待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
むーー……。結局、おじさんに押し切られる形でお出掛けする羽目になりました。輪廻ちゃんを置いて出掛けたいとは思わないんですけど、無理矢理連れ出されちゃいました。結構不愉快です。円花ちゃんに連れ出されるならまだしも、何でおじさんに連れ出されなきゃいけないんですかっ。納得行きません。ヨリくんなら「解せぬ」って言ってるところです。
取り敢えずお出掛けの為に着替えはしましたが、今日は手抜きです手抜き。おじさんとのお出掛けじゃ、どうにもこうにも気合が入らないので。
あと、軽く……と言うか、とても身の危険を感じてます。だって……。
「ちょっ、左から自転車が……!」
「え? あ、ごめん」
「……もぅ! おじさんの運転は危なっかしいのです……!!」
車の運転が、下手で。急発進に急ブレーキの連続で、単純に怖いです。いつ事故が起きてもおかしくない感じがして、もうハラハラドキドキで心が持ちません。何でお出掛けしてるだけなのに、命の危機を感じなきゃいけないんですかっ。
「いやぁごめんごめん。運転久しぶりでさ? 普段はほら、運転席はお母さんが座るから」
「そりゃあ、こんな運転する人に運転手は任せられないですよぉ……っ」
「大丈夫大丈夫、事故は起こさないからそこは安心してね」
「無理です!! 今直ぐ代行を呼びましょう!!」
「まぁまぁ。事故は起こさないから」
いや、信用出来ませんけど……!? ぜんっぜん、信用出来ないのです……!! こんな荒っぽい運転をするなら、二度と運転席に座って欲しくないですよぉ……! 車を使う時、輪廻ちゃんが真っ先に運転席に座る理由がよく分かりました。
あと、将来円花ちゃんには絶対運転させません。トガが免許を取ります。今決めました、そう決めましたっ。おじさんがこうなら、円花ちゃんも絶対にこうなっちゃうので……!
「じゃあナビはよろしくね。目的地は、木椰区のショッピングモール!」
「えっ」
……ウーキーズに行くのは、まぁこの際良いとします。でも何で、よりによって数駅も離れたショッピングモールに車で向かうんですか……! どうせなら近場の駅に車を停めて、電車で行きましょうよぉ……っ。そうした方が絶対安全です、間違いないのです……!
「って、ちょ……っ! 木椰区に行くなら右です右っ!」
「え? ここ左じゃなかったっけ?」
「うーせーつーでーすーぅ!」
こ、これは……駄目です。本当に駄目です。トガがしっかりしないと秒で事故っちゃう気がしてなりません。おじさんはかつて、円花ちゃんに負けず劣らずの方向音痴なのをすっかり忘れてました。っていうか今も方向音痴な気がします。輪廻ちゃん曰く克服したそうですけど、まったく克服出来てる気がしません。少なくとも、今は!
「えーー……っと。じゃあどうしよっか? 取り敢えず真っ直ぐ行く?」
「そこを左折して、すぐまた左折して、もう一回左折してくださいっ」
「左折四回……ってこと!?」
「三回ですよぉ! 三回左に曲がったら、右です右っっ!!」
あ、これはもう駄目です。駄目駄目なのです。無事に生きて木椰区に辿り着ける気がしません。お家に帰るのも、怪しくなってきました。おじさんが極度の方向音痴だったことは聞いてますけど、これじゃあ本当にヨリくんと大差ないのです……! どうして親子揃って、人の案内を聞こうとしないんですか……!!
「おじさんは、もう運転禁止なのです……! 私が免許取ったら二度と運転しちゃ駄目ですから!」
「被身子ちゃん免許取るの? それは頼もしいなぁ」
「呑気してないでちゃんと前見てくださいっ。赤です赤!」
「あっ、ごめん……!!」
……! ……もぅ……! もうっ!! とんでもないのです、ほんっっとにとんでもないです!!
◆
とんでもない目に遭いました。おじさんの言った目的地に辿り着くまでに、事故が起きなかったのはきっと何かの奇跡です。そうとしか思えません。二度とおじさんが運転する車には乗りたくないので、帰りは一人で電車に乗って帰ります。と言うかもうおじさんに運転させたくないので、帰りは代行タクシーを呼んでもらいましょう。そうしないと絶対危ないのです。それと、将来は絶対にトガが免許を取ります。あと円花ちゃんには、何が何でも免許を取らせません。でないと、確実に大惨事になるので。
……それはそれとして。私とおじさんは、木椰区のショッピングモールにやって来ました。県内最大店舗数を誇る、ナウでヤングな最先端です。結構前……、雄英が
「よしじゃあ、……どうしよっか?」
「……着いてからの事は決めてないんですね……。取り敢えず、休憩です休憩っ」
「え、もう? まだ着いたばっかりなのに?」
「おじさんの運転が危なくて疲れたんですぅ! もっと練習してくださいっ。いや、やっぱりしなくて良いです!!」
「えっ。うん……? じゃあそうしようかな……?」
何が悪かったのかさっぱり分かってない顔をしてるのです。これは駄目です。本当に駄目です。またいつか運転しそうなので、その時は全力で止めないと……! でないと、絶対事故っちゃうので!
おじさんがポンコツなのは知ってますけど、今日は一段とポンコツな気がしてなりません。これは、トガがしっかり見張らないと……!
その前に、一旦休憩しますけどっ。
おじさんから目を離すと迷子になりそうな気がするので、取り敢えず袖を引っ張ってフードコートまで連れて行きましょう。こうなったら、たらふく甘い物を奢って貰わないと気が済みません。
「ここには、円花と来た?」
「一回、ここでデートしました!」
「そっかそっか。だと思ったんだよね。来てて良かったよ」
「……? 何なんですか、もぅ」
ほんと、もぅ。今日のおじさんは、よく分からないです。普段は円花ちゃんや私が大好きなポンコツ親バカって感じなんですけど、今日はポンコツ度合いがどうにかしてます。少し落ち着いてくれませんかねぇ……? こんなんじゃ、体が幾つ在っても足りない気がしてなりません。
ひょっとして、何か企んでたりするんでしょうか? おじさんは気晴らしって言ってましたけど、本当にそうなのか疑わしくなってきたような……。いや、何も考えてないって線も有りますね。そっちの方がむしろ濃厚な気が……。
よく分からない様子のおじさんを引っ張ってフードコートに辿り着けたので、まずは飲み物とか甘い物を買います。そこのクレープ屋さんで、クレープとかタピオカミルクティーを買いましょう。今回は……、苺の生クリームが良いですねぇ。
「あ、僕が買ってくるから被身子ちゃんは席を……」
「おじさんが席を取ってくださいっ。あと財布出してください! 何が良いですか!?」
「ぁ、じゃあクレープで。チョコが良いな」
……今日は、色々と大変な気がします。円花ちゃんより何をしでかすか分からない感じがして。こういう時、輪廻ちゃんはどうしてるのか気になります。
ひとまず席はおじさんに任せて、私はクレープ屋の前に出来てる行列に並ぶとします。今は年末で冬休みですから、円花ちゃんと来た時と比べたら明らかに混んでるのです。一応念の為に周囲を見てみると、……おじさんはちゃんと席を確保してました。これで甘い物を両手に右往左往することは無いですね……。
……そんなこんなで、十数分後。無事に甘い物は買えました。ので、おじさんが確保した席に向かいます。両手で二人分のクレープや飲み物を抱えて歩くのは、ちょっと大変ですけど。
「あ、被身子ちゃん。こっちこっち」
「……はぁい」
……ふぅ。取り敢えず、無事に席に着けました。チョコクレープと飲み物、それからお財布を渡すとおじさんは何やら微笑んでいます。何が楽しいのかさっぱりなのです。ヨリくんなら何を考えてるのか分かりますけど、流石におじさんが考えてることは分からないので。だからって理解出来るようになりたいとは思いませんけど。おじさんについて詳しくなって良いのは、輪廻ちゃんだけですし。
「ありがとね。それでこの後の事なんだけど」
「……はい。何か買い物でもするんですか?」
「いやぁ、何も? 取り敢えず来てみただけだから。だからそうだなぁ……、当てもなくブラブラしてみよっか」
「……」
「え、嫌?」
「……まぁ、別に良いでふへほ……」
「食べながら話さないの」
……ん、んん……。まさか当てもなく来たとは思いませんでした。それなら、どこか別の所が良かったです。ここは、円花ちゃんとデートした時のことを思い出しちゃって。今はただでさえ会いたくて堪らないのに、余計に会いたくなっちゃいますよぉ。今頃、円花ちゃんは泥花市に着いた頃ですかね……? もしくは、もう輪廻ちゃんの実家に着いて調べ物をしてる……とか?
どっちしても、電話に出てくれなかったことは許しませんけど。帰って来たらお仕置きなのです。もぐもぐ……。
こくん。……それにしても、まさかおじさんと二人きりでここに来るとは思いませんでした。
「ここではどんなデートをしたの?」
「……おじさんて、娘の恋愛事情が気になるんですか?」
だとしたら、ドン引きです。いくら親バカでも、娘の恋愛事情に首を突っ込もうとするのは流石にどうかと思います。
「そりゃ、父親ってそういうものだからね」
ドン引きです。
「それでさ、実は常闇くんについて詳しく聞きたいんだけど……」
「常闇くんは敵です。トガの宿敵なのです……!」
「え、そうなの? まさか……円花を取り合ってる……?」
「円花ちゃんが一番仲良くしてる男の子なのです。だからトガは、気が気じゃなくって」
「……あの鳥頭くんめ……! 円花には被身子ちゃんが居るんだぞ……!!」
「そうですよぉ! なのに円花ちゃん、直ぐ男の子と仲良くなっちゃうんです! おじさんからも何とか言ってください……!!」
円花ちゃんの恋愛事情を気にするおじさんにはドン引きですけど、それはそれとして常闇くんについては語りたいところです。主に常闇くんや、円花ちゃんへの愚痴ですけど。
ほんともぅ、円花ちゃんと来たら男の子と仲良くし過ぎです。性自認が男の子だから、男の子と気が合うのは分かるんですけど。分かるんですけどっ、だからって男の子と気軽にスキンシップするのは止めて欲しいのです!
それにっ。そんな円花ちゃんを常闇くんが実はそこまで嫌がってないことを、トガはお見通しですからっ。
「だいたいっ、円花ちゃんはガードが緩いのです……! 特に夏とか……!!」
「そういえばスカートで扇いでたっけ。冬は?」
「冬は着込んでるので大丈夫ですけどぉ……。でも、夏よりスキンシップに寛容ですね。私にしたりされる分には良いですけど、男の子相手は良くないです……!」
ヨリくんは暑がりで寒がりなので、夏も冬も無防備なのです。特に男の子に対して無防備なのは、ほんっとにどうにかしないと駄目です。仕方ない部分が有るのは分かってるんですけど、それはそれとして年頃の女の子らしく振る舞って欲しいとも思う時が有ります。それに円花ちゃんって押しに弱いですから、何か盛大な間違いが起きたらそのまま流されちゃうんじゃないかって。そうならない為にも、やっぱりガードは固くして貰わないと……!
「男の子って勘違いし易い生き物だからなぁ……。特に男子高校生ともなると、うん……。これは、常闇くんに釘刺すしかないね……!」
「釘どころか、包丁刺したって良いぐらいです。だいたい円花ちゃんは、常闇くんと距離が近過ぎなんですよ……っ。それに他の男の子とも……!」
思い出したらムカムカして来ました。円花ちゃんの性自認が男の子なことも、だから男の子に触れたり触れられたりすることに抵抗が無いのは分かります。円花ちゃんからしたら、同性ですもんね。でもでも、円花ちゃんに触れて良いのも触れられて良いのもトガだけなんですっ。恋人として許嫁として、やっぱりもっともっと教育しないと……! 何か間違いが起きてからじゃ遅いですし!!
「まぁでも、性自認が男の子だからなぁ……。多分だけど。その辺加味すると、円花に強くは言えないよね」
「えっ?」
えっ。
「えっ? 違う? てっきりそうだと思ってたんだけど。円花から何か聞いてない?」
「あってますけど……。気付いてたんですか?」
「お父さんだからね。まぁでも、だからって性自認を女の子に変えろなんて僕達は言わないけど。性自認が男の子なのも、口調がのじゃのじゃしてるのも円花の個性だから。
あ、この場合の個性は性質とか性格とかの方ね」
……気付いてたんですか。でも、そうですよね。おじさんは円花ちゃんのお父さんですから、気付いててもおかしくないのです。その上で何も言わないで、ただ見守ってくれてて……。
んふふ。おじさんと輪廻ちゃんのそう言うところ、すっごく好きです。私達の意見や、したい事を尊重してくれて、好きなようにさせてくれるところが大好きです。
だから、早く円花ちゃんが十八歳にならないかなって心待ちにしてるの。一秒でも早く結婚して、トガは廻道になるんです。
「おじさんって、たまーーに良いこと言いますよね。ポンコツなのに」
「いやいや、お父さんは良いことしか言わないって。がははは!」
「それ、似てないので止めてください。円花ちゃんはもっとカァイイので!」
「え、駄目? 似てると思うんだけどなぁ……」
「似てないです。二度としないでください」
「ご、ごめんね……?」
許さないのです。絶許です、絶許。ちょっと笑顔の感じが似てるような気がしましたが、全くの別物ですねぇ、今のは。トガの前で円花ちゃんの真似なんて、例えおじさんでも許しません。まったくもぅ、親子揃ってポンコツなんですから。
「そへれ、これからほうするんへふか?」
「ストローを噛みながら喋らないの。……まぁ特に決めてないけど、強いて言うなら……」
強いて言うなら?
「これから産まれて来る双子ちゃんの為に、ベイビー用の服とか買いたいかな?」
気が早いのです。赤ちゃんが産まれるのは、まだまだ先の話ですよぉ。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ