待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「……頼皆……?」
「そうだ。皆に頼ること無く生きれる呪術師になるように」
「……そう……」
ん、んん……? 一体全体、これはどういう事なんでしょうか?
今朝は目覚めてから異常なぐらい頭が痛くて、悪質な風邪でも引いたのかなってトガは考えていました。動けなくなるぐらい痛くて、最悪の寝起きだったのです。それから円花ちゃんが起きて、心配させちゃって……。痛みに悶えてる内に輪廻ちゃんがやって来て、徳利に入ってたお水を飲ませてくれたところまでは覚えてます。
でも、気が付いたら私は知らない部屋に居て、知らない人達が私を覗き込んで喋ってるわけで。その人達は何か着物を着ていて、髪型とかすごく昔っぽい感じで。時代劇の世界にでも来ちゃったのかな? と思ってしまうぐらいには。
ここは何処ですか? と聞くだけ聞いてみました。そしたら私の口から出たのは、赤ん坊の泣き声で。ん、んん……? なんか、何でしょうこれ……。体が勝手に動いて、勝手に大声で泣き始めて。んんん……??
あっ。二人の内の一人が、部屋から出て行きました。男の人です。その後ろ姿に見覚えが有ったような気がして、もっと見たいんですけど首が動かせませんし……。いや、動いてるんですけど私の意思では動かせないと言うか……。
視界が揺れて、体を持ち上げられたかのような感覚があります。これ、抱き上げられてます? って、あ……。
暗い顔をした女性が、私を見てます。すっごく綺麗な顔立ちの人で、輪廻ちゃん程じゃないけど負けないぐらいの美人なのです。何もかも諦めたような目をしていて、だけど優しい感じがして。真っ黒な瞳に僅かに映る私の姿は、明らかに赤ん坊なのです。はい、それはもう立派な赤ちゃんです。えっと、つまり……?
「……皆に頼らない生き方なんて、しなくて良いのよ。貴方は頼皆。加茂頼皆。いずれ、加茂家の当主になるの。
……だから。頼れる皆の、そして皆を頼れる生き方をしてね」
……ぁ……。いや、えっと……。えぇっと……??
つまりこれってそういう事……ですよね? 何でこうなったかは、さっぱり分かりませんけど。
でも、でも……。
これ。きっと、ヨリくんの記憶なのです。
◆
原因はさっぱり分かりません。だけど確かなのは、トガは今、ヨリくんの記憶を見てます。正確には追体験……ですかねぇ。何でかは知りませんけど、何かヨリくんの体でヨリくんの人生を一から見る羽目になってるんですよね。体はちっとも動かせません。喋ることも出来ません。でも考えることは出来ます。
つまり。トガはヨリくんの頭の中に居て、ヨリくんの人生をヨリくんの目線で見てるんです。あと、その時ヨリくんが何を感じたとか何を思ったとか、そういうのが全部ダイレクトに伝わってきます。
それと、分かったことがもう一つ有ります。円花ちゃんが牛乳嫌いに育った理由が分かりました。はい、ぶっちゃけトガも赤ちゃんとしてお世話されるのは辛いです。綺麗なお母さんのお乳を飲むのはですね、かなりメンタルに来ます。ほんっっと辛いです。でもこれはヨリくんの記憶を一方的に見せられてる感じなので、抵抗も出来ません。
……なので。トガはヨリくんが離乳食を与えられるまで、毎日毎日お腹が空いたらヨリくんのお母さんにお乳を貰うって食生活でした。これは、はい。もう牛乳は飲めませんね。嫌いな飲み物に、牛乳が堂々のランクインです。今後、円花ちゃんに牛乳を勧めるのは割りと控えます。はい、割りと。嫌いだからって一切飲まなくて良い……なんて訳でもないので。こう、栄養的に。
それで、ですね。トガは既に四年もヨリくんの記憶を体験してます。ぶっちゃけ、無茶苦茶チウチウしたいです。ほんっともう、チウチウしたいです。でもこの体は動かせませんし、こんな風になった原因は全く分からないですし。そもそもどうやったら現実に帰れるか分かりません。何か夢を見てるような感覚が有るような無いような……。うぅん……。
もしかしてトガ、昏睡してます? で、都合の良いヨリくんの夢を見てる……とか? 最初の数時間で思ったことですけど、早く円花ちゃんに会いたいです。既に限界です。下手するとこれ、ヨリくんが死んじゃうその時まで続きますよね? それはもう、どうにかしちゃいそうなのです。いえもう、どうにかしてる気がします。
……チウチウの事ばっかり考えてるとほんとに気が狂いそうなので、無理矢理意識をヨリくんの記憶に向けます。そんな日々を繰り返しているわけですが、ええっと、はい。ひとつ言える事が有ります。これだけは言わせてください。思わせてください。ヨリくんが、円花ちゃんがどう思うかは分かりませんけど。でも、言います。
呪術界って、さいてーなのです……!!!
トガちゃん「呪術界はクソ」
輪廻が言ってた、かなりしんどい事のひとつ。トガちゃん、頼皆の人生見るってよ。
頼皆と言う名に込められた意味は二つ。クソ当主の言った皆に頼らぬ呪術師になれるように。そして母親の頼れる皆の、そして皆を頼れる呪術師になれるように。
どちらも要は立派な呪術師になれってことですが、温度差が天地。
頼皆の記憶を六十年分も書くことは無理なので、今後要所要所をちまちま書いていくつもりです。彼にとっての転機や、破滅となる部分は書いていけたらなと。そしてそれを見たトガちゃんの様子も書いていけたらなと。
次回は円花視点です。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ