待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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逢瀬の前に。

 

 

 

 

 

 

 さて。風呂にも入ったし、朝食も済ませた。後は寝間着の浴衣を着替えればいつでも逢瀬(でえと)に出掛けられる。と、思って居たんじゃけども。朝食という名の昼食を終えて動き出そうと思った所で、おおるまいとに呼び止められてしまった。何じゃもぅ。これから出掛けるんじゃから、変に呼び留めないで欲しいものじゃ。空気を読め空気を。

 

「あのさ、二人共……。調子の優れないお母さんの手伝いで一時帰省……って聞いてたんだけど……」

「……そう、なのか?」

 

 外出許可を相澤からもぎ取って来たのは被身子じゃ。どんな言い訳を並べ立てたのか、儂は把握しとらん。何なら、その件については一切気にして居なかった。昨日も今日も、母の調子が優れないようにはとても見えん。何なら被身子と仲良く料理しておったぐらいじゃなからの。

 実際の所、その辺りがどうなってるのか儂には分からん。なので洗い物をしている二人を首を傾げつつ見てみると……。

 

「あ、それは急に輪廻ちゃんが調子良くなったので必要無くなりました!」

「そうなんですよねぇ。可愛い娘達の顔を見たら、何だか調子良くなっちゃって」

 

 被身子が舌を出して悪戯っぽく笑いおった。母もじゃ。こやつ等、さては最初から結託しておったな? 協力しあって、適当に嘘を並べ立てたのでは?

 ほら、いつぞやに協力するとか母は言っておったし。と言うか待て、教師を騙すならせめて儂に一言言わんか。儂、何も知らないんじゃけど??

 

「ん、んん……。そ、そういう事なら……? でも二人共、お母さんの調子がまた悪くなるかもしれないからデートに行くのは止さない?」

「……オールマイト。嘘八百だってのは分かってただろ? 渡我だぞ?」

「えっ、嘘だったの?」

 

 嘘だったんじゃろうなぁ……。そこは被身子じゃし。儂と逢瀬(でえと)する為なら、手段は選ばんじゃろう。と言うか、被身子が手段を選ばんことを知らん筈は無かろうに。日頃から好き勝手して教師を振り回してるのが被身子じゃぞ? これで未だ学力特待生を維持し続けているのは、何がどういう理屈なのかまるで分からん。授業態度は真面目じゃから、優等生き対する信頼感から見逃されているんじゃろうか? それとも、何を言っても無駄と諦められているのか。

 ……後者な気がしてならんな。じゃって、被身子じゃぞ被身子。自由奔放さで言えば、恐らく雄英一の筈じゃ。

 

「まぁまぁ。輪廻ちゃんはご覧の通り元気ですし、そうなったら私達がデートしてたって大丈夫ですよぉ。ねっ!」

「えっ。いやいや、流石にそれは」

「諦めろオールマイト。渡我だぞ」

「まぁまぁ。調子が悪くなったら直ぐに戻って来て貰いますから。それに、若者の青春を取り上げる権利なんて誰にもありませんよ?」

「それはそう思いますが……。しかし、だからって」

「まぁまぁまぁ。今日は近場でデートしますから!」

「えっ、えぇ……?」

 

 ……。うむ、放っておくとしよう。熱い茶でも啜りながら、おおるまいとが説き伏せられる様子を黙って見守ろう。被身子と母が結託した以上、誰も止められん。儂と父が何度静止を試みようとも、その悉くが失敗に終わってるんじゃから。この二人のわがまま度合いは、それはもう筋金入りでとんでもない。さっさと諦めた方が身の為じゃのぅ。

 じゃから、おおるまいとよ。困惑しとらんでさっさと流されてしまえ。ながんのように、茶を飲みながら事を眺めてるだけの方が何かと楽じゃぞ?

 

「まぁ実際、遠出するのは止しといた方が良いな。ほらこれ、記事になってるぞ」

「んん?」

 

 ながんが、携帯電話(すまほ)を机の上に置いた。画面を覗き込んでみると、昨日の線路での事が記事になっとるの。って、おい。何で電車内で接吻(きす)してる所が動画になっとるんじゃ。何でそれが大きく掲載されとるんじゃ?? 誰じゃ、こんな真似をした不躾な輩は……!

 

「アンタ達二人は、悪い意味でも注目されてるからな。体育祭の動画は未だ出回ってるし、それ以外もちらほらな」

「……待て。どこまで出回ってるんじゃ?」

「体育祭以降、アンタ達が外でデートしてる所はだいたい撮影されてる。熱心(・・)なファンが多いぞアンタ。あと、渡我もな。このままだとネットのオモチャだ」

「……それ、良くないと思うんじゃけど」

「良くないな。お陰で、雄英の警備体制について有ること無いこと書かれてる始末だ。つまり、デートは程々にしておけ。どうしてもしたいなら、最低限変装したらどうだ?」

 

 どうやら、外で逢瀬(でえと)するのは良くないみたいじゃ。解せぬ。しかしまぁ、雄英は何かと世間に注目されとる。恐らく、良い意味でも悪い意味でも。そんな中で被身子と逢瀬(でえと)して回るのは、実は不謹慎じゃったりするのか……? 雄英自体に迷惑を掛けるのはあまり良くない。と、思う。じゃってほら、被身子は次に人前で公序良俗に反したら特待生剥奪じゃし。思い返してみると、未だ剥奪されとらんこと自体が不思議なぐらいじゃ。

 じゃって、ほら。最近は所構わず接吻(きす)するようになったしの。主に儂が我慢しなくなった事が原因なんじゃけども。

 

 ……でもでもじゃって。したいんじゃもん。最近は少しでも愛おしいとか好きじゃとか思うと、直ぐにこう……したくなって。で、我慢なんてしたくないからの。こればっかりは見逃して欲しいところなんじゃけどなぁ……。

 

「自分達が問題児だって自覚はしておけ。でないと、教師達がうるさくなる」

「……気を付けるとしよう」

 

 うぅむ。気を付けねばならんのか? 気を付けたくないんじゃけどなぁ。この時代の連中は、人の恋路は邪魔してはならんと知らんのか?

 

「そうしてくれ。……ところで渡我、これ」

「はい?」

 

 ながんが机の下から、包みを取り出した。なるほど、今日は聖夜(くりすます)じゃからの。被身子への贈り物なんじゃろう。うぅむ、これに乗じて、儂も押し入れから取り出しておくべき……か? いやしかし、ながんに乗じて渡すのは何か違う気がするの。こう……なんか負けたような気分に……。

 と言うかじゃな? 被身子に贈り物をするなとは言わん。儂はそこまで幼稚ではない。しかし、しかしじゃな? 儂より早く渡してしまうのはどうなんじゃ。儂の被身子じゃぞ、儂の……!

 

「クリスマスプレゼント。要らなければ捨ててくれ」

「捨てませんよぉ! ありがとうございますっ。実はトガも用意してるので、持ってきますね!」

 

 ……ぐぬぬ。なんか、なんかこう……出遅れた感が凄い。儂は機会を見計らって居たというのに、儂より先に渡しおって……! こうなったらこれに乗じて……っ。いや、違う違う。今渡してしまうのは、違うと思う。もっと後で、二人きりの時にじゃな……!

 なんて思っていると、被身子は少し慌ただしく部屋に戻って行った。それをなんとも言えん気持ちで見ていると、右から小突かれた。顔を向けてみると、いつの間にやら母が真隣に立っておったわ。

 

「で? 円花は? もちろん用意してるのよね??」

「し、しとるぞ。何じゃその顔は……!」

 

 それはもう、盛大に呆れたと言わんばかりの顔を母がしている。

 

「我が子に呆れてるのよ。ほんと甲斐性無しね、貴女。やっぱり愛を伝えてないのかしら?」

「これに乗じて渡すのは違うじゃろ……!?」

「プレゼントはいつ渡されても嬉しいものよ。どうせ円花にちょうど良いタイミングなんて分からないんだから、便乗して渡しちゃいなさい」

「ぐぬ……。い、いやしかし……」

「良いから、今の内に渡して来なさい。クリスマスは今日なんだから、ほら!」

 

 んぐぐ……。何じゃもぅ、そんなに急かしおって。ちゃんと後で渡すつもりじゃったと言うのに、何で今渡さねばならんのか。ながんに乗じるような形は避けたいんじゃけど? 乙女心の分からん奴め……!

 

 いや、儂は乙女では無いんじゃけども。

 

「ほらほら、早くなさい。でないと、私が勝手に渡しちゃうわよ?」

「……分かった。分かったから急かすな」

 

 うぅむ……。どうやら、渡しに行くしかないようじゃ。何故急かされなければならんのか。贈り物を渡す機というのは、儂が決めるものじゃろうに。……まぁ、今渡してしまうのも悪くはないか。これから逢瀬(でえと)するんじゃから、贈り物を着て貰う……というのも悪くない。よく分からんなりに選んだ服じゃけども、喜んでくれたら嬉しいんじゃがのぅ。

 

 

 

 

 

 

 

 








三人称による補完は要りますか?

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  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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