待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
被身子への贈り物が一向に決まらん。呪具を作ったり任務をしたり、勉強や鍛錬をしていると一日があっという間に過ぎる。気が付けば、明後日には
と、言うわけで。儂がまず足を向けたのは、一年しぃ組じゃ。ながんに案内して貰った。教室の扉を勢い良く開くと、授業中じゃったわ。教師も生徒達も、一斉に儂を見てくる。いかん、時間を配慮するべきじゃったな。しかし既にやらかしてしまったので、この際目的を済ませてしまおう。
「授業中にすまんの。心操は居るか? ちょいと用事が有るんじゃけども」
「……廻道さん。授業中ですよ」
「すまんすまん。直ぐ済ませるから勘弁してくれ」
誰とも知らん教師に睨まれてしまった。出直すべきなのは分かっとるんじゃけど、次の休み時間まで待つことは出来ん。何せ儂は忙しい。常々、時間が足りないんじゃ。呪術科に移籍しても時間が足りないのは、いったいどういう事なんじゃか。
後で相澤辺りに叱られるかもしれんが、今は用を済ませなければ。教室の中を見渡すと、真ん中辺りの席に見覚えの有る紫頭が有るのぅ。では、直ぐに済ませて教室を出よう。でないと、睨まれるどころか叱られるからの。
教室の中を堂々と歩くと、生徒達の視線が凄まじい。授業を邪魔したのは悪かったと思っとるから、許して欲しい。出来れば何も気にしないでくれると助かる。……なんて、無理な話か。
「ほれ。お主にこれをやる。壊したら新しいのを用意してやるから、儂か相澤にでも申告するように。まぁ作るのに時間が掛かるから、出来ることなら壊さんで欲しいところじゃが」
「えっ」
取り敢えず。呪具として作成した捕縛布と短刀を心操の机の上に並べ置く。よし、用事は済んだ。これ以上授業を中断させるわけにはいかんからの。さっさと出て行くとしよう。
「邪魔したの。授業を続けてくれ」
早足で教室を出て、後ろ手で扉を閉める。廊下に戻ると、ながんが呆れた様子で儂を見ていた。まぁ……授業に割り込んだのは儂じゃしの。ここまで道案内させられたながんが、呆れた面をするのも仕方ないところじゃ。と、思う。
「……相澤に頼めば良かったんじゃないか?」
「やじゃ。儂、あやつ、嫌い」
「後で怒られても私は知らないからな」
「その時は無視じゃ無視」
さて。用事はひとつ済ませた。
この後は雄英の外に出て、被身子への贈り物を吟味しなければ。今日中に決めて、買っておかなければならん。明後日には
そんなこんなで。儂は外出許可も取らずに、ながんを連れて外へ出る。今は外出許可を貰いに行く時間すら惜しい。最悪、事後報告で良いと思っている。我ながら好き勝手し過ぎじゃと思わんでもないが、こればっかりは目を瞑って欲しいものじゃ。と言うか、瞑れ。儂は被身子と呪術師、そして子供が最優先。それ以外のことは、基本的に後回しで良いからの。
◆
今日こそ! 被身子への贈り物を決める……!!
と、意気込んで商業施設にやって来たのは良いものの。
……困ったことに、やはり何も思い浮かばない。取り敢えず片っ端から目に付く店を覗いてるんじゃけど、どれもいまいちでのぅ。こう、どうにも納得出来ん。調理器具も日用品も、書物も文房具も洋服も宝飾も、そのどれもが何か違うと思ってしまう。何を選んだって被身子は喜んでくれると分かっていても、儂自身が納得し切れない。こうなったら、いっそ現金か……? いやそれは、流石に最低じゃろ。ちゃんと、しっかりとした贈り物をしなければ。
「……はぁ。どうしたものかのぅ……」
店という店を渡り歩いたら喉が乾いたので、取り敢えず自販機で買った茶を飲みながら
それはありがたいんじゃけど、何か助言の一つでもしてくれたら良いのに。とも思う。贈り物選びとは、こんなにも難しいものなのかと実感させられている気がする。被身子も、儂に贈り物をする時はいつもこんな感じなんじゃろうか? じゃとしたら、感嘆する他無い。いつか、贈り物をどう選べば良いのか教えて欲しいものじゃ。
「なぁ。何か良い案は無いかの?」
「……無いな。アンタが納得出来るものは、アンタしか知らないんだから」
「それはそうじゃけど。じゃけどほら、何かこう。……こう、良い感じの……」
「渡我の好きな物を考えれば見付かるだろ。多分な」
「じゃから、儂じゃけど」
「それ以外だ」
それ以外? それ以外じゃと……。そうじゃな。まず真っ先に思い浮かぶのは、血じゃ。儂の血。で、次に服。後は可愛いもの、とか……? 調理器具じゃってそれなりの拘りが有るようじゃから、嫌いってことは無いじゃろう。他に被身子が好きな物と言えば……。そうじゃなぁ、甘い物や美味しい物は人並みに好きな筈じゃ。
なるほど、食べ物。たまには儂が振る舞うっていうのも悪くない。が、贈り物に料理はどうなんじゃ? そもそも、儂が台所に立とうものなら被身子は全力で止めに来るんじゃけど?
仮に止められなかったとして、被身子が喜ぶ程の食事を用意することは儂には出来ん。そう考えると、やはり食べ物は無しじゃな。いずれそういう贈り物をしても良いかもしれんが、それは儂が料理を練習した後でのことじゃ。流石に今日明日で、被身子を喜ばせられるような料理を作れるようにはなれん。
やはり、食べ物は却下じゃの。買って行くという選択肢も有るには有るが、それは何か違うんじゃ。まぁ……
まぁ、けぇきは儂が食べたいから良さげなものを買って帰るとするか。帰りに探してみるとしよう。
……それで。被身子への贈り物なんじゃけれども、まだ何も思い浮かばん。
「うぅむ……。これは、どうしたものか……」
このままじゃと、何も思い浮かばないままに刻限となってしまう。もうそろそろ決めておかないと、とても放課後までに寮に戻れん。それは避けておきたい。まだ一応、明日も贈り物選びに悩むことが出来る。
……しかしなぁ。出来れば今日、決めてしまいたいものじゃが……。
「いっそ。最近、渡我が欲しがってたものにするのは?」
「それも儂じゃけど?」
「それもそれ以外で、だ」
最近被身子が欲しがってたもの、か。そんなもの、儂以外に有ったかのぅ? 被身子の物欲は、割りと直ぐ解消されてしまうものじゃからの。そもそも何か物を欲しがることなんてあったか? 物が欲しくて強請るなんて真似は、……まぁするの。全然する。結構しとるわ。何を欲しがるって、主に洋服じゃけども。たまに着物や袴も。
そう考えると、服を選ぶのは悪くない選択肢じゃ。儂が洋服について分からぬことが多いと言う点を考慮しなければ。
んんむ。冬は寒いからのぅ。何か暖かくなりそうな上着、というのも案外有りか……? この際、候補の一つにしておこう。それはそれとして、別の物を探すことを止めはしないんじゃけど。
何か無いのか? 何か。こう、被身子が喜んで儂が納得出来そうなもの……。
……。……駄目じゃ。良い案が思い浮かばん。どうにも儂が納得出来ん。
取り敢えず。
「……もう一度見て回るぞ。ほら、何か有るかもしれんし……!」
「……分かった。と言っても、時間はあまり無いぞ」
「分かっとるって」
もう一度、商業施設の中を見て回ることにする。二度も三度も回ったとして何かが大きく変わる気はしないが、それでも見て回らずには居られない。被身子を喜ばせたいんじゃ。常日頃のお礼もしたい。そうなると、やはりそれだけの事に相応しい物をじゃな……!
こうして。儂は時間を掛けて色々と見て回った。その結果、やはりこれと言ったものは見当たらず無駄に時間が過ぎてしまっただけじゃった。
な、何でじゃ……!?
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
-
要らん
-
良いから一人称で突っ走れ