待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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贈り物選び。そのに

 

 

 

 

 

 

 百貨店やら専門店やらを見て回ったんじゃけど、これが良いと思える贈り物は見付からなかった。まさか、何も思い浮かばないとは思わなかったのぅ……。結局門限が近付いて来て、今日は諦めるしか無かった訳じゃ。しかし、それはそれで解せない。儂としては、何なら一晩ぐらいは見て回りたかった。

 まぁ、時間が無いんじゃから仕方ないと思うことにする。今日は空振りってことで、流石に諦めた。んじゃけども、どうにも後ろ髪が引かれる。こうなったら、明日は一日中探し回るしかない。それでも思い浮かばないなんてことは、流石に無いと思いたいところじゃが……。

 

 あ。そうじゃ。どうせなら、くらすめえと達に聞いてみよう。何かしら、参考になるかもしれん。と、言うわけで。雄英に帰った儂は、まず真っ先に英雄(ひいろお)科の寮に向かった。もうすっかり日が暮れて、外は余計に寒い。腹が空く時間ではあるが、もう少し贈り物選びを粘ってみるとする。

 

 寮の居間に踏み入ると、数人のくらすめえと達が目に入った。珍しく女子(おなご)達の姿が見えないけども、ここはもう聞いてしまおう。ひょっとしたら男子の方が分かるかもしれんし。どうせ全員から意見を貰うつもりじゃし、目に付いた奴から聞いていくとするか。

 

 最初は……瀬呂と切島と上鳴。あと、舎弟か。

 

「お主等、儂に知恵を貸せ」

「おっ、廻道。こっち来るなんて珍しいじゃん」

 

 今の椅子(そふぁ)に集まって受映機(てれび)を見ている四人に声を掛けると、まず真っ先に反応してくれたのは上鳴じゃ。

 

「急にどうした?」

「貸さねえよ。くたばれ」

「まぁまぁ、聞いてやろうぜ爆豪」

 

 舎弟の暴言は無視するとして、取り敢えず聞くだけ聞いてみるとしよう。しかしこやつ、相変わらず口が悪いな……。これだから舎弟は。その言葉遣いは、流石に矯正すべきじゃよなぁ。でもなぁ、こやつは人の言う事を聞くような質でもないし。これはこれで、どうしたものかのぅ。

 

「実はの、被身子への贈り物をどうするか悩んでるんじゃけど」

「あー、クリスマス近いもんなぁー。俺も彼女が居たらプレゼント選びとかするんだけどなーー……」

 

 何故か上鳴が遠い目をした。瀬呂は同意するかのように苦笑いしておる。今の言葉の何処に共感出来る部分があったのか。贈り物選びがしたいなら、いっそ彼女を作れば良いだけでは……? と言うか、別に彼女が居なくたって贈り物選びぐらい出来るじゃろうに。適当に女子(おなご)達にすれば良いのでは?

 

「何か良い案は無いかのぅ? こう、被身子が喜べるものが良いんじゃけど」

「てめえが知らねえ事を俺等が知るか。惚気に来たんなら帰れ」

「まぁまぁ、そこは相談に乗ってやろーぜ? ヒーローなったら、こういう機会も有るかもしれないだろ?」

「ねえよ死ね!」

 

 ……まぁ。確かに? 舎弟の言う通り、儂が知らん事をこやつ等が知っているとは思えん。他の事ならまだしも、被身子の事じゃからの。儂以上に被身子の事を知ってる奴が居たら、それはそれで困る。と言うか嫌じゃ。儂の被身子じゃぞ、儂の。儂より被身子を知ってる奴なんて、存在して堪るか。

 いや、まぁ……。ひょっとすると母がそうかもしれぬけど。それでも、被身子の事を一番分かっとるのは儂じゃ。そこは相手が母じゃろうと譲らん。

 

「つまり……自信が無いってことだな? 流石の爆豪にも女心は分からんかー」

「分かっててこれなら尚更ヤベェ奴じゃん」

「は? 分かるわ死ね!! あのイカれ女に贈るんならまずハンドクリームだわ!!」

 

 瀬呂と上鳴に煽られて、舎弟が怒鳴った。いつもいつも喧しいの……。

 で。はんどくりぃむ? あぁ、確か被身子がたまに手に塗ってるやつじゃの。あれを使ってるお陰か、被身子の手はしっとり柔らかですべすべじゃ。……なるほど、つまり日用品も有りってことか。いや、でもなぁ。使って無くなってしまうものを贈るのは、それはそれでどうなんじゃろうか? 出来ることなら、永遠と持ってられるような物が好ましい気がする。飽くまで儂としては、じゃけど。被身子は、まぁどっちでも喜ぶんじゃろうけども。

 

「後は化粧水とか美容液とか乳液だろ! 冬はお肌乾くって知らんのか!!」

 

 お、おう……? そう……なのか? いや儂、年中通して肌が乾いたことは無いしの。常に反転術式(はんてん)を回しとるからか、たまに被身子が羨むぐらいに肌の質は良いままじゃ。

 ……ふむ、肌を保水する日用品か。それはそれで悪くないの。しかし、今の歳からそういうのを使うのはどうなんじゃろうか? 被身子の肌が乾いてることなんて、早々無いし。もしかして、儂の見てないところで使ってたりするのか? 確かに、色々よく分からん物を持っているけれども。

 

「ぐっ、くく……っっ!」

「お、おっ、お肌……!!」

「わ、わりぃ爆豪……! い、意外過ぎて……!」

「ぁあ゛っ!? んだてめえら!!?」

 

 何故か瀬呂と上鳴と切島が腹を抱えて蹲った。まぁ確かに、舎弟の口からお肌は少し面白いかもしれん。何なら肌に気を使うことが無さそうなこやつが、その辺り詳しいのも面白い。何で知っとるんじゃ? さてはこやつ、そう言う類の物を使ってたり……?

 

 ……。……ぶふっ。あ、いかん。想像したら笑えて来た。

 

「あ、廻道さんだ。どうしたの?」

「ぉ、おう緑……ぶふ……っ」

「む、何か愉快な事でもあったのか? みんな笑いを堪えてるようだが……」

「何の話だ……?」

 

 次第に込み上げてくる面白さに笑い出しそうになっていると、緑谷や飯田、それと轟が食堂の方から姿を見せた。このままじゃと大笑いして舎弟が爆発しそうな気がするから、姿を見せた三人を見て意識を逸らすとする。意識を逸ら、そ……そ……。

 

「ぶっ、くく……! 冬はお肌乾くって話してたんだわ……!」

「くっ、ふふ……! お肌……! お肌て……!!」

「わ、わりぃ爆豪……! む、無理……!」

「くっ、く……! おい貴様等っ、蒸し返すのは止さぬか……!」

 

 だ、駄目じゃ。いかん、いかんぞ……! 切島達は腹を抱えて悶えていて、今にも大笑いしそうじゃ。それにつられて儂も、笑い出しそうになってしまう。ここで大笑いする訳には……! し、しかし……っ。しかし、一度思い浮かんだ物は困ったことに中々消えぬ。

 

「お肌……? あ、かっちゃん。良い化粧水とか知ってる? 今年は例年とは違うやつが良いかなって思って……」

「ぁあ゛? んなもんてめえ、一人でコスメショップでも行ってろや!!」

「や、出来れば一緒に来てくれると助かります……。ほら、かっちゃんも毎年冬になると買いに行って」

「爆豪、化粧すんのか?」

「ぶふっ!」

 

 と、轟ぃ……! 今、変な事を口走るのは止さぬかっ。噴き出してしまったじゃろ……! い、いかん。変に我慢してた分、余計に笑いが込み上げて……! くっ、くく……! 化粧……! 舎弟が化粧……っ!!

 

「だーーっははっ! 無理! 轟それは無理!!」

「化粧……! 化粧した爆豪て……!!」

「ぷっ、くく……! かはっ、くくく……っ!」

 

 あ、駄目じゃこれ。笑いが止まらん。この後しばらく、儂は切島達と腹を抱えて笑うことになった。当然、舎弟は大爆発した。

 笑いが落ち着いた頃に緑谷に詳しく話を聞くと、何でも舎弟は毎年聖夜(くりすます)辺りになると化粧水じゃったり、はんどくりぃむ……を母親に贈っているそうじゃ。何だかんだで、親孝行はしっかりしとるようじゃ。それは笑うべきことではない。笑ってはならんと思っては居るのじゃが、どうにも笑いが込み上げて……!

 

 ……儂。しばらくは化粧品を見て、思い出し笑いするかもしれん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「渡我先輩に」

「クリスマスプレゼント?」

 

 食堂。晩飯を食べている女子(おなご)達が、儂からの質問に首を傾げた。

 

「そう。くりすますぷれぜんと。何か良い案が有ったりしないかのぅ……? その、ほら……。今年は恋人としても贈りたくて、色々悩んどるんじゃけども」

「んー……、それってあれじゃない? ほら、お約束しとけば?」

「あー、それが一番手っ取り早いかも? でも二人ってほら、既にそういうカンケイじゃん? とっくに経験済みなんじゃ……」

「あ、そっかぁ。じゃあ駄目か」

「……お約束?」

 

 舎弟の意外な発言に大笑いしてしまった後。男子達からはこれと言った案を貰えなかったので、儂は女子(おなご)達にも聞いてみることにした。

 で、芦戸と葉隠。お約束って、何の事じゃ? 関係? とっくに経験済み……? 何が言いたいのかまるで分からん。隣に居る麗日に教えて貰おうと思い目を合わせると、目を逸らされた。どうやら答えたくないようじゃの。

 

「ケロケロ。円花ちゃんが選んだ物なら、被身子ちゃんは何だって喜ぶと思うわ」

「ウチも梅雨と同じ意見。ほら、渡我先輩ってそういうとこ有るじゃん? 廻道もそうだけどさ」

「深く考えなくても良いと思いますわ。廻道さんが渡我先輩を想って用意した物なら、それは絶対に素敵な物だと思いますし」

 

 んんむ……。まぁ、その意見には一理ある。梅雨の意見も耳郎の意見も、八百万の言葉じゃって大きく間違ってはいない。が、しかしなぁ。それを分かった上で、儂はどうしたものかと悩んでいるんじゃけども?

 

「恋人へのクリスマスプレゼント、かぁ。誰かと付き合ったこと無いから分かんないや」

「それ言ったら私もそう! でも、素敵な物を贈りたいってのは分かるよねー。良いなー、私も恋したーい」

「まぁ……いずれはそういうのも経験したいよね。ウチ等にそんな余裕は無いけど……」

「……そうか? 相手さえ居れば出来そうなものじゃけどなぁ」

 

 耳郎の言う通り、余裕が無いのは確かにそうじゃ。英雄(ひいろお)なんてものを目指してる以上、勉強と訓練が第一になってしまうのは仕方ない。が、じゃからって恋人を作れないかと言うと、それはそれで何か違う気がする。別に作れるじゃろ、相手さえ居れば。今は、付き合いたいと思う程の男子が居ないだけで。

 まぁ、そんな話は置いといて。何か良い案をくれ、良い案を。恋ばな、とかいう話に花を咲かせるつもりは無いんじゃ。儂が知りたいのは、被身子への贈り物は何が良いかってことでじゃな……。

 

「そりゃ廻道みたいに強ければさ、バカップルするぐらいの余裕は有るんだろうけど」

「いや、これでも余裕は無いぞ?」

「廻道さんに余裕が無いようには見えませんわ……」

「いやいや、無いんじゃよこれが。毎日忙しい」

 

 余裕が有るか無いかで言えば、無い。呪具作成に任務、勉強に鍛錬。呪術科に移ってから、と言うか移る前から、儂は何かと忙しい。過労になって風邪を引いたこともある。何なら最近は、幻聴まで聞こえて来る始末じゃし。心身共に疲れている自覚は無いし、休憩も睡眠もちゃんと取っておる。それでも尚、幻聴は消えない。不定期に、ふとした時に聞こえてくる。

 理由は、分かっとる。でも、じゃからって被身子から離れたりしない。被身子だけは、信じて頼る。そう決めたんじゃから。

 

『忘れるな。お前に、何が出来なかったのかを』

 

 うるさい。いい加減にして欲しいものじゃ。いったいいつまで、語り掛けてくるつもりなのか。

 

「円花ちゃん? 怖い顔してどうしたの?」

「……ん。いや、何でもないぞ梅雨。ただの考え事じゃ」

「そんな顔するぐらいプレゼントに悩んでるってこと……? 廻道さん、ほんま渡我先輩の事大好きなんやなぁ……」

「そうじゃぞ。この世で最も、な」

 

 うむ。幻聴など、気にしている場合ではない。そんな事よりじゃな、被身子への贈り物をどうするか。そちらの方が大切じゃ。聖夜(くりすます)まで、時間が無い。早いところ何を贈るか決めなければ。今年はただでさえ、被身子の誕生日に何も用意することが出来なかったんじゃから。

 

 ……ところで。お約束って何じゃ?

 

「なぁ麗日、お約束って何じゃ?」

「えっ。い、いやそれは……聞かないで……!?」

「フフフ。廻道ちゃん、ちょっと耳貸して。お約束っていうのはねーー……。ごにょごにょごにょ……」

「……? ……!? ……っっ!!」

 

 あ、阿保か!? おい、流石にそれはどうかと思うんじゃけど!? 何を口走っとるんじゃ葉隠っ!!

 

 何で裸に飾り布(りぼん)なんじゃっ!! それは! もう! やりとうない!! 恥ずかしいんじゃぞあれは!!!

 

 

 

 

 

 

 

 







つまり、ぷれぜんとは儂!って事です。まぁ経験済みですけどね。このバカップル。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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