待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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贈り物選び。そのいち

 

 

 

 

 

 

 監獄(たるたろす)での尋問も終わったし、雄英に帰ろう。……と、思ったんじゃけども。儂は急遽予定変更することにした。というのもじゃな? ほら、聖夜(くりすます)……が近いじゃろ? それで今年は例年とは少し違う聖夜(くりすます)を過ごす訳じゃ。その、今年は被身子の恋人としても過ごしたい。ってなるとじゃ、世の中の恋仲というのは聖夜(くりすます)に互いへの贈り物をするのが慣わしらしくての。つまり、儂も被身子に贈り物をしたい。別に去年までしてこなかった訳では無いんじゃけども、今年は特に特別にじゃな。

 

 じゃからの。つまりじゃ。何か贈り物を選んで、買っておきたい。そうしたいと思ったんじゃ。いや別に、帰り道の途中で常々喧しい英語教師が「ヘイDDG! 彼女に贈るクリスマスプレゼントは選んだのか!?」なんて聞いて来たからではない。断じて違う。前々から、……そう前々からっ。被身子に贈り物をするべきと考えていたんじゃぞ儂は……!

 そもそもじゃな。苛立ちを生徒に見られたくないからってそんな言葉で儂を途中で降ろそうと画策するのは少しどうかと思うぞ英語教師。隣で相澤が白い目をしていたんじゃけど? まぁ、子供を前にして苛立ちたくないのは分かるところじゃけども。

 

 ……と、言うわけで。帰り道に贈り物を買っておこうと思い大型商業施設(しょっぴんぐもぉる)に立ち寄って貰った訳じゃ。まぁ相澤とぷれぜんと・まいくは、仕事があるからと先に帰ったが。なので、今。儂は、ながんを連れて贈り物選びをしている真っ最中じゃったりする。

 

「それで、何を贈るんだ?」

「……実はの。それが問題なんじゃ」

「まだ決まってないのか……。クリスマス、もう近いぞ」

「わ、分かっとる。じゃからほら、こうして買いに来た訳で……!」

 

 ながんに白い目で見られていることについては、まぁこの際気にしないことにする。被身子への贈り物選びは、現在難航中じゃ。取り敢えず施設内の百貨店に足を運んで見た訳じゃけど、これが中々いまひとつな感じでの……。被身子が心から喜んでくれそうな物を、儂は用意したい。と言うか、する。そう思っては居るんじゃけども、さっきから目に留まる物は何か違う気がしてならないんじゃ。

 

 例えば、調理器具。新しい包丁とか、前掛け(えぷろん)とか、鍋とかまな板とかその他諸々。新しい物があれば、被身子が料理する際の手助けになるのかもしれん。日々の食事はますます美味くなるんじゃろう。悪くはない選択肢じゃとは思うが、それは儂にとっても悪くないって意味も含まれてしまう。多分、そこが気に食わない。こう、純粋に被身子だけを喜ばせたい。儂もついでに喜ぶもの、なんてのは贈り物としては駄目な気がする。なので、調理器具は却下じゃ。

 

 例えば、寝具。新しい布団や替えの布団を贈るのも悪くはない。寒い夜が続いているから、新しい布団で暖を取りながら被身子と添い寝するのも良いじゃろう。しかしこれは、調理器具と同じ理由で駄目な気がする。喜んでくれるとは思うが、恋人へ贈る物が布団と言うのは……。うむ、駄目じゃの。却下じゃ、却下。

 

 例えば、文房具。被身子は沢山勉強するから、色々と減りが早い。筆記帳とか、しゃぁ芯とか。ぼぉるぺんの消耗も早い。じゃけど、せっかくの聖夜(くりすます)にもっと勉強しろと暗に促すような真似は出来ん。ただでさえ普段から頑張っているのに、これ以上頑張れなんてとても言えぬ。つまり、これも却下じゃ。

 

 百貨店には、色々な物がある。あれやこれやと見て回っているものの、何か違う。どうにも違う。この先、被身子無しで買い物が出来る時間など無い筈じゃ。出来れば今日、ここで買ってしまいたい。後で買いに行こうとするととめられるかもしれんし、そうでなくとも被身子の隣りで被身子への贈り物を買うのは避けたいところじゃ。

 

 ……うぅむ……。困ったのぅ。贈り物選びが、こんなにも難しいとは……。世の中の恋仲(かっぷる)共は、毎年こんな風に悩んでいるのか? じゃとしたら、大変じゃなぁ。儂も今年からは、毎年悩むことになりそうじゃ。

 

「……んんむ……」

「……」

「……うぅむむ……」

「……」

「……んむむむむ……」

 

 駄目じゃ。何を贈れば良いのか、まるで思い浮かばん。あれでもないこれでもないと、百貨店の中をただ徒に歩き続けてしまっている。一度、百貨店から離れるべきかもしれん。今居る商業施設は様々な専門店が有るようじゃから、そちらを見て回るのも有りかもしれんな。

 

「……はぁ。アンタ、いつまで悩んでるんだ?」

「……仕方ないじゃろ。悩ましいんじゃから」

「渡我へのプレゼントだろ? 服とかどうだ?」

「却下」

 

 服なんて、最初に思い浮かんだが? しかしのぅ、儂は服に疎い。被身子にあれこれと教えられては居るんじゃけど、それでもまだ疎い。着物はともかくとして、洋服は特に。色々教わってる立場の儂が、服を贈るのは違う気がするんじゃ。

 ながんよ。意見するなら、もう少し建設的な案を出してくれ。いや、やはり出すな。被身子への贈り物は、儂一人で決めたい。助言など不要じゃ、不要……!

 

 ……。……と、言いたいが。流石にそろそろ、何か助言が欲しい。儂一人では、いつまで経っても何も選べない気がしてならん。

 

「服が駄目なら、あれにしたらどうだ?」

「あれ?」

「ほら、あれ」

「……まぁ、見てみるか……?」

 

 ながんが指差したのは、宝飾店じゃの。……宝飾店、か。被身子はそういうのは、まぁ人並みには好きかもしれんが。ただあやつの場合、指輪が好きなのは儂と揃いの指輪をしたいからで。それならもう間に合ってるんじゃよな。今、儂が左手の薬指にしてる指輪は今年の夏に被身子に贈られたもので。

 

 ……。……あぁ、うむ……。もしかすると、指輪が一番良いかもしれん。今付けている物は、本格的な結婚指輪を買うまでの代用品みたいなものじゃ。いずれ、ちゃんとした指輪を買うと決めている。が、それは被身子と結婚した時にじゃな? 今贈ってしまうのは、やはり違う。悪くない選択肢なんじゃけど、まだ指輪は良いか。安物とは言え、今もしとるし。

 ただ、まぁ。将来に向けて、店を少し覗いてみるとするか。将来に向けて、な?

 

「念の為に聞いておくが、婚約指輪を贈る予定は有るのか? それとも、今着けてるのが婚約指輪か?」

「いや、これは被身子が着けて欲しいと言ってたから付けてるだけじゃ」

 

 この指輪は、婚約指輪……では無い。と思う。ただ、儂が被身子のものじゃって周りに示す為のもので。じゃから、婚約指輪ではない。婚約指輪については、改めて求婚する時に用意するつもりじゃ。儂が十八歳になる直前ぐらいには、買っておきたいのぅ。じゃって、十八になったら直ぐに結婚するんじゃ。じゃならその前に、婚約指輪を渡してじゃな……。

 

 なんて考えつつ、宝飾店の中を見て回る。目に付くのは、やはり指輪じゃ。首飾りとか耳飾りとかも並んではいるが、やはり気になるのは指輪じゃのぅ。

 

「……何か違う気がしてきた……」

 

 良い案かも知れんと思い色々と見てが、やはり違うと思う。じゃって、被身子は既に二つも指輪を身に着けてるんじゃぞ? ひとつは、幼い頃に祭りで取った物を首飾りとして。もうひとつは、逢瀬(でえと)した時に買っていたやつじゃ。二人で揃いの指輪を、左手の薬指に着けている。じゃったら、やはり結婚直前までは指輪を贈らなくても良いのでは?

 

 ……それに、ほら。儂、被身子の指の太さがどの程度なのか知らんし。直ぐに思い浮かべることは出来るし、何なら色々と知っているが指輪を着けるにあたって必要じゃろう正確な数値を知らん。被身子は、何故か儂の指の太さをしっかり把握しとったけれども。お陰で、指輪がぴったりじゃ。

 

 うぅむ……。指輪を買うのは、被身子の指を測った後にしよう。大きさが合わない、なんて事態は避けねばならんし。近い内に、と言うか今晩ぐらいにこっそりと測ってみるとしよう。今宵は、被身子より先に寝ないよう気を付けねば。

 

「アンタも、贈り物ひとつに随分悩むんだな」

「何じゃ? 悩んだら悪いのか?」

「悪いとは言わない。ただ、意外だと思う。アンタって、色々いい加減だろ? プレゼント選びもそうなのかと思ってたんだが……」

「悪かったな。想像と違って」

 

 それと。誰が色々いい加減、じゃって? そんな筈が有るか。儂は被身子には真剣なんじゃぞ。真剣じゃからこそ、こうして何を贈るべきか延々と悩んでしまうんじゃ。

 きっと被身子は、儂が被身子を想って選んだ物なら何じゃろうと喜んでくれる。そんな確信がある。でもじゃからって、いい加減に選ぶのは違うんじゃ。被身子が満足出来て、儂が納得出来るものを贈りたい。そうしないと、失礼な気がしてならん。

 

 じゃからこそ、何を選べば良いのかまるで分からんのじゃけど。

 

「うぅむ……。どうしようかのぅ……?」

 

 やはり直ぐには、答えが見付からない。取り敢えずもう少し、あれやこれやと見て回るとするか。なぁに、寮の門限までまだまだ時間がある。あと数時間ぐらいはこうして悩んでいても良い筈じゃ。そうでなければ困る。

 ながんを振り回すことになってしまうが、まぁ良いじゃろう。ほら、こやつは儂の補助監督なんじゃし。それに、たまにはこうして買い物に付き合わせたら息抜きになるじゃろ。任務以外では、基本的に寮の中から出ようとしないしな。

 

「……そこまで悩むなら、いっそ渡我の好きな物から選んでみたらどうだ?」

「儂じゃけど」

「そうじゃない。服とか、色々あるだろ?」

「あぁ……。服……。服かぁ……」

 

 いや、じゃからな? 服は違うんじゃ服は。確かに服を贈ったら、被身子は大喜びじゃろう。でもなぁ、儂が贈り物に相応しい服を選べるかと言ったら、流石に自信は無い。変な服を選ぶなんてことは無いとは思うが、被身子のお眼鏡にかなうかと言うと……。

 ま、まぁ。まだまだ時間は有るんじゃ。なので、服も一応見てみるとするか。なら次は、服屋にでも足を向けてみるとするか。

 

 で。この後。服屋を見て回った訳じゃが、これという物は見当たらなかった。外套(こおと)とか良さげじゃったんじゃけど、聖夜(くりすます)の贈り物にはどうにも相応しくない……気がしての。まぁこれはこれで、聖夜(くりすます)以外の場面で贈っても良い気はしないでもないが。

 

 

 んんむ……。贈り物選び、難しいのぅ……。

 

 

 

 

 

 

 

 






プレゼント選びに延々と悩む円花の図。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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