待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
連れ戻された。寮に、被身子が眠る部屋に。逃げ出そうにも、常闇が目を光らせている上にだあくしゃどうが儂を掴んで離さん。こやつが儂を迎えに来たのは、母に追うよう頼まれたから……じゃそうじゃ。母め、余計な事を。父にまで儂の居場所を伝えおって。個性による予知夢は、凄まじい力じゃの。
……なんて、考える意味が何処に有る? 被身子は、まだ眠ってる。顔色は良くなっているが、それでも目覚める気配が無い。それに今は、被身子の顔が……姿が見れん。見たくないし、見て良い資格も無い。
改めて、今の被身子を見て気付いた。被身子は呪われている。儂の呪力によって、呪われてしまっている。
どうして、儂は考えもしなかった? 被身子に血を与え続けたらどうなるのか、何故一度も考えずにここまで来てしまった?
儂は、儂は……求められるがままに血を飲ませてしまった。何の疑問も抱かず、ただ被身子が欲しがるから、喜ぶから……なんて理由で。
赤血操術者の血には、当然呪力が込められている。特に体外操作をする際は、はっきりと血に呪力が詰まっている。なのにその血を、儂はよく被身子に飲ませていた。外でなんかは、いったん被身子を落ち着かせる為に……指先から血を出すことで。或いは、被身子を興奮させたくて。……最低じゃ。
首に噛み付かれるときは、術式は使っとらん。その時は血に呪力は無い。と、思いたい。そうであって欲しいと願ってしまうのは、逃げたいからじゃ。儂が被身子を呪った現実から、少しでも目を逸らしたくて……。
嫌じゃ。もう、嫌じゃ……! 誰か儂を殺してくれ。それが出来ぬのなら、儂は自分で死ぬから邪魔をしないでくれ。頼むから、もう……!
「輪廻さん。渡我先輩には、一体何が……?」
「事実を伝えると、円花がうっかり呪っちゃったの。でも、大丈夫。今の被身子ちゃんはね、円花の呪力が染み付いて……結果脳を中心に体が変化してる真っ最中。呪具になる感じかしら? 何にせよ、夜になったら目覚めるわ」
「……それの、どこが大丈夫なんじゃ……!」
母の言うことは、つまり。被身子は、呪物になったと言うこと。儂という呪力に浸かり続けて、呪物になってしまった。いや、呪物になろうとしている。儂はそれだけの事を、この十二年でしてしまった。四歳の頃から、今日まで。ずっと血を与えて、知らず知らずの内に呪力に浸かせて……!
「大丈夫よ。眠ってるのは今だけで、今後はいつも通り普通に過ごせるわ。ただし、色々と見えるようになっちゃうけどね。呪力とか、呪霊とか……他にも色々と」
「何で、止めてくれなかった……! どうして儂を止めなかった!!」
違う。止めろ。今、母を責めたって何にもならん。この状況を作り上げてしまったのは儂じゃ。儂が被身子を、こんな風に呪ってしまった。なのに、母に責任を求めるのは違うんじゃ。悪いのは儂で、母じゃない。そう分かっとるのに。分かって、居るのに……っ。
「言ったところで、貴女も被身子ちゃんも私の言う事を聞かないでしょ? それに被身子ちゃんが大好きな事だもの。否定なんて、私は絶対にしない。
……貴女が、そうであるようにね。円花」
「っっ」
「誤ることが間違いって訳じゃないのよ。大事なのは、そこからどう取り返すのか。
……貴女が馬鹿な真似を考えてるのが筒抜けだから言っておくけど、この件で円花に決定権は無いわ。全部被身子ちゃんが決めることよ。大人しく目覚めるのを待ちなさい」
……それは、……そう……なのかもしれん。間違えてしまった儂をどうするかは、被身子が決めることかもしれん。でも、じゃけど。被身子が何を言ったとしても、儂は儂を許せない。許してはならん。許せるものか。
「これは持論だけど、愛ほど歪んだ呪いは無いのよ」
「最初から、儂が呪ってたとでも言いたいのか……?」
「そうね。そうだったのかもね。貴女があの日、被身子ちゃんに噛まれた時からそうだったのかもしれない」
……もし、そうだとするなら。もしも、母が今言った通りなのだとしたら。きっと儂は、最初から被身子に出会うべきではなかった。出会わなければ、あの日……儂が話し掛けさえしなければ。こんな未来は、訪れなかったと言うのに……!
何なんじゃ、儂は……! どうして被身子を、どうして……!!
「……これからどうするかは、被身子ちゃんと決めなさい。それまでは大人しくしてなさい。
常闇くん。引き続きお願いね? 目を離すと何しでかすか分かったもんじゃないから、そのままとっ捕まえといて」
「はい。俺が見張っておきます」
「ごめんなさいね。授業が有るのに」
「いえ。友として、今の彼女は放っておけないので」
「……ありがとう。貴方が居てくれて良かった。
それじゃ、円花。貴女は大人しく待ちなさい。インターンは初日からサボることになるけど、それは後で自分で謝りなさい。逃げるなんて楽な選択肢は、私もお父さんも許さないから」
待って、居ろと……? 被身子が目覚めるまで、此処に居ろと……??
無理じゃ。そんな真似は出来そうにない。此処に居るだけこんなにも苦しいのに。こんなにも胸が痛いのに。これから起きるであろう事が、怖くて怖くて堪らないのに。儂はもう、被身子と一緒に居てはならんのに……!
泣いて、どうにかなる問題ではない。もう事は起きてしまった。儂は被身子を呪って、結果被身子を……変えてしまう。人で在りながら、人ではない何かにしてしまう。生きた呪物に、してしまう……! いや、下手をしたら……被身子はもう……!! もう……!!
泣くな。泣くな、泣くな。そんな資格は儂には無い。悲しむことなんて、許されない。この現実を、どうしようもない現実を、黙って受け止めるしか無いんじゃ……!
抗うことなど、許されぬ。そんな権利すら、儂には無い。呪術師として、もう生きては行けない。被身子を呪った儂が、呪術師で在って良い筈が無いんじゃ……!!
「……きっと渡我先輩は、廻道を責めない。幾ら廻道が自罰的になったって、それを許さないと思う」
「……っ。お主に、何が、分かる……っ!」
「分からない筈が無いんだ。俺が一番廻道を、そして渡我先輩を間近で見てきたんだから。
……廻道。自責や自罰をする前に、まずはちゃんと先輩の話を……」
「儂が呪ったんじゃぞ!! 愛してるのにっ! 無くてはならない程に愛してるのに! 儂が、儂が……!!」
誰が何を言おうが、どんな気休めを口走ったとしても。儂が被身子を呪ったという事実は変わらない。常闇が何を伝えようとしたところで、この現実は変わらないんじゃ。
……なのに、何故。儂に何かを語り掛けようとするのか。何を言ったって、何一つ変わることは無いのに。
「独りで十字架を背負うのは、止めてくれ。そんな事したって、きっと何にもならないから」
「じゃあどうしろって言うんじゃ……っ! いい加減な事を口走るなっ! 儂は、儂は……!!」
「こういう時こそ、頼ってくれ。俺は何も出来ないかもしれないが、少しでも力にならせてくれ。……廻道が背負えないって言うなら、共に背負おう」
……っ。勝手な事を、口走るな……!
共に背負う、じゃと? そんな真似をして、いったい何になる? そんな事を口走るぐらいじゃったら、儂が掛けてしまった呪いを解いてくれ。何も出来ぬくせに、何も知らぬくせに、儂よりも弱いくせに……! 何が共に背負う、じゃ! そんな真似は誰にも出来んっ。これは儂が、独りで背負わなきゃならないことじゃろうがっっ。
そうじゃ……! 呪いを、解かねば。儂が掛けた呪いなら、何とでも出来る筈なんじゃ。そうでなければ、何が呪術師じゃっ。
被身子に、触れる。震える手で、触れてみる。こうして触れる資格なんて無いと儂が一番分かっているから、どうか許して欲しい。儂が解くから。どうにかするから。どんな罰でも受けるから。
じゃから、じゃから……っ!
「―――っっ」
頼む、頼む。頼むから、頼むから……! 儂に呪いを解かさせてくれ……!
どうして。どうして儂は、
反転術式を人に施すことが出来れば、被身子を蝕む呪いを解ける筈じゃ。ながんじゃって、助けられる筈じゃ。なのにどうして、儂にはこれが出来ない? どうしてこれだけは出来ない……!? 幾ら反転術式を鍛えても、どれだけ精度を上げようが効率を良くしようが、何でこれだけは……!!
―――結局。儂はどれだけ反転術式を回そうが、それを外に出すことは叶わなかった。横たわる被身子の前で、自分の愚かさと不甲斐無さに向かい合い続けて。
被身子が起きるまで、ただ手を握ってることしか出来なかった。
赤血操術者が体外に出した血液飲んで無事なわけ無いだろ!! って事でトガちゃんは呪われました。愛ほど歪んだ呪いは無いですね。
ちなみにトガちゃんが幼い頃に交通事故に遭うと特級過呪怨霊トガヒミコ√で、雄英一年だった場合今起きてることが早まるに早まって円花が雄英入る辺りで呪術師√でした。
普通科二年なので、クリスマス翌日に円花に呪われる√です。
円花に反転術式による他者の治癒は体得させません。絶対に。自業自得でメンタルがったがたの円花です。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ