待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「円花ちゃんは意地っ張りの頑固なので、下手に出来ないとか言うとこうなるんですよぉ。みんな、円花ちゃんの扱いが下手なのです」
「き、気を付けます……」
「地獄を見た……」
「深淵の悪食」
「分かってるなら止めて欲しかったです」
うぅむ……。ううむ……。おかしい。こんな筈では無かった。しかし、しばらく料理をするのは止めておこう。食材を無駄にしてしまうのは良くない。この時代は食べ物が手に入り易いが、それでも食べ物を駄目にしてしまうのはいかん。儂、料理出来ぬわ。もう台所に立つのは、被身子が風邪などで動けない時にしよう。まぁそれも、今となってはやるべきではないと思ってしまうが。
現在。儂は居間の座敷牢の中じゃ。首に「私は料理を失敗しました」と書かれた
うぅむ……。方向音痴だけならまだしも、料理まで……。儂は、いったい何なら出来るんじゃ? 掃除も洗濯も被身子に任せっきりになってしまうし。家事の一切が出来ぬのは、流石に人として駄目な気がしてならん。どうにかせねば。しかし、どうやって……??
「まぁまぁ。円花ちゃんはなーんにも出来なくて良いのです。トガが一生お世話するので!」
満面の笑みを浮かべた被身子が、真横から抱き付いて来た。頭やら肩やら、背中まで撫で回してぐる。こそばゆいから止さぬか。と言うかどさくさに紛れて、太腿を撫でるな。へんたいっ。
「……あれ? もしかして渡我先輩が甘やかしてるからポンコツなんじゃ……??」
「そういう次元じゃねえだろ。アホか」
「きっと元から盛大なポンコツだよね。いや、知ってたけど」
物凄く失礼な事を言われているが、今は大人しく聞き流してやろう。あれだけ盛大に失敗してしまった後じゃと、流石に逆らう気力も無い。……いやでも、やはりぽんこつ扱いされるのは気に食わん。どうしても気に食わん。今回は大人しくしておくが、次回は逆らうからな? 今に見てろよ、今に……!!
「ま、まぁ気を取り直してクリスマスパーティーしよう! クリパクリパ! 珍しく廻道も反省してるし!」
は? 芦戸。おい芦戸。まるで普段の儂が反省しないみたいな物言いは止さぬか。儂じゃって反省ぐらいするが? 今回の件については、しでかしてしまったと思っとるんじゃぞ。でなければ、首からこんな物をぶら下げたりしないんじゃ。まったく……!
「ではみんな! 廻道くんと渡我先輩も来たことだし、クリスマスパーティーを開催しよう!」
「口直しの料理は沢山有りますわ。食べて飲んで、今夜は存分に楽しみましょう!」
「そ、そうだな! メリークリスマス!」
「メリークリスマス!!」
……。まぁ色々と有りはしたものの、取り敢えず
「んふふ。メリークリスマスです、ヨリくん」
「……ん。めりぃくりすます」
◆
居間の机の上には、様々な料理が並んでる訳じゃ。その殆どが外見上は美味そうじゃが、実際のところはそうではない。儂はどうにも、被身子の手料理しか美味いと感じない。なので今夜の食事を美味いと思うことは無いじゃろう。……じゃけど、それでも楽しい時間を過ごしているなと思う。こうして子供達と集まって騒ぐのは、何だかんだで愉快なものじゃ。こんな騒々しい
などと思いつつ、色々並んでる料理の中から唯一被身子が作ってくれた味噌汁を黙々と口に運ぶ。うどん作りの際に余った出汁を使って作ってくれたやつじゃ。
ちなみに。被身子は今、八百万や麗日と協力して
「廻道、これも食べるか?」
「ん? ……じゃあ、貰う」
対面の席に腰掛けている常闇が、ふらいどちきんを小皿に乗せて差し出して来た。ので、一応受け取っておく。
「あ、廻道ちゃん。それねぇ、半生だよ」
「は?」
ふらいどちきんを手掴みで食べようとすると、隣の葉隠がとんでもない事を言いおった。半生はいかんじゃろ、半生は。何でそんな物が並んでいるのか。誰じゃふらいどちきんを用意した輩は。さては料理音痴か? 料理音痴なんじゃな??
「いや、ちゃんと揚げてあるからね? 葉隠さん、変なこと言わないの」
「……洒落にならん事を言うな、たわけ。尾白、そやつ尻尾で簀巻きにしとけ」
「ははは……」
いや、乾いた笑みを浮かべとらんでそこの悪戯好きを動けぬようにしておけ。……なんて思いつつ、常闇に手渡された料理に齧り付く。味は……残念ながら微妙じゃ。不味くはないし、美味い部類なのは確かじゃ。でも儂は満足出来そうにない。ひと味もふた味も足りんと言うか、何と言うか。
被身子が作る料理と、被身子以外が作る料理。味付けの差は、いったい何なんじゃろうな? そんなに大きく離れてるわけでは無いと思ってるんじゃけども。なのに何故か、被身子以外の手料理は何か違うんじゃよなぁ……。
「廻道って、ほんと渡我先輩の料理を食べた時とそうじゃない料理を食べた時で顔が違うよねー」
「ケロケロ。被身子ちゃんの料理じゃないと満足出来ないのよね」
「仕方ないじゃろ。儂は基本的に被身子の料理が一番なんじゃ」
じゃから芦戸。人の顔を見て呆れるんじゃない。梅雨は梅雨で、何やら楽しそうにしておるし。
「そうだ廻道。今度手合わせをしてくれ。さらなるさらなる成長を見せたい」
「良いぞ。あの姿のだあくしゃどうの操作鍛錬は、上手く行っとるのか?」
「……精進を重ねてる最中だ」
「さっさと物にしろ。儂は期待してるんじゃから」
まだ常闇は、だあくしゃどうの全てを扱えているとは言えん。暴走形態、とでも言うべきか? とにかく、あの姿となっただあくしゃどうとは是非手合わせしたい。もしあれを完璧に制御出来るようになったなら、常闇はかなり強くなる。なってくれなければ、むしろ困る。
「必ず追い付く。……先に行っててくれ」
「……ひひっ。その言葉、違えるなよ?」
常闇がこれからどんな成長を遂げるか。それを考えると、楽しくなってしまうのぅ。つい、笑みを浮かべてしまう。早く力を付けて欲しいものじゃ。楽しみで仕方ない。
「準備が! 出来ました!!」
「おぐっ!?」
急に被身子の大きな声が聞こえたと思ったら、
「ほんともぅ、油断も隙もないですねぇ常闇くん。私の円花ちゃんだって、何度言えば分かるんですか……!」
「じゅ、重々承知してます……!」
「ほんっっとうに分かってるんですか? やっぱり分かってないですよね??」
「分かってます……! 決して渡我先輩が心配するような事は起きませんから……!!」
「むぅうう……! やっぱり敵です、常闇くんは敵なのです……!!」
あ、駄目じゃこれ。常闇、席を変えた方が良いぞ。しばらく被身子の機嫌は直らんかもしれんし。それにしても、何でこう……被身子は直ぐ常闇にこんな態度を取ってしまうのか。常闇にだけは、昔から直ぐ嫉妬するんじゃよなぁ。
「そ、それで被身子。準備って何の?」
「観光PR動画の準備ですっ! 今からみんなでチェックしましょうっ!!」
「ぉ、おう……。相分かった……」
い、いかん。不機嫌じゃ。被身子が物凄く不機嫌になっている。これはどうにかして機嫌を取らねば、後で大変な事になってしまう。仕方ない、こうなったら座敷牢に放り込まれるのを覚悟の上でじゃな……!?
で、この後。儂は被身子ごと座敷牢に放り込まれた。どうやら舌を絡めるような
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ