待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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布団の中で。

 

 

 

 

 

 

「インターン先、ですか?」

「そうなんじゃよ。何やら公安からの要請での、ひいろおの人手が足りてないから学徒動員するそうじゃ」

 

 そろそろ寝る時間、なんじゃけれども。儂は被身子と同じ布団の中でうつ伏せになって、おおるまいとに手渡された用紙を眺めている。枕灯の薄暗い光を頼りにして、じゃ。

 用紙には、いんたぁん先の候補となる事務所が幾つも書かれておっての。この中から取り敢えず一箇所は選ばなければならない。んじゃけども、どうにも気が乗らん。じゃって、儂は英雄(ひいろお)になりたくて免許が欲しい訳じゃない。免許を取るのは、呪術師として不自由なく活動する為なんじゃ。それに、本来なら儂は英雄(ひいろお)になるまで呪術師としての活動は母に禁じられていた身じゃからの。悪党が呪詛師になったり、呪霊が悪党の配下になったりしてたから、なし崩し的に母に許して貰ってるだけで。

 じゃから、ちゃんと英雄(ひいろお)免許は取らなければ。そうしなければ、今度こそ母は許してくれないじゃろうし。

 

 そう考えるとな。英雄(ひいろお)免許を取る為の経験がしっかり積めそうな事務所を選びたい。用紙に書かれた事務所は、どこも有名所と言って良いじゃろう。えんでゔぁを始めとして、この国の中で優れた英雄(ひいろお)の事務所ばかりが記載されている。何処を選んでも良さそうなものじゃけども、それが却って悩ませてくると言うか……何と言うか……。

 

「んーー。円花ちゃんの扱いを分かってるヒーローのところが良いのです。ほら、そうじゃないと喧嘩しそうですし」

「いや、喧嘩なぞしないが?」

「えー? ヨリくんってすっごく頑固ですし、ヒーローだって頑固じゃないですか。喧嘩率は結構高いと思うんですけど」

「いやいや、そんな事は無いじゃろ」

 

 喧嘩て。相手がどの英雄(ひいろお)じゃろうと、そんな真似はしないが? そもそも喧嘩にならんじゃろ。儂を何じゃと思っとるんじゃこやつ。失敬な。

 

「この中だったら、エンデヴァーとかホークス……。あと、ギャングオルカですかねぇ。あ、ナイトアイは駄目ですよ? 間違っても選んじゃ駄目ですからね??」

「あんな奴など選ばん」

 

 例え天地がひっくり返ったとしても、それだけはない。ないとあいだけは、絶対に選ばん。じゃって嫌いじゃもん。相澤と同じぐらい、嫌いじゃ。二度と面を見たくない。思い出したら、腹立たしくなって来た。

 ……ちっ。なんであんな奴を思い浮かべて、わざわざ苛立たねばならんのじゃ。解せぬ。 

 

「一番勉強になりそうなのは、やっぱりエンデヴァー……ですかねぇ」

「んむぃ、ひいろおの頂点じゃからな」

「まぁトップの事務所だからって、ほんとに勉強になるかは分かりませんけど」

「それもそ、ぅむぅ……」

 

 ……。おい、おいこら被身子。儂が話してるのに、頬を指でつつくんじゃない。何を楽しそうにしとるんじゃ貴様。仕返しに頬を軽くつねって見ると、被身子も軽くつねって来た。楽しそうに笑ってたら、何でも儂が許すと思っとるのか? さては思っとるな?? まったく、こやつときたら。まっこと、仕方ないんじゃから。そんな被身子も愛しいって思ってしまう辺り、もう何と言うか……。何と言うかじゃな……。

 

「はいっ。こっち来てください!」

 

 いや、横向きになって腕を広げるな。こっちに来いと言いながら、儂の背中に腕を回すのはどうなんじゃ? こっちに来てではなく、こっちに来させるの間違いじゃろそれは。

 ……まぁ、この誘いを断る理由は何処にも無いんじゃけど。

 

 体の向きを変えると、それ以上動く間もなく抱き寄せられた。思いっきり抱き締められて、少し息苦しい。が、冬の寒い夜にはこれが一番かもしれん。ここ最近は一層と冷え込んで来て、そのうち肉が裂けるんじゃないかと思ってしまう程での。じゃからほら、こうして身を寄せ合って暖を取りたい。布団の中が温い。被身子が温い。居心地良くて、堪らん。

 

「冬は人肌恋しい季節ですよねぇ。もっとくっ付きましょう?」

「これ以上どうやってくっ付くんじゃ」

「それはもちろん、邪魔なものは取っ払う感じで」

「へんたい。えっち。すけべ」

 

 気が付けば帯が緩められていて、前が開けとる。被身子の手が冬用浴衣の内に滑り込んで来て、少し擽ったい。んじゃけども。布越しに触れられるよりもずっと、被身子の体温を感じられて気分が良い。

 

「んん……っ」

「抵抗しないヨリくんも、えっちですよぉ♡」

「抵抗したって、止めないくせに」

「んふふ。だってぇ、途中で止めたら拗ねちゃうじゃないですか♡」

 

 それは……。まぁ、そうじゃけど。半端は嫌いじゃ。どうせあれこれとされるなら、最後までして欲しいと思うからの。ただ、やられっぱなしは癪なので儂も被身子が着ている浴衣を緩める。そしたらこやつはわざとらしく甲高い声を出して、余計に儂の体を弄り始めた。

 

 気が付けば、大分浴衣が乱されて……。こうなったら、もう被身子も儂も止まれない。気が済むまでお互いを求め合うのみじゃ。ふふん、今夜も儂が勝つからな? いい加減、巻き返す時が来たんじゃっ! つまり、儂の時代ってことじゃからな!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。目が覚めると、被身子が勝ち誇った顔で儂を見ていた。それも至近距離で、何やら幸せそうじゃ。……おい。昨晩の結果は引き分けじゃろ。言っておくが、儂は負けとらん。負けとらんからな……!?

 

「んふふ。おはようございます」

「……おはよぅ。寒い……」

 

 勝敗は大事じゃけども、それよりもこの寒さを何とかしたいのぅ。幾ら二人で布団の中で身を寄せ合っていると言っても、お互い裸じゃし。冬の朝は特に寒いからの。それに体は気怠いし、瞼は重いし。布団から出たくない。出て欲しくもない。なのに、今日は平日じゃ。被身子には授業が有って、儂もやるべき事が山のようにある。

 

 じゃから。まっこと、不服じゃけども……。

 

 ……起きる、とする。でもその前に、もう少し。あと少しだけ被身子を抱き締めて……。あと、そうじゃ。接吻(きす)もしたい。許されるなら二度寝して、このまま被身子と惰眠を貪ってじゃな……。

 

「起きないと駄目ですよぉ。クリスマスまで、ヨリくんも私もやる事がいっぱい有るのです」

「……んん……」

 

 それは、分かっとるけども。分かっとるけど、まだ動きたくない。布団から出たくない。それに被身子の体が温くて、とても離れ難い。今、何時じゃ……? 時間に余裕が有るならもう少し、くあぁ……っ。

 

「えへへぇ、冬の朝は甘えんぼなのです。何なら、もーっと甘えて良いんですよ?」

「なら、そうすりゅ……」

「どーぞっ。カァイイねぇ、カァイイねぇ……♡」

 

 布団の中で被身子を抱き締めると、暖かくて心地良い。温いんじゃあ。もっと甘えても良いみたいじゃから、もう少し添い寝を楽しもう。温くて、暖かくて。あぁいかん、瞼が重い。このままじゃと、また寝てしまうなぁ。

 

 ……良いか、別に。いや、良くない……。でもでも、今は少しじゃって離れたくない。時間が許す限りは、こうして被身子と暖を取ろう。

 

 んん……。

 

「あと一時間ぐらいは、ぎゅーーってしてあげますねぇ♡」

「んぅ……。そうしてくれ……」

「ふふっ。はぁい」

 

 一時間……。一時間、か……。二度寝するには、十分な時間じゃの。欲を言えば二時間、いや三時間はこうして居たいところじゃ。しかし現実は、たったの一時間だけ。何で今日は平日なんじゃ。土曜か日曜なら、気が済むまでこうして居たって何の問題も無いんじゃけどなぁ。

 

「んぅ……。被身子ぉ」

「はぁい」

「んん……。……んぅ……」

「……♡」

 

 眠い。温い。冬の布団の中で裸で抱き締め合うのは、何でこんなに気持ち良いんじゃろうな? 気が安らいで、他に何もしたくなくなって。今日一日分の気力を根こそぎ奪われてしまっている。気がする。

 被身子を抱き締めて、被身子に抱き締められて。互いの足を絡めて密着して。儂の顔は、被身子の胸に埋めて。幸せじゃなぁ、これ。困ったことに、幸せなんじゃ。こんな時間がもっと続けば良いなと、つい思ってしまう。それしか考えられなくなってしまう。

 

「あと一時間だけ、二度寝しちゃいましょうか♡ もう少し、イチャイチャラブラブしましょう♡」

「ん……。するぅ……」

 

 くあぁ……っ。んん、んむむ……。まだ寝れる。もっと寝たい。布団の中が温くて、動きたくない。被身子は儂を抱き締めて、好き勝手に頭やら背中を撫で回しておる。あと一時間だけと言っておきながら、そうやって寝かし付けようとするのは狡くないか? 儂、起きれる気がしないんじゃけど??

 

 ……良いか、別に。寝過ごしてしまっても。良いではないか、ずぶずぶと幸せに浸ってたって。この冬はもう、朝に起きるのを諦めよう。無理じゃ無理。こんな心地良い時間を知ってしまったら、どうにも抜け出せん。

 

 

 

 この後。儂は見事に二度寝してしまい、次に目が覚めたのは一時間後どころか二時間後じゃった。起きたら被身子は居なくなっていて、枕元には書き置きがしてあった。平日じゃって言うのに怠惰な朝を迎えてしまった訳じゃけど、まぁたまには良いじゃろたまには。寝起きに被身子が居ないって事だけが、どうにも不満じゃけど。

 

 いかんなぁ。人として駄目になってしまっている気がする。しっかりしなければと思いつつも、朝の寒さにはどうにも敵わんのじゃ……。

 

 

 

 

 

 

 






布団とトガちゃんに包まり、蓑虫になる円花の図。冬のお布団の魔力にまるで抗えない模様。

三人称による補完は要りますか?

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