待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
さて。夕飯も食べた、風呂にも入った。気が付けば、夜の十一時。今日は
……なので。儂はわざわざ、もう一度風呂に入った。今度は一人で。特に意味はない気はするが、念入りに体を洗った。ついでに髪も。で、体を拭いて……その。着たわけじゃ。母に投げ渡された、贈り物を。その内容は、べびぃどぉる……とかいう下着じゃったんじゃけど。まぁ、着た。これを着る時はある種の合図では有るんじゃけど、着ることにした。
べ、別に今宵は目茶苦茶にされたいとかそう言うのでは無い。ただその、するのは分かってることじゃし。これを着たら被身子は大喜びじゃし。そう、
……。……はぁ……。鏡の前で何をしとるんじゃろうな、儂。何で今更、抱かれることに意を決しようとしているのか。今更じゃ今更。夜は冷えるんじゃから、さっさと寝室に戻らなければ体が冷えてしまう。何度着ても気恥ずかしいとか思ってる場合ではない。被身子も待ってるんじゃし、あまり待たせるのも良くないじゃろう。それに、誰かが洗面所にやって来ないとも限らんし。こんな姿をうっかり人に見られたら、被身子がどんな反応をするか分からん。
よし。行くと……するか。
暗い廊下を渡り、襖の前へ。念の為、変な風になってないか自分の目で確認しておく。鏡は無いけども。
「……まぁ、大丈夫じゃろ……」
うぅむ……。大丈夫では無い気がしてきた。じゃってほら、やけに心臓が高鳴ると言うか。これからを期待してしまっていると言うか。じゃってしたいんじゃもん。被身子め、儂をこんな風にしおって。まっこと、許さんからな?
「ぉ、起きとるか……?」
いや、寝てないのは知っとる。部屋の明かりは消えてるけども、それでも起きとるのは知っとる。じゃって待たせてるのは、儂じゃし。さっき部屋で沢山
「起きてますよぉ」
……部屋の中から返事が返って来た。余計に緊張してしまった気がする。し、期待も膨らんでしまった。
あぁ、いかんなぁ。いかんて、まっこと。期待し過ぎてしまってる部分が有る。そう思うと、少し気後れしてしまう。こう、変に思われないじゃろうか……とか。嫌われないじゃろうか……とか。そんな事をつい考えてしまって。緊張で喉が渇いたような、そうでないような……。
つい、生唾を飲み込んで。それからゆっくりと襖を開いて……。で、部屋に入る。開いた襖はさっさと閉めるべきと思いつつも、そんな意に反して体はゆっくりと閉じた。
部屋の中は、暗い。頼りになるのは、枕灯の淡い光だけ。直ぐ側の布団の上では、同じく下着姿の被身子が座っている。暖房が利いてるから寒くはないが、じゃからっていつまでもこんな格好で何もしないのは良くない……と思う。二人揃って風邪を引くなんて真似はしたくないしの。じゃからほら、身を寄せ合いたいところなんじゃけども……。
ど、どうにもな。気恥かしさが増して来て、動けん。じゃって被身子が、じっと見詰めて来るんじゃもん。
「こっち来てください」
「ぅ、うむ……」
誘われると言うか、招かれると言うか。ともかく、布団の上の被身子に呼ばれたのでゆっくりと近付く。たった数歩の距離が、どうにも遠い気がしてならん。近付くごとに緊張している自覚がある。そのせいか、直ぐに布団に近付けん。ただ、近付くにつれて被身子の笑みが大きなものに変わっていく。目が待ちきれんと言っているような気さえしてくる。早くしろと、訴え掛けられているような……。
何とか布団の側に辿り着くと、被身子が布団を軽く叩いた。目の前に座れと言うことらしい。なので、座る。そしたら。
「―――ヨリくん♡」
いきなり押し倒されたわ。それはもう勢い良く。布団がなければ頭を打ってたんじゃないかってぐらい。もう待ちきれんと顔が言っている。被身子はすっかり、飢えた獣のような面をしていて。じゃけど、それだけ求められていると分かると……嬉しくて。相変わらず、心臓が喧しい。
雰囲気も何も無い気がしてならん。逸る気持ちは分かるんじゃけども、今日ぐらいもう少しこう……。その……、落ち着いて……とは言わんけど。儂も、待ち切れん部分が有るのは事実じゃから。
でもでも、始まってしまう前に。せめて一言ぐらい言葉を交わしたって良いじゃろう?
じゃから。
「……ぁ、愛してる。お主を、誰より……何よりも。じゃから、その……良いからな? 今日明日は、何をしても……」
「―――」
あ、いかん。言うべきでは無かった。たった今、被身子の理性が飛んだ。そんな感じの音が聞こえた。ま、待て被身子っ。こんな風に誘ったのは儂じゃけどっ、じゃからってそんな猛然と食い付かんでも……!
こ、こらっ。待てっ! 止さぬか! 被身子のえっち……!!
◆
昨晩は凄かった。何がって、まぁ色々と凄かった。やたらと
目が覚めると、真っ先に目に映ったのは裸の被身子じゃった。同じ布団の中で寝転んでいるこやつは、それはもう幸せそうでの。普段から幸せそうにしているくせに、今朝は特にそうで。それを、嬉しく思う。儂も幸せじゃよ、まったく。
「んふふ、おはようございます。昨夜はお楽しみでしたねぇ……♡」
「お主もな。……ふわぁ……」
んん……。体が重いし、眠い。今、何時じゃ? 多分昼前とか、昼過ぎぐらいじゃと思うけど。今日も
つまり、起きるしか無いってことじゃ。取り敢えずじゃな? もう少し暖を取ったら起きるとしよう。こう、被身子を抱き締めての。それと、一回だけ
「んん……。今、何時じゃ……?」
「えーっと、そろそろ十一時なのです」
「……何時間寝てたんじゃ……?」
「七時間ぐらいですよぉ。そろそろ起きます?」
「……もう少し。あと、十分……」
「えー? すぐ起きましょうよぉ。今日もデートしましょう、デート!」
それは分かっとるんじゃけども。眠いものは眠いし、何より寒い。温い布団の中から出たくないと思ってしまうし、何より今は被身子から離れ難い。もう少し、あと少し、このままじゃな……。
あぁでも、早く起きて
「んん、起こしてくれ……」
「もぅ、甘えんぼなんですから。……よいしょっと」
「んんん……」
起きたいが動きたくもないので、この際被身子に起こしてもらうことにした。被身子の細腕に抱え起こされると、掛け布団が落ちてしまった。お陰で寒い。まっこと、寒い。しかしこう、何も纏わずこやつと密着するのは好きじゃ。温いし、落ち着く。冬は被身子に勝る暖房は無いのでは?
……阿呆な事を考えてないで、起きるとしよう。まずは、そうじゃな……。
「しゃわぁ、浴びよう」
「はぁい。じゃあその前に、これ着てください」
被身子が、浴衣を手渡して来た。別に裸のまま浴室に向かったって良いんじゃ……。あぁいや、客人が二人も居るか。ついでに父に裸体を見せるのも、何かこう……抵抗が有るしの。被身子や母、ついでにながんじゃったら見られたって何も気にならんが……。
……。……うぅむ……。
「どうかしました?」
「……いや。儂、
「嫌ですか?」
「微妙な気分じゃのぅ」
うむ……。まぁ、肉体は女じゃ。それで、意識だけは男なんじゃけども。その意識すら女のものになりつつある……のか? そうなるように仕向けられたと言うか、躾けられているのは事実じゃけども。結局この体が、どうしょうもなく女であることは散々被身子に分からされて……。
……この件について考えるのは止しておこう。儂の性自認は男じゃ、男。まぁ女の体で生きている以上、気を付けるべきところは気を付けないといかん。何せ、被身子が騒ぐからの。そうなると、色々と大変じゃし。下手をすると首に痕を付けられた上に
とにかく。手渡された浴衣を着たら風呂じゃ、風呂。汗やら汚れを洗い流したい。それが済んだら殆ど昼飯の朝食を食べて、
今日は、何処で何をするんじゃろうか? ……まぁ、何でも良いか。被身子と一緒なら、何処に行ったとしても楽しめるんじゃから。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ