待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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職員室にて。

 

 

 

 

 

 臨時休校の翌日。学校はまた休校になった。その旨の連絡が来たのは、朝の七時過ぎ。そろそろ学校に向かおうかと準備をしている頃じゃった。が、何故か儂だけは出席しろと通達があった。仕方ないから、もう制服に着替えていた被身子に道案内を頼み、学校に来た。

 他の生徒が一切見当たらない中で校門を二人で潜ると、その場に居合わせた担任に職員室まで引っ張り出された。ちなみに被身子はその場で帰宅を命じられたが、それは儂が止めた。現状、被身子を一人きりで外に出す訳にはいかん。悪党の狙いが儂である以上、被身子に呪霊が差し向けられる可能性は零じゃないからじゃ。その旨を担任に説明すると、同行することが許可された。被身子は、非常に複雑そうな顔をしておった。

 

 何故儂だけが出席するよう命じられたかと言うと、学校側が儂に呪霊対策について相談したかったからじゃ。教師達は誰一人として呪霊を見ることが出来ん。しかし悪党(う゛ぃらん)連合は呪霊を使役している。そして呪霊は、機械では探知することが出来ぬらしい。

 ……つまり、幾ら警備を厳重にしたとしても校舎に呪霊が侵入することを学校側は防げない。じゃから呪力を持ち、呪霊について知っている儂の協力が欲しいという訳じゃ。

 

 これについては、協力するしかない。雄英には沢山の子供が通っておる。そして子供を見殺しにすることは、儂の主義に反するからの。

 

 それはそれとして。この学校は鼠が校長先生をやっておる。(まこと)か? それ、真か? 鼠の呪霊かと思って、つい祓いそうになったわ。

 

 

「……それで、廻道。何か呪霊に対して対策はあるか?」

 

 

 用意された椅子に座って鼠の校長を見詰めていると、担任の一声で話に引き戻された。儂が出席させられたのはこの議題の為じゃ。どうやら呪霊への対策が出来なければ、学校を再開する訳には行かないらしい。

 

 ……呪霊への対策、か。正直に言えば、一つしかない。それが許可されるとは思えぬが、言うしかないじゃろう。

 ああ、被身子。そんな不安そうな顔で見るな。儂は大丈夫じゃから。

 

「一昨日も話したが、呪霊は呪力や呪術でしか祓えん。例外はあるが、基本的に呪力の無い者に呪霊は見えんしの。

 じゃから、儂が全て祓う。まずは今日一日で校舎内の呪霊を全部祓いたいんじゃが……」

「呪霊退治を申し出てくれるのはありがたいが、それを許可する教師は居ないよ」

 

 そうじゃろうな。教師からすれば、子供一人に危険を背負わせるようなものじゃ。納得は出来なくて当然。じゃけど、他に良い案は思い浮かばぬ。と言うより他に手がない。

 じゃから取り敢えず、儂が今居る呪霊を祓い、新たに発生した呪霊や差し向けられた呪霊も祓う。この線でやっていくしかないと儂は思うぞ?

 

「教師が呪力を扱う方法を模索するべきなのさ。何か手段は?」

 

 ……おお。鼠が喋りおった。奇っ怪じゃのう。何で鼠が喋れるんじゃ? これも個性か? 個性は動物も持つのか? 本当に個性は何でも有りなんじゃなぁ……。それはそうと、何故担任の肩に乗っているんじゃ? もしや相澤先生が飼っているのか……?

 

「無いのぅ。まず、お主らに呪力は無い。いや、有るには有るんじゃけど、それはほんの僅かでな。呪術的には無いと言って良い」

 

 そもそも、呪力を一定以上有しているなら呪霊が見えるしな。呪術師になるなら、呪霊が見える事が前提条件じゃ。術式の有無については、この際置いておく。

 まぁ一応、呪霊を見る道具と呪具があれば呪術師として活動することは出来なくもない。が、これは推奨出来ないのぅ。呪力が無いと言うことは呪いへの耐性が無いと言うことじゃからな。天与呪縛で一切呪力を持たない者は話が別じゃけど、そんな人間がこの時代に居るとは思えんからな。

 

「呪力の無い者は呪霊が見えん。祓うことも出来ん。残念ながらそういう理なんじゃよ。

 じゃから、儂がやる。それを納得して欲しい」

 

 大人達が一斉に顔をしかめおった。誰一人として、儂の提案に頷こうとしない。隣の椅子に座っている被身子だって、快くは思っていない。そんなに不安そうな顔をしないでくれ。仕方ない……。どれ、抱き寄せて頭を撫でてやろう。これで少しは安心してくれ。ほれほれ笑わんか。

 

「ヘイヘイ、デストロイガール。呪霊が見る道具とか無いのか? 例えば……グラサンとかゴーグルとかYO」

 

 ……相変わらず、この英語教師はうるさいのぅ。ぷれぜんと・まいくとか言う名前じゃったか? あと、その呼び方は止めろ。人を破壊の化身みたいに呼ぶな。失敬な奴じゃな。

 

「お主が言うような物は個人的に作成中じゃが、完成には遠すぎるのが現状じゃ」

「作れんのかよっ!?」

「試しに作ってる最中じゃ。言っておくが、量産は無理じゃぞ。そもそも完成しておらんし、出来るのは何年先かも分からん」

 

 もう呪具を作り初めてから一年以上経っているが、完成する気配がまるで感じられん。下手をすれば十年程の歳月が必要になるじゃろう。そもそも呪具とはそういう物でもある。

 

「残念じゃが、儂に呪具作成の才はない。期待しても無駄になるじゃろうから、止めておけ」

「廻道少女。その呪具というのは?」

「呪力の込められた道具や武器のことじゃな。作るのには呪力が要る」

「結局、何をするにも呪力が必要ってことか……」

 

 そうじゃ、おおるまいと。結局呪霊をどうこうしようと思ったなら、絶対に呪力が必要になる。この力を持っている者は、雄英には儂しかおらん。今後呪力を持った者がこの世に産まれてくるかもしれないが、それを頼りにすることは出来ない。今ある問題を解決するには、今居る呪術師が動くしかないんじゃよ。

 

「個性デ呪霊ヲ見ルコトハ出来ナイノカ?」

「それについては可能じゃ。儂の母は、霊能と言う個性を持っていてな。呪霊が見える。

 ただ、見えるだけじゃな。祓うことは出来ん」

「……ソウカ」

 

 もしかしたら何処かに呪霊が見えて呪霊を祓える個性持ちが居るかもしれないが、そんな者を探すのは間違いなく大変じゃ。しかもその間、ずっと学校を休校にする訳にも行かないじゃろうし。

 結局。雄英は呪霊対策がまったく取れん。儂を使う以外に方法が無いと言って良い。

 

「廻道。USJ襲撃の際、お前が相手にしていたのは呪霊で良いんだな?」

「そうじゃな」

「あのゴキブリは、呪霊の仕業か?」

「そうじゃな」

「今後そのような呪霊が現れる可能性は?」

「無いとは言い切れん。じゃがまぁ、あの手の呪霊などそうそう出てくるもんじゃないからの。そこまで警戒する必要は無いじゃろうて」

 

 平安時代ならばともかく、この時代で特級を見たのは一昨日の一度きり。一級程度ならば何度も見てきたが、特級はまるで見掛けることがない。

 じゃからと言って、油断は出来ぬがな。特級を見掛けぬ理由が、あらゆる特級が悪党の支配下に置かれているなんて事態だった場合は最悪の状況と言って良い。儂一人で対処出来る範囲には限界があるからの。幾ら儂でも、特級に数で攻め込まれたら勝つことは難しい。恐らく、命を費やすことになる。

 

「ひとまず、校舎内の呪霊を祓っても良いかの? 場合によっては、ここでの会話が悪党に筒抜けになるぞ」

「……」

「すまんがお主らの了承は待たん。時間の無駄じゃ。

 以後、呪霊の対応・対策は全て儂に任せよ。一人でやれる範囲は限られておるが……やれるだけの事は、やっておく」

 

 校舎内の呪霊を雑魚一匹残らず祓うのは骨が折れるじゃろうが、今日一日を使えばやってやれん事じゃない。その間被身子を連れ回すことになってしまうのは、申し訳なく思う。呪霊狩りなどに付き合わされるぐらいなら、勉強でもしていた方がこやつにはよっぽど有意義な時間じゃからな。

 

 

 

 









今回の話でトガちゃんと大喧嘩させようかと思いましたが、止した方が良い気がしたので止めておきます。結果、トガちゃんが抱き寄せられて頭撫で回され続けるお人形に……。
でもいつかはすると思うんですよね、喧嘩。だからその時はどうか見守ってあげてください。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ

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