待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「もう始まってるか?」
くらすめぇと達と他愛無い雑談等で盛り上がっていると、玄関が開いた。寮にやって来たのは、相澤じゃ。それと。
「とりっくおあ……とりとー……?」
「違う混ざった」
「サンタ服のエリちゃん!!!」
さんた服を着た、えりじゃ。赤い衣に帽子を纏って、おめかししている。可愛らしいものじゃと思う。現にくらすめぇと達はえりの姿を見るなり騒ぎ出し、それぞれが駆け寄って話し掛けに言ってるぐらいじゃ。
えりの姿を見るのは、随分と久しぶりな気がしてならん。ここ最近、忙しくて会いに行けなかったからのぅ。そこは申し訳無く思う。……よし、今晩は時間が許す限りは一緒に遊ぶとしよう。何をしようかのぅ?
「んふふ。エリちゃんカァイイ! ちっちゃい頃の円花ちゃんを思い出すのです……♡」
「……そう言えば昔、こんな格好をさせられたのぅ……」
あれは確か、被身子と出会ってから最初の
「えり。とりっくおあとりとー」
「まどかさん……! とりっくおあとりとー!」
えりの前でしゃがみ込むと、えりが小走りで駆け寄って来た。ので、帽子越しに頭を撫でたり、頬を撫でたりしてやる。そしたら嬉しそうな顔をして、儂の手を掴んで来た。その時。
「エリちゃん、お久しぶりなのです!」
「ぐえっ」
「ひみこさん……!」
被身子が後ろから伸し掛かって来た。全体重を掛けるな、全体重を。重たいじゃろ。肩を掴んだり頭に顎を乗せるのは良いが、背中に胸を押し当てるんじゃない。えりの手前、過ぎたせくはらは駄目じゃからな? まっこと、いかんからな?
「……元気にしてたか? 最近は会いに行けなくてすまんのぅ」
「まどかさんは、いそがしいって。だから、……へいき」
「そこはわがまま言って良いんじゃぞ。えりが望むなら、もっと会いに行くとも」
「……ほんと?」
「うむ。幾らでも遊ぼうな」
「もぅ……。ほんと子供にはだだ甘なんですから。もっとトガも甘やかしてくださいっ!」
「既に甘やかしとるじゃろっ」
えりの相手をしていると、被身子が後ろから構えと主張してくる。くっ付くのは構わんが、後ろから押すんじゃない。えりを巻き込んで転んだらどうするじゃ、たわけ。まっこと、仕方ない奴なんじゃから。後で散々甘やかしてやるから、少しは大人しくして欲しいものじゃ。
「エリちゃん、メリークリスマス! 美味しい料理が沢山有るので、遠慮せず食べてってくださいねぇ」
「……うん。たくさん、たべる」
「んふふ。沢山食べておっきくなりましょう! 好き嫌いしたら円花ちゃんみたいにちっちゃく育っちゃうので、要注意ですよ? 特に牛乳はちゃんと飲みましょう!」
「は? じゃから牛乳と身長は関係無いじゃろ……!」
「まどかさんがちっちゃいのは、牛乳のまないから……?」
「違うぞ? 違うからな??」
おい被身子。えりに余計な事を教えるのは止さぬか。身長と牛乳は関係無いじゃろ。無いったら無い……! しかし、かるしうむ……は体に大事じゃと聞く。骨を強くするんじゃよな。じゃったら、えりはしっかり飲むべきじゃろう。身体作りは大事じゃ。別にえりが気にする必要は何処にも無いと思うが、栄養を取って損することは無いからの。
「さぁさぁ! エリちゃんも来たことだし、もっと楽しもーぜ!」
「あ、砂藤くん。アップルパイって焼けます? エリちゃんが好きなので!」
「オッケー、任せな!」
「お菓子も料理も作れるシュガーマン……!」
騒々しさが増していく。みんな笑顔じゃ。それを嬉しく思う。たまには、大勢で騒ぐのも良いものじゃ。
子供達が騒いで楽しんで。そんな光景を見るのは、悪くない。世の中、こういう光景が当たり前に溢れていれば不幸な子供なんて何処にも居ないじゃろうに。世界平和なんてものは望まんが、せめて子供だけは自由に笑顔で過ごせる世界になって欲しいものじゃ。
まぁ、そんな世界は今も昔も訪れない訳じゃけど。じゃから儂は、助けられる範囲しか助けない訳で。
「よし、えり。何から食べたい? 儂が取ってやろう」
背中に被身子がくっ付いたまま立ち上がり、えりを抱え上げる。……む、少し重くなったか? 抱き心地が僅かに変わった気がする。どうやら、ちゃんと飯は食べてるようじゃ。感心感心。もう少し肉付きが良くなっても良い気がするが、太る太らぬも才能の内じゃからの。子供に肥えることを強いるのは違う。
「エリちゃん。廻道には取らせない方が良いよー。ポンコツだから」
「ぅ、うん……。まどかさんは、ぽんこつ……!」
「エリちゃん、もっと廻道ちゃんに言ってあげてね……! あ、廻道ちゃん以外には言わない方が良いけど!」
「は? おい芦戸、葉隠……! 誰がぽんこつじゃって!?」
誰がぽんこつじゃ、誰がっ。えりまで儂をぽんこつ扱いしおって……! 幾ら子供でもそれは許さんが??
なんで昔から、どいつもこいつも儂をぽんこつ扱いするのかっ。解せぬ!!
◆
えりに料理を取り分けようとすると、全力でくらすめぇと達に止められたり、全員でくりすますそんぐ……を口ずさんだり。今宵はとにかく騒々しく、じゃけども楽しい。まぁたまに被身子がせくはらして来て、またも座敷牢に入れられそうになったりしたが。
砂藤謹製のあっぷるぱいは、中々じゃった。中々。りんごが好きなえりは大喜びで、同じく林檎好きの常闇と二人並んで黙々と食べておったわ。えりは、だあくしゃどうとも遊んでいた。緑谷も巻き込んで、だあくしゃどうに抱えられながら宙を飛んだのには流石に肝が冷えたが。まぁでも、えりは喜んでいたから良しとしよう。
そうこうしている内に、そろそろ贈り物交換をしようなんて話になった。そんな事をするなんて、儂はまったく聞いとらんが? それと、被身子は何処に消えた?? 何が「じゃあ準備してくるので!」じゃ。いったい何を企んでいるのやら……。
ところで、常闇。貴様、その模造刀はなんじゃ。やたらと大きいな? どうしてお主は、そういう変な物を人に贈りたがるのか。お陰で実家の押し入れには、処分にすら困る模造刀が何振りか置きっぱなしなんじゃけど??
「という訳で、みんなリボンは持ったな!?」
居間の真ん中。わざわざ
「じゃあみんな行くよー。せーーの!」
芦戸の音頭で、全員が手にした
……で。何故か儂のだけ重いんじゃけど? おい、何じゃあの一際大きな箱は。人ぐらいじゃったら入れそうなぐらいの箱だけが残ってるんじゃけど?
「……なぁ緑谷。あれは何じゃ?」
「えっ!? えっと、うーーん……。あ、開けてみたら良いんじゃないかな……?」
「そ、そうか。ところで被身子は? さっきから姿が見えんのじゃけど??」
「さ、さぁ……? 何処に行ったんだろうね??」
質問するなり、餅を持った緑谷が急に挙動不審になった。おい、何で露骨に顔を逸らすんじゃ貴様。よくよく周りを見てみると、えり以外も呆れた面をしているの。儂が顔を向けると、どうしてか直ぐに顔を逸らすし。
……あぁ、うむ。あの箱、開けたくないのぅ。何となく先が見えたわ。儂だけ選ぶ権利が無かったし、被身子の姿は何処にも見えんし。何をやっとるんじゃあやつ。まったくもぅ、目を離すと直ぐに訳の分からん事をするんじゃから。仕方ないのぅ……。
「で? 何をしとるんじゃお主は」
やたら大きな箱に近付いて、取り敢えず開けてみる。そしたら、ほら。
「プレゼントはトガです! 受け取ってくださいっ!」
「ぐえぇっ」
中から被身子が跳び出て来て、儂を押し倒した。いや、抱き締め倒した。それはもう勢い良く。お陰で盛大に頭も背中も打った。お、お主なぁ……! 危ないじゃろっ。何度儂に跳び付けば気が済むんじゃ……っ!
「じゃ、プレゼント交換終了〜〜。渡我先輩、箱片付けるからどいてどいて」
「何だこの茶番……」
「くそっ、どさくさに紛れてオイラが選べば良かった……!!」
「いやお前それ、廻道にぶっ殺されるから止めとけって……」
被身子が訳の分からん事をするものじゃから、くらすめぇと達は全員盛大に呆れておるわ。何なら儂も少し呆れとる。どうしてこう、儂の許嫁は奇行に走ってしまう時があるのか。何とかならんかのぅ、これ。何ともならんか。被身子じゃもん。
「お主なぁ。既に儂のものじゃろ」
「そうですけどぉ! 良いじゃないですか、円花ちゃんは私が一番嬉しいんですから!」
……それはまぁ、そうなんじゃけど。そうなんじゃけども、じゃからってなぁ……。お主は、何度仕方のない奴じゃと儂に思わせるつもりじゃ? まったく。どうしようもない奴じゃな。そんなお主が一番愛おしい儂も、どうしようもない自覚は有るが!
って、んん……。こら、
「んふふ。この後は、二人で楽しみましょうねぇ♡」
「……今夜は寝かさんからな?」
「えへへぇ、それは望むところなのです!」
で。この後。儂と被身子は呆れた面のくらすめぇと達に、またも座敷牢へと放り込まれた。えりは座敷牢を見て不思議そうにしていたの。余計な知識を植え付けてしまった気がしてならん。
……。学ばんなぁ、儂も被身子も。じゃって愛おしいし、そう思ったら歯止めが利かないんじゃもん。こればっかりは許して欲しい気がするんじゃけどなぁ。もう少しこう、寛容になってくれても良いんじゃないのか??
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ