待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

435 / 553
何も出来ず。

 

 

 

 

 

「ん……っ。……はぁ……♡ 少し、休憩しましょっか……♡」

「ん、ぅう……っ。はぁ、は……っ」

「んふふ。ふにゃふにゃでカァイイ……♡」

 

 ……目茶苦茶にされた。何やら酷く興奮し始めた被身子に、それはもぅ辱められた。部屋には血の臭いが充満しているどころか、布団や床が大惨事じゃ。これでもかと血を吸われたし、これでもかと犯された。お陰で、体がしんどい。息をするのも面倒なぐらいじゃ。良くないと思いつつも、あれよあれよと流されて好き放題されて、何ひとつ考えられぬぐらいに抱かれてしまった。もう儂は、こんな風にされる資格なんて無いのに。

 でも、じゃけど。こうされたいと、こうされていたいと思ってしまうのも事実で。……まっこと、どうにかしとる。呪術師として、儂は最低じゃ。同時に派手に穢されてしまったような気がしないでもない。好きな事を好きと言って、好き放題してる被身子を見てると……もはやそれでも良いんじゃないかと心が傾く。

 

 ……それで、良いんじゃろうか……?

 

 いや、そんな筈はない。被身子を呪ってしまった手前、儂はそれ相応の責任を取らなくちゃいけない。どれだけこやつを好いていようが、愛していようが、儂はもぅ……。

 

 ……ぐすん。……あぁ、もう……。情けなくて嫌になる。被身子を呪っておきながら、儂はどうしたって被身子の側から離れたくない。離れるべきじゃと頭では分かってるのに、心が、体が、離れたくないと叫んどる。

 

「……もぅ。ほんっとに、頑固なんですから。いい加減、諦めて流されちゃえば良いのですっ」

「……ん、……ふぅ……。ぜぇ……っ。そういう訳には……!」

「じゃあ、分かるまで抱くしかないですねぇ……」

「ん……っ。ちょっ、待て……! も、無理……!」

「無理じゃないですよぉ。私はまだまだいけますっ!」

 

 いや、いやいや。何でまた覆い被さるんじゃ……っ。無理じゃって。(まこと)に駄目じゃ。これ以上は身が保たんっ。ただでさえ疲労困憊なのに、これ以上好き勝手されたら死んでしまうが……!?

 頼むから止めてくれ。もう止さぬか、へんたい。馬鹿、阿呆……! 被身子のえっち……!!

 

「じゃから、待て……っ! む、無理ぃ……!」

「無理じゃないですよぉ。まだまだ元気じゃないですか♡」

「どこがじゃ……!? ひぁっ、ちょっ、ひみ……!!」

 

 覆い被さった被身子を手で押しのけようとすると、すっかり発情しきった笑みで迫られた。い、いい加減にして欲しいんじゃけど……!? こ、こら被身子……っ! 何でさっきからそんなに、儂を目茶苦茶にしようとするんじゃっ。流石に時と場合を考えてくれ……!

 

 でないと、でないと……っ。

 

 今度こそ、どうにかしてしまう……!!

 

「もう一回しましょう♡ ねっ♡♡」

「……っっ、駄目じゃって……! ん、んんぅ……っ!」

 

 噛み付かれた。反転術式(はんてん)で治した首筋が、力任せに精一杯。今日は、と言うか昨晩から、いつも以上に遠慮が無い。お陰で捕食されてる気分じゃ。何なんじゃもぅ……! 二人きりになってから、ずっとずっと目茶苦茶しおって……!

 

「……っはぁ……♡ 八年ぶりのヨリくんなのです……♡♡」

 

 っっ、だから……! だから待たんか被身子っ。散々したんじゃから、少しは落ち着けぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 む、無理じゃ。もう無理……っ! これ以上は死んでしまう……!! 何で、何で二度も立て続けに目茶苦茶にされねばならんのか……!! 儂が嫌がろうがお構い無しに好き勝手しおってっ。くそっ、文句は幾らでも言いたいのに体が動かん。喋ることすら面倒なぐらい、体がくたくたじゃ……!

 

 被身子のへんたいっ。阿呆、たわけっ!

 

「ヨリくん、ヨリくん……♡」

「……っは、ぜぇ……ぜえ……。ぉ、お主なぁ……っ」

「んふふ。もう一回しません?」

「し、しないぃ……! 何なん、じゃ……っ!」

 

 また、被身子が覆い被さって来た。昨晩から一睡もしてないのに、何でこんな元気なんじゃこやつは……! 一晩中したら、翌朝は眠りこけるものじゃろうに……!!

 と、とにかく。どうにかして被身子を落ち着かせなければ……! でないと、また目茶苦茶にされてしまう……っ。うぅ、被身子の馬鹿ぁっ。

 

「そんな顔されたら、もっとしたくなっちゃいますよぉ……♡」

「ぃ、いい加減に……!」

「ヤです♡」

「ふあ……っ!?」

 

 じゃ、じゃから……っ! 駄目と言っておるじゃろうが……! こ、このままではいかんっ! どうにかして、どうにかして被身子の手から逃れなければっ。

 

 ど、どうやって……!?

 

「トガは八年我慢したんですっ。その分、たっぷり円花ちゃんを堪能しないと……!」

「ん、んんぅ……っ。も、勘弁してくれ……っ」

「無理です。もっと、もっとしましょう? 何もかも忘れちゃうぐらい、愛し合いましょうよぉ……♡」

「ひゃ……っ」

 

 被身子の指が、また耳に触れた。同時にこやつは、首に噛み付いてきて……。それが、それが堪らなく悦ばしい。こんな時じゃって言うのに、まるで抵抗出来なくて。とっくに体力は限界なのに、それでもまだ……体が被身子を求めようとして……。

 あぁ、もう……。どうにかしてしまった。被身子に、どうにかさせられてしまった。こんな筈じゃ無かったのに。結局、好き勝手に振り回されて……!

 

「好き。大好きです。愛してますっ!」

「……っっ、それは……その。儂も……じゃけども……。でも、被身子……!」

「同じ気持ちなら、一緒に居てくれなきゃヤです。ずぅーーっと一緒に居ましょう? 何が有っても、二人でいましょうよぉ」

「ん、んん……」

 

 それは……。そう出来たら良いとは、思うけども。でも、でも……。

 

「私は、絶対ヨリくんの側に居るの。でないと生きていけませんし、そもそもこうなっちゃったのはヨリくんが甘やかし続けたせいですし!」

 

 ……確かに儂は被身子を甘やかし続けた。こやつが求めることなら、出来る限り応えてきた。儂が出来ることなら、それこそ何じゃってして来たつもりじゃ。けれどその結果が、今なんじゃ。被身子を呪って呪物に変えてしまった。こんな事になるなら、もっと厳しくするべきじゃった。今更こんな後悔をしたところでもう遅いと分かっていても、それでも後悔してしまう。

 それに、儂に有無を言わせなかったのは被身子の方で……! いや……これは責任転嫁じゃ。そんな真似をしていい道理は無い。この事態は儂が引き起こした。呪術師で在りながら、よりにもよって子供を……被身子を呪うなんて……っ。

 

「……そもそも。これはヨリくんだけの責任じゃないの。私だって、まさかこうなるとは思ってませんでしたし」

「……儂が、気付くべきじゃったじゃろ。呪術師なんじゃから……っ」

「それはそうですけど。でもじゃあ、こうなるって事前に気付いてたとして、トガを言い聞かせることが出来ました?」

「……それは、……んん……」

 

 無理……じゃったろうな。儂がどれだけ拒否したところで、被身子が引き下がるとは思えん。むしろ、何が何でもわがままを貫き通した筈じゃ。それで、結局は流されて……血を与えてしまっていたと思う。

 

「ですよね? だからこれはヨリくんだけの責任じゃなくって、私も悪かったってことなのです。まぁ反省も後悔も一切しませんけど。何なら、こうなれたのがとっても嬉しいのっ」

「ぐえぇ……っ! こ、こら……っ!!」

 

 じゅ、呪力を使ってまで抱き付くなっ。そんな事に呪力を使うんじゃない、たわけ! だいたい、呪われて嬉しいなんて正気の沙汰じゃなかろう!? 流石にその考え方は、どうかしてるとしか思えん……!!

 

 分からん、まっこと分からん。何で被身子は、いつもいつも意味不明な事を宣うのか……!

 

「これでやっと、ヨリくんと全部一緒なのですっ。んふふ、嬉しいなぁ……!」

「……喜ぶことじゃないじゃろ……」

 

 儂に呪われて、生きた呪物となって。そして呪力を得た。それの何処が喜ばしいことなんじゃ? むしろ呪われたことを、呪物にされてしまったことを嘆くべきじゃと儂は思う。今の被身子はどうにかしてるとしか思えん。そうさせてしまったのは儂で、その責任は取らなければならん。絶対に、絶対にじゃ。

 こやつが好きじゃから。きっと何より愛してるから、お咎め無し……なんて許されない。

 

「ヨリくんが反対したとしても、私は呪術師になります。だってそしたら、もうヨリくんを独りにしなくて済むじゃないですか♡」

「そんな理由で呪術師になろうとするな、たわけ。儂は許さんからな……っ」

「良いですよ? 最終的に納得させますからっ」

「絶対せんぞ……」

「んふふ。させてみせるから。ヨリくんはどこまでもトガに甘くて、ちょろいので!」

「……もう知らん。被身子の阿呆、たわけっ。へんたい……!!」

 

 もう良い。もう知らん。知らんったら知らん……! こやつが勝手にするなら、儂も勝手にするっ。重い体をどうにか動かして、被身子の腕の中で無理矢理背を向ける。儂を抱き締める腕を外したいところじゃけど、そこまでするのは難しい。

 ……じゃって、じゃって……。結局のところ、儂は被身子から離れたくないんじゃ。駄目だと分かっていても、離れたくない。

 

 あぁもう……。我ながらどうにかしている。……ぐすっ。

 

「……一緒に、居てください。呪ったって呪われたって。今更、独りになんてならないで」

「……」

「ヨリくんは、独りになっちゃ駄目なの。それに私だって、独りじゃ生きていけないから。そうした責任、ちゃんと取ってくださいよぉ」

 

 どうして。どうして、安心してしまうんじゃ。優しい声音なんて、今は要らない。甘やかそうとしないでくれ。そんな真似をするぐらいなら、叱ってくれ。怒ってくれ。出来ることなら、殺してくれ。もぅ、儂に優しくしないでくれ……っ!

 

「……ぐすっ。……なんで、こうなったんじゃ……。なんで、どうして……っ」

「ヤケにならないの。ぎゅぅう〜〜っっ!」

「んぎ……っ! ぉい、被身子……っ!!」

「ほんとにもぅ、どこまでも分からず屋なんですから。体はこんなに素直なのに……」

 

 ぅ、うるさい……っ。うるさいっ。人の体を好き勝手して、目茶苦茶にして。散々、色々と教え込まれて。いつもいつもお主に抱かれて、この体がとっくに陥落してることなんて分かっとるっ。わざわざ言うな、へんたいっ!

 

「……ヨリくんが、自分を許せないって言うなら許さなくても良いです。でも、今まで通り私の側に居てくれなきゃヤです。沢山愛し合って、沢山求め合って。いつでも何処でも一緒に過ごして……」

「……ん、んん……。こら、被身子……っ」

 

 人の体を弄りながら、耳元で何を囁いてるんじゃお主はっ。ま、まだするつもりか……!?

 

「再来年には結婚して、夫婦になって。もっともっと二人で幸せになって……。どんな困難も二人で乗り越えて、色んな喜びを分け合って。

 そういう未来を、ヨリくんと……円花ちゃんと過ごしたいの。そんな未来しか、私は欲しくないから」

「……っ、んん……っ。で、でも……っ! ぁっ、ひみこ……っ!」

「私は、居なくなったりしないから。それにっ、私を信じてくれるって言ったじゃないですか……!」

 

 そ、それは……。それは、そうじゃけども……っ。那歩島で、そう決めたけれど。被身子を信じて頼ると決めたのは、儂じゃけれど……。何が有っても守ると、絶対に死なせないと心に誓ったけど……。でも、じゃけど。じゃけど……っ!

 

 ……もう。もう、どうしたら良いのか分からん。呪術師としても、許嫁としても。被身子を呪ってしまったことを、無かったことになんて出来ない。有耶無耶になんて、したくない。

 なのに、それなのに。この体は被身子から離れようてしなくて。この心は、被身子の側に居たがって……っ。

 

「……最低じゃ。儂は……っ」

「そんなことないですよぉ」

「……最低、じゃろうが……っ。じゃって、じゃって……! お主から、離れたくない……っ!」

 

 嫌じゃ。どうしても、どうしても決心出来ない。被身子なら離れて生きることを、また独りになることを、選ぶことが出来ない。独りになるべきなのに。独りなら、何も考えなくて良いのに……っ。なのに、今は……嫌で嫌で仕方なくて……!

 

 どうして。どうして、どいつもこいつも儂の側に居たがるんじゃ? 何が有っても、何が起きても、儂が救けた子供は儂から離れようとしないっ。そんな真似をしたら、いつか死んでしまうのに……!!

 

「……前に言ったじゃないですか。ヨリくんは、独りが怖いって。何があったって、私から離れるなんて出来ないですよぉ。誰がたぁっぷり分からせたと思ってるんですか?」

「ぐす……っ。ぅるさい、被身子の阿呆……! たわけっ」

 

 ぐすん。ぐす、ぐすっ。解せぬ。まっこと解せぬ。独りが怖いなんて、そんな事が有るものか。独りが良いんじゃ。独りにならなきゃ、駄目なんじゃ。独りにならなかったから、儂の側に居た奴は死んだんじゃぞ。何人も何人も、死んでしまった。儂に付いて来なければ、平穏に生きれたかもしれないのにっ。

 また同じ過ちを繰り返すような真似はしたくない。また同じ事が起きたら、今度は被身子が死んでしまう……! それは駄目じゃ、絶対に駄目なんじゃっ。

 

「……私の事、信じられない?」

「……信じ、とるよ。信じとる。それでも、怖いものは怖いんじゃ……っ」

「ん……。それは、よく分かるのです。でも、それでも。私は離れないし、離れさせてあげないの。

 だから! いい加減、独りになるのは諦めてくださいっ!」

 

 ……ぐすん。何じゃもぅ……。何なんじゃ、こやつは。少しも儂の言うことを聞かん。その上、自分の意見ばかりを押し通そうとして……!

 被身子をこんなわがままな奴にしてしまったのは、確かに儂のせいかもしれん。じゃけど、じゃからってここまで儂の言うことを無視するような子にした覚えは無い。こやつのわがままは大抵が自分の為で、じゃけどもどこか……儂の為でもあって……。

 

 ん、んん……。これが、儂の為……なのか? そんな筈はない。絶対に無い筈じゃ。

 

 良いんじゃろうか? こやつの言う通りにして。信じて、頼り切って。そうするって決めたのはついこの間の出来事なのに、儂はどうしても……どこかで、まだ……。

 

「ぅ、ぅうう……っ! もぅやじゃっ、やじゃあ……っっ!!」

 

 これからどうするべきか。それが分かっていながら、儂は動けない。体も心も、被身子の側から離れようとしない。そんな自分が情けなくて、憎くて。なのに何も出来ぬまま、ただ被身子の腕の中で泣き喚いて。

 独りなんて、なんてことは無い筈なのに。独りの方が、色々と気楽に過ごせる筈なのに。それなのに、それなのに……!

 

 結局、今の儂は。自分で、何一つ選ぶことが出来ない。

 

 ……弱くなったと、思う。精神的に、脆くなったと思う。まさか、独りになることを選べないなんて。被身子を愛するが余り、どうにかしてしまっている。

 どうして、こんな風になってしまったんじゃろうか? どうして、どうして……っ。

 

 この後の儂は、みっともなく何時間も泣き続けた。最後は泣き疲れて、眠ってしまって。その間、被身子はずっと儂を抱き締めてくれていた。儂が何を言ったてしても、絶対に離してくれなかった。

 

 被身子を呪ってしまった後悔ばかりが膨れ続けて、もうどうしようもなくて。

 なのに。それと同じぐらい、被身子に引き留められることを……嬉しく思ってしまった。そんな資格は無いと、分かっていながら……じゃ。

 

 

 きっと儂は、どうかしてしまったんじゃろう。被身子が愛し過ぎて、儂の中に有る変わらないものが……すっかり変えられてしまった。

 

 

 これは、正しいことなのじゃろうか? 

 

 

 ……それとも……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






………投稿前に読み返して、ギリR-17.9かなぁって思いました。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。