待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
さて。ここは何処かの? いや、雄英高校の敷地内であることは分かる。流石にそれぐらいは分かっておる。しかし周囲にあるのは森。幾ら歩いても樹木しかない森じゃ。何で儂がそんな所で道に迷っているかと言うと、数ある演習場の呪霊掃討を担任に頼まれたからじゃ。今日はゆうえすじぇいに蔓延る呪霊を根こそぎ祓い尽くした。それが終わったのが夜の七時過ぎ。校舎で待ってる被身子と合流して家に帰ろうと思い、一人で外に出たのが間違いじゃった。制止する拾参……ではなく13号を大丈夫と振り払って外に出たのは、我ながら阿呆の極みだった。
じゃって、早く被身子に会いたかったんじゃ。雑魚呪霊を祓うのは簡単じゃが、数が多いとなると面倒であることに変わりない。何だかんだで気疲れしたから、その時は被身子の笑顔を見たい気分でのぅ。気が急いてしまった。
結果、この始末。歩けど歩けど森から出ることが出来ぬ。迷子じゃ迷子。我ながらいい加減にしろよと思う。何で一人で夜の森を彷徨わなければならないのか。
まさか、方向音痴になる天与呪縛でも儂に有るのか? いやしかし、その代償として何かを得ているようには思えぬ。となると、やはり儂は単純な方向音痴……。
……辛い。それは辛いのぅ。どうにかならんかのぅ……。
「うぅむ……。どうしたものか……」
いつになったら儂は森から出れるんじゃ? そろそろ腹も空いてきたし、喉も渇いた。このままでは飢え死にするかもしれん。迷子になって餓死なんて、笑い話にもならぬ。何とかせねば。でも、何ともならぬ。
もう駄目か? 儂、もう駄目か??
いや。諦めるにはまだ早い。幸い何処をどう歩いたかは覚えておる。ならば来た道を戻れば良いんじゃ。
「……いや、これは分からんて……」
夜の森は暗いんじゃ。真っ暗じゃ。自分がどの方角を向いているかも分からん。やはり被身子を校舎に置いてくるべきでは無かった。ただ、雑魚呪霊とは言え呪霊は呪霊じゃ。万が一被身子が襲われて怪我でもしたらと考えると、恐ろしい。それにあやつは勉強せねばならぬし、いつ終わるとも分からぬ呪霊掃討に連れ出すのは気が引けた。
校舎には呪霊がおらんし、恐らく役に立つであろう指輪も持たせてはおる。
いかん。不安になって来た。もし校舎で異常が起きたら、直ぐに儂に連絡がされる手筈になっておる。連絡が来ていないと言うことは何も無いと言うことじゃ。しかし……心が落ち着かぬ。
ううむ。落ち着け。大丈夫じゃ大丈夫。次からは被身子も連れて呪霊掃討しよう。やはり儂が側で守らねば。二度とあやつを一人にはせんぞ。
……やはり、毒されておるなぁ。こんな気持ちになったのは、果たしていつ以来か。あぁ、弟と妹と離れ離れになった時もこんな感じじゃったかの……。
落ち着け。もう済んだことじゃ。過去は消えぬし、どうしようもない。それよりも大事なのは今じゃ。どうやってこの森から脱出すれば良いかだけを考えて……。……む?
「呪力……?」
森の中で、呪力? 呪霊か……? いや、違うな。これは残穢じゃ。恐らくじゃが、何処かから漏れ出した呪力の残穢。呪霊の物か術師の物かは分からぬ。細かい判別はどうにも苦手じゃ。
思い出してみれば、前にもあったの。折寺中学校の備品室で、結局は何だったのか分からない残穢があった。今回もその類いか……?
どれ。ちょっと集中して残穢を探ってみるか。
……。…………。………………。
うむ。多分こっちじゃ。こっちの方から呪力が流れて残穢になっているような……気がする。さっさと森から出たい所じゃが、これは気になるの。迷子になったついでじゃ。調べておこう。
◆
どうにかこうにか残穢を辿って、十分以上は森を彷徨った頃。ようやく儂は、何処からか漏れ出していた呪力を目で捉えることが出来た。その呪力に導かれるような形で歩を進めると、森の中なのに少し開けた場所に出た。真っ先に目に入ったのは……小さな社じゃの。古ぼけて、今にも崩れてしまいそうな社じゃ。この社から、何故か呪力が漏れ出ておる。呪霊の気配はせん。では何故、こんな所から呪力が?
まぁ、調べれば分かるか。
「……? 何じゃこの布袋」
社に近付いて、直ぐに気が付いた。古ぼけた長い布袋が、祀られておる。触れただけで今にも崩れそうなぐらい、劣化したそれからは確かに呪力が感じられる。
……中身は、何じゃこれ? 棒。鎖のついた……棍……。
「おいおい。こいつは……見覚えがあるのぅ」
ああ、見覚えが有る。一度だけ見たことがあるし、名前も知っとる。何でこんな物が雄英の敷地内に有るかは知らぬ。もしかすると、折寺中学校にもこれと似たような物が有ったのかも知れぬな。
ならば、誰が持ち去った? 呪霊か? いや、呪霊如きがこんなものを持ち去る理由が無い。であれば……そうか。悪党連合が、呪霊に集めさせているのか。
だとしたら、最悪じゃな。奴等、自分達を害する可能性が有るものを片っ端から潰しておくつもりじゃ。或いは自分達で使うつもりか。
どちらにせよ、用意周到にも程がある。準備と言う点では、間違いなく向こうが上じゃ。人の目に映らぬ呪霊で、準備を進められるのじゃからな。
「一本無いが、それでも役には立つ。これがあれば、少しは儂も楽が出来そうじゃの」
月明かりに照らされる、赤い二節棍。昔は三節棍じゃったと思うが……まぁ良い。あの時から長過ぎる時間が流れているんじゃ。壊れたり、紛失することだって有り得る話じゃ。むしろここまで原型が残っていることを、幸運と思うべきじゃろうなぁ……。
「……特級呪具、游雲……か」
これがあれば、並大抵の呪霊は非術師でも祓うことが出来る。非術師とて、この呪具を頼れば一級ぐらいは倒せるじゃろう。今の時代の呪霊は、どうにも弱いからの。
ひとまずこれは持ち帰り、使えるかどうか試したい。周囲に手頃な呪霊でも見えればこれで祓ってみるんじゃけど、……今は居ないな。
さて。何か偶然にも特級呪具を拾えたところで、早いところ校舎に戻るとするか。迷子になるのも悪くないの。しかし、流石にこれ以上時間をかけると被身子に心配されて……。
「―――ガルルルル」
ん? 獣?
「見ツケ、バゥバウッ! 見ツ、バウバウバゥッッ!!」
おお、犬の教師。ちょうど良かった。儂を校舎まで連れ帰ってくれ。道に迷っていたところでの! 危うく帰れなくなるところじゃったわ!
ところで、吠え散らかして涎を撒き散らすのは止めてくれんか? 顔にかかったじゃろ?
どうどう、落ち着け落ち着け。そう吠えるな。はははは、こやつめ。可愛い奴じゃな。
吠え狂う犬教師のお陰で、儂は何とか校舎に戻れた。戻った際、被身子にも相澤にも13号にも迷子になったことを怒られた。いや、悪かったって。反省しとるぞ? 次から一人で出歩くのは止めるから、そんなに怒らんでくれ。
なぁ、被身子ったら。頼むから、そんなに怒るのは止めてくれ……。
※この作品は基本的に行き当たりばったりで書いてます。基本的にノープロットです。
以下、言い訳。
本来なら円花が折寺中学校で感じた残穢は呪物のもの。ええ、宿儺の指の予定でした。しかも受肉先はかっちゃんかトガちゃん、或いは輪廻でした。しかし単行本も本誌も追ってる身からすると宿儺出したらどうしようもなくなると思ったことと、流石に円花一人に呪霊対策を取らせるのは無理があると思うので、折寺中での残穢は何かしらの呪具だったかも? と言うことにしました。少なくとも円花はそう思っています。
呪具に残穢があるかは微妙なところですし、遠くから呪具の呪力をはっきりと知覚出来るのかも怪しいところですが、そんなもんだと思ってくだされば幸いです。まぁ呪物が残穢残すなら呪具とて残穢残すだろうと言う判断です。
雄英にもある予定だったんですよね。宿儺の指。でも宿儺出したらどう考えても話が最悪にしかならないので、止めておきます。代わりに配置したのは游雲です。なんと二節棍になってます。なんでやろうなぁ(すっとぼけ)
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
-
要らん
-
良いから一人称で突っ走れ