待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「インターン先、ですか?」
「そうなんじゃよ。何やら公安からの要請での、ひいろおの人手が足りてないから学徒動員するそうじゃ」
そろそろ寝る時間、なんじゃけれども。儂は被身子と同じ布団の中でうつ伏せになって、おおるまいとに手渡された用紙を眺めている。枕灯の薄暗い光を頼りにして、じゃ。
用紙には、いんたぁん先の候補となる事務所が幾つも書かれておっての。この中から取り敢えず一箇所は選ばなければならない。んじゃけども、どうにも気が乗らん。じゃって、儂は
じゃから、ちゃんと
そう考えるとな。
「んーー。円花ちゃんの扱いを分かってるヒーローのところが良いのです。ほら、そうじゃないと喧嘩しそうですし」
「いや、喧嘩なぞしないが?」
「えー? ヨリくんってすっごく頑固ですし、ヒーローだって頑固じゃないですか。喧嘩率は結構高いと思うんですけど」
「いやいや、そんな事は無いじゃろ」
喧嘩て。相手がどの
「この中だったら、エンデヴァーとかホークス……。あと、ギャングオルカですかねぇ。あ、ナイトアイは駄目ですよ? 間違っても選んじゃ駄目ですからね??」
「あんな奴など選ばん」
例え天地がひっくり返ったとしても、それだけはない。ないとあいだけは、絶対に選ばん。じゃって嫌いじゃもん。相澤と同じぐらい、嫌いじゃ。二度と面を見たくない。思い出したら、腹立たしくなって来た。
……ちっ。なんであんな奴を思い浮かべて、わざわざ苛立たねばならんのじゃ。解せぬ。
「一番勉強になりそうなのは、やっぱりエンデヴァー……ですかねぇ」
「んむぃ、ひいろおの頂点じゃからな」
「まぁトップの事務所だからって、ほんとに勉強になるかは分かりませんけど」
「それもそ、ぅむぅ……」
……。おい、おいこら被身子。儂が話してるのに、頬を指でつつくんじゃない。何を楽しそうにしとるんじゃ貴様。仕返しに頬を軽くつねって見ると、被身子も軽くつねって来た。楽しそうに笑ってたら、何でも儂が許すと思っとるのか? さては思っとるな?? まったく、こやつときたら。まっこと、仕方ないんじゃから。そんな被身子も愛しいって思ってしまう辺り、もう何と言うか……。何と言うかじゃな……。
「はいっ。こっち来てください!」
いや、横向きになって腕を広げるな。こっちに来いと言いながら、儂の背中に腕を回すのはどうなんじゃ? こっちに来てではなく、こっちに来させるの間違いじゃろそれは。
……まぁ、この誘いを断る理由は何処にも無いんじゃけど。
体の向きを変えると、それ以上動く間もなく抱き寄せられた。思いっきり抱き締められて、少し息苦しい。が、冬の寒い夜にはこれが一番かもしれん。ここ最近は一層と冷え込んで来て、そのうち肉が裂けるんじゃないかと思ってしまう程での。じゃからほら、こうして身を寄せ合って暖を取りたい。布団の中が温い。被身子が温い。居心地良くて、堪らん。
「冬は人肌恋しい季節ですよねぇ。もっとくっ付きましょう?」
「これ以上どうやってくっ付くんじゃ」
「それはもちろん、邪魔なものは取っ払う感じで」
「へんたい。えっち。すけべ」
気が付けば帯が緩められていて、前が開けとる。被身子の手が冬用浴衣の内に滑り込んで来て、少し擽ったい。んじゃけども。布越しに触れられるよりもずっと、被身子の体温を感じられて気分が良い。
「んん……っ」
「抵抗しないヨリくんも、えっちですよぉ♡」
「抵抗したって、止めないくせに」
「んふふ。だってぇ、途中で止めたら拗ねちゃうじゃないですか♡」
それは……。まぁ、そうじゃけど。半端は嫌いじゃ。どうせあれこれとされるなら、最後までして欲しいと思うからの。ただ、やられっぱなしは癪なので儂も被身子が着ている浴衣を緩める。そしたらこやつはわざとらしく甲高い声を出して、余計に儂の体を弄り始めた。
気が付けば、大分浴衣が乱されて……。こうなったら、もう被身子も儂も止まれない。気が済むまでお互いを求め合うのみじゃ。ふふん、今夜も儂が勝つからな? いい加減、巻き返す時が来たんじゃっ! つまり、儂の時代ってことじゃからな!?
◆
翌朝。目が覚めると、被身子が勝ち誇った顔で儂を見ていた。それも至近距離で、何やら幸せそうじゃ。……おい。昨晩の結果は引き分けじゃろ。言っておくが、儂は負けとらん。負けとらんからな……!?
「んふふ。おはようございます」
「……おはよぅ。寒い……」
勝敗は大事じゃけども、それよりもこの寒さを何とかしたいのぅ。幾ら二人で布団の中で身を寄せ合っていると言っても、お互い裸じゃし。冬の朝は特に寒いからの。それに体は気怠いし、瞼は重いし。布団から出たくない。出て欲しくもない。なのに、今日は平日じゃ。被身子には授業が有って、儂もやるべき事が山のようにある。
じゃから。まっこと、不服じゃけども……。
……起きる、とする。でもその前に、もう少し。あと少しだけ被身子を抱き締めて……。あと、そうじゃ。
「起きないと駄目ですよぉ。クリスマスまで、ヨリくんも私もやる事がいっぱい有るのです」
「……んん……」
それは、分かっとるけども。分かっとるけど、まだ動きたくない。布団から出たくない。それに被身子の体が温くて、とても離れ難い。今、何時じゃ……? 時間に余裕が有るならもう少し、くあぁ……っ。
「えへへぇ、冬の朝は甘えんぼなのです。何なら、もーっと甘えて良いんですよ?」
「なら、そうすりゅ……」
「どーぞっ。カァイイねぇ、カァイイねぇ……♡」
布団の中で被身子を抱き締めると、暖かくて心地良い。温いんじゃあ。もっと甘えても良いみたいじゃから、もう少し添い寝を楽しもう。温くて、暖かくて。あぁいかん、瞼が重い。このままじゃと、また寝てしまうなぁ。
……良いか、別に。いや、良くない……。でもでも、今は少しじゃって離れたくない。時間が許す限りは、こうして被身子と暖を取ろう。
んん……。
「あと一時間ぐらいは、ぎゅーーってしてあげますねぇ♡」
「んぅ……。そうしてくれ……」
「ふふっ。はぁい」
一時間……。一時間、か……。二度寝するには、十分な時間じゃの。欲を言えば二時間、いや三時間はこうして居たいところじゃ。しかし現実は、たったの一時間だけ。何で今日は平日なんじゃ。土曜か日曜なら、気が済むまでこうして居たって何の問題も無いんじゃけどなぁ。
「んぅ……。被身子ぉ」
「はぁい」
「んん……。……んぅ……」
「……♡」
眠い。温い。冬の布団の中で裸で抱き締め合うのは、何でこんなに気持ち良いんじゃろうな? 気が安らいで、他に何もしたくなくなって。今日一日分の気力を根こそぎ奪われてしまっている。気がする。
被身子を抱き締めて、被身子に抱き締められて。互いの足を絡めて密着して。儂の顔は、被身子の胸に埋めて。幸せじゃなぁ、これ。困ったことに、幸せなんじゃ。こんな時間がもっと続けば良いなと、つい思ってしまう。それしか考えられなくなってしまう。
「あと一時間だけ、二度寝しちゃいましょうか♡ もう少し、イチャイチャラブラブしましょう♡」
「ん……。するぅ……」
くあぁ……っ。んん、んむむ……。まだ寝れる。もっと寝たい。布団の中が温くて、動きたくない。被身子は儂を抱き締めて、好き勝手に頭やら背中を撫で回しておる。あと一時間だけと言っておきながら、そうやって寝かし付けようとするのは狡くないか? 儂、起きれる気がしないんじゃけど??
……良いか、別に。寝過ごしてしまっても。良いではないか、ずぶずぶと幸せに浸ってたって。この冬はもう、朝に起きるのを諦めよう。無理じゃ無理。こんな心地良い時間を知ってしまったら、どうにも抜け出せん。
この後。儂は見事に二度寝してしまい、次に目が覚めたのは一時間後どころか二時間後じゃった。起きたら被身子は居なくなっていて、枕元には書き置きがしてあった。平日じゃって言うのに怠惰な朝を迎えてしまった訳じゃけど、まぁたまには良いじゃろたまには。寝起きに被身子が居ないって事だけが、どうにも不満じゃけど。
いかんなぁ。人として駄目になってしまっている気がする。しっかりしなければと思いつつも、朝の寒さにはどうにも敵わんのじゃ……。
布団とトガちゃんに包まり、蓑虫になる円花の図。冬のお布団の魔力にまるで抗えない模様。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ