待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
分からない。分からない、分からない……! 何で、どうして……っ。どうして儂を、独りにさせてくれないんじゃ!
儂は許されぬことをした。儂は、儂を許せない。じゃから、じゃから儂はっ。もう独りになるべきだと思っているのに! 被身子の側には居られない。何より愛しくて大切な被身子を呪って、なのにどうして。どうして被身子も、母も常闇も儂を引き留めるんじゃ……!
何でじゃ。何でなんじゃ……! 頭ではそう思ってるのに。そうするべきじゃって、分かっているのにっ。それ、なのに……!
「っ、ぅう……っ。うぅう……!」
また、みっともなく泣き始めて。離れると決めたのに。なのに、被身子が引き留めてくれたことが……! 嬉しくて……!!
嫌じゃ、嫌じゃ嫌じゃ……っ。離れたく、ない。でも、離れなきゃいけない。今回ばかりは、許されない。許したくない。許してはいけないんじゃ。なのに、なのにぃ……!
儂を抱き締める被身子を、振り払うことも出来ない。流れる涙を、止めることも出来ない。どうして、どうして……っ! 何でこの体は、動こうとしないんじゃっ。ただ大人しく、被身子に抱き締められてるだけなんじゃ……っ。
「後は、任せるわね。お母さん、今日はもう休まないと。だから、後は二人で話し合って決めなさい」
「……はい。ありがとなのです、輪廻ちゃん」
「良いのよ、お礼なんて。こうなるって分かってて、何も言わなかったのは私だもの。
……常闇くん。良かったら、二人がこれからどうするのか決めるのを手伝ってあげて。二人だけにすると、二人して間違えるかもだから」
「はい。任せてください。……俺も、彼女には言いたいことが有りますから」
「お願いね。じゃあ円花、ちゃんと被身子ちゃんと話し合うこと。それと、素直になりなさい。大丈夫よ、被身子ちゃんは貴女の全てを受け止めてくれるから」
……ぐすっ。ぐすぐす……。知らん。知らん、知らんっ。母が何か言って、常闇も何か言っているが、それでも儂は知らん!
儂はもう選べない。どんなに離れたくないと心や体が叫んでも、選ぶことは出来ない。呪術師としての判断が、被身子から離れたくないと思う気持ちを全力で否定している。
「……ヨリくん。ちゃんと、話し合いましょう? これは私達がしでかしちゃった事なのです。だから、これからどうするかを……ちゃんと二人で決めるの」
母が部屋から出ていくと、被身子が儂に聞いてきた。答えなんてとっくに出ているのに、それでも被身子は……。
「ぐす……っ。やじゃ、やじゃぁ……! 儂は、儂は……っ!」
「もぅ……。ほんとに、素直じゃないんですから。何処まで行っても頑固なのです」
うるさい。お主じゃって、頑固者のくせに! 被身子も常闇も、何ならくらすめぇと達も。どうして儂の側には、こうも頑固な奴ばかりが揃うのかっ。もう、良いじゃろうが……! いい加減、儂の好きにさせてくれ。もう、もう……駄目なんじゃ……っ。
「……渡我先輩。まずは、聞かせてくれますか? 今の二人の状況について」
「んん……。それはトガもよく分かってないんですけど。確かなのは、円花ちゃんがうっかり私を呪っちゃったってことです。あと、うっかり私は呪われちゃいました!」
「うっかり……で済ませて良いとは思えませんが……。ポンコツもここまで極まると、ある種の深淵……」
「……ぐすっ。き、貴様等ぁ……! 何をふざけて……! ぅうう……っ!!」
反論したい。言いたいことは山程有る。じゃけど、この体は泣いてばかりで最後まで反論出来ん。ぐす、ぐすっ。もぅやじゃ。やじゃやじゃっ。泣いたって何も変わらないのに、泣く資格すら儂には無いのに。なのに、涙も嗚咽も止まらなくて。結局今の儂に出来ることは、被身子を抱き締めて泣き喚くだけ。情けない、情けない……! いつの間に、儂はこんなにも弱くなったんじゃ……! 泣き喚くだけで何も出来ぬ子供のようになってしまって、みっともない。
でも……、じゃけど……っ。
「それでですね、常闇くん。何とトガは呪力を扱えるようになりました! だから私としては、円花ちゃんのお手伝いがしたいんですけど……。その、円花ちゃんにとって子供を呪うことはとってもNGな事で……」
「廻道に呪われて、呪力を……? しかし、なるほど……。廻道にとってそれは、断罪すべきこと……ですね」
「……でも、私はそんな真似させたくないので。円花ちゃんから離れませんし、離しません」
「……先輩も、頑固ですね」
「世界一頑固な円花ちゃんと結婚しようと思ったら、私も同じくらい頑固じゃないと釣り合わないのでっ」
「……そうかもしれません。なら俺も、廻道の友で居る為に頑固になります」
ぐすん。ぐすんぐすん。もうやじゃ。何なんじゃこやつ等。特に被身子、好き勝手な事を宣って勝手に決めるのは止さぬか。どうしていつも、お主はそうなんじゃ……っ。そんなお主に、どれだけ儂が苦労して来たのか分かってないじゃろ。お陰で大変なんじゃからな!? 今じゃって、今じゃって……!
儂はもう、何をどうしたら良いのか分からん……!!
「私としては、これを機に呪術師になっちゃおうかなって思うのです。使い方も分かるので。
……ヨリくんは、どう思います?」
「……ぐすっ。やじゃ、お主が呪術師になるなんて嫌じゃ……!」
「でも、私が呪術師になったら円花ちゃんの負担は少しでも減らせるのです」
「やじゃぁ……っ。そんなの、そんなの望んでない……っ」
「私は、独りになって欲しくないです。健やかでも病んでても、呪い呪われても……一緒に居させて欲しいから」
それは、そんなのはっ、儂だってそうじゃっ。被身子と一緒に居られたら、それが許されるのなら……! もう、もう他に何も要らないっ。じゃけど、今はそう思うことすら許されない。どれだけ望んだって、どれだけ求めたって、儂は被身子と過ごすことは出来ない。許せないんじゃ、被身子を呪ってしまった儂が。
子供を救け、守ることを信条にしておきながら……被身子を呪ってしまうなど。唾棄すべき悪じゃ。儂は、呪詛師として裁かれなければならん。死ぬべきじゃ、終わるべきなんじゃ。そうでなければ、儂は今まで何をして来たのか分からなくなる。
「渡我先輩から離れるなんて、廻道には出来ない。……絶対に、離れちゃ駄目なんだ」
「常闇くん、たまには良いこと言うのです。そうですよ円花ちゃんっ。円花ちゃんはトガが居ないとダメダメのポンコツなんですから、一緒に居ないと大変なのです!
主に! 私が!!」
「な……にを言っとるんじゃ、たわけ……っ。ぐすっ、儂は独りで大丈夫じゃ! 大丈夫、じゃから……!」
「どこも大丈夫じゃないです。ほんとにもぅ、全然素直にならないんですから。そういうところですよ? 円花ちゃんがそんなだから、トガはとっても苦労したのです」
うるさい、ぅるさい、うるさい……っ。分かったような顔をするな。分かったような口を聞くな……! 儂がどんな気持ちで居るのか、分からないくせに……!!
「……独りになりたいくせに、全然私を離そうとしないじゃないですかぁ。これは……、体は正直ってやつですねっ」
「違、う……。これは、そんなんじゃない……っ」
今、被身子に抱き付いたままのは……単純にもう会えんからじゃ。これが最後じゃから、せめて最後くらいは思う存分抱き締めようと思っただけで。決して、決して離れたくないから抱き締めてる訳じゃないんじゃっ。これは……そう。
……。………。……………。
と、とにかくっ。別れを惜しんでる訳じゃない……! 最後じゃから、最後の
「……もぅ。分かりました、分かったのです」
「……ぅ、……む。分かってくれたなら、ひっく……。ぐすぐすっ」
「トガは明日までに円花ちゃんの本音を引き出すので! 覚悟してくださいっ!」
ぐすっ。……、は? いやおい、おいったら。何でまた、こんな時にこんな訳の分からんことを追加で宣ってしまうのか。
何が、何が儂の本音を引き出してみせる……じゃっ。そんな真似が出来ると思うな。儂の本音は、もう決まってるんじゃ。胸が痛かろうと悲しかろうと、これからを想像して寂しく思ってしまっても!
儂は、儂は……! もう、被身子とは一緒に居られないんじゃ……!!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ