待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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聖夜懇親会。そのに

 

 

 

 

 

 

 今日、儂はくらすめぇと達を見返す。見返してやると決めた。どいつもこいつも、儂に料理は出来ないなどと口走るものじゃから、意地になってしまった。我ながら大人げないと思いつつも、ぽんこつだの方向音痴だの言われるとつい逆らいたくなってしまうんじゃ。今回は、料理音痴などでは無いことを証明したい。と言うか、する。絶対する。でなければ気が収まらん。

 なので。聖夜(くりすます)の夜にも関わらず、儂は得意料理のうどんを作っておる真っ最中じゃ。取り敢えず出汁を取ってる最中なので、その間に他の行程を進めるとしよう。具材については、冷蔵庫に大したものは無かったので簡単に葱と卵辺りで良いじゃろう。卵については仕上げの段階で落とせば良いので、手を加えるとしたら葱じゃな。三本も有る。これは包丁で刻むとしよう。くらすめぇと達全員分を刻むとなると、かなりの量になる筈じゃ。面倒じゃから丸々鍋に放り込……むのは、ただの手抜きじゃな。儂にも料理が出来ると言い切った手前、そんな真似をするつもりはない。

 

 ……なので。面倒に思ってもしっかり刻むことにする。幸い、緑谷と轟が手伝ってくれているからの。二十人分の葱を刻むのにそう手間取ることは無いじゃろう。

 

「取り敢えず、これを刻むぞ。全部じゃ全部」

「か、廻道さん。ほんとに全員分作るの……?」

「当たり前じゃ。全員見返してやるんじゃから」

「……分かった。刻めば良いんだな?」

「そうじゃ、刻むぞ」

 

 まさか男子二人と台所に並んで立つ羽目になるとはのぅ。意地になって料理を始めたのは儂の方じゃけども、それはそれとして何と言うか……奇妙な感じじゃ。最後に誰かと台所に立ったのはいつじゃったか。もしや夏合宿以来か? あの時は周りに全力で止められたが、今回は違う。二人も協力者が居る上に、被身子も見ている。となれば、失敗なんて起きん。絶対起きん。じゃから、今回は見事に料理をしてみせるんじゃ……!

 

 儂と轟。それから緑谷の三人で、葱を刻んでいく。包丁を手に持つのは久しぶりじゃ。と言っても刃物の扱いは心得ている。指を切るような真似はせん。

 

「……あれ? 廻道さん、包丁使えるんだ……?」

「は? お主は使えんのか?」

「人並み程度には」

「じゃったら刻め。ほら刻め」

「ぅ、うん」

 

 口を動かす暇が有るのなら、さっさと手を動かして欲しいものじゃ。

 轟を見ろ轟を。儂の隣で黙々と葱を刻んでくれて居る。包丁はしっかり扱えるようじゃの。緑谷は食卓にまな板を置いて、遅れながらも葱を刻み始めた。よし、じゃあ儂も刻もう。そう言えば、被身子は何処へ行ったんじゃ? 厠か? 気が付けば姿が見えぬ。まさか、他のくらすめぇと達と食堂から出ておらんよな?

 

「廻道。手元見ないと危ねぇ」

「手元なんて見なくても刃物ぐらい扱えるわ、たわけ」

「そうか。すげぇな」

「い、いや廻道さん。手元は見ないと危ないよ……! 轟くんもそこは止めようよっ」

 

 何じゃもぅ。口煩い奴等め。そんな心配される程、不器用では無いんじゃけど? 葱を刻むことぐらい、朝飯前じゃ。このくらいは流石に出来るが??

 ……まったく。まぁ手伝ってくれてるから、文句は口にしないでおくとしよう。

 

 さて。葱は刻み終えた。次にやるのは……出汁の続きじゃな。鰹節鰹節……っと。

 

「ちょっ、廻道さん!? 入れ過ぎじゃ……!?」

「何を言ってるんじゃ。鰹節は入れれば入れるだけ美味いんじゃぞ」

「そうなのか? 今度試してみるか……」

「いやでも、限度ってものがあるよ!? 確かに鰹節からイノシン酸が取れて昆布のアミノ酸と合わさると美味しくなるけど、だからって山程鰹節を入れるのは違うんじゃ……!?」

「じゃから入れれば入れるだけ美味いんじゃって。母と被身子が言ってたんじゃから間違い無いんじゃ!」

 

 さっきからいちいち口を挟みおって。轟を見習え轟を。鰹節は山のように入れたって良いということを知らんのかこやつ。さては料理音痴じゃな? 仕方ない奴めっ。仕方ないから、儂がうどんの作り方を教えてやろう! 被身子直伝のうどんじゃぞっ、ありがたく思え!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ出来たぞ! 食え!!」

 

 うどんが出来た。ので、食卓に並べてくらすめぇと全員を食堂に招き入れた。

 二十人分も作るのは、緑谷と轟の協力が有っても中々に大変じゃった。味については、問題無い。うどんを茹でる前に味見したら、しっかり美味い出汁が取れていたからの。そこに醤油と味醂と砂糖を加えて、もっと美味くなった。最後にうどんをぶち込んで、ぐつぐつ煮た訳じゃ。全員分ともなると、うどんを茹でるだけでも結構な時間が掛かってしまった。仕上げの卵も少し固くなってしまったが、まぁ良しとする。出来れば半熟にしたかったが、固くなってしまったのなら仕方ない。別に不味いなんて事は無いじゃろう。無いったら無い!

 

「ぇ、えぇ……?」

「普通のかけうどんが出て来た……!?」

「夢でも見てんのか……?」

「見た目は美味しそう……だよね……?」

 

 解せぬ。何故、どいつもこいつも儂が作ったうどんを前に固まっているのか。何で目を丸くしたり、愕然としているんじゃっ。うどんぐらい、この通り作れるんじゃけど!?

 まったく、失礼な奴等め。さぁ食え、今直ぐ食え。そして儂が調理音痴でないことを認めるが良い!!

 

「あ、円花ちゃん。合わせ出汁って余ってますか?」

「余っとるぞ。作り過ぎて、寸胴から溢れそうになってのぅ」

「じゃあ、トガは後片付けしておくので!」

「うむ、任せた」

 

 被身子はうどんの入った丼を片手に台所に向かって行った。何故あやつは、うどんを片手に台所へ……? さては、片付けながらうどんを啜るつもりか? いったい何を考えてるんじゃか。

 

「え……っと。みんな、良かったらこれ追加してね……」

 

 おい緑谷。何で儂から顔を逸らしながら、鍋に入れた出汁を食卓に置くのか。必要無いじゃろそれ。いったい何に使わせるつもりじゃっ。

 

「ま、まぁ取り敢えず食ってみようぜ……? なんか、ちゃんとしてるっぽいし?」

 

 うむ。食え、さぁ食え。何じゃ上鳴、意外と分かっとるようじゃの。貴様は許してやらんでもない。率先して、最初にうどんを啜―――。

 

「げはぁ!?」

 

 ……は? おい。おい、上鳴っ。一口啜ったと思いきや、何で直ぐに吐き出したんじゃ貴様!! 何で椅子から転げ落ちた!?

 

「んぐっ、こ……これは……! がはっ……!」

 

 上鳴に遅れて飯田がうどんを啜ったら、今度は飯田も椅子から転げ落ちた。何なら動かん。他の連中も、一口食べたと思ったら一斉に机に突っ伏したり天井を見上げて動かなくなった。な、何じゃ貴様等っ! いったい何の真似じゃ……!!

 

「あ、みんな食べる前に合わせ出汁かお湯で薄めてくださいねぇ。これ、かなり煮詰まっちゃってるので、とっても濃いですよ? そのまま食べたら死んじゃうので」

 

 ……は? いやおい、被身子。何を言ってるんじゃ貴様。濃い……じゃと? そんな筈は無かろう。味見なら真っ先にしたが!?

 

「緑谷くん、轟くん。台所に立った円花ちゃんから目を離したら駄目なのです」

「……き、肝に銘じます……」

「……何か、わりぃ」

 

 は?? いやおい、そんな筈は無い。死ぬ程味が濃いじゃと……? 味見はしっかりしたんじゃぞっ。ちゃんと食べれるものになっとる筈じゃ! 解せぬっ。

 

 こうなったら儂も一口……! おい芦戸、一口寄越せっ。って、何で貴様も机に突っ伏してるんじゃ!!

 

 

「……ぐえっ」

 

 

 こ、濃い……!! しょっぱい!! 何じゃこれ、何じゃこれっ!? 何がどうしてこうなった……!!?

 

 

「廻道ちゃん、二度と料理しないで……。ガクッ」

 

 葉隠が遺言かのように失礼な事を口走り、動かなくなった。待て、待て待て……! 何でこんな事になっとるんじゃ! おかしいじゃろこれはっ。誰か何とか説明しろ!!

 

 

 

 ――――こうして。儂は料理音痴でないことを証明するどころか、料理音痴であることを証明してしまった。お、おかしい。こんな筈では……! と言うか被身子っ。お主、結局うどんが出来るまで食堂に居なかったな!? 何処で何をしとったんじゃっっ!!

 

 

 

 

 

 








三人称による補完は要りますか?

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