待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

43 / 430
雄英体育祭。おあずけ

 

 

 

 

 

 雄英校舎に居た呪霊は、儂が根こそぎ祓った。被身子に道案内されながら校舎の中を隅から隅まで見て回るのは、中々に大変じゃったよ……。

 まぁ、その甲斐あって校舎の中で呪霊を見ることは無くなった。ただ……演習場が残っとるんじゃよなぁ。

 ゆうえすじぇいとか、ぐらうんどべえたとか、その他諸々。こちらに関しては、後日祓って回ることになった。結局校舎を見て回るだけで、一日が消えたからの。時間は有限じゃから、仕方ない仕方ない……。じゃから演習場の方も早いところ済ませて欲しいなどと儂を急かすな。貴様等に言ってるんじゃぞ教師共。あまりそんな真似をすると、儂を心配した被身子が顔を曇らせるから止めてくれ。しまいには貴様等を呪うぞ。本気じゃからな。被身子から笑顔を奪うものは、何であれ誰であれ儂は許さんと決めている。

 

 教壇に立つ担任を静かに睨むと、無視された。昨日、校舎内の呪霊を儂が祓い尽くしたことで学校は再開した。聞くところによると、演習場を使った授業は当分行うことは出来ないらしい。

 ……早いところ、雄英敷地内の呪霊は祓い尽くさねばなるまい。呪い如きが原因で、子供が学ぶ機会を失うのは良くないからの。

 

「雄英体育祭が迫っている」

「クソ学校っぽいの来たぁああああっ!!!」

 

 うる、さいのぅ……っ! 何をそんなに騒いどるんじゃ、こやつ等は。何? 体育祭?

 ほう……。少しは楽しめるかもしれんの。もっとも、呪力無しでも儂は小学校・中学校の体育祭を蹂躙したが。この体、小さい割りに良く動くんじゃよ。

 ……とは言え、今年の体育祭は英雄の卵が勢揃いしておる。それを考えると、少しわくわくしてくるの。呪い合うのが一番ではあるが、勝負であるなら儂は何だって楽しめる。負けて楽しいなんてことは無いがな。

 

 うむ。少しばかり楽しみではある。もしかしたらこのくらすの中に、儂より強い奴が居るかもしれんからの。……いや、恐らくそれはないのぅ。流石に高望みが過ぎるか。

 

「しかし、先生よ。それで良いのか? この学校は悪党に襲われたばかりじゃろう?」

 

 雄英体育祭。確か国中が熱狂するような催し物じゃったな。小さい頃、一度てれびで観たことがあるのぅ。少しだけじゃが。

 まぁそれを行うのは構わん。参加するのもな。じゃけど、この学校が悪党や呪霊に襲われたのは事実。被害が少なかったとは言え、堂々とやって良いものなのか?

 

「逆に開催することで雄英のセキュリティが万全であることを示すそうだ。警備は例年の五倍増やす」

 

 ……阿呆か? さては阿呆なんじゃな?

 警備を幾ら増やしたところで、呪霊はそれを通り抜けるぞ?

 

「という訳で、廻道。お前には呪霊対策で会場警備を担当して貰う。悪いが、体育祭は不参加で頼む」

 

 なるほどのぅ。確かに儂が警備に付けば、呪霊が差し向けられたとしても問題は無い。無いんじゃけど……。

 

 は? 儂は体育祭に参加出来んの? (まこと)に? 儂だけ参加出来んの??

 

 ……。…………。

 

 やじゃやじゃ!! 儂だって参加したい!!

 

 被身子がお弁当作ってくれるんじゃぞ!? 運動会の時のお弁当はいつもの数倍美味しいんじゃぞ!? それを貴様……っ! 儂から奪うつもりか……!?

 許さん、許さんぞ……!! おやつだけではなくお弁当まで……っっ!!

 

 呪ってやる……! 末代まで呪ってやるぞ、相澤ぁ……っ!!

 

「ついては廻道。呪力と呪霊について、クラスメートに教えろ。この情報は、全員で共有しておくべきだ」

 

 知らん。知らん知らん、知らんっ! 貴様がやれば良かろう!? 儂は知らん!!!

 

 

 

 

 

 

 結局。儂はまた呪霊とは何か、呪力とは何であるかを人に向かって説明することになった。殆どのくらすめえとは驚いていたが、舎弟だけは納得しておったようじゃ。あやつはこのくらすの誰よりも早く、身を以て呪力を体感しておる。幾ら爆破を使おうが、呪力を纏った儂に掠り傷しか負わせられなかったからのぅ。

 

「いや、ほら……廻道さ。そんなに拗ねなくても……」

「……」

「雄英体育祭。まさか廻道さんだけ参加させられないなんて。警備の都合とは言え、勿体無いですわ……」

「……」

「円花ちゃん、機嫌直して。卵焼き食べる?」

「……」

 

 昼休み。儂は耳郎、八百万、そして梅雨に囲まれながら教室で昼食を摂っておる。今日も被身子の作ったお弁当が美味である。美味なんじゃけど、体育祭に参加出来ぬのは不満じゃ。大いに不満じゃ。どうして英雄(ひいろお)基礎学と言い、雄英体育祭と言い、お預けされなければならんのか。

 会場警備にどうしても儂が必要なのは分かる。呪霊対策として儂を使わなければならんのも、分かる。教師とて苦渋の決断じゃったそうだ。じゃからまぁ、納得している。納得しているが、感情は別じゃ。儂もう、とにかく不満なのじゃ。まっこと不満じゃ。

 

「ごめんなさい、ちょっと遅れちゃったのです」

 

 お弁当を黙々と食べ進めていると、被身子が弁当を片手に教室にやって来た。こやつ、儂が雄英に入学するなり昼休みは儂のくらすで過ごすようになった。中学の時もそうじゃったけど、相変わらず友達は作っとらんようでの。まぁ、もうそれは良い。こやつの好きは誰にも何にも止められぬ。

 それにまぁ、儂のくらすめえとと雑談ぐらいはするようになっとるしの。時折があるずとおくに儂を巻き込もうとするのは勘弁して欲しいが。

 

「あ、渡我先輩。ちょっと廻道を何とかしてくれませんか? 今朝から拗ねちゃって……」

「何があったんですか?」

「その、廻道さんは雄英体育祭に参加出来なくて。それで……」

「ケロ……。もう被身子ちゃんだけが頼りなのよ……」

 

 貴様等……。別に、儂は拗ねてなどおらぬわ。相澤をどう呪ってくれようか、今朝から考えているだけじゃ。あやつには食べ物の恨みが如何に恐ろしいか教えてやろう。儂の好物を二度も取り上げおって……。

 やはり許せん。許せんったら許せん。小僧の分際で儂の楽しみを奪うか……っ。今に見てろよ……!!

 

「まーどかちゃん」

「……」

 

 何じゃ何じゃ、飯を食ってる時に抱き付くな。そんな事では機嫌は直さんぞ。相澤は呪う。絶対に呪う。儂、あやつ許さぬ。目にもの見せてくれるわっ!

 

「もぅ、すっかり拗ねちゃって……。カァイイ……」

 

 何がじゃ。どこがじゃ。こら貴様、頭を撫でるな指で頬を突くな。食事中じゃぞこらっ。

 

「ところで、何で参加出来ないんですか? ヒーロー科なら、全員参加ですよね?」

「……呪霊対策よ。円花ちゃんを警備に使うって先生方が決めたみたいで……」

「事実廻道さんしか呪霊が見えませんし……。

 警備の為には仕方ないと思うところもあるのですけど、それでも廻道さんだけ不参加になるのはやはり……」

「勿体無いよね。A組で一番強いのって廻道でしょ? その廻道が参加しないのは、何か違う気がするなぁ……」

 

 おい貴様等。被身子に便乗して人の頭を撫でるな。飯は静かに食わせんか。

 

 

「じゃあ、ご飯食べたらみんなで直談判しに行きましょう。私も円花ちゃんが参加出来ないなんて、大いに不満なのです。だからぁ……。

 

 みんなで、プルスウルトラしませんか?」

 

 

 ……。あぁ、誰か被身子を止めい。儂の機嫌取りは良い。じゃから今すぐこやつを止めんか。

おい、耳郎も八百万も梅雨も、何を頷いとるんじゃ。貴様等、被身子が悪どい笑みを浮かべたら大抵とんでもない目に遭うんじゃぞ。主に儂が。

 

 主に儂が! 主に儂が!!

 

 

 

「んふふっ。楽しみですね、体育祭……♡」

 

 

 

 誰か止めろ。こやつを止めろ。誰でも良いから被身子を止めろっ。絶対ろくでもない事をしでかす筈じゃ! 騙されるな!! これはぷるすうるとらではない!!

 

 

 

 

 ぷるすけいおすじゃ!!

 

 

 

 

 

 

 








※アグレッシブトガがアップを始めました。円花は犠牲になることでしょう。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。