待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
被身子が儂に着せたのは、儂がこっそり持って来ていた服じゃった。具体的に言うと、今被身子が着てるのと同じやつじゃ。実は鞄の奥底にどうにかこうにか詰め込んで置いた。じゃってほら、同じ服装で
そしたらもう、被身子は大喜びでのぅ。さぞ嬉しそうに儂に着せて、抱き付いて来た。何なら押し倒されたわ。畳に背中やら後頭部やらをぶつける羽目になってしまった。
そんなこんなで。今着ている服に合わせた上着を着て、ついでに昨日と同じように一枚の襟巻きを二人で巻いて、二人並んで家を出た。当然、おおるまいととながんは儂等の後ろを付いて来ている。
「今日も寒いですねぇ」
「冬じゃからな。でも、これが温いから良い感じじゃ」
「えへへぇ。頑張って編んだ甲斐があるのです……!」
一人で使うには長過ぎる襟巻きを二人で使って、手を繋いで歩く。これが意外と暖かくての。寒さが大分紛れる。昨日に引き続き
被身子は嬉しそうじゃし、儂も嬉しいし。出来ることなら毎日
んんむ。でもなぁ……。恋人とは、何度じゃって
「それで、今日はどうする?」
「んーー……。どうしましょう?」
……今日も何も考えてないのか。いやまぁ、儂も特に思い浮かぶものは無いんじゃけど。
昨日のように、家から大きく離れることは出来ん。一応儂と被身子は、身重の母の手伝いや看病を理由に外出許可を取ったからの。ただただ遊び歩いて居ると、うっかり相澤と出会すかもしれん。そしたら色々と面倒な事になってしまうじゃろうから、言い訳が出来そうな範囲で
じゃから、取り敢えず。目的地も決めぬままに外を出歩いている。何処を目指すわけでもなく、気ままに住宅街を歩き続ける。つまり、散歩じゃ散歩。雄英での寮生活が始まってから、儂は散歩する機会がまるで無かった。雄英の中を散歩しても仕方ないし、そもそも最近はそんな時間も無い。そう考えると、……うむ。被身子とこうして散歩するのも悪くないのぅ。今日は夕方ぐらいまで、こうしてのんびり過ごしてみるか。たまにはそんな日があっても良い。むしろ、無いと困るかもしれん。
「何も無いなら、散歩でもせんか? 最近しとらんじゃろ?」
「あーー、まぁ……。何の目的もなくブラブラするのも、たまには良いですね」
「そうじゃろそうじゃろ?」
「じゃあ、何かお喋りしながら散歩にしましょう!」
「そう言われると、何を話せば良いか分からん」
被身子と二人きりで、何か他愛無い話でもしながら散歩する。それ自体は悪くない。何なら喜ばしいかもしれん。しかし、いざこうして何か話そうとすると……。こう、話題がな?
「そう言えば、さっき飯田くんからメールが有ったんですけど」
「飯田から?」
「はい。クリスマスパーティーのお誘いだったのです。ヒーロー科の寮でやるみたいですよ?」
「……うぅむ……」
聖夜の催し事、か。参加したらきっと楽しいんじゃろうな。でもなぁ……。
「私と二人きりが良いですか?」
「……そうじゃの。ぱぁてぃも悪くないが、お主の方が優先じゃ」
「それはトガも一緒なのですっ。……でも、みんなでサンタさんになるのも悪くないなぁ……って」
「あの赤い白髭に?」
さんた……くろぉす……じゃったっけ? 赤い服を着て、太った老人じゃ。いやはや、懐かしい存在じゃの。六歳ぐらいの時にそんな人物が居ると父や被身子に教えられたことがある。何でも、
ちなみに、儂がさんたの正体に気付いたのは六歳の
……くひっ。あぁ、いかん。あの時の被身子をつい思い出してしまって、笑えて来た。
「んん……? 何ですか急に?」
ひとり笑いを堪え切れずに居ると、被身子が怪訝そうな顔をした。まぁ、これは仕方ない。儂が急に笑い始めたんじゃから。
「い、いやすまん。さんたと言えば、あの時のお主は可愛かったなぁと」
「……良いじゃないですか。あの時はほんとに、おじさんのお仕事がサンタクロースだと思ったんですから」
「頼めば今もやってくれるんじゃないか?」
「そこまで子供じゃないのです。……もぅ! 円花ちゃんの意地悪っ」
「すまんふまん。わひゅはっふぁ」
被身子をからかっていると、頬を摘まれた。これ以上こやつを弄ぶのは止しておこう。でないと、後でどんな復讐をされるか分からん。押し倒されるぐらいならまぁ良いんじゃけど、何をしでかすか分からんからの……。からかうのは程々にしなければ。
「サンタさんと言えば、本物のサンタさんはちゃんと居るって知ってますか?」
「いや、知らん。と言うか居ないじゃろ」
「これが居るんですよねぇ。海外には、国際サンタクロース協会っていうのが有りまして」
「そうなのか……?」
「はい。それで、その協会に認められた人は公認サンタさんなのです!」
「そ、そうか……」
なんか、どうでも良い事を教えられたような気がする。公認さんたってなんじゃ、公認さんたって。誰が公認してるんじゃそれは。と言うか、さんたくろぉす協会はいったい誰が設立したんじゃ? まさか本物のさんたが……?
……な、訳無いか。無い無い。残念ながら、さんたなどこの世には居ないんじゃ。多分。
「さんたと言えば、さんたはえりの下に行くのか?」
「エリちゃんが良い子に過ごしてたら来ますよぉ。サンタさんは良い子にプレゼントを配るので!」
「悪い子には?」
「臓物を部屋にぶち撒けます」
「えぇ……??」
それはまた、とんでもない話じゃ。臓物て。そんな物を部屋に撒いたら、それはもう大惨事じゃろうに。目が覚めた子供が泣き喚くぞ、そんなの。不法侵入に臓物……。さんため、さては悪党の類いか? 今の時代じゃと、
「まぁエリちゃんは良い子なので、きっとプレゼントを貰えるのですっ」
「……そうじゃな。そうであって欲しいものじゃ」
目が覚めたら部屋が臓物塗れになっていた。なんて経験をえりにはして欲しくないのぅ。まぁそんな事態にはならんじゃろうけどな。じゃってさんたは居ないんじゃし、そもそもえりは良い子なんじゃぞ。臓物をぶち撒けられるなんてことにはならん。
「ところで。お主、今年は良い子にしてたか?」
「もっちろんっ。トガは良妻なのです!」
……まぁ、その通りじゃの。良妻……じゃったと思う。悪妻や恐妻じゃったかもしれんけど。
「そう言う円花ちゃんは、良い子にしてましたか?」
「さぁの。悪い子かもしれん」
「うーーん……。今年は確かに、トガの心を弄んでますよねぇ……。人の心を弄ぶなんて、ヨリくんは悪い子なのです♡」
「んむっ。……お主じゃって儂を弄んでるくせに」
「これは愛情表現ですよぉ。ねっ?」
「んんむぅ……!」
頬を摘むな。指で突くな。手のひらで揉むなっ。せくはらをするんじゃないっ! そんな意地悪い笑みを浮かべてる奴の、どの辺が良い子なんじゃ……!!
「今夜も寝かせないですから、覚悟してくださいねぇ♡」
「……お主こそ。今宵は寝れると思うなよ??」
……まぁ。明日は明日で色々と忙しくなるんじゃけども、それは気にしないでおこう。後の予定を考えて、変に遠慮などしたくないし。今宵は……と言うか今宵も、儂は思う存分被身子と求め合う。そうしないと、きっと物足りないままで終わってしまう。
今夜は
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ