待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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円花の停滞。地下

 

 

 

 

 

 

 瓦礫の山やら焼け焦げた道路ばかりの街の中を、四人で歩くこと十数分。儂はやっと、瓦礫と化した母の生家にやって来た。目当てにしていた場所は、酷い有り様じゃ。半分程は間違いなく焼け焦げておるし、もう半分は瓦礫の山になってしまっている。家がこうなる程の騒動に巻き込まれてしまったのなら、五条流転……とかいう人物が死んだのも納得出来る。儂が求める情報が無事に残っているのかも、疑わしく思えてしまう程じゃ。恐らくは大丈夫じゃろうけども。いや、そうでないと困る。儂はここに、被身子を元に戻す為の手段を探りに来たんじゃから。

 

「これは……酷いね……。ナイトアイ、ここに住んでた住民の方は……」

「残念ながら、救助は間に合わなかった」

「……歯痒いよ。救けられない命が有るのは」

「このような事態は、起きて欲しくない」

 

 後ろで大人達が顔を顰めているようじゃが、特に何かを言うつもりはない。英雄(ひいろお)じゃろうが呪術師じゃろうが、助けられぬ者は助けられない。全ての命を救うことなど、誰じゃろうと出来やしないんじゃから。出来れば、この街に住んでいた子供が全員無事なら良いんじゃけども。

 

 ……それはそうとして、じゃ。今は、優先すべき事が有る。この街の惨状を見て心を痛めたりしている場合では無い。

 

 まずは……瓦礫の撤去からじゃの。母曰く、地下室に儂が求める情報が有るらしい。建物自体は瓦礫となっているが、地下ならば無事かもしれん。そうでなくては困る。

 

 ひとまず。瓦礫の山に向かって、儂の血を撒いていく。ここに居る誰かしらが何か言い出す前に、瓦礫を飛ばすとしよう。最悪竜巻で吹き飛ばしてしまっても良い。が、その場合は盛大に怒られるじゃろう。余計に街を壊すわけにも行かんし、纏めて吹き飛ばすのは止すとする。

 

「ちょっ、廻道さん……!?」

「すまん。黙ってろ」

 

 隣に居る緑谷が儂を静止しようと声を荒げたが、無視する。瓦礫の山をそこらに飛ばし続けていくと、やがて地下へ続いていそうな階段が姿を見せた。少し焼けているように見えるが、恐らく中は無事じゃろう。他の三人を構ってる余裕など無い。説教なら後で聞くから、今は好きにさせて欲しいところじゃ。

 

「ま、待って廻道さん……!」

「じゃから、黙ってろ」

 

 周りの静止など気にしてられん。緑谷を無視して、地下へ通ずる階段を降る。当然じゃけども、進むに連れて暗さが増していく。階段そのものが長くて、何処まで続いてるのか分からん程じゃ。この先に何が有るかは知らぬが、立ち止まっては居られない。

 

 降って、降って降って、降って。

 

 ……やがて。暗い通路に辿り着く。光が無く、何も見えぬ。灯りとなる物を持って来るべきじゃったか。いや、思い返せば持って来ているの。

 懐から携帯電話(すまほ)を取り出し、翳す。音声操作で電灯(らいと)を点けると、目に入ったのは分厚そうな木の扉じゃ。作りが随分と古くて、見覚えが有るような無いような……。

 

「廻道少女! 一人で歩いたら迷子になるよ!?」

「待ってってば……!」

 

 後ろから、おおるまいとや緑谷の声が反響してくる。慌てた足音も響いているの。振り返ったり待つつもりは、微塵も無い。

 扉に手を掛けると、古めかしいが頑丈であることが分かる。鍵は……どうやら掛かっていないようじゃ。呪力強化した腕力で押してみると、大きく軋む音が聞こえて来た。まっこと、古い扉じゃ。もしかするとこの扉、平安時代から現存してるのか……? もしそうならば、よくもまぁ何千年も形を保ってられるものじゃ。呪力が込められている訳でもないのに。単に手入れが行き届いてるだけかもしれんが、まぁそんな事はどうでもいい。

 

「……ふむ……」

 

 扉を開き切ると、その向こう側に見えたのは手狭そうな部屋じゃ。棚が幾つも並んでいて、通路なんかは人がすれ違うのは無理そうなぐらいに狭い。資料室、とでも言えば良いのかの? まぁ、何じゃって良い。何気無く棚に置かれた冊子を手に取ると、それが平安時代の代物で有ることにすぐ気付いた。うっすらとじゃけど、呪力を感じる。試しに開いてみるが、本そのものは大して傷んでいないように見えるの。

 

 取り敢えず、じゃ。ここには、山程の本が有る。中には、巻物じゃって置かれているぐらいじゃ。もしかすると此処には、五条家が蓄えた知識の全てが置いてあるのかも。取るに足らん情報から、有益となるであろう情報まで残されてるかもしれん。

 

 ……良し。片っ端から読み耽るとしよう。これだけの書物が保管されてるんじゃ。きっと何処かに、被身子を元に戻す方法が記載されている筈じゃ。

 

「ここは、……資料室? 何の?」

「こんなに沢山の本、どうして纏めて地下に……?」

「人目に触れさせたくなかったんじゃろ。この家に住んでいたのは、五条なんじゃから」

 

 御三家の一角ともなれば、持ち得る情報はかなり多い。少ないなんてことは、まず有り得ん。恐らくは、この地下室には五条家が持つ情報の全てが置いてある筈じゃ。もしかすると他にも資料やら何やらが置かれた部屋が有ったのかも知れんが、瓦礫に潰されて原型は残ってないじゃろう。

 この部屋にある全ての本や巻物を読むのは、かなり時間が掛かるかもしれん。下手をすれば数日を要する。こんな場所で年を明けたいとは思わんが、もしかするとそうなってしまかも。

 

 ……その時はその時じゃな。それに、時間など気にしてる場合でもない。よし、それじゃあ……。

 

「……読むか」

 

 家に持って帰りたい気もするが、量が多過ぎるからの。あぁそうじゃ、総監部に引き取らせよう。あの背広男のせいで、この時代の総監部は呪術界に関する情報の殆どが失われてしまってるんじゃから。

 

 さぁ。この山のような書物の中から、目当ての情報を探すとしよう。そして必ず、儂は被身子を元通りにするんじゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと、まだ儂の欲しい情報は見当たらない。五条家が保存していた情報はそれこそ山のように有って、何処から手を付ければ良いのかまるで分からん。片っ端から読んで行けばいつかは見付かるとは思うが、どれだけ時間が掛かるのやら。

 この資料室に来てから、もう何時間も経ってる。

 

 これも違う、あれも違う。と、本を開いては床に投げ捨て次の本を開く。そんなことを、もう何度繰り返したのかすら分からん。

 

 緑谷とおおるまいとには、この部屋の本が何であるかは説明しておいた。ないとあいにも聞かれたが、既に呪術界の事を知っているようじゃから問題無いじゃろう。こやつが窓になるなんて未来は、想像もしたくないが。

 

「か、廻道さん。こんな貴重なもの、丁重に扱わなきゃ駄目だよ……!」

「後で戻す」

「後でじゃなくて、今戻そうね??」

「じゃから、後で戻す」

 

 緑谷もおおるまいとも何か言っているが、構っている暇は無い。今はとにかく、儂が求めてる情報を探し出さなければ。何としてでも、見付ける。そうでなければ、此処に来た意味が無い。

 目に付く冊子を片っ端から手にとっては、出来る限り速読していく。気になる単語が出て来るまで(ぺぇじ)を捲り続けて、出て来たらその前後を注視する。そんなことをもう、何度繰り返したか分からん。とにかく今は、目当ての情報が出て来るまで読んで読んで読み続けて……。

 

「いったい、何を探してる? 言ってくれれば手伝えるが……」

 

 ……何じゃ、まだ居たのかこやつは。もう道案内は終わったんじゃから、儂としては帰ってくれても構わないんじゃけども。帰り道については、緑谷やおおるまいとに任せれば良いし。

 じゃけどまぁ、居るなら居るで手を借りよう。緑谷と、おおるまいとにも。

 

「……呪物から呪いを取り除く方法を探しとる。もしくは、呪いを解く方法。すまんが、暇なら手伝ってくれ」

「呪物から呪いを取り除く方法……?」

「そうじゃ。緑谷もおおるまいとも、悪いが手伝ってくれると助かる」

「それは、もちろん。でも廻道さん、読んだ本はちゃんと棚に戻そうね……!」

「……善処する」

「何だかよく分からないけど、手伝うよ。このままだと足の踏み場も無くなりそうだし……」

「すまん。助かる」

 

 この二人が、と言うか英雄(ひいろお)がお人好しで良かった。儂一人じゃと、目当ての情報を探し出すのにどれだけ時間が掛かるか分からん。幾らでも時間は掛けるつもりじゃが、早ければ早い程良いのもまた事実。時間に追われてるわけでは無いんじゃけど、とにかく急ぎたい。どうにも気が急いて仕方ないんじゃ。

 

 目についた本を、手に取る。これは……五条の家系図か? これはどうでも良いの。次の(ぺぇじ)じゃ、次の(ぺぇじ)

 っと、最後の方になると母の名前が書いてあるの。(まこと)に母は、五条の末裔なのか。何故か儂の名前も書いてある辺り、何とも言えん気分じゃが。

 

 ……そんな事より、次じゃ次。ええっとこれは……『五条悟』について? これは読まなくて良さそうじゃの。で、次は……『乙骨憂太』? 誰じゃそれ、どうでも良い。一応少しだけ頁を捲ってみるが、求めてる情報は……。

 

 ……無自覚に愛する人の魂を束縛して、特級過呪怨霊に変えた術師? 解呪後、特級から四級になってまた特級に返り咲いた呪術師??

 

 一応、読んでおくか。ほら、儂も愛する人を呪ってしまったんじゃから。この男がどのようにして解呪を試みたのか知っておくのは、何かの手掛かりになるかもしれんし。もしかすると案外、この冊子に何か方法が……。

 

「……」

 

 ……。

 

「…………」

 

 …………。

 

「………………」

 

 ………………。

 

 「……いや、とんでもないなこやつ」

 

 とんでもなかった。何じゃそれ。まっこと、とんでもない呪術師じゃ。しかし解呪方法については、何も参考にならなかった。この男、……乙骨とやらは愛する人が死んだ際に、その魂をこの世に縛り付けてしまったそうじゃ。で、解呪方法は主従関係の破棄。儂や被身子もそうなら、同じ真似をすれば解呪は出来るじゃろう。しかしのぅ、儂は被身子を呪うことを望んでた訳ではないし。主従関係でもない。こやつが使った方法では駄目じゃろう。何の参考にもならん。時間を無駄にした気分じゃ。

 

 次じゃ、次。

 

 夏油傑? どうでも良い。

 伏黒恵? どうでも良い。

 虎杖悠仁? どうでも良い。

 

 違う、違う。儂が欲しいのは、解呪についてじゃ。呪いを解く方法を探している。反転術式とか、主従契約の破棄とかではなくて、もっと別の形の……。

 

 ……両面、宿儺? これは、事が済んだら読むとしよう。

 

 

「……くそっ」

 

 

 見当たらない。見当たらない、見当たらないっ。これだけの冊子が並んでいるのに、儂が求めてる情報はまるで出て来ない! 何処かに、絶対何処かに有る筈なんじゃ!

 

 幸い、まだ読んでいない本は山程有る。その全てを、片っ端から探して行くしかない。頼むから、此処に有ってくれ。被身子を元通りにする方法を、儂に教えてくれ……っ!

 

 

 

 

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

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