待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

419 / 553
聖夜懇親会。そのさん

 

 

 

 

 

 

「円花ちゃんは意地っ張りの頑固なので、下手に出来ないとか言うとこうなるんですよぉ。みんな、円花ちゃんの扱いが下手なのです」

「き、気を付けます……」

「地獄を見た……」

「深淵の悪食」

「分かってるなら止めて欲しかったです」

 

 うぅむ……。ううむ……。おかしい。こんな筈では無かった。しかし、しばらく料理をするのは止めておこう。食材を無駄にしてしまうのは良くない。この時代は食べ物が手に入り易いが、それでも食べ物を駄目にしてしまうのはいかん。儂、料理出来ぬわ。もう台所に立つのは、被身子が風邪などで動けない時にしよう。まぁそれも、今となってはやるべきではないと思ってしまうが。

 

 現在。儂は居間の座敷牢の中じゃ。首に「私は料理を失敗しました」と書かれた梱包材(だんぼぉる)をぶら下げて正座中。反省せねば。でもでもじゃって、あんな風に勝手に決め付けられたら逆らいたくもなるじゃろう? どうもな、反発してしまうと言うか、反発しなければ気が済まんと言うか……。

 うぅむ……。方向音痴だけならまだしも、料理まで……。儂は、いったい何なら出来るんじゃ? 掃除も洗濯も被身子に任せっきりになってしまうし。家事の一切が出来ぬのは、流石に人として駄目な気がしてならん。どうにかせねば。しかし、どうやって……??

 

「まぁまぁ。円花ちゃんはなーんにも出来なくて良いのです。トガが一生お世話するので!」

 

 満面の笑みを浮かべた被身子が、真横から抱き付いて来た。頭やら肩やら、背中まで撫で回してぐる。こそばゆいから止さぬか。と言うかどさくさに紛れて、太腿を撫でるな。へんたいっ。

 

「……あれ? もしかして渡我先輩が甘やかしてるからポンコツなんじゃ……??」

「そういう次元じゃねえだろ。アホか」

「きっと元から盛大なポンコツだよね。いや、知ってたけど」

 

 物凄く失礼な事を言われているが、今は大人しく聞き流してやろう。あれだけ盛大に失敗してしまった後じゃと、流石に逆らう気力も無い。……いやでも、やはりぽんこつ扱いされるのは気に食わん。どうしても気に食わん。今回は大人しくしておくが、次回は逆らうからな? 今に見てろよ、今に……!!

 

「ま、まぁ気を取り直してクリスマスパーティーしよう! クリパクリパ! 珍しく廻道も反省してるし!」

 

 は? 芦戸。おい芦戸。まるで普段の儂が反省しないみたいな物言いは止さぬか。儂じゃって反省ぐらいするが? 今回の件については、しでかしてしまったと思っとるんじゃぞ。でなければ、首からこんな物をぶら下げたりしないんじゃ。まったく……!

 

「ではみんな! 廻道くんと渡我先輩も来たことだし、クリスマスパーティーを開催しよう!」

「口直しの料理は沢山有りますわ。食べて飲んで、今夜は存分に楽しみましょう!」

「そ、そうだな! メリークリスマス!」

「メリークリスマス!!」

 

 ……。まぁ色々と有りはしたものの、取り敢えず聖夜(くりすます)懇親会(ぱぁてぃ)が始まった。ところで、儂はいつまで座敷牢に居れば良いんじゃ? もしや今晩はこのままか……? いや、それはそれで困るのぅ。機を見て、どこかで抜け出すとするか。

 

「んふふ。メリークリスマスです、ヨリくん」

「……ん。めりぃくりすます」

 

 接吻(きす)出来そうなぐらいに近い距離で、被身子が笑う。外での愛想笑いではなくて、いつものように。それが嬉しくて、儂もつい頬が緩む。何だかんだで儂もこやつも、今日という日が楽しいからの。とことんまで楽しんでしまっても、誰も何も言わんじゃろうし。

 

 聖夜(くりすます)は、まだまだ続く。懇親会(ぱぁてぃ)も盛り上がり始めたようじゃし、そろそろ座敷牢から出ようかのぅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 居間の机の上には、様々な料理が並んでる訳じゃ。その殆どが外見上は美味そうじゃが、実際のところはそうではない。儂はどうにも、被身子の手料理しか美味いと感じない。なので今夜の食事を美味いと思うことは無いじゃろう。……じゃけど、それでも楽しい時間を過ごしているなと思う。こうして子供達と集まって騒ぐのは、何だかんだで愉快なものじゃ。こんな騒々しい聖夜(くりすます)も、たまには悪くない。

 などと思いつつ、色々並んでる料理の中から唯一被身子が作ってくれた味噌汁を黙々と口に運ぶ。うどん作りの際に余った出汁を使って作ってくれたやつじゃ。

 ちなみに。被身子は今、八百万や麗日と協力して映写機(ぷろじぇくたぁ)の準備をしている。麗日が天井に幕を取り付けて、八百万は映写機(ぷろじぇくたぁ)の方の設置。で、被身子はのぉとぱそこんを弄っておるわ。何をする気じゃあやつ等? まぁ、この際好きにさせておこう。いちいち聞くのは藪蛇な気がしてならんし。

 

「廻道、これも食べるか?」

「ん? ……じゃあ、貰う」

 

 対面の席に腰掛けている常闇が、ふらいどちきんを小皿に乗せて差し出して来た。ので、一応受け取っておく。

 

「あ、廻道ちゃん。それねぇ、半生だよ」

「は?」

 

 ふらいどちきんを手掴みで食べようとすると、隣の葉隠がとんでもない事を言いおった。半生はいかんじゃろ、半生は。何でそんな物が並んでいるのか。誰じゃふらいどちきんを用意した輩は。さては料理音痴か? 料理音痴なんじゃな??

 

「いや、ちゃんと揚げてあるからね? 葉隠さん、変なこと言わないの」

「……洒落にならん事を言うな、たわけ。尾白、そやつ尻尾で簀巻きにしとけ」

「ははは……」

 

 いや、乾いた笑みを浮かべとらんでそこの悪戯好きを動けぬようにしておけ。……なんて思いつつ、常闇に手渡された料理に齧り付く。味は……残念ながら微妙じゃ。不味くはないし、美味い部類なのは確かじゃ。でも儂は満足出来そうにない。ひと味もふた味も足りんと言うか、何と言うか。

 被身子が作る料理と、被身子以外が作る料理。味付けの差は、いったい何なんじゃろうな? そんなに大きく離れてるわけでは無いと思ってるんじゃけども。なのに何故か、被身子以外の手料理は何か違うんじゃよなぁ……。

 

「廻道って、ほんと渡我先輩の料理を食べた時とそうじゃない料理を食べた時で顔が違うよねー」

「ケロケロ。被身子ちゃんの料理じゃないと満足出来ないのよね」

「仕方ないじゃろ。儂は基本的に被身子の料理が一番なんじゃ」

 

 じゃから芦戸。人の顔を見て呆れるんじゃない。梅雨は梅雨で、何やら楽しそうにしておるし。

 

「そうだ廻道。今度手合わせをしてくれ。さらなるさらなる成長を見せたい」

「良いぞ。あの姿のだあくしゃどうの操作鍛錬は、上手く行っとるのか?」 

「……精進を重ねてる最中だ」

「さっさと物にしろ。儂は期待してるんじゃから」

 

 まだ常闇は、だあくしゃどうの全てを扱えているとは言えん。暴走形態、とでも言うべきか? とにかく、あの姿となっただあくしゃどうとは是非手合わせしたい。もしあれを完璧に制御出来るようになったなら、常闇はかなり強くなる。なってくれなければ、むしろ困る。

 

「必ず追い付く。……先に行っててくれ」

「……ひひっ。その言葉、違えるなよ?」

 

 常闇がこれからどんな成長を遂げるか。それを考えると、楽しくなってしまうのぅ。つい、笑みを浮かべてしまう。早く力を付けて欲しいものじゃ。楽しみで仕方ない。

 

「準備が! 出来ました!!」

「おぐっ!?」

 

 急に被身子の大きな声が聞こえたと思ったら、椅子(そふぁ)越しに後ろから抱き付かれた。危うく手にしたお椀をひっくり返すところじゃった。って、こら被身子。そんな力いっぱい抱き締めるな。胸が圧迫されるじゃろっ。戻って来たと思ったら、何でそんな不機嫌なんじゃ貴様っ。

 

「ほんともぅ、油断も隙もないですねぇ常闇くん。私の円花ちゃんだって、何度言えば分かるんですか……!」

「じゅ、重々承知してます……!」

「ほんっっとうに分かってるんですか? やっぱり分かってないですよね??」

「分かってます……! 決して渡我先輩が心配するような事は起きませんから……!!」

「むぅうう……! やっぱり敵です、常闇くんは敵なのです……!!」

 

 あ、駄目じゃこれ。常闇、席を変えた方が良いぞ。しばらく被身子の機嫌は直らんかもしれんし。それにしても、何でこう……被身子は直ぐ常闇にこんな態度を取ってしまうのか。常闇にだけは、昔から直ぐ嫉妬するんじゃよなぁ。

 

「そ、それで被身子。準備って何の?」

「観光PR動画の準備ですっ! 今からみんなでチェックしましょうっ!!」

「ぉ、おう……。相分かった……」

 

 い、いかん。不機嫌じゃ。被身子が物凄く不機嫌になっている。これはどうにかして機嫌を取らねば、後で大変な事になってしまう。仕方ない、こうなったら座敷牢に放り込まれるのを覚悟の上でじゃな……!?

 

 

 

 

 で、この後。儂は被身子ごと座敷牢に放り込まれた。どうやら舌を絡めるような接吻(きす)をするのは駄目らしい。……仕方ない。今度からは、くらすめぇと達の前では触れるだけの接吻(きす)だけにしよう。

 

 

 

 

 

 









三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。