待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「ただいまなのです!」
「ただいま」
「あら、おかえりなさい。デートは楽しめた?」
「もっちろん! 所構わずイチャイチャしてきましたっ!」
買い物袋を両手に帰宅すると、母が居間で湯気立つ牛乳を啜っていた。父はまだ仕事から帰って来てないようじゃの。仕事が大切なのは分かる。生活の上で仕方のない事じゃとも、分かっては居る。しかしなぁ、母は妊娠四ヶ月じゃぞ? そろそろ五ヶ月ぐらいの筈じゃ。腹も少しずつ大きくなってきて、動き辛くなってくる頃合いじゃと思う。腹の中には二人も居るんじゃからな。儂は妊娠したことないし、する予定も無いからよく分からんけども。
……ともかく。父よ、もう少し家に居たらどうなんじゃ? 詳しくは知らんけど、家でも仕事をする方法が有るんじゃろ? 母が一人で居る時に、何か有ったらどうするつもりじゃ。まったく、あのぽんこつと来たら。
「何か出来ることは有るかの? 父は帰って来とらんようじゃし」
仕方ない父に代わって、娘として出来ることをしてやろう。出産するまでは、出来る限り母に協力するべきじゃからな。まぁ、儂に家事は出来んのじゃけど何か出来るじゃろ何か。……多分。
「そうねぇ……。じゃあ、晩ご飯は被身子ちゃんに任せるわね」
「はいっ。お家の事は任せてください!」
「ありがと。助かっちゃう。
……で、円花。ホットミルク作り過ぎちゃったから、外の二人も招いて消化しちゃってくれる?」
「は?」
ほっと、みるく……? ぇ、ええ……? やじゃぁ……。儂、牛乳は嫌いなんじゃけど。何で牛乳なんぞを温めて飲んでるんじゃ。あんなものが母体に良いとは思えんのじゃけど……? もっとこう、栄養が有りそうなものを口にしたらどうなんじゃ?
と言うか、外の二人て。おおるまいとと、ながんの事か? わざわざ家の中に招くのか?
「貴女ねぇ、牛乳飲まないから背が伸びなかったのよ」
「そうですよぉ。だから色々とちっちゃいのです。おっきくなりたいなら、牛乳飲まないと駄目なのです」
「儂の背が低いことと牛乳に因果は無いが!?」
「でもちゃんと牛乳飲んでた被身子ちゃんは発育良いわよ? 円花は発育悪いものねぇ、私の娘なのに」
いや、いやいや。牛乳と成長は関係無いじゃろ。無いったら無い。さてはこやつ等、どさくさに紛れて儂に牛乳を飲ませようとしているな? 飲まんからな?? 例え妊婦からの頼みでも、儂は牛乳なんぞ口にしないからな???
あんな牛の分泌液を飲む方がおかしいんじゃ。変に甘くて独特の匂いがして、舌に纏わり付く不味い液体を飲むなんてどうかしてるとしか思えん。儂は牛乳なんぞ飲まん。飲まんったら、飲まんっ。
「ほらほら。言い訳は要らないから、外の二人を連れて来なさい。親として挨拶したいし、今日明日は我が家に滞在して貰うから」
「……呼んでくる。でも、牛乳は飲まんからな!?」
「駄目。どうしても飲まないなら、被身子ちゃんに口移しして貰うから」
「何を言ってるんじゃ貴様ぁっ!」
とんでもない事を口走るなっ。被身子に口移しされようが、儂は絶対に牛乳は飲まんからな!? そもそも、儂が牛乳を飲んだって何の助けにもならんじゃろっ。もっとこぅ、何か有るじゃろ何か!
まったく……! 何で儂の親はこうも仕方ない奴なのかっ。解せぬ……!
まぁ、とにかくっ。仕方ないから、外の二人を呼んでくるとしよう。それはそうとこの家、客室は一つしか無かったと思うんじゃけど? まさか、同じ部屋であの二人を寝泊まりさせるのか? それは……ながんが可哀想な気がするんじゃけど。最悪、儂等の部屋に招くか……?
……いや、それは困る。夜が更けたら被身子と求め合う予定なんじゃから、そこにながんが居てはただただ困る。邪魔としか思えん。
「そこは心配しなくても、客室とお父さんの書斎に寝泊まりさせるわよ。ほら、行った行った」
……。そういう事なら、良しとしようかの。じゃあ儂は、外の二人を呼んでくるとするか。
「じゃあ私はご飯作るので! 何か有ったら呼んでくださいっ」
「はーい。頼りにしてるわ、被身子ちゃん」
「んふふ。どーんと頼ってくださいっ」
居間を出ると、そんな会話が聞こえて来た。今日は被身子も母も楽しそうで、ずっと笑顔じゃ。そう思うと、うむ……。何で儂、あと一年早く生まれ直さなかったんじゃろうか。そしたら、被身子を待たせることは無いのになぁ……。
っと、いかん。どうしようもない事を考えとらんで、早く二人を呼ぶとしよう。
◆
「招かれて良かったのか……?」
「良いんですよぉ。基本的に廻道家は輪廻ちゃんがルールなので!」
「もぐ……」
「HAHAHA。かかあ天下って事かな?」
「円花ちゃんでも頭が上がらないのです!」
「まぁ、母としてまだまだ娘には負けないので」
……いや、何の話じゃ何の。別に儂、母と何かを競った覚えは無いんじゃけど? まったく、何を話してるんじゃか。あれやこれやと会話を膨らませるのは構わんけども、程々にして欲しいものじゃ。でないと、母や被身子が何を言い出すかまるで分からん。場合によっては儂もながんも、そしておおるまいとすら振り回されるのじゃろう。
それにしても、こうも騒々しい食卓は久しぶりな気がするの。被身子が腕に縒りをかけて作ってくれた手料理は、普段より幾分も豪勢なものじゃ。揚げ物に
いや、愛じゃよ愛。儂への愛。って事にしておこう。母の教えが良かったから、なんて一言で終わらせるのは違う気がするからの。
ところで、父。いつになったら帰って来るんじゃ? もう夜の八時前じゃぞ? 残業にしたって、いい加減に帰宅しておけ。いつまで母を儂等に任せるつもりじゃ。夫としてどうかと思うが??
「うちの娘はどうですか? それはもう、手を焼いてるとは思いますけど」
「えーー……っと、まぁ……そうですね。悪目立ちしてる点も有りますが、彼女のお陰で私のヒーローとしての命は繋がりました。ブラッディ……ご息女が居なければ、私はとっくに引退してたかと」
「貴様の才能が優れてただけじゃ。儂は三年掛かったんじゃぞ、三年」
これについては単純に悔しいので、向かいの席に座るおおるまいとの脛をつま先で小突いておく。
「あだっ。な、なんかごめんね……?」
「ちっ。これだから天才は……」
おおるまいとは儂のお陰などと言っているが、こやつが今も
「ま、まぁとにかく。人に頼らないって悪い点は有るんですけど、それについては私からは強く言えないので。私も、独りでやって来ましたから」
「ええ、存じてます。その辺りは未来ちゃんから聞いてますから」
……未来ちゃん? 誰じゃそれ。
「廻道婦人、彼をご存知で……?」
は? 彼……?
「ヨチトモですから。私も未来が視えるんですよ。それでまぁ学生の頃は色々と大変で。
そんな時に、個性との付き合い方を教えてくれたんですよね」
「あぁ、なるほど」
……もぐもぐ。知らん奴の話をしてるようじゃから、放っておいて飯を食べ進めよう。あ、茶碗が空じゃ。仕方ない、
「おかわりします?」
「ぅむ、頼む」
「はぁい。沢山作ったので、沢山食べてくださいねぇ」
被身子が米をよそってくれた。助かる。今日のおかずは、白米が進むからの。腹いっぱいになるまで堪能するつもりじゃ。それに、深夜の事を考えるとしっかり食べておかないとな。明日も
「火伊那ちゃんもおかわりします?」
「……自分でよそう」
「良いんですよぉ。ほら、お茶碗ください!」
「……悪い、頼んだ」
どうやらながんも、白米が進んでいるようじゃ。さっきから会話に混じらず、黙々と食べとるからの。被身子の手料理が美味いのは分かるが、食べ過ぎると太るぞ? 程々にしておけよ?
「ただいまーー。帰ったよーー」
玄関の方から父の声がした。足音がしたと思ったら、洗面所の方から水音がする。どうやら手洗いうがいをしに行ったようじゃ。それは大事なことじゃけども、先に顔ぐらい見せたらどうじゃと思わんでもない。まったく、仕方のない奴め。儂の父なら、もう少ししっかりせんか。まったく……!
「あ、今のお父さん……?」
「ぽんこつな父じゃ。色々と駄目じゃから叱ってやってくれても良いぞ」
「あぁ……。遺伝ってことだね……」
「は? 儂はぽんこつではないが??」
何が遺伝じゃ、何が。それに儂はぽんこつでは無い。どいつもこいつも、人をぽんこつ扱いしおって。良いか? ぽんこつとは、父みたいな奴の事を言うんじゃ。儂は断じて違う。儂はあんなでは無い。本物のぽんこつがどういう奴なのか、それを父を通して知ったら良いんじゃ。
もぐもぐ、むしゃむしゃ……。
「ただいま母さん! 円花に被身子ちゃん! 頼人と比奈も!」
「まだ胎児よ」
「……おじさん。今朝帰って来た時も思ったんですけど、気が早過ぎなのです」
「えぇ? そうかなぁ……。円花は直ぐに生まれてきたし、この子達も直ぐ生まれてくるようん」
帰って来たと思ったら、さっそく訳の分からん事を口走ってぽんこつを露呈している気がする。何で父はこうなんじゃ。母曰く、昔からこんなじゃったらしいけども。よくそれで、母と結婚出来たな? いや、じゃからこそ駆け落ちじゃったのか……。となると、母はよくこんなぽんこつを選んだものじゃ。
「お父さんは頼りになる人だもの。そりゃあ駆け落ちして、結婚もするわよ」
「魂を読むな魂を」
「仕方ないでしょ。見えるんだから」
……ならまぁ、仕方ない……。と、思いたくないのぅ……。見ないで欲しいものじゃ。心が筒抜けなのは、何と言うか困る。何がって、ふとした時に下手な事を考えて、それを被身子に伝えられるかもしれんのが……その。
よし、被身子の事は考えないようにしよう。愛しいとか好きじゃとか、そう言うのを考えでもしたら母に見られる。
「ぶっちゃけ、二人ってどう結婚したんですか!?」
「えー? それ聞いちゃう? いやぁ、お父さんとしては今でも無茶したなぁって感じで」
「語る前に席に着きなさい。オールマイト先生とナガンさんも来てるんだから」
「あぁ、これはどうも。楽しんでってくださいね、被身子ちゃんの料理は絶品なので!」
「HAHAHA! 楽しませて貰ってますよ、ご主人!」
「どうも。お邪魔させて貰ってます」
父の帰宅により、食卓が更に騒々しくなって来たの。賑やかな食事も悪くない。美味いし、楽しいしの。特に被身子がずっと笑顔で。あぁでも、じゃけど……。少し嫌な点も有るか。おおるまいとと、ながんが居るからの。いつも通りの食卓とは言えんか。せっかくの帰省なのに、被身子が笑顔を見せて隠してるのは嫌じゃなぁ……。
でも、こればっかりは仕方ない事でも有るんじゃ。被身子は幼い時からこうじゃから。こやつが小学生五年生の時に有った事が原因で、儂や儂の両親以外が居る場所では笑顔を隠すようになってしまったからのぅ。儂等の前だけで笑って居れば良いとも思うが、……うぅむ。
「被身子ちゃん被身子ちゃん。後でたっぷり見せてあげてね。円花、拗ねてるから」
「え? ……はぁい。そうするのです!」
「じゃから、魂を読むんじゃないっ」
くそっ。どうにかならんのかこれは……!? 儂のぷらいばしぃは何処に行ったんじゃ!? 魂を読むなっ、それは狡じゃ狡!!
「ほーんとうちの子ったら。すっかり被身子ちゃん無しじゃ生きれなくなっちゃって」
「えへへぇ。そうなるようにしたので! まぁトガも円花ちゃん無しじゃ生きていけないですけどっ」
「その調子その調子。円花はお母さんみたいに逃げるタイプだからね。あ、駆け落ちは止めてね? お父さん、孫の顔は見たいから」
産まんが? 産めんが? 儂と被身子は、どちらも女子なんじゃけど?? 何を言ってるんじゃ父は。それに母が逃げるってなんじゃ? そんな姿、想像も付かんけど??
まったく、このぽんこつと来たら……!
と、まぁ。こんな感じで夜は耽っていく訳じゃ。今宵の晩餐は、割りと遅い時間まで続いた。母も父もあれやこれやと儂の事をおおるまいとやながんに聞きたがるし、被身子は被身子で両親の若い頃の話を聞きたがるし。儂は食後のけぇきに夢中じゃったし。
例年とは少し違う
まったく。まっこと仕方のない家族と、まっこと仕方のない許嫁じゃよ!
未来ちゃんと輪廻はヨチトモ(予知友)です。つまりナイトアイと輪廻は友人ってことです。まぁ円花は未来ちゃん=ナイトアイとは気付いてませんけど。
まぁこの設定が生きることは無いです。多分。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ