待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「……ほら被身子。これ」
「えっ」
えっ。って、何じゃ? えっ、って!
被身子の為に用意しておいた贈り物を渋々と押し入れから取り出して手渡すと、恐らくながんに渡すであろう贈り物抱えた被身子が固まった。おい、何じゃその反応は。儂じゃって贈り物ぐらいするんじゃぞ? なのに何故、そんな意外そうな顔をして居るんじゃ貴様……!
この贈り物を用意するのに、儂がどれだけ苦労したと思っとるんじゃっ。いや、全然納得はしとらんけどなっ! 来年こそは、もっとこう……。そう、もっと良い感じの贈り物をしてみせる。でないと、被身子に失礼な気がしてならん……!
「んふふ……! ちゃぁんと用意してくれてたんですね。嬉しいです……!」
「するに決まっとるじゃろ。まぁ……納得はしてないんじゃけど」
うむ。この贈り物に納得はしとらん。もっとこう、良い感じの物が何処かに有ったと思うんじゃ。結局見付けられなくて、時間も無いから妥協してしまったんじゃけれども。
まぁそれでも。贈り物は贈り物じゃ。散々悩んで色んな店を彷徨って、どうにかこうにか用意出来た物……ではある。うぅむ、やはり納得行かん。被身子に贈る物なんじゃから、もっとこう素晴らしい物を用意したかったのぅ。
「ほら。くりすますぷれぜんと……じゃ。気に入ってくれたら良いんじゃけど……」
「絶対気に入るのですっ。えへへぇ、嬉しいなぁ嬉しいなぁ……!」
儂から手渡された包みを抱き締めて、被身子は嬉しそうに笑った。……大喜びじゃの。中身はそう良いものでは無いと思うんじゃけども。
じゃけど、まぁ。こうして喜んでくれるなら、これで良かったと思うことにする。中身を気に入ってくれるかは、未だ不安なところじゃけども。
「開けて良いですか!?」
「ぅ、うむ……。あまり期待するなよ……?」
「それは無理ってものなのですっ!」
「ぉ、おう……」
包みが勢い良く開封されていく。と言うか、殆ど破かれてるようなものじゃ。
まったく。仕方のない奴め!
包みが破かれて、被身子の前で露わになったのは一着の服じゃ。上下合わせて一対での。袴と洋服が合わさったかのような
まぁ、それはそれとして赤いのも買っては有るんじゃけどな。儂用に。
「洋服、ですか? あ、違う。袴……って言うには洋風なのです。こんな服、売ってたんですねぇ」
畳の上に服を広げて、それを被身子がまじまじと見詰めている。
「……ど、どうじゃろうか……?」
「んふふ。中々カァイイですよ? 和洋折衷っていうのも良いですね……!」
そ、そうか。いや、喜んでくれるなら良かった。この贈り物に自信は無かったんじゃけども、どうやら気に入ってくれたらしいの。じゃったら、今年はひとまず良しとする。今年はな。来年、来年こそはもっと良い感じの贈り物をしたいところじゃ。と言うか、絶対する。そうでないと納得いかん。
「さっそく着て良いですか!?」
「うむ。着てくれないと困る」
「じゃあ、はいっ!」
「は?」
被身子が両腕を広げた。何やら悪どい笑みを浮かべておる。な、何か嫌な予感しかしない。まさかこやつ、儂に着させろとでも言うつもりじゃなかろうな? 自分で着ろ、自分でっ。着付けの手伝いぐらいはするが、何もかもを儂にやらせようとするな……!
「今日は下着から何まで、円花ちゃんが着せてくださいっ!」
「何を言ってるんじゃ貴様っっ!!」
訳の分からん事を突然口走るのは止さぬかっ! 何で儂が被身子が着るものを全部選ばなければならないんじゃっっ!!
◆
全部選ばされたわ。それこそ、下着から靴下まで。何のつもりかはさっぱり分からん。分からんが、何やら喜んでいたから良しとする。いやむしろ悦んで……?
ま、まぁとにかく。
「輪廻ちゃん輪廻ちゃんっ。これ見てくださいこれっ!」
居間に戻るなり、新しい服を来た被身子は
「あらあら。現代風の大正ロマンね? どうしたのそれ?」
「円花ちゃんからのプレゼントなのです!」
「……へぇーー。円花がねぇ……。ふーーん?」
「何じゃその顔は」
「べっつにーー? たまにはやるじゃない」
「たまにはって何じゃ、たまにはって」
小馬鹿にされているような気がしないでもない。母よ、儂を何じゃと思っとるんじゃ。儂じゃって贈り物ぐらいするし、服ぐらい選べるんじゃぞ? まったく、どいつもこいつも……。
大喜びしてる被身子をそのままに、儂は食卓に戻る。まだ茶を飲み切ってないからの。これは、ゆっくり食休みしてる最中に急かされたせいじゃ。取り敢えず、椅子に腰掛けてもう少しのんびりとじゃな。……ずずずっ。
……うぅむ。茶が冷め始めている。まだ温かいが、冬はもう少し熱い方が好ましい。机の上には急須が置いてあるし、自分で淹れてしまおうかのぅ。なに、儂とて茶ぐらいは淹れられる。手を伸ばして急須を持ち上げてみると、しっかりと重さを感じた。中身はまだ入ってるようじゃの。じゃったら……。
「待った。アンタは触らない方が良い」
「は? 茶ぐらい注げるが?」
「ひっくり返すかもしれないだろ。私がやる」
「あー、まぁ廻道少女はポンコツだからね……。その方が良いかも」
「ぽんこつではないと何度言えば……!」
湯呑みに茶を注ごうとすると、対面に居るながんやおおるまいとに止められた。解せぬ。儂が急須をひっくり返すとでも思っているのか? 流石にそんな真似はしない。しないったらしないっ。
どうしてどいつもこいつも、儂をぽんこつ扱いして様々な事から遠ざけようとするのか。お陰で、被身子無しでは何も出来ない体になってしまった気がするんじゃけど?
……まぁ。被身子から離れるつもりは一生ないから、何も出来なくても良いような気がしないでも……。
……。……いや、いやいや。何も出来ないのはいかん。流石に人としてどうかと思う。せめて自分の身の回りの事ぐらいは出来るようになっておきたい。料理……は、諦めるとして掃除とか洗濯とか。問題は、何かしようとすると周りも被身子も止めてくることなんじゃけど。
うぅむ。そのうち、一人の時にやってみるとするか。それなら誰にも邪魔されんじゃろ。よし、そうしよう。
「じゃあトガはこの格好でデートしてきますので!」
「もう一枚上に来た方が良いわよ。今日も寒いから。
それと円花、貴女そろそろ着替えなさい。いつまでパジャマなの?」
「良いじゃろ別に。実家なんじゃから」
出掛ける直前ぐらいまでは、このまま気楽な格好で居たいものじゃ。どれ、この茶を飲み切ったら着替えて
「ずず……っ。そういう訳じゃから、今日もよろしく頼む」
「えーっと……。まぁ、門限は忘れないようにね?」
「分かっとる分かっとる」
寮の門限は、夜の八時じゃったっけ? 最近、夜に出掛けて朝に帰ることが多いから門限などすっかり忘れてしまっている気がする。今は何時じゃ? ……そろそろ十三時。昼の一時か。であれば……夜の七時ぐらいまでは
「……着替えてくる」
「あ、じゃあお手伝いするのですっ」
「なら、儂も全部頼もうかのぅ」
「んふふ。円花ちゃんのえっち♡」
「えっちなのは被身子じゃろっ」
で、この後。儂は着替えの何から何まで、被身子に任せきった。下着も服も、それこそ全部じゃ。途中途中で散々
昨日みたいに、途中で悪党と出会すのは勘弁じゃっ!
一周年……? 一年間もお付き合い頂いた読者様にはほんと頭が上がりませんね。いやほんと、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
ってことで、もうちょいバカップルのデートをお楽しみください。
三人称による補完は要りますか?
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良いから一人称で突っ走れ