待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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また拗ねる。

 

 

 

 

 

 

 宛もなく家の周囲を散歩したり、海辺の展望台で公序良俗に反しない範疇で愛し合ったり。今年の聖夜(くりすます)は、例年とは少し違うものになったような気がする。毎年毎年被身子と何処かに出掛けたり、両親も交えて遠出してたりしたからの。それと比べると、何と言うか今年は慎ましい感じじゃ。まぁ、夜中は全然慎ましくないんじゃけど。今宵も、昨晩と同じく朝まで盛り上がるんじゃろうなぁ。明日は朝も早くから動かねばならんのに。

 いっそのこと、寝ないで実地研修(いんたぁん)に向かうか? 行きの車の中で少しは寝れるかもしれんし。……なんて阿呆な事を頭の片隅で考えつつ、儂は被身子と一緒に商業施設(しょっぴんぐもぉる)で買い物を済ませた。というのも、母と父へ贈り物をする為じゃ。

 

 ……あまり気乗りはしないんじゃけど、夜七時までには寮に帰ることになっての。くらすめぇと達が行う(くりすます)懇親会(ぱぁてぃ)に、顔だけ見せる為じゃ。何でも被身子が、皆に見せたいものがある……とか何とかで。いったい、何をするつもりなんじゃが。悪どい笑みを浮かべておったのは、気のせいじゃと思いたい。

 

 そんなこんなで。母には膝掛けや毛布、それから半纏を用意した。身重じゃから、体が冷えたら大変じゃ。なので、あれやこれやと防寒に役立ちそうな物を買ってしまった。被身子と儂からの贈り物ってことにしておこう。で、父には上襦袢(わいしゃつ)や、襟締(ねくたい)を用意した。どちらも色や柄については被身子が選んだので、大の大人が着るには大分変な見た目をしておる。まぁ着るのは父じゃから、特に気にしなくても良いじゃろう。……多分。

 

 両親への贈り物を選んだ後は、被身子と共に一度帰宅した。で、少しの休憩を挟んだ後に贈り物を渡して、家を出た。気が付けばもう、家を出る時間じゃったからの。

 

 そして、現在。儂と被身子は、ながんやおおるまいとと共に車の中じゃ。雄英まで、おおるまいとが運転する車で帰る。

 

「ところで被身子。何を子供達に見せたいんじゃ?」

「それはぁ、さっき届いたんですよ」

「何が?」

「那歩島の観光PR動画です!」

 

 那歩島の観光ぴぃあぁる動画……? ……あぁ、儂が観光大使として映る羽目になったあれか。そう言えば、動画編集したら確認の為に送るとか神主が言っておったの。どうやら、それが今日になって届いたようじゃ。被身子はそれを、儂のくらすめぇと達に見せたいようじゃ。まぁ実際、撮影された動画にはくらすめぇと達善因が映っているそうじゃからの。であれば、子供達が動画を確認する権利は有る。賃金も少しばかり出るそうじゃけど、それがどの程度の金額かはまるで分からん。と言うか、知らん。その辺りの細かい話は、被身子やながんに任せきってしまったからのぅ。

 

「あの動画、出来たのか。……どうじゃった?」

「まだ見てないのです。どうせなら、みんなで一緒に見ません?」

「……そうじゃな。そうするか」

 

 動画の出来栄えについては、少しだけ気になるところじゃ。儂は全然撮影されていた気がしなかったし、そもそも撮影自体が気付けば終わっていた。神主は個性を使ってまで動画を撮影していたからの。お陰で儂は撮影機や神主をまるで気にせずに祭りを楽しめたが、しっかり撮影出来ているかは被身子に送られて来た動画を確認しなければ分からん。変な風になってないと良いんじゃけども。

 

「あ、それと夜までには試供品も色々届くみたいですよ?」

「試供品?」

「はいっ。円花ちゃんグッズです!」

 

 ……それは、聞かなかったことにしよう。何と言うか、嫌な予感しかしない。何故儂なのか。そんな物を作ったって金の無駄じゃと思うし、そうでなくとも人が欲しがる物でも無いと思うんじゃが? 訳の分からん物を作るぐらいなら、少しでも復興費用に充てたらどうなんじゃ。まったく、神主と言い島民と言い、何をしているのやら。

 

「観光大使としての 全国デビューが近付いてますけど、お気持ちはどうですかっ?」

 

 何やら楽しそうにしている被身子が、儂の顔に軽く握った拳を近付けた。何しとるんじゃお主は。取材(いんたびゅぅ)のつもりか? まったく……。

 

「……誠に遺憾じゃ」

「まぁまぁ、そんなに悪い事でもないですよぉ」

 

 ……(まこと)か? (まこと)に悪い事ではないのか? 儂はろくでもない事じゃと思うんじゃが……。

 ま、まぁ。変な動画にはなっとらんじゃろう。なってたとしても、被身子が却下する筈じゃ。そう考えると、変なものは世間に出回らん。

 

「アンタ等を全国に広めるのは悪手な気がするが……」

「ま、まぁほら。知名度を高めるのもヒーロー活動の一環さ! まぁ廻道少女の場合、色々と既に有名人だけど……」

「有名になった覚えは無いが?」

 

 いやまぁ。この筋肉阿呆の後継として世間に認知されとる時点で、残念ながら有名人か。後継としての英雄(ひいろお)活動もそろそろいい加減に始めなければならん。そうしなければ、緑谷の存在を隠せぬからの。子供の代わりに矢面に立つのは慣れては居るけども、まさか英雄(ひいろお)として動かねばならんとは。ここ最近、面倒事ばかりの気がしてならん。出来ることなら、儂は落ち着いて過ごしたいんじゃけどなぁ……。どうも慌ただしい毎日を過す羽目になってしまっている。いつまで続くんじゃろうな、呪術師の人手不足。いや、呪術師の手が足りるなんて事態は今も昔も無いんじゃけど。

 

「という訳で、みんなで全国デビューしましょう! ねっ、円花ちゃん!」

 

 被身子が両手を叩いて、高らかに勝手な事を宣った。お主なぁ、動画が使い物にならなかったら全国顔見世(でびゅぅ)なんて出来ないんじゃぞ? そもそもあの動画は、間違いなく被身子も映ってるじゃろ。常に儂と行動を共にしとったんじゃから、余すとこなく映り込んでる筈じゃ。

 

 ……つまり。儂やくらすめぇと達だけではやく、被身子も全国に顔見世することになる。まぁ……雄英体育祭の時点で衝撃の顔見世(でびゅぅ)をしてるようなものじゃけどな。全国放送の場であんな風にされたのは、今思い返しても気恥ずかしいものが有るのぅ……。

 この話題は、もう逸らしてしまおう。他の事を喋ろう、他の事を。

 

「と、ところでじゃな? 儂は明日から、いんたぁんなんじゃけど……」

「あぁ、それなら聞いてる。これが有る以上、当然同行だ。だいたい、殆どアンタ専属の補助監督だからな」

「……分かってるなら良い。おおるまいと、被身子を連れて行けたりは……」

「いやぁ……。無理じゃないかな。渡我少女は君の補助監督だけど、今回の場合はヒーロー活動だし」

「……じゃよなぁ……」

 

 やはり、被身子は連れて行けんか。元々連れて行くつもりは無かったが、念の為に確認はしておきたかった。その結果、やはり駄目なようじゃ。……って、被身子。拗ねるな拗ねるな。頬を膨らませて不満そうにしても、こればっかりはどうしようもないんじゃから。

 それに、お主ばかりが不満という訳でもない。儂じゃって、被身子と離れ離れになるのは不満じゃ。しかし流石に、今回こそは同行出来んじゃろう。今まであれやこれやと理由を付けて被身子は儂に同行していたが、今回はどうにもならん気がするの。

 

「むぅう……。円花ちゃん無しじゃトガは生きていけないのです。公安は、いったいどう責任取ってくれるんですか……! 」

「で、電話でもしたらどうかな……?」

「電話じゃ足りませんけど?? それに私が居なかったら、誰が円花ちゃんの面倒を見るんですかっ!」

「いや、この場合自分の面倒は自分でじゃな……?」

「公安も総監部も、ヒーローも……! 円花ちゃんがポンコツしちゃっても良いんですか!?」

 

 おいこら。ぽんこつすると決め付けるな。何で儂がぽんこつするのが当然みたいな口振りで反論するのか。そもそも儂は、ぽんこつではないが……!?

 

「や、休みの日もちゃんと有るから。その時に会えば良いんじゃないかなって……」

「むぅう……! そんなんじゃ足りないのっ!」

 

 いかん。おおるまいとの提案のせいで、更に被身子が拗ね始めた。おい、筋肉阿呆。……いや今は骸骨阿呆か。まぁどちらでも良い。被身子を拗ねさせるんじゃない。そんな真似をしたら、後で誰が大変になるのか分かっとるのか貴様。被身子が拗ねると大変なんじゃぞっ。

 

 主に! 儂が!!

 

 

 

 ……で、この後。被身子は車の中で盛大に拗ねて、それを宥めるのに儂は苦労する羽目になった。ながんは何も手伝ってはくれなかったし、骸骨阿呆が何かを提案する度に被身子は機嫌を悪くして堂々巡りじゃった。ゆ、許さん。許さんからなっ、おおるまいとめっ!

 

 

 

 

 

 









三人称による補完は要りますか?

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