。

 

「まぁそう言うな。ないん、貴様どうやって呪力を得た? 脳無と同じ手段か? 或いは、貴様も脳無か?」

「……脳無、などと同じにしないでくれ。君の問いに答えるつもりは無い」

「だ、そうじゃぞ。どうするんじゃ?」

 

 取り敢えず、儂の隣に立っている七山に聞いてみるとする。総監部……そして公安としては、ないんが持つ情報は何としてでも引き出したい筈じゃ。一度や二度断られたからといって、諦めるような真似はしないじゃろう。

 

「……そうですね。情報を渡して貰えれば、貴方の罪を軽減しようと思っていたのですが。どうです? 取引と行きませんか?」

「断る。情報だけ抜き出されるだけだ」

「よく分かっていらっしゃる。現状、総監部は呪詛師を釈放するつもりはありませんから。恐らく、残る生涯は此処に居て貰うことになるかと」

「それは脅しになってない。捕まった時点で、次は無いことは分かっている。だから(ヴィラン)は、容赦なく壊すんだ」

 

 ないんは、今度は七山を睨む。こやつから情報を引き出すのは手間が掛かりそうじゃの。そもそも、大した情報を持っていないから何も話せないって線も有るじゃろう。

 ……そうじゃなぁ。取り敢えず、ひとつひとつ確認しつつ探って行くか? 時間も掛かるし、面倒この上ないが。それでも、やらざるを得ない……か。

 

「ないん。貴様が悪党(ゔぃらん)連合の下で呪力を得たのは知っとる。何をされたかは知らぬが、それは何処で行われた?」

「話すと思うか?」

「話せない、の間違いじゃろ? 呪力を与えられた際、何か縛りを結ばされたかと思うが」

 

 悪党(ゔぃらん)連合の調査自体は、まぁ難航してると言って良いじゃろう。順当ならば、そろそろ全員が捕まっていてもおかしくはないと思う。しかし現状、何体もの脳無を捕まえたり、こうして関わりの有った呪詛師を捕まえても、未だ有力な手掛かりを見付けられていない。今日、黒霧が話した情報が今後役立つものなのかもまだ分からん。

 悪党(ゔぃらん)連合は、徹底して所在を暗ましている。つまり、それだけ情報や痕跡を残さない。ならば、ないんとも何かしらの縛りを結んでいるじゃろう。それが極単純な条件下で結んだ縛りなのか、或いは何か面倒な条件で結んだ縛りなのか。どちらなのかは分からん。そもそも縛りを結んでいるのかすら、定かではない。が、縛りを結んでいる可能性は捨て切れん。

 

 儂が思うに、悪党連合の一部には臆病者が居る筈じゃ。徹底して自らの痕跡を消し、姿を暗ましている奴が居る筈。そしてそやつこそが、脳無や呪詛師を産み出す何かしらの技術を持っているんじゃろう。もしあの背広男が脳無やら呪詛師を産み出していたのなら、あやつが死んだ時点で新たな脳無やら呪詛師はもう出て来ない筈じゃからの。

 

「……」

 

 ないんが、黙った。というよりは、黙らざるを得なかった。と言った方が正しいか……? 悪党(ゔぃらん)連合についての情報を話すことを、縛りによって禁じられている可能性は有る。じゃとしたら、この尋問は無意味じゃな。他者との縛りを破ろうとする術師は居ないからの。

 

「……七山。これ以上は時間の無駄じゃ。こやつは話せん」

「縛り、でしょうか?」

「まぁの。じゃけど、これで分かった事も幾つかある」

「そうですね。(ヴィラン)連合にはまだまだ呪詛師が居る。そういう事ですね?」

「そうじゃな。まぁもしかすると、呪霊と縛りを結んでいるかもしれんが」

 

 現状。直ぐ思い浮かぶ存在は、一つ目の奴じゃ。あやつならば、呪詛師と縛りを結ぶことが出来るじゃろう。しかしあの呪霊が、脳無を作ったり悪党を呪詛師に変えたりしているとは思えん。と、なると……。やはり、悪党(ゔぃらん)連合の中に脳無や呪詛師を産み出す技術者が居る。そやつが居る限りは、脳無も呪詛師も数が増えていく一方じゃ。早いところ、見付けて捕らえねばな。何処に居るかはまるで見当がつかんけど。

 

「……もう一度聞く。君は、いったい何なんだ?」

「それにはもう答えたじゃろ」

 

 何を言い出すかと思えば、くだらん話を再びしたいようじゃ。何が目的かは知らんが、儂の返答は変わらん。そんなことも分からない程、頭が悪い訳でもないじゃろうに。

 ……それとも。そんなに、今の儂の立ち位置が意外なのか? 失敬な奴め。なら、もう一度言ってやろうか。それで理解出来ぬのなら、もう相手にしてやるつもりは無い。こんな奴の考えなど、知ったことか。

 

 

「儂は呪術師じゃ。何度も言わせるな、たわけ」

 

 

 まったく、同じ事を言わせおって。二度と聞いてくれるな。

 

「―――」

 

 面倒な奴じゃ。まだ納得しとらんらしいの。しかしもう、関係無い。結局こやつから得られた情報は、大したものじゃない。縛りを結んでいるのなら、悪党(ゔぃらん)連合についての情報は何も得られないじゃろう。こうなると頼りになるのは、黒霧の言葉だけか。そちらの調査について総監部にでも任せるとして、儂はもう帰るとする。今の時間は分からんが、そろそろ授業が終わって放課後になってる頃じゃろ。此処を出たら被身子に連絡を……。って、いかん。携帯電話(すまほ)を持って来とらん。これでは、被身子に連絡が出来ない。余計な心配を掛けてしまう。

 

 ……帰ってから謝れば、許してくれるじゃろうか? い、いかん。これは……!

 

 直ぐに帰らねばいかん気がしてきたぞ……!

 

 

 

 

 

 









三人称による補完は要りますか?

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