待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

411 / 553
愛欲の終夜。

 

 

 

 

 

 

 さて。夕飯も食べた、風呂にも入った。気が付けば、夜の十一時。今日は逢瀬(でえと)をして、家族や客人と夕飯を食べて。中々、というより大いに盛り上がったの。そろそろ寝る時間と思ったら、疲れが滲み出て来た。が、眠ってしまうにはまだ早い。全然早い。何せ今夜は、寝れないし。被身子に宣言されてるのも有るんじゃけど、儂もほら……寝たくないんじゃ。ながんは客室へ、おおるまいとは父の書斎で一夜を明かす。と、なるとじゃな? 一階には儂と被身子しか居ない。であれば、まぁ何を心配する必要も無いと思うんじゃ。

 

 ……なので。儂はわざわざ、もう一度風呂に入った。今度は一人で。特に意味はない気はするが、念入りに体を洗った。ついでに髪も。で、体を拭いて……その。着たわけじゃ。母に投げ渡された、贈り物を。その内容は、べびぃどぉる……とかいう下着じゃったんじゃけど。まぁ、着た。これを着る時はある種の合図では有るんじゃけど、着ることにした。

 

 べ、別に今宵は目茶苦茶にされたいとかそう言うのでは無い。ただその、するのは分かってることじゃし。これを着たら被身子は大喜びじゃし。そう、聖夜(くりすます)聖夜(くりすます)じゃからな。あと一時間もしない内に、聖夜(くりすます)なんじゃ。じゃからほら、着たって良いじゃろ?

 

 ……。……はぁ……。鏡の前で何をしとるんじゃろうな、儂。何で今更、抱かれることに意を決しようとしているのか。今更じゃ今更。夜は冷えるんじゃから、さっさと寝室に戻らなければ体が冷えてしまう。何度着ても気恥ずかしいとか思ってる場合ではない。被身子も待ってるんじゃし、あまり待たせるのも良くないじゃろう。それに、誰かが洗面所にやって来ないとも限らんし。こんな姿をうっかり人に見られたら、被身子がどんな反応をするか分からん。

 

 よし。行くと……するか。

 

 暗い廊下を渡り、襖の前へ。念の為、変な風になってないか自分の目で確認しておく。鏡は無いけども。

 

「……まぁ、大丈夫じゃろ……」

 

 うぅむ……。大丈夫では無い気がしてきた。じゃってほら、やけに心臓が高鳴ると言うか。これからを期待してしまっていると言うか。じゃってしたいんじゃもん。被身子め、儂をこんな風にしおって。まっこと、許さんからな?

 

「ぉ、起きとるか……?」

 

 いや、寝てないのは知っとる。部屋の明かりは消えてるけども、それでも起きとるのは知っとる。じゃって待たせてるのは、儂じゃし。さっき部屋で沢山接吻(きす)をして、脱がされそうになったから風呂に入ると一度に間を置いたのは儂の方じゃ。なのでむしろ、寝ていられると困る。

 

「起きてますよぉ」

 

 ……部屋の中から返事が返って来た。余計に緊張してしまった気がする。し、期待も膨らんでしまった。

 

 あぁ、いかんなぁ。いかんて、まっこと。期待し過ぎてしまってる部分が有る。そう思うと、少し気後れしてしまう。こう、変に思われないじゃろうか……とか。嫌われないじゃろうか……とか。そんな事をつい考えてしまって。緊張で喉が渇いたような、そうでないような……。

 つい、生唾を飲み込んで。それからゆっくりと襖を開いて……。で、部屋に入る。開いた襖はさっさと閉めるべきと思いつつも、そんな意に反して体はゆっくりと閉じた。

 

 部屋の中は、暗い。頼りになるのは、枕灯の淡い光だけ。直ぐ側の布団の上では、同じく下着姿の被身子が座っている。暖房が利いてるから寒くはないが、じゃからっていつまでもこんな格好で何もしないのは良くない……と思う。二人揃って風邪を引くなんて真似はしたくないしの。じゃからほら、身を寄せ合いたいところなんじゃけども……。

 

 ど、どうにもな。気恥かしさが増して来て、動けん。じゃって被身子が、じっと見詰めて来るんじゃもん。

 

「こっち来てください」

「ぅ、うむ……」

 

 誘われると言うか、招かれると言うか。ともかく、布団の上の被身子に呼ばれたのでゆっくりと近付く。たった数歩の距離が、どうにも遠い気がしてならん。近付くごとに緊張している自覚がある。そのせいか、直ぐに布団に近付けん。ただ、近付くにつれて被身子の笑みが大きなものに変わっていく。目が待ちきれんと言っているような気さえしてくる。早くしろと、訴え掛けられているような……。

 

 何とか布団の側に辿り着くと、被身子が布団を軽く叩いた。目の前に座れと言うことらしい。なので、座る。そしたら。

 

 

「―――ヨリくん♡」

 

 

 いきなり押し倒されたわ。それはもう勢い良く。布団がなければ頭を打ってたんじゃないかってぐらい。もう待ちきれんと顔が言っている。被身子はすっかり、飢えた獣のような面をしていて。じゃけど、それだけ求められていると分かると……嬉しくて。相変わらず、心臓が喧しい。

 雰囲気も何も無い気がしてならん。逸る気持ちは分かるんじゃけども、今日ぐらいもう少しこう……。その……、落ち着いて……とは言わんけど。儂も、待ち切れん部分が有るのは事実じゃから。

 

 でもでも、始まってしまう前に。せめて一言ぐらい言葉を交わしたって良いじゃろう?

 

 じゃから。

 

 

「……ぁ、愛してる。お主を、誰より……何よりも。じゃから、その……良いからな? 今日明日は、何をしても……」

「―――」

 

 あ、いかん。言うべきでは無かった。たった今、被身子の理性が飛んだ。そんな感じの音が聞こえた。ま、待て被身子っ。こんな風に誘ったのは儂じゃけどっ、じゃからってそんな猛然と食い付かんでも……!

 

 こ、こらっ。待てっ! 止さぬか! 被身子のえっち……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨晩は凄かった。何がって、まぁ色々と凄かった。やたらと接吻(きす)されたことと、散々恥ずかしいことを言わされたのと、最終的にお互い裸じゃったってことしか覚えとらんけど、とにかく凄かった。あれが今宵も有ると考えたら、流石に身が持たん気がしてならん。儂がいつ寝てしまったのかすら定かではないぐらいに、その……激しかったからのぅ。幾らなんでももう少し加減してくれと思わんでもないんじゃ。

 目が覚めると、真っ先に目に映ったのは裸の被身子じゃった。同じ布団の中で寝転んでいるこやつは、それはもう幸せそうでの。普段から幸せそうにしているくせに、今朝は特にそうで。それを、嬉しく思う。儂も幸せじゃよ、まったく。

 

「んふふ、おはようございます。昨夜はお楽しみでしたねぇ……♡」

「お主もな。……ふわぁ……」

 

 んん……。体が重いし、眠い。今、何時じゃ? 多分昼前とか、昼過ぎぐらいじゃと思うけど。今日も逢瀬(でえと)する予定なのに、さっそく時間を無駄にしてしまっているような気がする。まぁ、散々求め合った後じゃからのぅ。もう少しゆっくりしていたい気分じゃけども、あまりのんびりしているのはそれはそれで勿体ない。

 つまり、起きるしか無いってことじゃ。取り敢えずじゃな? もう少し暖を取ったら起きるとしよう。こう、被身子を抱き締めての。それと、一回だけ接吻(きす)をして。で、温まったら起きよう。冬の朝は寒い。

 

「んん……。今、何時じゃ……?」

「えーっと、そろそろ十一時なのです」

「……何時間寝てたんじゃ……?」

「七時間ぐらいですよぉ。そろそろ起きます?」

「……もう少し。あと、十分……」

「えー? すぐ起きましょうよぉ。今日もデートしましょう、デート!」

 

 それは分かっとるんじゃけども。眠いものは眠いし、何より寒い。温い布団の中から出たくないと思ってしまうし、何より今は被身子から離れ難い。もう少し、あと少し、このままじゃな……。

 あぁでも、早く起きて逢瀬(でえと)したいのぅ。午前中は睡眠に使ってしまったし、今日は夜になったら寮に帰らなければならんし。そう考えると、のんびりしている場合ではない。動かねば勿体ない。

 

「んん、起こしてくれ……」

「もぅ、甘えんぼなんですから。……よいしょっと」

「んんん……」

 

 起きたいが動きたくもないので、この際被身子に起こしてもらうことにした。被身子の細腕に抱え起こされると、掛け布団が落ちてしまった。お陰で寒い。まっこと、寒い。しかしこう、何も纏わずこやつと密着するのは好きじゃ。温いし、落ち着く。冬は被身子に勝る暖房は無いのでは?

 

 ……阿呆な事を考えてないで、起きるとしよう。まずは、そうじゃな……。灌水浴(しゃわぁ)にしよう。熱い湯を頭から被れば、眠気も気怠さも何処かに行くじゃろ。ついでに寒さも無くなるし。

 

「しゃわぁ、浴びよう」

「はぁい。じゃあその前に、これ着てください」

 

 被身子が、浴衣を手渡して来た。別に裸のまま浴室に向かったって良いんじゃ……。あぁいや、客人が二人も居るか。ついでに父に裸体を見せるのも、何かこう……抵抗が有るしの。被身子や母、ついでにながんじゃったら見られたって何も気にならんが……。

 

 ……。……うぅむ……。

 

「どうかしました?」

「……いや。儂、女子(おなご)の考えに染まっとる気が……」

「嫌ですか?」

「微妙な気分じゃのぅ」

 

 うむ……。まぁ、肉体は女じゃ。それで、意識だけは男なんじゃけども。その意識すら女のものになりつつある……のか? そうなるように仕向けられたと言うか、躾けられているのは事実じゃけども。結局この体が、どうしょうもなく女であることは散々被身子に分からされて……。

 

 ……この件について考えるのは止しておこう。儂の性自認は男じゃ、男。まぁ女の体で生きている以上、気を付けるべきところは気を付けないといかん。何せ、被身子が騒ぐからの。そうなると、色々と大変じゃし。下手をすると首に痕を付けられた上に反転術式(はんてん)禁止じゃ。まぁそれはそれで……などと思ってしまうのは流石に毒され過ぎか。

 

 とにかく。手渡された浴衣を着たら風呂じゃ、風呂。汗やら汚れを洗い流したい。それが済んだら殆ど昼飯の朝食を食べて、逢瀬(でえと)じゃ。

 

 今日は、何処で何をするんじゃろうか? ……まぁ、何でも良いか。被身子と一緒なら、何処に行ったとしても楽しめるんじゃから。

 

 

 

 

 

 







三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。